主な式典におけるおことば(平成5年)

天皇陛下のおことば

第126回国会開会式
平成5年1月22日(金)(国会議事堂)

本日,第126回国会の開会式に臨み,全国民を代表する皆さんと一堂に会することは,私の大きな喜びであります。

国会が,永年にわたり,世界の平和と我が国の繁栄のため,たゆみない努力を続けていることを,うれしく思います。

ここに国会が,国権の最高機関として,その使命を十分果たし,国民の信託にこたえることを切に希望します。

国賓 フィリピン大統領閣下及び同令夫人のための宮中晩餐
平成5年3月10日(水)(宮殿)

このたび,フィリピン共和国ラモス大統領閣下並びに令夫人が国賓として我が国を御訪問になりましたことに対し,心から歓迎の意を表します。今夕ここに,大統領閣下御一行をお迎えして宴席をともに出来ますことは喜びに堪えません。

貴国と我が国とは,海を隔てて極めて近い位置にある隣国として,古くから交流が行われてきました。

私は,31年前,皇太子の時,昭和天皇の御名代として,皇太子妃と共に,貴国を訪問いたしました。戦後まだ日の浅い時でありましたが,マカパガル大統領閣下を始め,貴国の多くの人々から温かいおもてなしを受けたことが深く心に残っております。

近年においては,関係者の熱意と不断の努力により,経済,技術協力,文化等のあらゆる分野での交流もとみに活発になり,友好協力関係が年々緊密の度を深めてまいりましたことは誠に喜ばしいことであります。

貴国が,大統領閣下のご指導のもとに経済的諸問題の解決を含む新たな国造りのためたゆまぬ努力を払われていることに対し,私は深く敬意を表します。

閣下は,大統領に御就任以来,特に日比両国関係の一層の強化に配慮されていると伺っております。我が国に深い理解と関心をお寄せになる閣下の御来訪により,今後とも両国間の相互理解と信頼が更に深まり,友好と協力が一層増進するものと確信いたします。

このたびの御滞在は極めて短いものではありますが,少しでも我が国の早春の風情を楽しまれると共に,我が国各界の人々と広く接して頂き,我が国の実情を親しく御見聞になって,御訪日が実り多く快適なものとなりますよう願っております。

ここに杯を挙げて,大統領閣下並びに令夫人の御健勝とフィリピン共和国国民の幸せを祈ります。

国賓 マレーシア国王同妃両陛下のための宮中晩餐
平成5年4月5日(月)(宮殿)

このたび,マレ-シア国王アズラン・シャ-陛下並びに同妃陛下が国賓として我が国を御訪問になりましたことに対し,心から歓迎の意を表します。今宵,両陛下御一行をお迎えして宴席を共にできますことを誠に喜ばしく思います。

一昨年秋,皇后と共に貴国を21年振りに訪問した折には,両陛下を始め貴国官民から心温まる歓迎を受けました。ここに改めて感謝の意を表します。貴国訪問中,貴国民が国王陛下の下に官民一致して国の発展のために努力している様子を目のあたりにし,大変感銘を受けました。

貴国と我が国との関係は,約400年前の御朱印船による交易の時代に遡ります。今日両国の関係は,政治や経済のみならず,科学技術,文化を含む広い分野でとみに緊密化しています。特に,貴国政府による最近の東方政策の下,両国間の人物交流が留学生や技術研修生等に拡がり,両国の友好協力関係の一層の発展のための重要な礎石になっております。私は,貴国と我が国との関係が,関係者の熱意と不断の努力により緊密の度を深めてきたことを喜ばしく思います。

国王陛下は,御即位以来,特に対日関係を重視され,御出身のペラ州のイポ-市と我が国の福岡市の姉妹都市の提携に尽力されるなど両国関係の一層の強化に配慮されていると承っております。我が国に深い理解と関心をお寄せになる国王陛下の御来訪により,両国間の理解と信頼が更に深まり友好と協力が益々増進するものと確信いたします。

両陛下には,短い御滞在ではありますが,春爛漫の各地の風情をお楽しみになると共に,我が国各界の人々と広くお会いになり,御訪日が実り多く快適なものとなりますよう希望致します。

ここに杯を挙げて,マレ-シア国王同妃両陛下の御健康とマレーシア国民の幸せを祈ります。

沖縄県における特別ご挨拶
平成5年4月23日(金)(沖縄平和祈念堂)

即位後,早い機会に,沖縄県を訪れたいという念願がかない,今日から4日間を沖縄県で過ごすことになりました。

到着後,国立戦没者墓苑に詣で,多くの亡くなった人々をしのび,遺族の深い悲しみに思いを致しています。

先の戦争では実に多くの命が失われました。なかでも沖縄県が戦場となり,住民を巻き込む地上戦が行われ,20万の人々が犠牲となったことに対し,言葉に尽くせぬものを感じます。ここに,深く哀悼の意を表したいと思います。

戦後も沖縄の人々の歩んだ道は,厳しいものがあったと察せられます。そのような中で,それぞれの痛みを持ちつつ,郷土の復興に立ち上がり,今日の沖縄を築き上げたことを深くねぎらいたいと思います。

今,世界は,平和を望みつつも,いまだに戦争を過去のものにするに至っておりません。平和を保っていくためには,一人一人の平和への希求とそのために努力を払っていくことを,日々積み重ねていくことが必要と思います。

沖縄県民を含む国民とともに,戦争のために亡くなった多くの人々の死を無にすることなく,常に自国と世界の歴史を理解し,平和を念願し続けていきたいものです。

遺族の皆さん,どうかくれぐれも健康に留意され,元気に過ごされるよう願っています。

第44回全国植樹祭
平成5年4月25日(日)(糸満市字米須・山城(沖縄県))

第44回全国植樹祭が,ここ,糸満市米須・山城地域において開催されるに当たり,全国からの参加者と共に植樹をすることを喜ばしく思います。

沖縄県の島々には,イリオモテヤマネコ,ノグチゲラ,ヤンバルクイナのように世界中でその島にのみ生息する生き物が見られます。島の生態系は人間の営みの影響を受けやすく,世界の各地で島特有の生き物が姿を消していきましたが,沖縄県の島々では,豊かな森林がこれらの生き物を守ってきました。これは,今から250年の昔,蔡温によって,保護,造林に意を用いられるようになって以来,人々が森林を大切にする心を持ち続けてきたからではないかと思われます。

残念なことに,先の戦争でこの森林が大きく破壊されました。多くの尊い命が失われた,ここ糸満市では,森林が戦火によってほとんど消え去りました。戦後,県民の努力により,森林を守り育てる様々な運動が進められていることを誠に心強く感じております。この度の植樹祭は,沖縄の復帰20周年記念事業として位置付けられており,戦争により焦土と化したこの地域において行われることを,非常に意義深いことと思います。

「育てよう 地球の緑 豊かな未来」をテーマとして行われるこの植樹祭が,そのテーマにふさわしく,自然を大切にし,緑を守り育てる気運を更に高め,人類の豊かな未来に向けた地球環境づくりの契機となることを心から希望いたします。

1993年(第9回)日本国際賞授賞式
平成5年4月28日(水)(国立劇場)

第9回日本国際賞の授賞式に当たり,安全・防災分野においてプレス博士,医学における細胞・分子生物技術分野においてマリス博士が,それぞれ受賞されたことを心からお祝いいたします。

プレス博士は,地震や地球内部の構造について先駆的な研究を進められるとともに,自然災害の防止に関する国際協力の推進に大きく貢献されました。また,マリス博士は,遺伝子解析において革新的な技術手法を開発され,その成果は生命科学の発展に様々な影響を与えるものと考えられます。両博士の御研究は,自然災害の予防や疾病の克服を願う世界の人々にとって,極めて大きな意義があるものと思います。ここに両博士の優れた御業績に対し,深く敬意を表します。

世界は,今,様々な課題に直面していますが,科学技術が,それらの課題を克服し,世界のすべての人々に恩恵をもたらすよう,更に発展していくことを望みます。

この授賞式は,今回9回目を迎えましたが,発足以来,理事長として,また,会長として,この賞の発展に努められた横田喜三郎博士のお姿に,この式場で接することができないことは,誠に残念なことであります。ここに,博士の亡くなられたことを心から悼むとともに,博士のこの賞に対する御貢献を讃えたいと思います。

日本国際賞が,世界の科学技術の振興に一層寄与することを願い,式典に寄せる言葉といたします。

都制施行50周年記念式典
平成5年7月1日(木)(東京都庁)

本日,都制施行50周年記念式典が挙行されるに当たり,皆さんと一堂に会することは私の深く喜びとするところであります。

50年前の今日,東京府と東京市は一つになって,新しく東京都としての一歩を踏み出しました。しかし,発足後間もなく,戦火により,大きな被害を受け,9万人を超す尊い人命が失われました。この惨禍から立ち上がり,今日の東京都が築かれましたが,その復興,発展の過程においては,住宅,交通,環境など様々な困難な問題と取り組まなければなりませんでした。ここに,都の発展に力を尽くした先人の労苦をしのび,深く敬意を表したいと思います。

今日,東京は我が国の首都として,また,世界経済の中枢都市として,発展しておりますが,国際化,情報化の進展に伴い,国内的,国際的に,その果たす役割はますます大きくなると思います。同時にまた,巨大都市の抱える様々な課題も少なくありません。

この機会に,皆さんが50年の歴史を振り返り,山々,島々にまで広がる東京都に住むすべての人々が幸せな生活を送れるような社会の建設に,更に励まれるよう,ここに切に希望いたします。

第127回国会開会式
平成5年8月12日(木)(国会議事堂)

本日,第127回国会の開会式に臨み,衆議院議員総選挙による新議員を迎え,国民を代表する皆さんと一堂に会することは,私の大きな喜びであります。

ここに,国会が,当面する内外の諸問題に対処するに当たり,国権の最高機関として,その使命を十分果たし,国民の信託にこたえることを切に希望します。

全国戦没者追悼式
平成5年8月15日(日)(日本武道館)

本日,「戦没者を追悼し平和を祈念する日」に当たり,ここに,全国戦没者追悼式に臨み,さきの大戦において,尊い命を失った数多くの人々やその遺族を思い,深い悲しみをまた新たにいたします。

終戦以来すでに48年,国民のたゆみない努力により,我が国の平和と繁栄が築きあげられましたが,苦難にみちた往時をしのぶとき,感慨はつきることがありません。

ここに,全国民とともに,戦陣に散り,戦禍にたおれた人々を心から追悼し,世界の平和と我が国の一層の発展を祈ります。

第128回国会開会式
平成5年9月21日(火)(国会議事堂)

本日,第128回国会の開会式に臨み,全国民を代表する皆さんと一堂に会することは,私の大きな喜びであります。

国会が,永年にわたり,国民生活の向上と世界平和の実現のため,たゆみない努力を続けていることを,うれしく思います。

ここに,国会が,国権の最高機関として,その使命を十分果たし,国民の信託にこたえることを切に希望します。

国賓 ロシア大統領閣下及び同令夫人のための宮中晩餐
平成5年10月12日(火)(宮殿)

このたび,ロシア連邦大統領エリツィン閣下が国賓として令夫人とともに我が国を御訪問になりましたことに対し,心から歓迎の意を表します。去る7月の主要先進国首脳会議の機会に続いて,今夕,再び大統領閣下並びに令夫人をお迎えし,宴席をともにできますことを誠に喜ばしく思います。

貴国は,大統領閣下の御指導のもと,自由で民主的な国家の建設に取り組んでおられます。貴国における改革の努力は,貴国のならず世界にも大きな変化をもたらし,国際社会が,対立から協調へと大きな一歩を踏み出したことは,世界の平和のために大変喜ばしいことであります。

ロシアと我が国の間には,長い交流の歴史があり,時には不幸なこともありましたが,今日,重要な隣国である貴国との間に真の相互理解と信頼に基づく友好関係を築くことは,我が国の国民が強く念願するところであります。法と正義の理念の下に我が国との関係を飛躍的に発展させたいとの所信を表明しておられる大統領閣下の御来訪が,日露両国間に真の友好関係を確立するための歴史的な契機となることを私は日露両国民のために希望するものであります。

大統領閣下には,短い御滞在ではありますが,各界の人々との会談を通じて,我が国に対する理解を一層深められ,今回の御訪日が両国関係の発展にとり実り多いものになりますよう切に希望致します。

ここに杯を挙げて,大統領閣下並びに令夫人の御健勝とロシア連邦の繁栄,貴国国民の幸せを祈ります。

国賓 ポルトガル大統領閣下及び同令夫人のための宮中晩餐
平成5年10月19日(火)(宮殿)

日本ポルトガル友好450周年記念の年に当たり,ポルトガル共和国ソアレス大統領閣下が令夫人とともに,国賓として我が国を御訪問になりましたことに対し,心から歓迎の意を表します。今宵,大統領御夫妻をお招きし,宴席をともにできますことは喜びに堪えません。

私は,8年前,皇太子の時,昭和天皇の御名代としてスペインとアイルランドへの訪問の途次,皇太子妃と共に貴国を訪れましたが,非公式な立寄りにもかかわらず,当時のエアネス大統領閣下,ソアレス首相閣下から温かいおもてなしをいただきました。その時首相として午餐を催していただきましたところは1584年天正少年使節も訪れたシントラ王宮でありました。

貴国の人が我が国の土を初めて踏みましたのは今から450年前のことになります。これを契機に,欧州の文明が我が国に伝えられるようになりました。鉄砲が我が国で作られるようになったのはこの貴国民の種子島漂着によってでありますが,それに続く宣教師などの来日により,キリスト教や医学,天文学を始めとして様々な欧州の文物がもたらされ,我が国民は世界が丸い地球上にあることを知るようになりました。この貴国民との交流は100年足らずしか続きませんでしたが,我が国がその後にたどった道を振り返る時,大きな意義を有するものと思えます。

日本ポルトガル友好450周年に当たっては,貴国と我が国とで様々な記念行事が催され,記念行事実行委員会名誉総裁の高円宮,同妃の貴国訪問を始めとして,多くの交流が行われております。この機会に450年の歴史を顧み,先人の足跡に思いをいたしたいと思います。

大統領閣下には,即位の礼にもお出で下さり,我が国との友好関係の増進に心を配っておいでになりますが,今回の御訪問が,両国間の理解と信頼を更に深め,友好と協力が一層進むよう願っております。

大統領閣下には政府や各界の人々とお会いになる他,貴国と緑の深い徳島,大阪,大分,長崎を御訪問になり,さらに450年前,貴国の人が初めて我が国の土を踏んだ種子島にもいらっしゃるときいております。親しく我が国の実情を御見聞になって,御訪日が実り多く快適なものとなりますよう希望いたします。

ここに杯を挙げて,大統領閣下並びに令夫人の御健勝とポルトガル共和国国民の幸せを祈ります。

第48回国民体育大会秋季大会開会式
平成5年10月24日(日)(鳴門総合運動公園陸上競技場(徳島県))

第48回国民体育大会秋季大会が東四国国体として開催されるに当たり,全国各地から参加された大勢の選手役員と共に,開会式に臨むことをうれしく思います。

国民体育大会が,長年にわたり,我が国のスポーツの普及と振興に果してきた役割には極めて大きなものがあり,ここに,大会関係者のたゆみない努力を深く多とするものであります。

美しい自然に恵まれたここ東四国の地に集まられた皆さんは,大会スローガンの「 出会い 競い そして未来へ 」にふさわしく,日ごろ鍛えた力と技を十分に発揮するとともに,この出会いを通じて各地の選手と親しみ,また徳島・香川両県民との交流を深められるよう願っております。

徳島・香川両県民の協力により,この大会が,実り多いものとなり,参加した選手のさわやかな思い出となることを期待し,開会式に寄せる言葉といたします。

第13回全国豊かな海づくり大会
平成5年11月7日(日)(愛媛県伊予市)

第13回全国豊かな海づくり大会が,瀬戸内海を望むここ愛媛県伊予市において,関係者多数の参加を得て開催されることを,誠に喜ばしく思います。

四方を海に囲まれ,豊かな海の幸に恵まれている我が国の人々は海に親しみ,海を利用し,海の恵みを享受してきました。我が国にとってこの大切な海の環境を保全し,海の資源を豊かにすることは,極めて重要な課題であります。

瀬戸内海は内海であり,汚染されやすい環境にありますが,以前よりは改善されていると聞いております。このことは瀬戸内海を囲む多くの人々の協力に負うものであり,その成果を心強く思います。

愛媛県はぶり類やたい類,また真珠や真珠母貝の養殖では全国一であり,これから放流する県の魚まだいやひらめなどの栽培漁業も積極的に進められていると聞いております。栽培漁業はもちろんのこと,養殖業においても海の環境を良好に保つことは大事なことであります。今後とも,海の環境に配慮し,持続性のある水産業が営めるよう期待しております。

「夢・生命(いのち)きらきら輝く海づくり」をテーマに開催されるこの大会を契機として,海に対する関心が更に深まり,多くの人々が豊かな海を目指して一層協力することを願い,大会に寄せる言葉といたします。

自治体消防45周年記念式典
平成5年11月18日(木)(東京ドーム)

自治体消防が発足して45年,この記念大会に臨み,皆さんと共に一堂に会することを誠に喜ばしく思います。

自治体消防は,発足以来今日まで,災害から国民の生命財産を守るという社会の福祉において極めて重要な役割を果たしてきました。この消防関係者の日夜たゆまぬ努力に対し,深く感謝の気持ちを表したく思います。それとともに,厳しい任務の遂行の中,不幸にも命を失われた人々の遺族に対し,深い哀悼の意を表したいと思います。

我が国の社会経済の進展に伴い,人口の高齢化や建築物の高層化など消防や救急活動の困難はますます増していき,関係者の御苦労が察せられますが,この大会を契機に,引き続き設備や技術の向上などに努め,関係者が一致協力して,消防の使命に心を致し,安全で住みよい社会を築くよう願ってやみません。

戦傷病者特別援護法制定30周年及び日本傷痍軍人会創立40周年記念式典
平成5年11月26日(金)(日本武道館)

本日,戦傷病者特別援護法制定30周年並びに日本傷痍軍人会創立40周年記念式典が挙行され,全国から集まられた皆さんと一堂に会することを誠に喜ばしく思います。

先の大戦において,戦火に傷つき,病におかされた戦傷病者の御苦労には計り知れないものがあったことと心が痛みます。皆さんは,戦中戦後の厳しい状況の下,家族と共に幾多の苦難を乗り越え,我が国の復興と繁栄に尽くしてこられました。ここに,心からのねぎらいを表するとともに,戦傷病者の援護にたゆまぬ努力を続けてこられた関係者の労を深く多とし,感謝の意を表するものであります。

これからも,更に戦傷病者の援護の実があがるよう,関係者の一層の尽力を期待するとともに,皆さん一人一人が,体を大切にし,共に励まし助け合い,今後とも,充実した元気な人生を過ごされるよう念願いたします。

第9回国際生物学賞授賞式
平成5年11月29日(月)(日本学士院会館)

エドワード・オズボーン・ウィルソン博士が第9回国際生物学賞を受賞されたことを心からお祝いいたします。

博士は,永年にわたって,アリという社会性昆虫に関する生態学,生物地理学,行動学の面からの研究に従事され,集団生活における個々のアリの役割と体の大きさや発育段階との関係,フェロモンによるコミュニケーションなどについての多くの新知見を見いだし,アリの社会システムの成り立ちに関するその後の研究動向に大きな影響を与えられました。

また,博士は,形質置換などの進化生物学上の概念や島の生物地理学の理論を作られ,動物の社会行動の理解には,生態学,行動学,集団遺伝学の統合が必要であることを説き,社会生物学を提唱されました。

このような博士の御研究が生態学のみならず,生物学全般,さらには広く関連の学問の発展に多大な貢献をしたことに対し,深く敬意を表するものであります。

博士の御研究が一層豊かに発展していくことを願い,お祝いの言葉といたします。