主な式典におけるおことば(平成20年)

皇太子殿下のおことば(仮訳)

第50回日本小児神経学会総会,第50回総会記念国際小児シンポジウムPartII,第50回記念式典
平成20年5月29日 (木)(ホテル日航東京)

第50回日本小児神経学会総会並びに記念の国際シンポジウムが,国内外から多くの参加者を迎え,ここ東京で開催されることをうれしく思います。

日本小児神経学会は,小児医療の中でも発達や多岐にわたる小児の神経系の病気や問題について専門的,集中的に研究討議する目的で,小児臨床神経学研究会として1961年に世界に先駆けて発足したと伺いました。以来,学会の総会は毎年開催され,日本の小児神経疾患の啓もう,研究,診療の討議の場として真摯(しんし)に実績を重ね,国際的にも多大の貢献をされ,大きく発展してこられたことを誇りに思います。

21世紀は人類の心の健康を守る「心の世紀」とも言われておりますが,親という立場からも,目覚ましく変化する子どもの可能性には日々驚かされています。このように無限の可能性を秘めた子どもには,大人とはまた異なったアプローチが必要なのだと思います。将来のある子ども一人一人が,その子に最も適した環境の中で,温かくはぐくまれていくことを願っております。

昨今の,医師の不足,特に小児科医師の不足という現状には心を痛めております。本日ここに出席の皆さんは,子どもたちとその家族のために日々尽力され,その使命を果たされていると伺い,大変心強く思います。今後も一人でも多くの子どもとその家族が悩みや病から解放され,より健康的な生活を送ることができるよう願っております。

終わりに,今回の総会とシンポジウムが実りある成果を挙げ,小児神経学の臨床と研究の一層の発展と,人類の幸福に寄与することを希望し,あいさつといたします。

第11回世界内視鏡外科学会開会式
平成20年9月2日 (火)(パシフィコ横浜)

第11回世界内視鏡外科学会が,国内外から多くの参加者を迎え,ここ横浜で開催されることをうれしく思います。

この会議は,内視鏡外科分野において最も歴史のある国際会議であり,14年前,京都において開催されました第4回大会以来の我が国での開催です。その間,内視鏡外科学は飛躍的な発展を遂げ,その目覚ましい発展が新たな外科学の幕開けとして,今後に期待されていると聞いております。

内視鏡外科学は,体に侵襲の少ない外科的治療を提供するために開発された新しい外科学です。また同時に,多岐にわたる炎症性疾患や悪性腫瘍の治療に幅広く応用されており,今日,人類が直面している疾病の克服や健康の維持に重大な役割を担っています。昨年,私自身,十二指腸ポリープの手術のために,実際に内視鏡を用いた治療を受けましたが,治療を受ける患者の立場からも,最先端の内視鏡医療の進歩に感銘を受けました。

世界的に意義のある本会議に,多くの医学者の皆さんが出席され,「内視鏡外科の革新と開腹手術との調和」をテーマに,活発な討論がなされることを期待しております。

最後に,本会議が実りある成果を挙げ,世界の医療の向上に貢献するとともに,人類の幸福に寄与することを願い,私のあいさつといたします。

科学技術と人類の未来に関する国際フォーラム(STSフォーラム)第5回年次総会閉会式
平成20年10月7日 (火)(国立京都国際会館)

科学技術と人類の未来に関する国際フォーラム第5回年次総会の閉会式に,皆さんと共に出席できることを,大変うれしく思います。

今回も,ここ京都において,3日間にわたり,世界各国から集まった有識者による活発な討議が行われたと伺いました。今回のフォーラムの実現に携わった多くの関係者の尽力に深く敬意を表する次第です。

近年の生命科学や情報通信技術を始めとする科学技術の発展には,目覚ましいものがあります。人類はその成果を享受し,経済・社会はもとより個人の生活に至るまで本質的な変化が見られます。

その一方で,科学技術の発展が自然の摂理と調和しているのか,技術革新の成果があらゆる人々に公平に行き渡っているのかなど,自然や人類との関係で科学技術に課された課題が,これまでになく大きなものとなってきているのも事実です。

こうした課題に対して,今すぐ明快な答えを出すことは容易ではありません。しかし,その答えを模索する努力を怠った場合の代償は計り知れないほど大きく,人類の存続そのものに危機をもたらすことにもなりかねません。我々が少なくとも言えることは,大切な地球の未来のために科学技術が適切に使われるよう,常に人類の叡智(えいち)を結集し続けていく必要があるということだと思います。

この国際フォーラムは既に5回を数え,大きな実績を蓄積しつつあります。今回も,人類の抱える多くの課題の解決に向けて多大な成果が得られるとともに,科学技術の新たな展望を築くことに大きな貢献をしたものと考えております。

最後に,この貴重な試みが,今後とも科学技術の健全な発展を促すしるべとなり,科学技術が我々にとって有益なものとなることを心より願い,私のあいさつといたします。