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宮廷文化が伝統を重んじながらも衰弱の様相を示しつつあった江戸時代,その17世紀後期から18世紀前期にかけて,中御門天皇の摂政など,宮中の要職を務めた文化人に近衛家熈(このえいえひろ)(1667~1736)がいます。家熈は,遠く藤原鎌足を祖とし,平安中期にその栄華を誇った藤原道長に代表される藤原北家の流れで,五摂家筆頭の近衛家の第21代当主です。近衛家の歴代当主は,宮中官職の最高位に上り,朝議において指導的立場にありました。歴代の文芸に対する積極的な活動の成果は,近衛家伝来の古記録や古典籍など,約20万点の文化財として陽明文庫に収められています。 こうした中で,家熈は幼い頃より書画に卓抜した才能を示し,長じて学問を好んで博学多識,茶道,華道,香道にも精通して多芸多能であり,当時の宮廷文化の第一人者でした。この家熈の書の優品が,当館所蔵品の中にあります。上代様を学んだ独白の書風による仮名や草書,楷書などによって,和歌や漢籍などを流麗にしたためています。また,明治11年に近衛家から献上された古筆の名品の中には,その表装や収納の箱,袋などの取り合わせを家熈が手がけたものもあります。本展では,これらに家熈がお抱え絵師とした渡辺始興(わたなべしこう)(1683~1755)の屏風作品を加え,家熈の絵画への深い関心の様子も紹介します。 家熙の遺品には落ち着いた美しさ,堂々とした気品があります。書にせよ,絵画にせよ,彼が嗜んだ風雅には,常に探求心が宿っています。この展覧会では,家熈のこうした文化活動の一端を紹介し,その重要性を考えてみたいと思います。 展覧会図録(PDF形式:41.7MB) |