天皇陛下お誕生日に際し(平成4年)

天皇陛下の記者会見

会見年月日:平成4年12月21日

会見場所:赤坂御所

記者会見をなさる天皇陛下
記者会見をなさる天皇陛下
(写真:宮内庁)

宮内記者会代表質問

問1 59回目のお誕生日を迎えるに当たってのご感想をお聞かせください。この1年間で最も印象に残ったこと,特に来年に期待されることはございますでしょうか。また,最近のご体調はいかがでしょうか。
天皇陛下

即位の年が55でしたから本当に早く年月が経ったと感じます。印象に残るものとしては中国の訪問が挙げられます。訪問した時に親しく迎えてくれた人々のことが思い起こされますが,その人々を通して,国境を越えて人々に共通する心を感じました。今年も局地的戦争が各地で行われ,多くの犠牲者が出ていますが,このことを考える時,世界の人々が共通する面に目を向けて協力し合い,異なる面についてお互いに立場を尊重して理解を深め合うことが,今後人類が平和な世界を築く上に極めて大切なことと思います。また,アルベールビル・オリンピックやバルセロナ・オリンピックでの日本の選手の活躍も印象深いものでした。

今年は自然災害の非常に少ない年で,自然災害による犠牲者の最も少ない年になるのではないかと思っています。ただ雲仙・普賢岳の噴火は依然として続いており,長い避難生活の苦労は計りしれないものと察しています。噴火が早く収まるよう願っています。来年が国民にとってもまた世界の人々にとってもよい年であるよう願っています。体調は良いように思います。

問2 日本新聞協会の『皇太子妃報道に関する申し合わせ』が来年2月1日,ほぼ1年の期間で終了いたしますが,どのようにお考えでしょうか。皇太子さまは来年33歳となり,陛下が結婚された25歳を大きく越えますが,ご結婚の見通しはいかがでしょうか。
天皇陛下

報道関係者の自主的申し合わせがなされたことに,深く感謝しています。かつては何人かの人が取材によって日常の生活が出来ないようなことがあり,心苦しく思っていましたが,この申し合わせによってそのようなことがなくなりました。結婚の見通しについてはお話することは控えますが,静かな環境が保たれるよう願っています。

問3 来年春には,外国からの賓客などももてなす施設も備えた吹上新御所が完成いたします。秋の引っ越しの後,御所の使い方や両陛下のライフスタイルはどのように変わるでしょうか。長く暮らされた赤坂御所の思い出も併せてお聞かせください。
天皇陛下

公式の行事は宮殿で行われ,非公式の行事は吹上新御所で行われることになります。したがって,公的な生活の面では赤坂御所が吹上御所に代わるというわけであまり違わないのではないかと思います。例えば国公賓や公式実務訪問の午餐や晩餐は宮殿で行われますが,非公式の訪問の場合には吹上御所が使われます。今年の秋,昨年訪問したインドネシアのスハルト大統領ご夫妻が令嬢と共に日本を非公式にご訪問なさいましたが,そのように非公式にご訪問なさった時,また,ベルギーの国王王妃両陛下が韓国訪問の途次,日本にお立ち寄りになった時,それぞれ赤坂御所で昼食を共にしましたが,このような場合は,これからは吹上新御所が使われることになると思います。

赤坂御所には30年以上も住んでいましたから,移る時には,様々なことが思い出され,感慨深いものがあると思います。

問4 来年4月には沖縄で植樹祭があります。天皇として初めての沖縄訪問に当たってのお気持ちと抱負をお聞かせください。
天皇陛下

植樹祭の機会に沖縄県を訪問することができることをうれしく思っています。沖縄県は前の戦争で一般の人々を巻込んだ地上戦が行われた唯一のところであり,初めて沖縄県を訪問した時,当時の知事から沖縄島では三人に一人,伊江島では二人に一人の人が,島民がなくなったということを聞いたことが忘れられません。肉親や身近な人々をなくした人々の悲しみを思う時本当に心が痛みます。訪問に当たってはそのことを念頭に置いて,訪問するつもりです。

問5 中国訪問が終わり,韓国訪問が今後の課題として残りましたが,どのようにお考えでしょうか。政府は1年間に2回程度の外国訪問を希望していると言われますが,回数を含め,平成の皇室外交のあり方について陛下のお考えをお聞かせください。
天皇陛下

韓国も含め,どの国を,いつ,訪問することは,政府が決めることですが,そのような機会になれば,訪問国の人々との相互理解を深め,また,友好関係の増進に私の立場から努めたいと思っております。

問6 来年,紀宮様は24歳になり,両陛下が結婚された年頃に近づきますが,ご結婚の見通しはいかがでしょうか。
天皇陛下

結婚の時期については,個人個人によってかなり違っています。私が結婚した年頃では皇太子にはまだ結婚したい気持ちは見られませんでした。結婚の問題は時期よりは気持ちが大切だと思います。紀宮の場合にも現在のところ自分から結婚したいという気持ちにはなっていないように見受けられます。しかし,今後この問題について記者会見でいちいちお話することは差し控えたいと思います。

問7 秋篠宮家の眞子さまが1歳になりましたが,祖父の目から見て,成長の様子はいかがでしょうか。二番目の孫として,男の子が欲しいと思われることはありますでしょうか。
天皇陛下

両親がかわいがって育てており,よく成長しているように思います。二番目の孫としてどちらが欲しいかということは考えたことありません。どちらでもよいと思います。

問8 山形国体での発煙筒事件以来,一時期ソフトな印象になった皇室警備がまた厳重になっていますけれども,どのように思われますか。
天皇陛下

警備は,社会生活に迷惑を及ぼさないような形で行われることが望ましく,警察もその認識に立って,その時々の状況に応じ工夫や配慮をしていることとご苦労に思っています。

関連質問

問1 来年,吹上新御所に移るという機会をとらえて,何か新しく始めてみたいこと,チャレンジしてみたいようなことがございますか。
天皇陛下

特に新しくチャレンジしたいということはありません。また,来年の大部分は,この赤坂御所で過ごすことになると思います。

問2 皇太子殿下のお妃の関連ですが,陛下も時々殿下とご一家で食事をされたりすると思うんですが,そのような機会に,皇太子殿下に結婚について,陛下が直接,そのお考えなりアドバイスなりをされたことがございますか。
天皇陛下

先ほども,私が結婚した年の頃には,結婚したい気持ちが見られなかったという話をしたわけですけれども,そういう話はその時もしていたわけです。折々にそういう話をすることはありました。

記者

現在は,そういう気持ちは強いのですか。

天皇陛下

そういうことをいちいちお話するというのは,差し控えたいと思いますけれども,当時とは違ってきたということはお話できると思います。

問3 陛下,先ほどおっしゃられましたが,即位されてから,もうかなり長い時間が経ちます。ご即位直後には,マスコミなどで平成流というようなことが言われましたけれども,ご自身でお考えになって,ご自分の時代といいますか,ご自分の皇室像みたいなもの,何かこう,どんなふうにイメージされておられるか,今,その4年ほど過ごして改めて伺いたいのですが。
天皇陛下

今までやってきたことを見ていただければ分かるのではないかと思います。しかし,こういうものは常に自分を省みながら,また国民の期待しているものを念頭に置きながら常によりよいものを求めていくこと,よりよい在り方を求めていくということが必要だと思います。ですから,今後とも常にそのような方法で努めていきたいと思っています。

問4 外国からのお客様がみえて皇居でご会見をされるわけですが,その時に環境問題について,しばしば話題にされているような気がするのですが,何か特段のお考えがあってのことなのですか。
天皇陛下

やはり環境というものは,今一番重要な問題ではないかと思います。人類の幸福というものを考える場合に,気持ちよい環境で生活できるということが,誰しもが望むところではないかと思います。そういう環境というものは常に気をつけていないといけない問題で,そういう意味で,皆がお互いに気をつけあうということが必要ではないかというふうに感じています。

問5 皇太子殿下が,来年1月に中東諸国をご訪問されますけれども,陛下は,以前にサウジアラビアに訪問されたことがおありだそうですけれども,殿下のご旅行について何かお話になったことはございますでしょうか
天皇陛下

やはり何回か私の経験などを話したことがありますが,まだ,今度の訪問が決まってからは,その話はしていません。

記者

ご旅行に当たって,何かアドバイスのようなものはありますでしょうか。

天皇陛下

皇太子もいろいろなところを公式に訪問していますから,自分で一番いいと思うやり方でやっていくことと信頼しています。

問6 趣味の話ですけれども,テニスの方は,今年大変お忙しい年だったのですが,昨年と同様なさる時間はありましたでしょうか。
天皇陛下

夏などは夕方こちらで,職員や,また皇太子,秋篠宮などとよくしましたけれども,秋になってからは非常にやることが少なくなったと思います。ですから,今,あまり長い時間,テニスをするということはありません。これから,また,日が長くなってきたらなるべくテニスをしたいと思っています。

問7 ブッシュ前大統領と対戦する機会がありましたら,また,なさるおつもりはございますでしょうか。
天皇陛下

そういう機会があればしたいと思います。

問8 沖縄には陛下は今まで5回ですか,皇太子時代に行かれていますけれども,天皇としてですね,初めて今回行かれますが,以前の,今までの沖縄訪問と比べて,何かお気持ちの上で変わることはありますか。
天皇陛下

やはり,最後のときはご名代という形で行きましたし,同じ気持ちで行くということになると思います。先ほどお話したような気持ちで行くということになると思います。

問9 我々の関心はどうしても来年は韓国ご訪問,来年以降ですけれども,そういう関心でものごとを見てしまうんですけれども,陛下ご自身が,プライベートとかご研究の関係で交流のある韓国の方はいらっしゃるんでしょうか。
天皇陛下

韓国の魚類学者の人には何回か会っています。そういう交流はあります。

記者

お名前は。

天皇陛下

お名前は,一人は私が日本の淡水魚という本の中にチチブ類というのを書きましたが,あの中で書いている,韓国の魚類相を書いている方がありますが,その方は知っています。