主な式典におけるおことば(平成29年)

文仁親王殿下のおことば

公益社団法人日本フラワーデザイナー協会創立50周年記念式典
平成29年1月10日(火)(品川プリンスホテル)

 本日、「公益社団法人日本フラワーデザイナー協会の創立50周年記念式典」が開催され皆様とともにお祝いできますことを大変うれしく思います。

 「日本フラワーデザイナー協会」は、1967年、日本らしいフラワーデザインの普及、技術の向上および国際交流を行うことを目的として設立されました。爾来、花や草木の魅力をより美しく引き出すための技法の開発に励むとともに、多くのフラワーデザイナーを認定、世に送り出されました。そして長年にわたって、「日本フラワーデザイン大賞」の開催や、各種講習会の実施等を通じ、フラワーデザインの社会全体への認知と普及、さらなる技術の向上に力を尽くしてこられました。

 公益社団法人としての社会貢献事業としては、東日本大震災で被災した地域の小学校に対する「卒業生応援プロジェクト」事業で、毎年1万人を超える卒業生の胸を彩るコサージを贈呈されていると伺っております。また、毎年各県持ち回りで開催される全国障害者スポーツ大会においては、表彰式で選手に贈られるビクトリーブーケの贈呈を長年にわたり行うなどの他、全国の盲学校へのお花の寄贈やボランティアによる体験教室の実施、12月10日を花の日とし、日本中のフラワーデザイナーが全国の施設にお花を贈る「NFD花の日事業」などを積極的に行っていると伺っております。

 さらに国際交流の面では、海外へのデザイナー派遣や、世界規模のフラワーデザイナー組織である世界フローラルアーティスト協会(WAFA)にいち早く加盟し、2003年には第8回世界大会を横浜で主催されました。

 これらの事業の取り組みは、多くの人々の心を豊かにし、また、励ましてこられたことと思います。それとともに、日本におけるフラワーデザイン、曳いては花文化の発展に大きく寄与されていることに対し、深く敬意を表します。今後ともさまざまな事業を通じて、花を通した豊かな活動の輪が、さらに広がることを期待いたしております。

 終わりに、50年という節目の年を一つの契機として、「日本フラワーデザイナー協会」がますます発展されることを祈念し、式典に寄せる言葉といたします。

第57回交通安全国民運動中央大会
平成29年1月20日(金)(文京シビックホール)

 本日、第57回交通安全国民運動中央大会が開催され、日ごろから全国各地で交通安全運動に力を尽くしておられる皆様とともに出席できましたことを、誠に喜ばしく思います。

 私たちは移動手段として、自動車や自動二輪車、自転車を始めとする車両を日常的に用いております。いっぽう、道には、それら車両とともに徒歩や車椅子等による人々の往来も多数あります。そのような状況に鑑みますと、さまざまな要因による道路上での交通事故は、誰にでも起こり得ます。これらの事故をなくしていくためには、私たち一人ひとりが、交通事故を防止しようとする自覚をもって交通道徳を高めるとともに、それを実践していく必要がありましょう。

 このような中、「交通安全思想普及の国民運動」を展開することを目的として設立された全日本交通安全協会が、本大会をはじめ研修会の開催や教育資料の配布など、さまざまな事業を展開していることは、大変意義深いことであります。

 交通事故による昨年の死亡者数は、1949年以来67年ぶりに3千人台となり、また、1970年のピーク時の4分の1以下となっております。このことは、皆様の長年にわたるたゆみない努力の結果であると思います。
 しかしながら、交通事故は、未だに年間50万件近く発生しており、あとを絶ちません。なかでも、高齢者の事故防止対策は今後の課題の一つになると思われます。このように、かけがえのない多くの命が失われている今日、交通事故のない、安全で快適な交通社会の実現は、私たちの願いであります。

 その意味からも、毎年開催されるこの大会は、関係者が一堂に会して諸問題を話し合う大切な機会であります。この大会を一つの契機として、私たち一人ひとりが交通安全を自らの問題として考えるとともに、交通安全運動が一層推進されていくことを祈念いたしております。

 終わりになりますが、このたび、日ごろの交通安全運動に対して表彰を受けられる方々に心からお祝いを申し上げますとともに、長年にわたるご尽力に深く敬意を表しまして、大会に寄せる言葉といたします。

「第13回日本学術振興会賞並びに日本学士院学術奨励賞」授賞式
平成29年2月8日(水)(日本学士院)

 本日「第13回日本学術振興会賞並びに日本学士院学術奨励賞授賞式」が開催され、皆様にお会いできましたことを誠にうれしく思います。また、今回受賞された皆様に心からお祝いを申し上げます。

 昨年は、森田浩介九州大学教授を始めとする理化学研究所のグループによる113番元素「ニホニウム」の発見や大隅良典東京工業大学栄誉教授がノーベル生理学・医学賞の受賞という、日本の学術界にとり大変喜ばしいニュースがございました。ノーベル賞を受賞された大隅教授は、「最初のきっかけは基本的な知的好奇心にある。」と話しておられましたが、今回の受賞は、そのことに端を発した独創的な発想による研究が花開き、学術の世界に大きな影響を与え得ることを示したよい例ではないかと思います。

 学術研究は、このような研究者の知的好奇心と自由な発想が原点となり、それを継続していく中で、その成果として、真理の発見や経済の持続的発展、医療の進展、生活の向上、心の豊かさなど、さまざまな展開を見せるものであると考えます。社会が大きく変化する中、我が国が多様な課題を解決しつつ、持続的に発展し、世界に対し知的貢献を行っていくためには、このような学術研究を推進することが求められております。

 特に、先駆的な若手研究者の活躍を促進することは大切なことでありましょう。その意味で、我が国の学術研究を支える日本学術振興会と日本学士院が協力して、人文学、社会科学から自然科学にわたる広い分野の若手研究者を顕彰し、その研究意欲を高め、研究の発展を支援しようとすることは大変意義あることと思います。

 本日受賞をされた皆様は、これまでに大変優れた業績をあげておられますが、この受賞を一つの契機として、今後さらに充実した研究を進められ、世界的に活躍されることを願っております。

 終わりに、関係の皆様のご尽力により、日本の学術研究の進展が一層図られることを心より祈念し、式典に寄せる言葉といたします。

東日本大震災六周年追悼式
平成29年3月11日(土)(国立劇場)

 6年前の3月11日午後2時46分、私たちが今までに経験をしたことがない巨大な地震とそれに伴う津波が、東北地方太平洋沿岸部を中心とした東日本の広範な地域を襲いました。そして、この地震と津波によって、2万人近い人が命を落とし、また2500名を超える人の行方がいまだ知られておりません。ここに、本日、参集したすべての人々と共に、震災によって亡くなった方々とそのご遺族に対し、深く哀悼の意を表します。

 この6年間、被災地においては、人々が互いに助け合いながら、数多くの困難を乗り越え、復旧と復興に向けた努力を続けてきました。そして、そのことを支援するため、国内外の人々が、それぞれの立場において、様々な形で力を尽くしてきました。その結果、安全に暮らせる住宅の再建や産業の回復、学校や医療施設の復旧などいくつもの分野において着実な進展が見られました。また、原子力発電所の事故によって避難を余儀なくされた地域においても、帰還のできる地域が少しずつではありますが広がってきております。今まで尽力されてきた多くの関係者に対し、心からの感謝と敬意を表するとともに、復興が今後さらに進んでいくことを祈念しております。

 しかし、その一方では、被災地、また避難先の地で、困難な生活を強いられている人々が今なお多くいます。特に、避難生活が長期化する中で、年々高齢化していく被災者の健康や、放射線量が高いことによって、いまだ帰還の見通しが立っていない地域の人々の気持ちを思うと深く心が痛みます。困難な状況にある人々誰もが取り残されることなく、平穏な暮らしを取り戻すことができる日が来ることは、私たち皆の願いです。

 東日本大震災という、未曽有の災害のもとで、私たちは日頃からの防災教育と防災訓練、そして過去の災害の記憶と記録の継承がいかに大切であるかを学びました。この教訓を決して忘れることなく、私たち一人ひとりが防災の意識を高めるとともに、そのことを次の世代に引き継ぎ、災害の危険から多くの人々が守られることを強く希望いたします。

 様々な難しい課題を抱えつつも、復興に向けてたゆみなく歩みを進めている人々に思いを寄せつつ、一日も早く安寧な日々が戻ることを心から願い、御霊への追悼の言葉といたします。

「国際バカロレアアジア太平洋地区年次研究大会」開会式
平成29年3月29日(水)(パシフィコ横浜)

It is a great pleasure for me to welcome so many participants from 33 countries and areas around the world today at this IB Global Conference, which is being held for the first time here in Yokohama, Japan.

I have learned that the International Baccalaureate Organization, known as the IB, has made great progress in developing world-class standards for international educational programs aimed at fostering international-mindedness. The IB aims to develop young people who will help to create a better and more peaceful world through a spirit of understanding of, and respect for, diverse cultures. The IB’s holistic educational philosophy is an approach considered essential in preparing future generations to work collaboratively to tackle global problems.

In order to realize the IB’s educational philosophy, tireless efforts have been made by those involved in education, to whom I would like to express my deep respect. These efforts have borne fruit, and I have heard that the number of authorized IB World Schools has grown year by year to the current level of over 4,800 schools in around 150 countries and areas.

The situations in which students and schools find themselves greatly differ in each country and area, but they share some common issues. I hope that you will find innovative solutions to these various issues as you share your experiences through the exchange of information and discussions over the 3 days of this conference.

In concluding my address, I wish to express my sincere hope that the continued growth and progress of the International Baccalaureate will further enhance education in the world and foster many more young people who will contribute to world peace and human well-being.

「第26回地球環境大賞」授賞式
平成29年4月10日(月)(明治記念館)

 本日、第26回「地球環境大賞」の授賞式にあたり、皆様とともに出席できましたことを、大変うれしく思います。また、このたび各賞を受賞される方々に心からお祝いを申し上げます。

 近年、地球温暖化の防止や生物多様性の保全など、環境諸問題に対する人々の関心や意識は大いに高まりを見せるようになってまいりました。このようななか、気候変動とも関係する可能性のある自然災害が世界各地で数多く発生し、甚大な被害を与えて人々の生活に大きな影響を及ぼしております。つい先頃も、大雨による河川の氾濫や土砂崩れがペルーやコロンビアで発生し、多数の死傷者が出ました。地球環境に関わる問題を考えるとき、環境の保全とともに、防災や減災についての意識を一層高め、人類が自然と共存していく必要性を強く感じております。

 今年で第26回を迎えた、この地球環境大賞は、環境を護りながら発展する産業や持続可能な循環型社会の実現に寄与する製品や技術の開発、地球環境に対する社会の意識向上など、環境保全への取り組みを顕彰することで社会に貢献することを目的として創設されました。そして産業界に始まり、自治体、学校、市民グループへと表彰の対象を広げながら、環境活動に熱心に取り組む人々を広く顕彰することによって、地球環境の保全や人々の環境意識を高めることに貢献してまいりました。

 一昨年、国連で採択された温暖化防止のための新しい国際的枠組みである「パリ協定」は、昨年11月に発効されましたが、緑豊かな水の惑星といわれるこの地球に、多くの貴重な生命を末永く育んでいくことができるよう、環境問題の解決に積極的に取り組んでいくことは、今現在、そして将来的に大変重要なことといえましょう。そのことを実行していくため、今後とも、日本の知識や技術が国際的な貢献を果たしていくことは、誠に大切なことと思います。

 終わりに、受賞者をはじめとする皆様が、今後とも地球環境の保全に積極的に取り組んでいかれることを期待するとともに、その活動がより一層広がりを見せることを祈念し、私のあいさつといたします。

平成29年全国都市緑化祭
平成29年4月26日(水) (横浜港大さん橋国際客船ターミナル大さん橋ホール)

 平成29年「全国都市緑化祭」が、ここ横浜市で開催され、日頃から、全国各地で都市の緑化を推進しておられる皆様と共に出席できましたことを誠に嬉しく思います。

 都市を豊かに彩る草木や花は、私たちの暮らしに豊かさと安らぎをもたらしてくれます。また、これらの植物は、景観の形成や生物多様性の保全、防災性の向上、二酸化炭素の吸収源としてなど、多様な機能を有しており、地球環境問題への対応をはじめ多くの重要な役割を果たしております。

 このようななか、都市緑化の推進を図り、潤いのあるまちづくりを目指して開催される全国都市緑化祭には、誠に意義深いものがあると考えます。

 このたびの「第33回全国都市緑化よこはまフェア」においては、「歴史と未来の横浜・花と緑の物語」のテーマのもと、都心臨海部の「みなとガーデン」をメイン会場として、郊外部の「里山ガーデン」、市内各地の「パートナー会場」が連携して全市的に開催されております。

 主会場の「みなとガーデン」では、横浜市の花であるバラをモチーフとした庭園や市民の植栽による16万本のチューリップガーデンをはじめとする多くの演出がなされていると伺っております。また、「里山ガーデン」では、横浜らしい豊かな里山の緑の中に市内最大級1ヘクタールの大花壇や自然を活かした森の空中散歩道などが設置され、さらにパートナー会場においては、花や緑に親しむ様々なイベントが開催されていると聞き及んでおります。

 これらの会場においては、多くの来場者が「植物とともにある暮らし」の素晴らしさに触れることができることでしょう。そのなかで多様な交流が促進され、それに伴って日本に古よりある花や緑を愛でる文化が継承されていくことが期待できるのではないかと思います。

 そして、このフェアを通じて改めて花や緑が持つ効果が認識され、人と自然が共存し、「自然と調和したまちづくり」の実践につながっていくことを願っております。

 終わりに、この度の全国都市緑化祭を契機として、ここ横浜から緑化推進の運動の輪が、さらに大きく世代や地域を越えて広がっていくことを祈念し、私の挨拶といたします。

「第8回世界盆栽大会inさいたま」
平成29年4月27日(木)(ソニックシティ)

 このたび、世界40の国と地域、そして日本国内から多数の参加者を迎え、「第8回世界盆栽大会inさいたま」が、盆栽とゆかりの深いさいたま市において開催され、皆様とともにこの大会に出席できますことを誠に喜ばしく思います。

 現在では広く世界に愛好家がいる盆栽ですが、非常に古い歴史を有していると考えられています。今から1300年以上前、中国唐時代の墓の壁画に、器に石と花と思われる植物を手に持つ人物が描かれています。見方によっては盆栽、もしくは中国で言う盆景のようにも見えるものであり、この壁画が最古の記録ともいわれております。また、韓国においては、12世紀から14世紀頃の屏風絵に鉢植えの植物が描かれております。そして日本では、13世紀に作られた「西行物語絵巻」をはじめ、絵巻物のなかに平たい器に植えられた植物を見ることができます。盆栽の起源については定かではありませんが、これらのことからも、鉢に植えた植物を愛でる慣習が、中国や韓国、そして日本など、東アジアの地域で発祥し、盆栽に発展してきたものと言えましょう。

 さて、現在では国際語のBONSAIにもなっている日本においては、日本人のきめ細やかな感性によって、単に鉢に植えられた植物を観賞するのみならず、樹木の形状や枝の藝、そして鉢を工夫するなど、その芸術性を高めてまいりました。そして、1970年に開催された万国博覧会を契機に、国際的にその価値が認識され、今日では広く世界の人々にも親しまれるようになったと聞き及んでおります。自ずと知れたことですが、世界の各地には多様な植物が分布しております。私自身も訪れた国々でその地に自生する植物の盆栽を見る機会が幾度となくありましたが、それぞれの地に適した素材を用いた盆栽が作られ、それらが新しい文化として根付いてきていることに大変興味を覚えます。

 今回、世界盆栽大会は8回目を迎えました。この間、世界の各地で盆栽を愛好する人々の交流の輪が広がり、相互理解が深まったことにより、国際親善の面でも大きく貢献してきたことと考えます。今までに盆栽の普及に携わってこられた方々に対し深く敬意を表したく思います。

 おわりに、「第8回世界盆栽大会inさいたま」の機会に、世界各地から集まられた方々による活発な情報交換が行われることにより、様々な地域における盆栽文化が継承され、一層発展していくことを期待いたします。そして、盆栽を大切にする心が人々の暮らしに豊かさをもたらすことを祈念し、大会に寄せる言葉といたします。

第27回森と花の祭典―「みどりの感謝祭」式典
平成29年5月13日(土)(イイノホール)

 本日、第27回森と花の祭典-「みどりの感謝祭」が開催され、緑の少年団など、日頃から全国各地で緑化や緑に親しむための活動に取り組んでおられる皆さまと共に出席できましたことを、大変嬉しく思います。

 「みどり」は、私たちの日々の暮らしに潤いや豊かさをもたらすとともに、生物多様性の維持や地球温暖化の防止に寄与するなど、多くの大切な役割を担っております。このかけがえのない「みどり」を後の世代へと引き継いでいくことは、私たち人類をはじめ、地球に生息する数多の生き物にとって大変重要なことであります。

 そして、そのことを遂行していくためには、私たち一人ひとりが森林や草木、そして花などと触れあい、「みどり」がもたらしてくれる恩恵に感謝することを通じて、その大切さを改めて認識することが必要になってくると言えましょう。

 このような中、多くの人々が全国各地で緑を増やし、育て、そして樹木を活かし、花に包まれる町づくりなどの活動に携わっておられることを、誠に心強く思います。

 終わりに、「感じよう みどりの恵みと 木のぬくもり」をテーマとして開催される本祭典を一つの契機として、より多くの人々が身近な「みどり」に関わる活動に参加し、緑化の輪が全国各地にさらに広がっていくことを祈念し、「みどりの感謝祭」に寄せる言葉といたします。

神戸開港150年記念式典
平成29年5月19日(金)(神戸ポートピアホテル)

 本日、「神戸開港150年」の記念式典が、国の内外から多数の参加者を得て開催され、皆さまとともにお祝いできることを誠に喜ばしく思います。

 神戸港は自然条件に優れた天然の良港であります。天平年間に行基によって開かれた「大輪田の泊」は、古くから大陸との交流拠点として栄え、室町時代から江戸時代には「兵庫の津」として、国内海上輸送の要衝となるなど、常に重要な港であり続けました。

 1858年に結ばれた日米修好通商条約に基づく1868年の開港以来、神戸港は国際貿易港として我が国の産業経済の発展に大いに寄与したのみならず、コーヒーや映画、ゴルフ、サッカーなど、様々な欧米文化が、神戸港を通じて日本全国へと広まり、私たちの生活を豊かなものにしてくれました。また、ブラジルへの笠戸丸を始め、南米などへと移住するために多くの人々が旅立っていったのもこの港です。

 時を経て第二次世界大戦後は、阪神工業地帯を支える港湾、特に世界有数のコンテナターミナルを有する港として発展し、我が国の高度経済成長に大きく貢献してきました。そして、神戸ポートアイランドの建設など、ウオーターフロントの開発の先駆けともなってきました。

 このように、神戸港は我が国の歴史において常に重要な役割を果たしてまいりましたが、先の大戦における神戸大空襲や、1995年に発生した阪神・淡路大震災では、神戸港を含むこの地域一帯が甚大な被害を受けました。今日、神戸港の姿があるのも、数多くの困難に直面するたびに、一丸となってこれらを克服してこられた地元の皆様のご努力あってのことであり、これまでの歩みに対し、深く敬意を表します。

 おわりに、開港150年を契機として、先の大震災を乗り越えた神戸港が、我が国の経済発展や国際交流においてより一層重要な役割を果たしていくことを心より期待いたします。そして、本日ここに参集され、日ごろより神戸港に関わっておられる多くの皆さまの更なるご活躍を祈念し、本式典に寄せる言葉といたします。

全日本ろうあ連盟創立70周年記念 第65回全国ろうあ者大会
平成29年6月4日(日)(福岡国際センター)

 本日、「全日本ろうあ連盟」が創立70周年、「全国ろうあ者大会」が第65回を迎えられたことをお慶び申しあげます。また、今回の大会における世界ろう連盟の皆さまの来日を歓迎するとともに、厚生文化賞や感謝状を受けられる方々に心からお祝いを申しあげます。

 1947年5月、未だ第二次世界大戦後の混乱期にある中、群馬県伊香保温泉にて「全日本ろうあ連盟」が設立され、1948年に京都で開催された「第1回全国ろうあ者大会」には800人の参加があったと伺っております。それから70年を経て、このたび4000人を超える方々がここ福岡に参集されました。このことは、全日本ろうあ連盟の長年に亘る熱意と努力が、ろう者がおかれていた環境の改善や社会的地位の向上を図るとともに、ろう者の社会参加を促進してきたことの証左でもあり、この間に歩みを進めてこられた関係者のご尽力に深く敬意を表します。

 円滑な情報伝達や良好なコミュニケーションが確保されることは、ろう者にとって極めて重要なことであり、特に災害発生時には生命線ともいえるものです。これまで、全日本ろうあ連盟は、他の団体とも連携し、被災地に手話通訳者や相談員を派遣したり、災害に備えて災害関連の手話ハンドブックや対応マニュアルを配布したりするなどの取り組みを進めてこられました。昨年の熊本地震をはじめ、大規模な自然災害が相次いで発生する今日、緊急通報をはじめとする必要な情報や、被災したろう者に対する支援が適時適切に得られるため、一層の環境整備が求められます。

 いっぽう、ろう者への理解や手話の重要性についての認識は、確実に広まりつつあり、条例を制定して手話の普及に積極的に取り組む自治体も増えてきています。また、全国各地で手話に関するイベントや手話を学ぶ活動が行われていると伺っております。

 本年7月には、トルコのサムスンにおいて、4年に1度のスポーツの祭典、第23回デフリンピック夏季大会が開催されます。この大会を一つの契機として、ろう者をはじめ障害をもつ人々に対する理解が一層深まり、ユニバーサルデザインの街づくりや情報アクセス・コミュニケーション環境の進展が加速されることを願っております。

 終わりに、この大会が皆様にとって実り多きものであるとともに、ろう者をはじめ誰もが安心して暮らし、生き生きと活躍できる社会が築かれますことを祈念し、本式典に寄せる言葉といたします。

平成29年 第14回海フェスタ「海フェスタ神戸」
平成29年7月19日(水)(ホテルオークラ神戸)

 はじめに、このたびの九州北部地方を中心とする豪雨災害において、甚大な被害が発生いたしました。災害で亡くなられた方々に心から哀悼の意を表しますとともに、被災された方々にお見舞いを申し上げます。被災地の復旧作業が速やかに進むことを願っております。

 「海フェスタ神戸」が、瀬戸内海の要衝の地である神戸市において開催され、本日の記念式典において皆様とともに出席できましたことを大変嬉しく思います。

 神戸港は、古くから自然条件に恵まれた天然の良港であります。また、世界の国々との交易・交流の拠点として日本を代表する国際貿易港であり、我が国の産業の発展と国際交流に大きな役割を果たしてまいりました。

 1868年に開港して以来、今年で150年を迎える神戸において「海フェスタ神戸」が開催されますことは、海や港などへの理解をより深めていく上で、誠に意義深いものがあると思います。

 四方を海に囲まれた我が国は、古来より海と深く関わり、多くの恩恵を受けてまいりました。ここ神戸においても、海は、人々を引きつけ、国内外との様々な交流を通じ、新しい洗練された生活文化が育まれてきました。

 私達はこのような海に感謝するとともに、関連する港や河川を含め、それらの多面的な役割や重要性を正しく認識し、後世に伝えていく必要があると言えましょう。「海フェスタ神戸」が、そのひとつの機会になるとともに、未来に向けて新たな一歩を踏み出そうとしている神戸の更なる発展に繋がっていくことを願ってやみません。

 終わりに、本日、栄えある表彰を受けられる方々に心からお祝いを申し上げますとともに、ここにお集まりの皆様の一層のご活躍を祈念し、私のあいさつといたします。

第41回全国高等学校総合文化祭(みやぎ総文2017)
平成29年7月31日(月)(仙台サンプラザホール)

 「第41回全国高等学校総合文化祭」が、四季の彩り鮮やかな自然に恵まれ、そして東日本大震災を乗り越え確かな復興の歩みを重ねてきているここ宮城の地において開催されます。全国各地から、そして海外から参加された皆様とともに、その総合開会式に出席できることを大変喜ばしく思います。

 ご存知のように、今月初めの九州北部豪雨では、35名が亡くなり、今なお行方のわからない人々の捜索が続いております。そして、家屋をはじめ、生活空間に甚大な被害が発生いたしました。その後も、秋田県や新潟県において、豪雨による被害が発生しています。ここに、皆様とともに亡くなられ方々へ哀悼の意を表するとともに、被災された方々、そしてこの大会にも参加している当該地域の方々にお見舞いを申し述べたく思います。

 さて、全国高等学校総合文化祭は、芸術文化活動に取り組む高校生の祭典として、これまでも開催地の生徒が主体となって、地域の特性と若い世代の人ならではの感性を活かした大会づくりがなされてまいりました。このような高校生による芸術文化の祭典が毎年開催されていることは、国民が芸術文化に対する関心と参加意欲をさらに高めるため、さらには多様な才能を開花させ、未来に向けた豊かな文化創造の土壌を培う上で、誠に意義深いものと考えます。

 本年の大会テーマは、「伊達」な文化を育んできたこの地に相応しい、「集え伊達の地に 創造の短冊に思いをのせて」であります。大会に参加される皆様が、日頃の活動の中で培われた創造性を発揮し、それを全国へと発信されるとともに、参加者相互の交流を通じて国の内外に友好の輪を大きく広げていかれることを期待いたしております。

 終わりに、実行委員会を始め、開催に尽力された関係者に深く敬意を表しますとともに、「みやぎ総文2017」がいつまでも皆様の心に残り、明日に向けた力となる素晴らしい大会となることを祈念し、私の挨拶といたします。

第23回世界神経学会議
平成29年9月17日(日)(国立京都国際会館)

It is a great pleasure for me to be with you all at this opening ceremony of the 23rd World Congress of Neurology, which is being held here in Kyoto, with a large attendance of over 8000 participants from more than 115 countries and areas.

I believe it is extremely meaningful that a wide range of presentations and discussions on neurology will take place at this Congress under the theme of“Defining the Future of Neurology”.

Neurology deals with many kinds of disorders of the brain and the nervous system which control all of our mental and physical functions, including our muscular functions. Therefore a tremendous variety of neurological and neuromuscular disorders exist. And many of them are intractable, including neurodegenerative disorders like Parkinson’s disease and Amyotrophic Lateral Sclerosis, and Creutzfeldt Jakob disease as a representative example of prion diseases. In particular, dementia in today’s aging society is considered to be a pressing issue, with over 46 million affected patients around the world. I have learned that the World Health Organization, and the World Federation of Neurology, the organizer of this Congress are playing leading roles in global collaborations to improve the care and treatment of dementia through education and research.

Since the first Congress took place in 1931, neurology and the diagnosis and treatment of neurological disorders have made remarkable progress. However, there are still many illnesses and related disabilities that await the development of new methods of cure and treatment. It is my wish that this Congress will contribute to overcoming many neurological and neuromuscular disorders at the earliest possible date.

In concluding my address, I hope that this Congress will be a fruitful opportunity to exchange information for you all, and thereby lead to the further advancement of the World Federation of Neurology and its member societies.

平成29年度全国都市緑化祭
平成29年9月20日(水)(富士森体育館)

 平成29年度「全国都市緑化祭」が、ここ八王子市で開催され、日頃から、全国各地で都市の緑化を推進しておられる皆様と共に出席できましたことを誠に嬉しく思います。

 都市を豊かに彩る草木や花は、私たちの暮らしに豊かさと安らぎをもたらしてくれます。また、これら植物は、景観の形成や生物多様性の保全、二酸化炭素の吸収源、そして防災性の向上など、多くの機能を有しており、また地球環境問題への対応をはじめ、大切な役割を果たしております。

 このような中、都市緑化の推進を図り、潤いのあるまちづくりを目指して開催される全国都市緑化祭には、誠に意義深いものがあると考えます。

 このたびの「第34回全国都市緑化はちおうじフェア」は、八王子市の市制100周年記念の中心的事業として、『自然とまちと人を結ぶ「みどりの環境調和都市」』のテーマのもと、主会場の富士森公園をはじめ、市内6地域のサテライト会場、市内各地のスポット会場が連携して全市的に開催されております。

 「富士森公園」では、陸上競技場の100m走路を活用した市民の植栽による100周年アーカイブガーデンや、花とみどりの中で八王子ならではの「食」を楽しめるガーデンレストランをはじめ、多くの演出がなされていると伺っております。また、サテライト会場では、森や里山、そして河川など、各地域の特徴を生かした参加体験型のイベントが行われ、さらにスポット会場の壁面アートや街かど花壇などが緑化フェアに彩りを添えているとのことです。

 これらの会場においては、来場する多くの人々が、植物とともにある暮らしの素晴らしさに触れることができることでしょう。そして、多様な交流が促進されるとともに、古より日本に受け継がれてきた花や緑を愛でる文化が継承されていくことが期待できるのではないかと思います。

 本フェアを通じて、改めて花や緑が持つ効果が認識され、人と自然が共存し、自然と調和したまちづくりの実践に繋がっていくことを願っております。

 終わりに、このたびの全国都市緑化祭をひとつの契機として、ここ八王子から緑化推進の運動の輪が更に大きく、世代や地域を超えて広がっていくことを祈念し、私の挨拶といたします。

2017年(第28回)福岡アジア文化賞授賞式
平成29年9月21日(木)(アクロス福岡)

 ここ福岡県において、7月の九州北部豪雨により甚大な被害が生じました。亡くなられた方々に深く哀悼の意を表しますとともに、被災された方々にお見舞いを申し上げます。本日、福岡アジア文化賞の授賞式に先立ち、朝倉市を訪ね、被災地を視察し、また被災された方々にもお目にかかりました。改めて被害の深刻さを痛感するとともに、被災地の復興が進み、元の平穏な暮らしが戻ることを切に願っております。

 本日、「第28回福岡アジア文化賞」の授賞式に皆様とともに出席できましたことをまことに嬉しく思いますとともに、受賞をされる4名の方々に心からお祝いを申し上げます。

 世界的にグローバル化が進展する近年、私たちはその利便性をさまざまな面で享受しております。しかし、そのいっぽうでは画一化、均質化された思考方法や生活様式が広まっていることも指摘されるようになり、それぞれの国や地域が有する固有の文化やその多様性の重要さへの認識が高まってまいりました。そして、その土台の下に、新たな文化の創造にも多くの努力が重ねられております。

 私自身、東南アジアを中心にアジア諸国を訪れる機会がたびたびあり、多様な風土や自然環境が創り出し、長い期間にわたって育まれてきた各地固有の歴史や言語、民俗など、文化の深さや豊かさに関心をもつとともに、それらを保存・継承していくことの大切さを強く感じております。

 28回目を迎える「福岡アジア文化賞」は、古くからアジア各地で受け継がれている多様な文化を尊重し、その保存と継承に貢献するとともに、新たな文化の創造、そして、アジアに関わる学術研究に寄与することを目的として、それらに功績のあった方々を顕彰するものであり、大変意義深い賞であると言えましょう。その意味において、本日の受賞者の優れた業績は、アジアのみならず広く世界に向けてその意義を示し、また社会全体でこれらを共有することによって後世へと引き継ぐ人類の貴重な財産になることと考えます。

 終わりに、受賞される皆様に改めて祝意を表しますとともに、この福岡アジア文化賞を通じて、アジア諸地域に対する理解、そして国際社会の平和と友好が一層促進されていくことを祈念し、私のあいさつといたします。

「平成29年度(第26回)ブループラネット賞」表彰式典
平成29年10月18日(水)(パレスホテル東京)

 本日、第26回ブループラネット賞表彰式において、栄えある賞を受けられましたドイツのハンス・ヨアヒム・シェルンフーバー教授ならびに米国のグレッチェン・カーラ・デイリー教授に心からお祝いを申し上げます。

 近年、私たち人類は暮らしの豊かさと利便性を求め、科学・技術の進歩とそれに伴う経済の発展とを目指してまいりました。しかし、一方で経済活動は地球環境や生態系に大きな影響を与えています。たとえば気候変動に伴う異常気象や、生物多様性の減少などの自然の変化は、今では世界中が幅広く認識する事象となっております。人類が地球環境や生態系に与えている影響を正しく理解し、その上で今後の人々の営みについての議論と具体的な行動が求められております。

 このような状況のもと、本日の受賞者が、ご自身の理論を築きあげるとともに、卓越した行動力によって国際社会に警鐘をならし、今後の人々の活動のあり方に道筋を示してこられたことは、大変意義深いことであります。

 このたびの受賞者、ならびに歴代受賞者をはじめ環境問題を深く多面的に考察している方々が主導的な役割を担い、人類の英知を結集して持続可能な地球環境とより良い人々の生活が実現されることを願っております。

 おわりに、すばらしい業績を上げられました本年度の受賞者に心から敬意を表しますとともに、このブループラネット賞が、世界の人々の環境に対する意識を高め、行動を起こす契機となることを祈念して、私の挨拶といたします。

出島表門橋完成記念式典
平成29年11月24日(金)(出島表門橋公園)

 本日、オランダ国ローレンティン妃殿下ご臨席のもと、出島表門橋の完成を、出島復元整備事業に関係する日蘭両国の方々、ならびに地元である長崎市の皆様とともにお祝いできますことを誠にうれしく思います。

 30年近く前、研究の一環で度々にオランダを訪ね、当時のベアトリクス女王陛下やウィレム・アレクサンダー皇太子殿下、そしてローレンティン妃殿下のご夫君であられるコンスタンタイン殿下に大変よくしていただきました。さらに当時は学生であったことから、ライデンやアムステルダムで十分に資料を調べる時間を持てたことなど、大変よい想い出があります。そのような者として、このたび日本とオランダの「新たな架け橋」として、表門橋が完成したことを大変喜ばしく思います。

 日本とオランダには400年以上に亘る交流の歴史があります。江戸幕府の鎖国政策の中、オランダは日本にとって西欧の文化を伝えてくれる唯一の窓口であり、蘭方医学をはじめ、ここ出島を通じて日本に入ってきたヨーロッパの自然科学や人文科学、測量や製鉄などの諸技術、そしてオランダ語は、蘭学として日本各地に広がり、日本の近代化の礎となりました。

 この日蘭両国の友好関係の象徴の一つである出島の復元整備事業は、1951年以降、現在まで60年以上にわたり続けられており、これまでに復元された19世紀初頭の建造物は16棟に及ぶと伺っております。そして本日、往時と同じく橋を渡って出島に出入りすることができるようになるという記念すべき日を迎えました。ここに至るまでの過程ではさまざまな困難があったと思われ、本事業に携わってこられた多くの皆様に心から敬意を表しますとともに、今後、次なる段階の出島の復元に向けて事業が進んでいくことを
願っております。

 おわりに、このたびの表門橋の完成が「新たな交流の始まり」となり、4世紀にわたる日蘭両国、また、長崎とオランダとの友好関係がさらに発展することを祈念し、本式典に寄せる言葉といたします。

大日本水産会「平成29年度水産功績者表彰式」
平成29年12月1日(金)(三会堂ビル 石垣記念ホール)

 本日、大日本水産会「平成29年度水産功績者表彰式」が、全国各地から多くの受章者を迎えて開催されますことを誠に喜ばしく思います。受章される皆様に心からお祝いを申しあげます。また、かねてより魚をはじめとする水族に親しんできた私にとり、水産業に深く携わっておられる皆様とお会いできましたことを大変嬉しく思います。

 大日本水産会は、水産業の振興を図り、その経済的・文化的発展を推進することを目的として、明治15年に創立され、爾来、水産業振興のため様々な事業を展開してこられました。中でも明治23年から行われている「水産功績者表彰」は特に重要な事業として位置付けられております。本表彰は今年で101回目となり、総受章者数は3119名を数えます。そして、かつての受章者を見ますと、日本史の一幕にその名を刻んだ人名もあり、改めて本会の歴史を感じます。

 周囲を海に囲まれ、また湖沼や清流にも恵まれている我が国では、かねてより漁業や養殖業、そしてそれに関連する加工業や流通業が発展してまいりました。皆様は、それら各分野の振興に力を尽くしてこられましたが、水産業は、鮮度と安定的な供給が求められる産業であり、長年にわたる取り組みにおいては、さまざまなご苦労があったことと推察し、ここに深く敬意を表したく思います。

 我が国では、遺跡から出土する遺存体からもわかりますように、古より身近で貴重なタンパク源としての魚介類に親しんでまいりました。また、海外においては和食が以前にも増して好まれるようになり、我が国の食文化、とりわけその中心的な存在である魚介類が注目されております。このように、水産業は大変重要な産業でありますが、昨今の水産業を取り巻く状況に目を向けますと、昨年来のサケ、サンマ、イカなどの不漁に見られるような水産資源の減少や漁業の担い手不足など、様々な課題があります。

 このような状況のもと、皆様には、本日の受章を一つの契機とされ、今後とも健康に留意されつつ、後進の育成などを通じ、日本の水産業の維持と発展のために活躍されますことを期待いたしております。

 終わりに、大日本水産会が今後ますます発展し、水産業の振興に一層貢献されることを祈念し、私の挨拶といたします。