上皇后陛下のご近況について(お誕生日に際し)(令和元年)

令和元年10月20日:上皇職

ご譲位後,上皇后さまは,上皇陛下と共に,天皇皇后両陛下が国民の祝福の下に,剣璽等承継の儀を始め即位後朝見の儀,一般参賀等の御即位行事をご立派にお済ませになり,その後も滞りなくお務めを果たされていることをお喜びになり,ご安心になりながら日々をお過ごしになって来られました。今は上皇陛下と共に,来る22日の即位礼正殿の儀,来月の大嘗宮の儀及びそれらの関連行事も恙なく終えられることを心より願っていらっしゃるご様子です。

各地で発生する台風等の自然災害については,いつもご心配になりながら報道を注視しておられ,上皇陛下と共に被災地の様子を案じて来られました。先の台風15号による猛暑の中の大規模停電等による被害も大変ご心配になりましたが,この度の広域にわたり同時に多数の河川が氾濫した台風19号による甚大な被害については,これまでにもご記憶のない形態の災害被害であるとお感じになり,お心を痛めていらっしゃいます。

ご体調につきましては,今年に入ってから朝のご散策後に息が切れるご症状が次第に目立つようになり,ご譲位後の6月初め,心不全の診断指標であるBNP値が上昇していることが判明し,再検査の結果,中等度の三尖弁逆流症,軽度の僧帽弁逆流症及び不整脈との診断を受けられました。また,同月中・下旬には,2度に分けて,陛下をお支えするため御在位中の実施を見送ってこられた両眼の白内障手術をお受けになりました。さらに,7月の定期御検査では,左乳腺に腫瘤が認められ,その後の精密検査によって早期の乳がんと診断されたため,東大病院に入院され9月8日に手術をお受けになりました。幸いに,がんは完全に切除され,現在,ホルモン療法をお受けになっています。

このような中にも,次第に高齢となられる陛下とのご生活を大切にされ,早朝のご散策はもとより,三食を必ずご一緒にとられ,差し支えのない日曜日には朝7時から東御苑に行かれ,二の丸庭園,本丸を回られ,残る皇居での日々を懐かしむようにお過ごしです。

ご譲位後の日常生活は,基本的にご移居に向けたご準備が中心となりました。当初は,毎日,午前,午後を問わず,お品の所在と総数をご確認になり,お片付けを進めながらご移居に向けた見当をお付けになった後,本格的にご整理を始められ,ご不例中も多くのお時間を費やして来られました。これまでに,かなりの数量をご整理になりましたが,御在位30年間にわたる相当数の大切なお品を,専門の研究機関等での活用を考慮されながらご整理になることは,側近職員がお手伝いさせて頂いていますが,大変な労力を要する作業となっています。

高輪仙洞仮御所へのご移居については,両陛下はできるだけ早くに御所をお引き渡しになるとの考えをお示しになりましたが,宮内庁としては,当初から,その準備には相当の日数を要すると見込み,両陛下にもご移居の時期は年明けになる旨をお伝えしてきました。現時点では,明年のお正月行事終了後から年度末までの間にご移居いただく予定でいます。

いずれにしても,上皇上皇后両陛下には,この先の2度にわたるご移居を無事にお済ませになり,その後の日々もお元気でお過ごしいただけるよう,ご体調を注意深く拝していくことが大事だと考えています。