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明治期にはじまる日本の近代化の流れのなかで,宮中の室内空間を彩るさまざまな調度,装飾品も,それまでの伝統的なスタイルとは異なる,新たな性格を示すようになっていきます。花鳥や名勝地などのモチーフが,写生味の優った絵画的図様性への指向と強く結びつくことで,擬洋風建築内の広大な空間にふさわしく,大ぶりな花瓶等の器物全面や暖炉用の染織衝立に大きく描きあらわされるようになります。また,王政復古の風潮に呼応するなかで,古風な文様を特色とする食器や,擬古的な性格が色濃い花盛器などが,創出されることとなりました。 その一方で,欧化政策推進の動向にともない,西欧からもたらされた時計や,イギリスのヴィクトリア朝の様式に倣ったテーブル・アートなどが室内で用いられるとともに,幕末期以来,明治30年代までは日本でも最新のファッションとしてもてはやされた清朝風の中国趣味もまた,宮中に取り入れられていきます。 そうしたなかで,およそ明治30年代をひとつのピークとして,和中洋を混在させた,豊饒なまでの装飾性を帯びる独特の宮中美のスタイルがかたちづくられていくことになります。それは,近代ならではの新たな美的空間を創造する試みにほかならなかったといえましょう。 本展は,このような観点から,当館所蔵品を中心に,明治期の宮中を彩った美術,工芸作品の数々を大きく三つのテーマに沿って改めて見直すことで,明治の美意識の一断面を探ろうとするものです。 展覧会図録(PDF形式:72.2MB) |