主な式典におけるおことば(平成3年)

天皇陛下のおことば

第120回国会開会式
平成3年1月25日(金)(国会議事堂)

本日,第120回国会の開会式に臨み,全国民を代表する皆さんと一堂に会することは,私の大きな喜びであります。

国会が,永年にわたり,世界の平和と我が国の繁栄のため,たゆみない努力を続けていることを,うれしく思います。

ここに,国会が,当面する諸問題を審議するに当たり,国権の最高機関として,その使命を十分果たし,国民の信託にこたえることを切に希望します。

立太子の礼 立太子宣明の儀
平成3年2月23日(土)(宮殿)

本日ここに,立太子宣明の儀を行い,皇室典範の定めるところにより徳仁親王が皇太子であることを,広く内外に宣明します。

国賓 ソビエト連邦大統領閣下及び同令夫人のための宮中晩餐
平成3年4月16日(火)(宮殿)

この度,ゴルバチョフ・ソビエト社会主義共和国連邦大統領閣下が令夫人とともに我が国を御訪問になったことに対し,心から歓迎の意を表します。大統領閣下の御来訪は貴国元首の初めての公式御来日として,画期的なことであり,両国の友好増進のため,極めて意義深いことであります。ここに,大統領閣下並びに令夫人をお迎えして宴席を共にできることを誠に喜ばしく思います。

貴国と我が国とは,長い交流の歴史を有する隣国であります。特に,我が国が鎖国を脱し,近代国際社会に参加してから今日まで貴国は我が国にとり一貫して最も重要な国の一つであり,またこの間に,両国の関係は通商,文化等広範な分野に亘って幅広い豊かなものとなって来ました。

この中にあって,両国の間には苦しみや悲しみの伴う時期もありましたが,今日,日ソ両国の各層の間に相互の理解と信頼を深め,新たな隣国関係を築こうとする熱意が高まっていることは喜ばしい限りであります。

ソ連邦の初代大統領であり,貴国において広範にわたる改革を指導されるとともに,国際社会において世界の平和と安定のために種々の貢献をされてきた大統領閣下の御来訪が両国の真に安定した友好関係を確立するための歴史的な契機となることを願ってやみません。

今日,人類は,いかにして戦争のない平和な世界に到達すべきかにつき,引き続き苦難に満ちた努力を続けています。この時にあたり,日ソ両国の国民がこれまで以上に幅広くかつ厚い信頼関係を築きあげ,相携えて世界の平和と繁栄,諸国民の幸福のために貢献することを切に希望するものであります。

大統領閣下の御日程には,政府や各界要人との会談に加え,地方旅行や我が国の伝統文化に接していだく機会もあると聞いております。折しも今は春の盛りであり,ものみな新しい生命の息吹がみなぎる美しい季節であります。大統領閣下並びに令夫人の御訪日が実り多く,また快適なものとなりますよう切望いたします。

ここに杯を挙げて,大統領閣下並びに令夫人の御健康と御多幸並びにソビエト社会主義連邦の繁栄と国民の幸せを祈ります。

1991年(第7回)日本国際賞授賞式
平成3年4月25日(木)(国立劇場)

ただ今,応用数学分野でリオンス博士,医用画像技術分野でワイルド博士が,それぞれ日本国際賞を受賞されたことを心からお祝いいたします。

リオンス博士は,分布定数系の解析及び制御に関して先駆的かつ独創的な研究成果を挙げられ,また,応用解析学を確立して現代の応用科学,工学の広範な要請にこたえ得るものに発展させられました。

ワイルド博士は,超音波の医学的な応用に関する先見的な研究を進められ,超音波画像医学の開発を始め,その研究成果は,臨床医学分野で広く利用されています。

応用数学あるいは医用画像技術というような,科学を実際的な問題に応用する技術の進歩は,産業活動の発展,医療水準の向上などを通じて人類社会に大きく寄与するものであり,ここに,両博士の優れた御業績に対し,深く敬意を表する次第であります。

今日,科学技術は,多くの人々の協力により,目覚ましく進んでおります。この進歩が世界のすべての人々に幸せをもたらすよう私どもは努めていかなければならないと思います。

第7回目の授賞式を迎えた日本国際賞が,世界の科学技術の振興に一層の貢献をすることを願い,お祝いの言葉といたします。

東京農業大学創立100周年記念式典
平成3年5月18日(土)(東京プリンスホテル)

東京農業大学が100周年を迎えるに当たり,皆さんと共に,この記念式典に臨むことを誠に喜ばしく思います。

東京農業大学は明治24年育英黌農業科として設立されて以来,農業及び農業関連産業の研究,教育を通して,農業の発展や国民生活の向上に尽くしてきました。ここに100年の歴史を振り返り,実学を教育理念においた創立者の榎本武揚育英黌管理長や東京農業大学の横井時敬初代学長を始め,先人の識見,努力に対し,深く敬意を表します。

大学は今日の社会の要請にこたえるとともに,未来を目指した教育,研究の場として重大な使命を担っています。国際社会の一員としての役割が,我が国にとって極めて重要になっている現在,この大学から,国内はもとより,広く世界の環境及び食料にかかわる各分野に貢献する人々が,数多く輩出することを願っております。

創立100周年を迎えた東京農業大学が,より良い未来を目指し,過去の実績を更に発展させていくことを期待し,お祝いの言葉といたします。

第42回全国植樹祭
平成3年5月26日(日)(府民ふれあいの森(京都府))

第42回全国植樹祭に臨み,ここ「府民ふれあいの森」において皆さんと共に植樹を行うことを誠に喜ばしく思います。

森林は古くから,木材等の資源の供給はもとより,水源の涵養,災害の防止,生活環境の保全に重要な役割を果たしてきました。近年は,世界的な規模で森林の荒廃が問題となっており,世界の,また,それぞれの地域の環境を守る上に,森林の保全と緑化の推進の必要性が,強く認識されています。

幸い,我が国は,緑の美しい自然に恵まれていますが,これは,豊かな水と先人の努力のたまものであり,この緑を更に守り育てていくため,広く植樹を推進していくことが大切であると思います。

「緑でうめたい 地球の未来」を主題として行われるこの植樹祭が人々の緑を慈しむ心を育て,未来に向かって,安らぎのある国土を築く契機となるよう願ってやみません。

恩賜財団済生会創立80周年記念式典
平成3年5月30日(木)(明治神宮会館)

済生会が発足して80年,本日,皆さんと共に,その記念式典に臨むことは,誠に喜ばしいことであります。

済生会は,明治天皇の「施薬救療,以テ済生ノ道ヲ弘メムトス」の勅語を体して明治44年創立されました。以来今日まで,済生会がたゆみない努力により,地域社会における医療と福祉の向上のため多大の貢献をしてきたことに対し,ここに深く敬意を表したいと思います。

近年,国民生活は大きく改善されてきておりますが,今後,急速に高齢化が進む社会において,あらゆる地域の人々が高度な医療を受け,健康な生活を送ることができるようにするためには,国や地方自治体の努力はもとより,関係各方面が協力して,保健,医療,福祉の面における対策を総合的に推進することが,極めて重要であると思われます。

この創立80周年を契機として,済生会が創立の精神に思いを致すとともに,国際的視野に立ち,新たな時代の要請にこたえて,その使命を果たされることを切に希望し,お祝いの言葉といたします。

第121回国会開会式
平成3年8月5日(月)(国会議事堂)

本日,第121回国会の開会式に臨み,全国民を代表する皆さんと一堂に会することは,私の大きな喜びであります。

ここに,国会が,当面する内外の諸問題に対処するに当たり,国権の最高機関として,その使命を十分果たし,国民の信託にこたえることを切に希望します。

全国戦没者追悼式
平成3年8月15日(木)(日本武道館)

本日,「戦没者を追悼し平和を祈念する日」に当たり,ここに,全国戦没者追悼式に臨み,さきの大戦において,尊い命を失った数多くの人々やその遺族を思い,深い悲しみを新たにいたします。

顧みれば,終戦以来すでに46年,国民のたゆみない努力により築きあげられた平和と繁栄の中にあって,苦難にみちた往時をしのぶとき,深い感慨を禁じ得ません。

ここに,全国民とともに,戦陣に散り,戦禍にたおれた人々を心から追悼し,世界の平和と我が国の一層の発展を祈ります。

第3回世界陸上競技選手権大会開会式
平成3年8月23日(金)(国立霞ヶ丘競技場)

第3回世界陸上競技選手権大会の開催を祝い,ここに開会を宣言します。

第46回国民体育大会秋季大会開会式
平成3年10月12日(土)(西部緑地公園陸上競技場(石川県))

本日,第46回国民体育大会秋季大会の開会式が,全国各地から選手を迎え,ここ石川県西部緑地公園陸上競技場において開かれることを誠に喜ばしく思います。

国民体育大会が,長年,全国にわたって,スポーツの振興と普及に果たしてきた役割には,極めて大きなものがあり,ここに,関係者のたゆみない努力を深く多とするものであります。

選手の皆さんには,日ごろ鍛えた力と技を十分に発揮されるとともに,競技を通じて,各地の選手と親しみ,石川県民との交流を深められるよう願っています。

美しい自然と古い歴史に彩られたこの地において催される大会が,県民の熱意ある協力の下,「すばらしき君の記録にわが拍手」のスローガンにふさわしく,実り多いものとなり,選手一人一人に豊かな思い出をもたらすことを期待し,大会に寄せる言葉といたします。

創立40周年記念全日本精神薄弱者育成会全国大会
平成3年10月18日(金)(渋谷公会堂)

全日本精神薄弱者育成会が創立40周年を迎え,その記念式典が行われますことを,誠に喜ばしく思います。知的障害を持つ子どもの母親たちの呼び掛けによって,手をつなぐ親の会として発足して以来今日まで,様々な困難を乗り越えて会の発展に尽くしてきた人々の労苦は計り知れないものがあったことと察せられます。ここに,先ほど表彰を受けられた方々を始め,関係者の御努力に対し,深く敬意を表したいと思います。

私が初めて皆さんとお会いしたのは創立30周年の記念大会のときで,完全参加と平等をうたった国際障害者年の年でありました。それから10年,障害者の福祉については人々の関心が高まり,多くの面で改善されてきていますが,今後更に充実されなければならないところも多いことと思われます。個人個人の人格が尊重され,地域の人々と共に明るく生活できる社会が実現されるよう切に望むものであります。

今後とも,多くの人々の理解と協力により,精神薄弱者の福祉が一層推進されることを願い,式典に寄せる言葉といたします。

国賓 オランダ女王陛下のための宮中晩餐
平成3年10月22日(火)(宮殿)

このたび,オランダ国ベアトリックス女王陛下には,ウィレム・アレキサンダ-皇太子殿下とともに,我が国を御訪問になりました。300年をはるかに越える日蘭間の交流の歴史の中で,初めて貴国から女王陛下を我が国にお迎えできますことは,誠に喜ばしく,心から歓迎の意を表したいと思います。また,私の即位の礼においでになりました皇太子殿下を再びお迎えすることも,私の深く喜びとするところであります。

貴国は,我が国にとって,欧州諸国の中で最も長く修好を維持してきた国であります。日蘭間の歴史的友好関係は,1600年,オランダ船「デ・リ-フデ号」が大分県臼杵湾に漂着し,続いて1609年,貴国に対し我が国との貿易を許可する朱印状が交付されたときに遡ります。その後,200年以上にわたる我が国の鎖国時代においても,日蘭両国は,我が国が西洋の世界に向けて開いていた唯一の窓であった長崎の出島を通じ,貿易を行ってきました。また,我が国は,出島を通じて貴国がもたらした西洋文明の知識を学ぶことができました。今から200年以上の昔,オランダ語の解剖学書を訳し,出版した杉田玄白が自分の思い出などを書き記した『蘭学事始』を読みますと,貴国の進んだ科学に対する我が国の人々の憧憬と,それを学び,それを人々のために役立てようとする熱意に打たれます。開国後の我が国の発展を考えるとき,如何に貴国との交流によって我が国が恩恵を受けたかに思いを致すのであります。さらに,開国後も,日本が招いた貴国の技師等は治水事業等の分野で大きな業績を残されました。このように,貴国は日本の近代化の過程に極めて密接に関与してこられました。

このような友好関係が第二次世界大戦によって損なわれたことは,誠に不幸なことでありました。戦後日本は,このような戦争の惨禍を再び繰り返すことのないよう,平和国家として生きることを決意し,世界の平和と繁栄のために積極的に協力しつつ,一貫して貴国を始めとする世界各国との間で新たな友好関係を築くよう努力してきました。いまや日蘭両国間では,幅広い分野で友好と協力の関係が見られるようになりましたことは,喜ばしい限りであります。私は,今後とも両国民がますます相互理解を深め,力を合わせ,将来へ向けて両国関係の一層の発展を図っていくことを切に希望いたします。

女王陛下には,28年前,国賓として我が国を御訪問になりましたが,当時まだ20代であった女王陛下と私は,この時初めて親しくお話をする機会を持ちました。以後,女王陛下には,しばしば,我が国を御訪問になっており,我が国に対する深い理解をお持ちになっていらっしゃいます。私共も,貴国で御即位前の女王陛下並びにクラウス殿下から手厚いおもてなしをいただいたことが懐かしく思い起こされます。厳しい状況の中で,御即位前より我が国との友好関係の増進をお心にかけていらっしゃった女王陛下と今夕宴席を共にすることができますことを誠に嬉しく思います。

ここに杯を挙げて,女王陛下の御多幸並びにオランダ王国の繁栄と国民の幸せを祈ります。

第11回全国豊かな海づくり大会
平成3年10月27日(日)(愛知県南知多町)

第11回全国豊かな海づくり大会が,伊勢湾に面するここ愛知県南知多町において,関係者多数を迎え,開催されることを,誠に喜ばしく思います。

我が国は,四方を海に囲まれ,人々は古くから海と親しみ,豊かな海の幸を享受してきました。しかし,近年その海が汚染され,特に,汚染がひどくなりやすい湾内では,水産資源の減少に加えて,食用に適さないものが生じたところもあります。このような状況は,現在,地域により,一時よりかなり改善されてきているとのことでありますが,それには海の環境に関心を持ち,海を良好な状態に保とうとする多くの人々の不断の努力が実ってきているものと思います。

愛知県においては,栽培漁業が積極的に進められ,県の魚であるクルマエビやあさり類は全国一の生産ときいております。今後とも海の環境保全のための様々な努力がなされ,栽培漁業に一層の成果が上がるよう期待しています。

「夢拓き未来へ贈る海づくり」をテーマとするこの大会を契機として,より多くの人々が豊かな海づくりに対する関心を深め,海の恵みと美しさを将来にわたって久しく享受できるよう関係者が協力することを願い,大会に寄せる言葉といたします。

第1回国際周産期学会開会式
平成3年11月5日(火)(京王プラザホテル)

第1回国際周産期学会が世界の各地から多数の参加者を迎え,我が国において催されることは,誠に喜ばしいことであります。この初めての国際学会が開かれるまでには,多くの先達の努力があったことと,ここに深く敬意を表したいと思います。

現在,学問の世界は細分化され,それぞれの分野で奥深い研究が行われていますが,それとともに,様々な分野が学際的に協力し,新たな研究が進められています。周産期学も,産科と小児科を統合して,生命をはぐくみ育てる母体と胎児,さらに,出産を境とする母子の健康という連続した経過を一貫して医療の対象にして成立したものであり,それぞれの学問領域を越えて,学際的協力が必要であります。近年の周産期学の進歩は目覚ましく,高度の技術を持って医療が行われるようになりました。しかし,世界のあらゆる人々がこの医療の恩恵に浴するようになるためには,今後,様々な努力がなされなければなりません。このようなことを考えるとき,周産期学に携わる世界の人々がここに集い,広い視野に立って,新しい知識の交流を図ることは,大変意義深いことと思います。

生まれいずる生命を核として,人の命の尊重と人々への愛に基づいて確立されたこの国際学会が多くの成果を生み,人類の福祉に貢献するものとなることを期待し,開会式に寄せる言葉といたします。

第122回国会開会式
平成3年11月8日(金)(国会議事堂)

本日,第122回国会の開会式に臨み,全国民を代表する皆さんと一堂に会することは,私の大きな喜びであります。

ここに,国会が,国権の最高機関として,当面する内外の課題に対処し,国民生活の安定向上,世界の平和と繁栄のため,その使命を十分果たし,国民の信託にこたえることを切に希望します。

第7回国際生物学賞授賞式
平成3年11月25日(月)(日本学士院会館)

ただ今,マーシャル・デビッドソン・ハッチ博士が第7回国際生物学賞を受賞されたことを心からお祝いいたします。

博士は,永年にわたって,植物の持つ最も基本的な機能である光合成の炭酸固定機構の研究に従事され,多くの新事実を見いだされました。特に,サトウキビを用いた綿密な実験によるC4ジカルボン酸回路の発見は,光合成の新機構を明快に示したもので,この発見により,それに続く様々な研究が進められ,基礎生物学のみならず,農学分野にも大きな影響を与えていると聞いております。

博士が現在このように展開している研究の基を築かれ,以後その分野の中心になって研究を進められていることに対し,深く敬意を表するものであります。

博士の御研究が更に豊かに発展していくことを願い,お祝いの言葉といたします。

計量制度100年記念式典
平成3年11月28日(木)(ホテルニューオータニ)

本日,計量制度100年記念式典に臨み,皆さんと共に,我が国における計量制度の発展を祝うことを,誠に喜ばしく思います。

我が国に度量衡法が制定されて以来100年,本制度は,学術の振興,産業経済の発展,国民生活の向上に大きな役割を果たしてきました。

先日,度量衡法制定当時からの原器が保管されているつくば市の計量研究所を訪れましたが,そこでは精密な計測標準や計測技術に関する研究がたゆみなく行われていました。現在の著しい科学技術の進歩は計測標準や計測技術の精密さが基盤となっており,このような研究の重要性を感じるとともに,その成果を基にして確立され,人々の様々な活動の中で用いられている計量制度の意義に思いを深くしました。ここに,今日表彰を受けられた方々を始めとする関係者の長年にわたる努力に対し,深く敬意を表したいと思います。

この記念の年に当たり,先人の労苦をしのび,計量制度の一層の発展を願って,私のあいさつといたします。

博物館法制定40周年記念式典
平成3年12月9日(月)(国立教育会館虎ノ門ホール)

博物館法制定40周年を迎え,本日,その記念式典が行われることを心からお祝いいたします。昭和26年,博物館の健全な発達を図り,国民の教育,学術及び文化の発展に寄与することを目的として,博物館法が制定されました。この法律には博物館が資料を収集し,保管し,展示するとともに,資料に関する調査研究をする施設であることがうたわれています。この主旨に沿って,博物館法制定以来,多くの博物館が各地に設立され,その内容も充実してきたことは喜ばしいことであり,ここに表彰を受けられた方々を始め,関係者の尽力に対し,深く敬意を表します。

近年,精神的,文化的な豊かさを求め,あるいは新しい知識,技術の習得に向けて,人々の学習意欲の高まりが見られます。そのため,これにこたえる社会教育施設として,博物館の活動には大きな期待が寄せられています。

地方訪問の折,博物館や美術館を訪れる機会がありますが,内容が充実し,展示にも様々な配慮がなされていることに関係者の努力の跡を感じております。博物館の活動によって,それぞれの地域の歴史や文化,自然に対する理解が深まることは,人々が長年かけてつくり出した文化や,人々が共に生きてきた自然を尊重する心を養い,我が国のそれぞれの地域がその特性に応じて発展していくためにも意義深いことと思われます。

博物館法制定40周年を契機に,法の精神を顧み,博物館が国民の多様な要請に的確に対応しつつ,幅広い年齢層の利用者に親しまれる施設として発展するとともに,博物館が互いに協力することによって,一層の成果が収められていくことを願い,式典に寄せる言葉といたします。