主な式典におけるおことば(平成18年)

皇太子殿下のおことば(仮訳)

第20回国際生化学・分子生物学会議開会式
平成18年6月18日 (日) (国立京都国際会館メインホール)

第20回国際生化学・分子生物学会議が,世界中からかくも多くの科学者の皆さんを迎え,ここに開催されることをうれしく思います。

この会議は,今から39年前,東京において,我が国で初めて開催されました。それ以来,生命科学は飛躍的な発展を遂げてきました。そして今,私たちが暮らす21世紀初頭に当たり,生命科学の目覚ましい進歩が人類に新たな時代の幕開けを告げようとしています。日本が世界的に意義のある本会議を「生命:分子の統合と生物の多様性」をテーマに,再び,今度は京都の地で開催できることをとりわけ喜ばしく思います。

私たちは今,生命科学の黄金期を迎えていると言われています。人体の正に設計図であるヒトゲノムの解読が完了していますが,いずれは科学者の努力によって,このゲノム情報を手掛かりに生命のドラマの台本が明らかにされていくことでしょう。これから先,ゲノム研究が生命の歴史をどのようにひもといていくのか,興味は尽きません。

同時に生命科学は,白血病やAIDSを始めとする難病の治療や,安全な食糧供給の問題など,今日人類が直面し,人々の日常生活にかかわる課題とも深く結び付いています。この学問分野は人類の未来に重大な影響を与えると言っても過言ではありません。その意味で,多くの若い科学者の皆さんが本会議に出席されていることを大変うれしく思います。

最後に,本会議が実りある成果を挙げ,人類の繁栄と安寧に寄与することを願い,私のあいさつといたします。

第10回国際先天代謝異常学会記念式典
平成18年9月15日 (金) ホテルニューオータニ幕張

第10回国際先天代謝異常学会の記念式典に,我が国を始め世界の国々から多数の参加者を迎え,皆さんと共に出席できますことを大変うれしく思います。

今回の学会は,第10回という記念大会であるだけでなく,先天代謝異常症と いう遺伝病のコンセプトが提唱されてほぼ100年を迎えるという記念すべき国際学会だとも伺っております。この100年の間における先天代謝異常症の診療,研究の進歩により,世界中で多くの患者さんが救われたことを考えると,ここにお集まりの小児科医,生化学者,看護師,栄養士など関係者の方々のこの間のたゆみない努力に対して,深く敬意を表します。

先天代謝異常症という医学分野は,基礎医学と臨床医学が見事に融合している 学問的体系であるとともに,最近の遺伝子工学の進歩によって,多くの遺伝病の診断が可能となり,将来の再生医療,あるいは遺伝子治療の開発につながることも期待されていると伺っております。

また,今回約20年ぶりにアジアの中の日本で本学会が開催され,大きな人口 を抱えるアジア各国からの研究発表が多数報告されていることは,この地域でも臨床及び研究が着実に発展している証(あか)しとしてうれしく思いますとともに,今後この分野での一層幅広い国際的な協力が進んでいくことを期待するものです。

最後に,本学会が実りある成果を挙げ,先天代謝異常症の臨床と研究が更に発展を続け,人類の幸福に寄与することを願って,私のあいさつといたします。