主な式典におけるおことば(平成13年)

皇后陛下のおことば

平成13年全国赤十字大会
平成13年5月15日(火)(明治神宮会館)

本日,全国赤十字大会に出席し,日ごろ赤十字活動にたゆみない努力を続けておられる皆様と親しくお会いできますことを,大変うれしく思います。

赤十字は,国際的な強い(きずな)で結ばれ,人道的事業を通じ,広く世界の人々の福祉を増進し,平和な国際社会を築くための力強い活動を続けておりますが,我が国においても日本赤十字社が,皆様の深い理解と尽力により,日々その使命を果たしていることを心強く思います。

今日,世界の各地ではいまだ紛争が絶えず,また,自然災害に苦しむ人々も多く,赤十字に寄せられる人道的援助の期待と要請は,今後もますます高まっていくものと思われます。

新しい世紀が,より多くの人々にとり平和で幸せなものとなりますよう,皆様が従来にも増して赤十字の尊い使命に思いを致され,国の内外において,一層の活動を進められますことを切に希望いたします。

第38回フローレンス・ナイチンゲール記章授与式
平成13年6月27日(水)(日本赤十字社)

この度,寺本松野さんと,石本茂さんのお二人が,赤十字国際委員会から,看護婦として最高の名誉であるフローレンス・ナイチンゲール記章を贈られました。お二人は共に,戦時における傷病者の看護に尽くされ,多くの人々の命を守られました。寺本さんはその後,結核に苦しむ人々への長期にわたる看取(みと)りを通して,患者が人としての尊厳を保ちながら,安らかに生を終えることができるよう,ターミナルケアを深められ,当時未知のものであったこの医療分野に,終末期看護という確とした概念をもたらされました。また,石本さんは,看護婦が真に専門職として看護を行うことができるよう,看護制度の改革に取り組まれ,さらに20年余にわたる国政への関与の中で,国民の保健医療福祉の向上に貢献され,我が国の看護の歴史に輝かしい足跡を残されました。

ここにお二人の,長年にわたる看護への献身とたゆみない努力に対し,深く敬意を表し,受章をお祝いいたします。

受章されたお二人の貴い豊かな看護の心が,同じ道を歩む人々に受け継がれ,不安や孤独の中で病み苦しむ人々の看護に生かされてまいりますことを,またこの機会に,看護に携わる多くの人々が,皆,体を大切にし,今後ともこの道に力を尽くしてくださることを願い,本日の言葉といたします。