主な式典におけるおことば(平成5年)

皇后陛下のおことば

日本・ラテンアメリカ婦人協会20周年記念祝賀会
平成5年5月17日(月)(東京全日空ホテル)

昭和48年に創立された日本・ラテンアメリカ婦人協会が,創立の目的である相互理解と友好親善のため,たゆまぬ努力を重ねつつ今年20周年を迎えますことを,心よりお喜び申し上げます。本日は祝賀会にお招き頂き,有難うございました。この大きな節目の年にあたり,皆様にお祝いを申し上げられますことを,本当にうれしく存じます。

歴史的に浅からぬ御縁を持ちながらも,地理的には遠くへだたる羅米の国々と日本との間に,常に活々とした,発展的な絆を保つために,皆様方は,それぞれの時と心をかけて,この協会をはぐくみ続けていらして下さいました。個人間で,又は組織を通じて,お互いの文化が紹介される機会も増し,又,毎年この協会の行うチャリティー・バザーの収益が,羅米諸国の福祉に役立てられ,この面においても双方の接点が広げられて来ておりますことを,うれしく,頼もしく思っております。又,日本をお離れになったかつての会員の方々が,帰国の(のち)も日本を温かく記憶にとどめ,それぞれのお国から日本への関心を寄せ続けて下さっておりますことも,見えない力として,この会を力強く支えているのではないかと想像しております。

世界の国々は,その一つ一つが過去という歴史を荷いながら,より望ましい自国の将来を築くため,その時々の国の在り方を模索しつつ,道を歩んでまいりました。この,「それぞれの国のより望ましい将来」が,他国との平和な関係の中で求められているのが,今日,私共の生きている国際社会であると申せると思います。自国を思う時に,他の国々を視野からはずすことのないよう,私共は,それぞれの価値を待つ他の国々を理解し,その文化を尊重し,何よりも,そこにかけがえのない友を持ちたいと思います。

過去20年にわたり,この協会ではぐくまれたお互いの理解と友情が,これからもしっかりと保たれ,発展してまいりますように。そして,国を異にする私共が,互いの国と人々を懐かしみ,それぞれの国と人々の上に,よき事を折り合う,温かく,平和な関係を,末長く続けていくことが出来ますように。

羅米諸国会員の方々の日本滞在が,快く,楽しいのもでありますことを祈り,又,全ての会員の方々の健康と御多幸を願い,この祝賀会によせるお祝いの言葉とさせて頂きます。

平成5年全国赤十字大会
平成5年5月19日(水)(明治神宮会館)

本日,全国赤十字大会に出席し,日ごろ赤十字の活動にたゆみない努力をされている皆さんと親しくお会いできたことを,大変うれしく思います。

赤十字は,国際的な強い(きずな)で結ばれ,人道的事業を通じ,広く世界の人々の福祉を増進し,平和な国際社会を築くために大きな力となっておりますが,日本赤十字社が,皆さんの尽力により,各国赤十字社と互いに手を携えて,立派にその使命を果たしていることを誠に心強く思います。

今なお世界の各地には,災害や戦禍に苦しみ,飢餓や貧困に直面している数多くの人々がおります。これからも,皆さんが互いに力を合わせて,一層力強い活動を,国の内外において進められるよう希望してやみません。

第34回フローレンス・ナイチンゲール記章授与式
平成5年6月23日(水)(東京プリンスホテル)

第34回フローレンス・ナイチンゲール記章授与式に当たり,受章者を始め,看護に携わる大勢の方々にお会いできますことをうれしく思います。

このたび,有田幸子さん,寺島敏子さんが,赤十字国際委員会から,看護婦として最高の名誉であるフローレンス・ナイチンゲール記章を贈られました。ここに,お二人のの永年にわたる,看護業務への献身と,たゆみなく払われた尊い努力に対し,深く敬意を表し,受章をお祝いいたします。

受章されたお二人の,人道への深い思いと,様々な環境の下で積まれた経験が,これからも,広く我が国及び世界の看護の上に生かされてまいりますように。そして,今日の受章者を始めとし,看護に携わる大勢の方々が,皆,体を大切にされ,今後とも,この道に力を尽くして下さることを願い,本日の言葉といたします。