主な式典におけるおことば(平成21年)

皇太子殿下のおことば(仮訳)

第36回国際生理学会世界大会開会式
平成21年7月27日 (月)(国立京都国際会館)

本日,第36回国際生理学会世界大会開会式に,世界中から参加された多くの科学者の皆さんと共に出席できることを,とてもうれしく思います。

この会議は,スイス・バーゼルにおける1889年の第1回大会以来開催されている,生理学分野で最も歴史のある国際会議であると聞いています。日本では,44年前に初めて東京で開催されました。今回,再びこの会議が,「生体の機能:要素と統合」をテーマとして,歴史ある京都の地において開催されることを喜ばしく思います。

近年の生命科学の目覚ましい進歩により,ヒトの全遺伝子が解読され,コンピューター技術の進歩とあいまって,私たちの体を構成するタンパク質の微細な構造を研究することが可能となりました。こうした個別の分野で得られた知見を統合し,私たちの体がどのように機能しているのかを明らかにすることが,臨床医学の基盤である生理学の役割です。生命科学の最近の発展を,健康の増進や医療の発展に応用していくために,生理学の重要性は今後ますます高まっていくと思います。

近代生理学は,血液の循環を発見したウィリアム・ハーヴェイにより始まったと言われますが,このウィリアム・ハーヴェイは,私が留学していたイギリスのオックスフォード大学マートン・コレッジの学長を務めており,その意味でもこの学会との御縁を感じます。

本大会が,医学の基礎研究の向上と,これに関連する技術開発を促進し,人々の幸せに寄与することを願い,私のあいさつといたします。