眞子内親王殿下 ブラジルご訪問を終えられてのご印象

眞子内親王殿下 ブラジルご訪問を終えられてのご印象

ブラジル訪問を終えて(平成30年8月8日(水))

「ブラジル日本人移住110周年」という記念すべき年に,ブラジル政府のお招きにより同国を公式訪問できましたことを,誠に嬉しく思います。今回の訪問にあたり,ご尽力いただいた多くの方々,そして,各地で受けた暖かい歓迎と様々なご配慮に対し,厚く御礼申し上げます。

この度は,5州14都市を訪れ,3州の州知事と懇談を致しました。風光明媚なリオデジャネイロが,最初の訪問地でした。次に訪問したのが,ブラジルでサンパウロ州に次いで大きな日系社会を擁するパラナ州で,ロンドリーナ,ロランジア,マリンガを訪れました。続くサンパウロ州では,サンパウロ,マリリア,そして,サンパウロ州の中でもノロエステ地方と呼ばれる地域では,プロミッソン,リンス,カフェランジア,アラサツーバを訪れました。プロミッソンは,「上塚植民地入植100周年」の年でもありました。サンパウロ州のカンピーナスは空港のみしか立ち寄ることができませんでしたが,カンピーナスの代表の方々とともにその地の日系社会の方々が空港にてお出迎え下さいました。ブラジル北部のアマゾン地帯では,アマゾナス州のマナウスと,パラー州のベレンとトメアスを訪れました。日本人のアマゾン移住は,来年で90周年を迎えます。アラサツーバとトメアスにつきましては,今回が初めての皇族の訪問でありました。

訪問した先々で,思い出深い出来事と出会いがありました。その全てをここに書き表すことは到底できませんが,日系社会の方々との交流は,とりわけ大きく心に残っています。各地の移住110周年記念式典に出席し,日系社会の方々とブラジル政府,州政府や各地域の方々と共に110周年をお祝いできましたことは,私にとって特別な時間となりました。式典に際しては,ミシェル・テメル大統領が大統領代理を通じて日系社会に対するあたたかいメッセージを寄せてくださいました。また,日系社会の皆さまが心のこもった歓迎行事や昼食会を開催してくださったことを,大変嬉しく存じました。各所で,記念碑や記念プレートの除幕,記念植樹をし,日本移民史料館,日本移民センター,文化体育協会などの様々な施設,日本庭園,日本館,日本祭り,農場や工場等を拝見して,日系社会の歴史と活動を,より深く知ることができたと思います。サンパウロの開拓先没者慰霊碑,プロミッソンの光明観音堂,カフェランジアの平野植民地の開拓犠牲者之碑,マナウスの移住先没者慰霊碑,トメアスの開拓先没者慰霊碑に献花を致しました時には,先人の志や苦難と,日系社会が歩んでこられた長い道のりに,思いを馳せました。

訪問地以外から来られた方も含め,ご高齢の方から若い方まで,あらゆる世代の日系社会の方々とお目にかかり,移住してからの暮らし,現在のお仕事や生活,活動,日本への思いなどについて色々なお話を伺えたことは,大変ありがたいことでした。また,JICAボランティアの方々,日本語教育関係の方々からも,どのような活動をされているのかを伺うことができました。

今回,様々な場面で,日系社会の中で日本の文化がしっかりと受け継がれていることを実感するとともに,ブラジルの中で日本に関する情報が多様な形で発信され,広く受け入れられていることを感じました。日系社会の活動に加え,ジャパン・ハウス等の存在も,日本を紹介するのに大きな役割を果たしていることと思います。

この旅では,リオデジャネイロでコルコバードの丘やリオデジャネイロ植物園を訪れ,サンパウロでサンパウロ大学動物学博物館を見学し,マナウスでアマゾナス劇場や国立アマゾン研究所を訪問するとともにアマゾンの大自然に触れ,ベレンでヴェール・オ・ペーゾ市場を視察する機会がありました。こうした機会を通して,ブラジルの歴史,自然や文化の一端に触れることも出来たと思います。

日本からの移住者とそのご子孫が,大変な苦労と想像を絶するような困難を勤勉さと誠実さを持って乗り越えてブラジルの発展に貢献され,ブラジルの人々から厚い信頼を得て,日本・ブラジル両国の架け橋となってこられたことに,また,努力を積み重ねて今日の日系社会の発展を築きあげられたことに,改めて,心より敬意を表します。そして,この歴史が,未来を担う世代にも大切に引き継がれていきますことを願います。

これからも,日系社会の皆さまがお元気で末永く活躍され,日系社会が一層発展しますよう,また今後とも日本とブラジルが寄り添える関係でありますよう,そして,両国の友好関係がますます深まりますよう,願っております。