主な式典におけるおことば(平成30年)

文仁親王殿下のおことば

第58回交通安全国民運動中央大会
平成30年1月19日(金)(文京シビックホール)

 本日、「第58回交通安全国民運動中央大会」が開催され、皆様とともに出席できましたことを誠に喜ばしく思います。そして、日ごろの交通安全運動への功績に対して表彰を受けられる方々に心からお祝いを申し上げますとともに、長年にわたるご尽力に深く敬意を表したく思います。

 私たちは平素の移動手段として、自動車や自動二輪車、自転車を始めとする車両を利用しております。いっぽう、道には、それら車両とともに徒歩や車椅子等による人々の往来も多数あります。そのような状況から、路上における交通事故は、誰にでも起こり得ることと言えます。これらの事故をなくしていくためには、私たち一人ひとりが、交通事故を防止しようとする自覚をもって交通道徳を高めるとともに、それを実践していく必要がありましょう。

 このような中、「交通安全思想普及の国民運動」を展開することを目的として設立された全日本交通安全協会が、本大会をはじめ研修会の開催や教育資料の配布など、さまざまな事業を展開していることは、大変意義深いことであります。
 交通事故による昨年の死亡者数は3694人で、2年連続で3千人台になるとともに、1948年の統計開始以来最も少ない人数となりました。このことは、皆様の長年にわたる交通安全運動に対するたゆみない努力の結果であると思います。

 しかしながら、交通事故は、未だに年間50万件近く発生しており、あとを絶ちません。なかでも、交通事故死者数全体に占める高齢者の割合は50%強で推移しており、高齢者の事故防止対策は今後の課題の一つになると思われます。このように、かけがえのない多くの命が失われている今日、交通事故のない、安全で快適な交通社会の実現は、私たちの願いであります。

 その意味から、毎年開催される本大会は、関係者が一堂に会して諸問題を話し合う大切な機会であります。この大会を一つの契機として、私たち皆が交通安全を自らの問題として考えるとともに、交通安全運動が一層推進されていくことを祈念し、大会に寄せる言葉といたします。

第23回オリンピック冬季競技大会(2018/平昌)日本代表選手団結団式
平成30年1月24日(水)(大田区総合体育館)

 本日、2月9日から大韓民国の平昌郡において開催される第23回オリンピック冬季競技大会に参加される選手および役員の皆さまとお会いできましたことを誠に嬉しく思います。そして、選手の皆さまには、厳しい選考によって、この大会の日本代表になられたことをお慶び申し上げます。

 このたびのオリンピック競技大会においては、スノーボードの「ビッグエアー」やスピードスケートの「マススタート」等が新たに加わり、種目数で前回のソチ大会を上回る7競技102種目が実施されると伺っております。

 競技に参加される皆さまには、くれぐれも健康に留意されるとともに、競技の場に臨んでは、日頃の練習の成果を存分に発揮し素晴らしいパフォーマンスを見せていただくことを願っております。

 そして、豊かな自然を有する平昌において、現地の風土に親しみ世界各地から集う人々との交流を深め、スポーツを通じての国際親善に努めて頂くことを期待しております。

 終わりに、皆さまのご活躍をお祈りし、結団式に寄せる言葉といたします。

第14回日本学術振興会賞並びに日本学士院学術奨励賞授賞式
平成30年2月7日(水)(日本学士院)

 本日、「第14回日本学術振興会賞並びに日本学士院学術奨励賞授賞式」が開催され、皆様にお会いできましたことを誠にうれしく思います。また、今回受賞された皆様に心からお祝いを申し上げます。

 学術研究は、研究者の知的好奇心と自由な発想が原点となり、研究を進めることによって様々な成果につながり、さらにその先の多様な展開を見せるものであると推察いたします。このことは、知の創造による未来への躍動と言えるかも知れません。そのいっぽうで、人類社会は多くの困難な課題に直面しており、多様な学術領域における課題解決への貢献は必要不可欠なものとなってきております。

 このような状況に鑑みますと、先駆的な若手研究者の活動を促進することは、学術の進展と社会への貢献の増大にとってきわめて大切なことであると言えましょう。その意味で、我が国の学術研究を支える日本学術振興会と日本学士院が協力して、人文学、社会科学から自然科学にわたる多くの分野の若手研究者を顕彰し、その研究意欲を高め、研究の発展を支援しようとすることには、大きな意義を感じます。
 
 このたび受賞の栄に浴された皆様は、これまでに大変優れた業績をあげておられますが、今後も、この受賞を契機の一つとして、さらに充実した研究を進められ、世界的に活躍されることを願っております。

 終わりに、関係の皆様のご尽力により、日本の学術研究の進展が一層図られることを心より祈念し、式典に寄せる言葉といたします。

「全国学校・園庭ビオトープコンクール2017」発表と交流大会
平成30年2月11日(日)(伊藤国際学術研究センター伊藤謝恩ホール)

 本日、「全国学校・園庭ビオトープコンクール2017」の発表と交流大会が開催されるにあたり、皆さまと共に出席できましたことを、たいへん嬉しく思います。そして、この度、各賞を受賞される皆さまに心よりお祝いを申し上げます。

 自然は、多様な生き物が暮らしていく場であるとともに、地球温暖化の防止や災害による被害の軽減をはじめ、多くの機能を有しております。そして、その自然の活用は、教育や保育においても大切なものと考えられており、なかでも幼児教育や保育においては、自然との触れ合いが子どもの豊かな感性や思いやりの心を育てると言われています。また、学校教育では、自然とそこに生息する生物を観察することにより、児童・生徒たちの興味や関心を喚起し、探究する力を育てるとともに、その中から今までにない知見が得られることがあります。

 子どもたちの周りから身近な自然が少なくなりつつある今日、学校や園庭に作るビオトープは、さまざまな面で、園児・児童・生徒たちの成長に資する大切な空間であると言えましょう。この度のコンクールにおける受賞事例では、身近な自然を積極的に活用した、興味深い取り組みが紹介されています。このような活動は、これからの教育や保育にとっての参考事例になりましょうし、現在国際社会が求めている持続可能な社会に向けた人づくり、そして地域づくりにも大きく貢献する意義深いものと考えます。

 終わりに、本コンクールも今回で10回目を迎え、身近な自然の大切さが広く認識されるようになってまいりましたが、このことは、これまで活動に携わってこられた多くの方々のご尽力によるものであり、ここに深く敬意を表します。そして学校ビオトープ、園庭ビオトープの取り組みが、今後も日本各地で普及し、自然を慈しむ心の輪が広がっていくことを祈念し、私の挨拶といたします。

「平昌2018パラリンピック冬季競技大会」日本代表選手団結団式
平成30年2月26日(月)(虎ノ門ヒルズフォーラム)

 本日、3月9日から大韓民国の平昌郡において開催される「平昌2018パラリンピック冬季競技大会」に参加される選手および役員の皆さまとお会いできましたことを誠に嬉しく思います。そして、選手の皆さまには、厳しい選考によって、この大会の日本代表になられたことをお慶び申し上げます。

 このたびのパラリンピック競技大会においては、スノーボードが新たに独立した競技として加わり、6競技80種目が実施され、日本代表選手はそのうちの5つの競技に出場されると伺っております。皆さまが活躍される姿を、多くの人々が楽しみにしていることでしょう。

 報道等によりますと、現地平昌はことのほか寒いとのことです。そのような中、皆さまには、くれぐれも健康に留意をされつつ、日頃の練習の成果を存分に発揮され、素晴らしいパフォーマンスを見せていただくことを願っております。

 そして、豊かな自然を有する平昌において、現地の風土に親しむとともに、世界各地から集う人々との交流を深め、スポーツを通じての国際親善に務めていただくことを期待いたしております。

 終わりに、皆さまのご活躍をお祈りし、結団式に寄せる言葉といたします。

東日本大震災七周年追悼式
平成30年3月11日(日)(国立劇場)

 2011年3月11日、東北地方を中心に東日本を襲った未曽有の地震とそれに伴う津波により、2万人を超える死者及び行方不明者が生じました。震災発生後、刻々と伝えられる現地の状況と押し寄せてくる津波の映像は、7年を経た今でも決して脳裏から離れるものではありません。ここに一同と共に、震災によって亡くなった人々とその遺族に対し、深く哀悼の意を表します。

 大震災からの7年間、被災地において、人々は幾多の困難を乗り越え、手を携えて、復興に向けての努力を弛みなく続けてきました。こうした努力を支援するため、国や全国の自治体、そして国内外の多くの人々が、様々な形で力を尽くしてきました。

 その結果、住宅の再建や高台移転、産業の回復、生活環境の整備、防災施設の整備など多くの進展が見られました。また、原発事故により避難を余儀なくされた地域においても、帰還して生活を再開できる地域が少しずつ広がってきております。多くの悲しみや困難の中にあった子どもたちも、未来に向けてたくましく成長しています。

 しかし、その一方では、今なお多くの被災者が、被災地で、また、避難先で、依然として不自由な生活を続けている厳しい現実があります。とりわけ、帰宅可能な地域が広がる中、いまだに自らの家に帰還する見通しが立っていない人々も多いこと、基準に照らして放射線量の問題がない場合であっても、農林水産業などに影響が残っていることを思うと、心が痛みます。さらに、避難生活が長期化する中で、高齢者を始めとする被災者の心身の健康のことは、深く心に掛かります。
 困難な状況にいる人々、一人ひとりが取り残されることなく、健やかで平穏な生活を送ることができるよう、また復興の歩みが着実に進展していくよう、これからも国民が心を一つにして被災した地域や人々に末永く寄り添っていくことが大切でありましょう。

 東日本大震災の大きな犠牲の下で、私どもは日頃の防災訓練や防災教育、そして過去の災害の記録と記憶の継承がいかに大切であるかを学びました。この教訓を決して忘れることなく、私たち皆が防災、減災の心を培うとともに、それを次の世代に引き継ぎ、災害の危険から多くの人々が守られることを心より願っております。

 今なお困難を背負いながらも、復興に向けて日々努力を続けている人々に思いを寄せ、一日も早く安らかな日々が戻ることを皆で祈念し、御霊への追悼の言葉といたします。

「第27回地球環境大賞」授賞式
平成30年4月9日(月)(明治記念館)

 本日、第27回「地球環境大賞」の授賞式にあたり、皆様とともに出席できましたことを、大変うれしく思います。また、このたび各賞を受賞される方々に心からお祝いを申し上げます。

 近年、地球温暖化の防止や生物多様性の保全など、環境諸問題に対する人々の関心や意識は、その高まりとともにグローバルな広がりを見せております。いっぽう、気候変動が大きな要因とみられる自然災害が世界各地で数多く発生しており、わが国においても豪雨や豪雪など、その甚大な被害が人々の生命と生活に大きな影響を及ぼしています。地球環境に関わる問題を考えるとき、自然環境の保全とともに、防災や減災についての意識を今以上に高めつつ、私たちが如何にして自然と共存していくか、その方途を探求する必要性を強く感じます。

 今年で27回目を迎えた、地球環境大賞は、環境を守りながら発展する産業や、持続可能な循環型社会の実現に寄与する製品や技術の開発など、環境保全の取り組みを顕彰することで、社会への貢献を目的として創設されました。そして産業界に始まり、自治体、学校、市民グループへと表彰の対象を広げながら、環境活動に熱心に取り組む人々を広く顕彰することによって、地球環境の保全、人々の環境意識を高めることに貢献してまいりました。

 2015年の国連サミットで採択された「持続可能な開発目標」や、温暖化防止のための新たな国際的枠組みである「パリ協定」が注目を集めるなか、今後とも、わが国は、その優れた環境関連技術や知識をもって世界に貢献していくことが求められましょう。

 終わりに、受賞者をはじめとする皆様が、今後とも地球環境の保全に積極的に取り組んでいかれることを期待するとともに、その活動がより一層広がりを見せることを祈念し、私のあいさつといたします。

一般社団法人JFTD創立65周年記念式典
平成30年4月13日(金)(グランドアーク半蔵門)

 「一般社団法人JFTD」が創立から65年の節目を迎えるにあたり、本日その記念式典が開催され、全国から集われた皆さまとともにお祝いできますことを誠に喜ばしく思います。

 花キューピットの愛称で知られる「一般社団法人JFTD」は、1953年、通信による遠隔地への生花配達システムとして、わずか22の加盟店によって創立されました。爾来、その理念である「親和と誠実」をもって、花による豊かで平和な国づくりと花を贈る文化の普及を目指して、弛ゆみない努力を続けてこられました。
 そして65年を経た今日、3,800店の会員からなる我が国最大の生花通信配達組織として、花き産業の発展に力を尽くしておられます。

 近年では、2014年に「花きの振興に関する法律」が制定されたことを受け、生産や流通等の関係者と協力し、週末に家庭で花と緑を楽しむ「フラワー・フライデー」や職場の雰囲気を明るく和らげるための「フラワー・ビズ」、「花きの日持ち性の向上の対策」などを推進しておられます。

 また、明日からは、5年に1度開催される「グランドチャンピオン選手権」をはじめ各種展示など、幅広く花の楽しみを普及するイベント「フラワー・ドリーム」が開催されると伺っております。

 このようにJFTDが、暮らしに潤いを持たせてくれる花と人とが心を通わせる、花贈り文化の発信の中心的な役割を担い、花を愛でる環境とそれにまつわる文化の普及と定着に積極的に取り組まれていることは、大変意義深いことと思います。

 おわりに、この度の創立65周年を一つの契機として、「一般社団法人JFTD」が一層発展されることを祈念し、式典に寄せる言葉といたします。

全国盲老人福祉施設連絡協議会創立50周年記念式典 
平成30年4月16日(月)(ホテルグランドヒル市ヶ谷)

 本日、「特定非営利活動法人 全国盲老人福祉施設 連絡協議会」の創立50周年の記念式典が開催され、皆様と共にお祝いできますことを大変嬉しく思います。

 日本で最初の盲老人ホームは、1961年に奈良県の壺阪寺境内に、時の住職常盤勝憲氏のひとかたならぬ尽力により、養老施設として設立された慈母園と伺っております。その後、東京都に聖明園と第二聖明園、広島県に白滝園が開設され、これら4施設が協力をし、盲老人のための施設を充実させていくため、1968年4月に本協議会が創設されました。

 創設当時から、全国において盲老人のための施設の必要性は高く、わずか5年後には22施設、そして2014年までに51の盲老人ホームが開設されました。このようにして、利用者の豊かな生活が護られてきたことは、日本の高齢者福祉の中でも高く評価されるべきことと思います。

 さらに、視覚障害者の入所している特別養護老人ホームや高齢聴覚障害者老人ホームも協議会に加盟をし、施設間の緊密な連携を保つとともに、専門性の高いケアを実践するため、職員研修に力を注いでおられると聞き及んでおります。

 また、創立40周年を記念して創設された「太陽福祉文化賞」も今回で10回目を迎えました。本日受賞された方々、ならびに感謝状を贈呈された元役員の方々に、心からお祝いを申し上げます。

 終わりに、本間昭雄名誉会長をはじめ、会員および関係者が、永年にわたり、障害をもつ高齢者の福祉と文化の向上に尽くして来られたご労苦に対し、深く敬意を表するとともに、2011年に特定非営利活動法人として新たなスタートを切った「全国盲老人福祉施設連絡協議会」がますます発展されますことを祈念し、お祝いの言葉といたします。

第28回森と花の祭典―「みどりの感謝祭」式典
平成30年5月12日(土)(イイノホール)

 第28回森と花の祭典-「みどりの感謝祭」が開催され、緑の少年団など日頃から全国各地で緑化活動に取り組んでおられる皆さまと共に出席できますことを、誠に嬉しく思います。

 「みどり」は、私たちの日々の暮らしに潤いや豊かさをもたらしてくれるとともに、生物多様性の保全や地球温暖化の防止に寄与するなど、多くの大切な役割を担っております。

 このようにかけがえのない「みどり」を後世へと引き継いでいくことは、人類はもとより、地球上に暮らす数多の生き物たちにとって大変重要なことと考えます。そして、このことを実現させるためには、私たち一人ひとりが森林、樹木、花などの自然とのふれあいを通じて、その恩恵に感謝し、みどりの大切さを改めて認識することが求められております。

 このような中、本日の受賞者をはじめ、長年に亘り、多くの人々が全国各地で、緑を増やし、育て、そして森を活かし、花に包まれる町づくりなどの活動に携わっておられることは、誠に心強いものを感じます。

 「感じよう みどりの恵みと 木のぬくもり」をテーマとして開催される本祭典を一つの契機として、さらに多くの人々が身近な森や花に関わる活動に参加し、緑の輪が全国各地へと広がっていくことを祈念し、「みどりの感謝祭」に寄せる言葉といたします。

2018年度国際青年会議所アジア太平洋地域会議鹿児島大会開会式
平成30年5月24日(木)(鹿児島アリーナ)

 本日、雄大な桜島や波静かな錦江湾に代表される自然景観に恵まれた、ここ鹿児島の地において、「2018年度国際青年会議所アジア太平洋地域会議鹿児島大会」が開催され、国の内外から参加された多くの皆様とともに出席できましたことを大変うれしく思います。

 国際青年会議所は、「積極的な変化を創り出すために必要な指導者としての力量、社会的責任、友情を培う機会を若い人々に提供することにより、地球社会の進歩発展に資すること」を目的として1944年に発足した、若きビジネスリーダーの国際組織であると伺っております。

 この国際青年会議所の構成メンバーである国内外の青年会議所の皆様が一堂に会し、アジア太平洋地域や世界のさらなる発展について意見を交わしつつ、認識を共有していくことは、大変意義深いことと考えます。

 このたびの大会テーマは「CHESTO ! Moving Forward Boldly」であり、そのもとで、「アジア太平洋の新たなアライアンス構築」と「恒久的世界平和の実現」に向けた様々な取り組みが行われると伺っております。皆様が単に経済的な交流にとどまらず、人と人とのつながりや相互理解を推進し、今まで以上に交流を深めていかれることを期待いたします。

 終わりに、この大会が皆様にとって実り多きものになるとともに、国際青年会議所が、人と地域そして世界を結ぶ架け橋として、ますます発展されることを祈念し、大会に寄せる言葉といたします。

明治150年記念式典
平成30年5月25日(金)(鹿児島県総合体育センター体育館)

 本年は、1868年に慶応から明治へと元号が代わり、日本が近代国家に向けて、その第一歩を踏み出してから150年目の年に当たります。その節目の年にあたり、次の世代を担う多くの方々の参加も得て、本日、「明治150年記念式典」が開催されます。
 
 今から150年前、新政府は、身分制の廃止、公論の重視などの改革に着手しましたが、このような改革が実行可能であったのは、250年を超える平和な江戸時代に培われた、多様な学問と文化の力が、我が国の社会のすみずみまで豊かに蓄積されていたからだと言えましょう。爾来、国民の弛みない努力により、今日の繁栄が築き上げられました。

 いっぽう、この150年間の歴史には、輝かしい近代化の歩みと同時に、幾度かの戦争の経験など、さまざまな明暗があったことも忘れることはできません。この明治150年をひとつの契機として、日本の近代がどのような時代であったのかを学ぶ機会にすることも大切でありましょう。

 ここ鹿児島県からは、幕末維新期に多くの人材が輩出されました。皆様が、この機会に、当地における150年の歴史に思いを馳せるとともに、先人たちの偉業も含めた薩摩の風土の特質を後世に伝えていくべく、気持ちも新たに本式典を開催されることは、これからの我が国を背負っていく人々にとって大きな励みになるものと考えます。

 終わりに、本年が一堂に会された皆様にとって意義深い年になるとともに、未来に向けて新たな一歩を踏み出そうとしている鹿児島県の発展を祈念し、式典に寄せる言葉といたします。

結成70周年記念 第71回全国盲人福祉大会 記念式典
平成30年6月13日(水)(東京文化会館)

 「社会福祉法人日本盲人会連合」が結成から70年目を迎え、本日「結成70周年記念 第71回全国盲人福祉大会 記念式典」が開催されますことを心よりお慶び申し上げます。
 また今回、各賞の表彰を受けられる方々にお祝いを申し上げますとともに、長年にわたるご尽力に深く敬意を表します。

 日本盲人会連合は、自らも視覚や聴覚などに障害を持ちながら障害者の福祉や教育に尽力したヘレン・ケラー女史の2度目の来日を契機として、1948年8月、大阪・二色の浜の地に結成されました。爾来、視覚に障害がある人々の福祉の向上と社会への完全参加を目指し、関係者のたゆみない努力によって、積極的な活動を展開してこられました。このことにより、視覚に障害がある多くの人々の福祉と生活の向上が図られてきたことを、誠に喜ばしく思います。

 近年、障害者支援や障害者雇用促進などに関する国内法令の整備や、「障害者の権利に関する条約」の締結など、障害者に係る諸施策が着実に推進されていることは、大変意義深いことと思います。

 そのいっぽう、地域生活への移行を希望する障害者の増加や障害者の高齢化などの課題があることから、障害者や障害者を支えている関係の皆様には、大変なご苦労があるものと推察をいたします。

 このようななか、このたびの70周年が一つの契機となり、国民一人ひとりが、障害や障害のある人に対する理解を深め、全ての国民が、障害の有無により分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら暮らす社会が実現されることを期待しております。

 おわりに、日本盲人会連合が、障害者の自立と社会参加の一層の推進に向けて、これからも我が国において大きな役割を果たしていかれることを祈念し、式典に寄せる言葉といたします。

平成30年 第15回海フェスタ「海フェスタにいがた」記念式典
平成30年7月19日(木)(新潟市民芸術文化会館)

 はじめに、このたびの「平成30年7月豪雨」により多数の死者と行方不明者が生じました。亡くなられた方々に哀悼の意を表しますとともに、被災された方々へお見舞いを申し上げます。そして、被災地の速やかな復興を願っております。

 「海フェスタにいがた」が、港の繁栄とともに発展してきた新潟市・佐渡市・聖籠町において開催され、本日の記念式典に皆様とともに出席できましたことを大変嬉しく思います。

 新潟港は信濃川、阿賀野川の河口に位置する港として栄え、江戸時代には、北前船の日本海側最大の寄港地として繁栄いたしました。そして開港などを取り決めた通商条約である安政の五カ国条約により、1869年には新潟港とその補助港である佐渡夷港が開港し、現在では、新潟西港・東港、両津港を海の玄関口としてまちづくりが進められていると伺っております。

 1869年に開港し、来年1月1日に150年を迎えるこの地域において「海フェスタにいがた」がキャッチフレーズである「学んで、遊んで、食べて。海がもっと好きになる」のもとに開催されますことは、海からの幸はもとより、港や河川の役割、そして海上交通の歴史などへの理解を深めていく上で、誠に意義深いものがあると思います。

 四方を海に囲まれた我が国は、古来より海と深く関わってきました。海は人々を引き付け、国内外との様々な交流を通じ、人々の豊かな暮らしに寄与してきました。私達はこのような海に感謝するとともに、関連する港や河川を含め、それらの多面的な役割や重要性を正しく認識し、後世に伝えていく必要があると言えましょう。「海フェスタにいがた」が、そのひとつの契機となることを願っております。

 終わりに、本日、栄えある表彰を受けられる方々に心からお祝いを申し上げますとともに、ここにお集まりの皆様の一層のご活躍を祈念し、私のあいさつといたします。

比較法アカデミー第20回国際会議開会式
平成30年7月23日(月)(国立大学法人九州大学伊都キャンパス椎木講堂)

 

It is a great pleasure for me to attend this opening ceremony today of the 20th General Congress of the International Academy of Comparative Law, or IACL, with many participants from both Japan and abroad.

I understand that the first General Congress of the IACL was held in 1932, and that the IACL has held a General Congress every 4 years since 1950.
  I am delighted that this 20th General Congress is being held here in Fukuoka, a city with a long history of international exchanges.

This year marks 150 years since Japan established a new government in 1868, which was the first step towards a modern nation.
  One of the most important pillars of the modernization of our nation was the introduction of a legal system comparable with that of Western countries.
  Within around 30 years from embarking on its program of modernization, Japan had established codes in all major fields of law.
  The Constitution promulgated in the Meiji era was one of the earliest modern Constitutions outside the Occidental world.
  It was drafted after an extensive examination of overseas constitutional systems at the command of Emperor Meiji.
  Also, the Japanese Civil Code was completed after a comprehensive investigation of the legal systems of 22 jurisdictions.
  These codifications can be regarded as real achievements of comparative law.

I have learned that this Congress, in more than 40 sessions, will hold discussions and exchange views on many legal issues, including those arising from new technology and innovation, such as big data, artificial intelligence, and autonomous driving.
  I believe that it is of great significance to collect wisdom from experts worldwide to provide solutions for various contemporary issues by comparing legal systems in different jurisdictions.

In concluding my address, I sincerely hope that this Congress will be fruitful to you all, and that the IACL will fully perform its role in presenting a path for solving key challenges for the development of various societies of the world.

第42回全国高等学校総合文化祭「2018信州総文祭」
平成30年8月7日(火)(まつもと市民芸術館)

 第42回全国高等学校総合文化祭が、美しい山々と清流が織りなす雄大な自然に包まれたここ長野の地で開催され、全国各地そして海外から参加された多くの方々と共に、総合開会式に出席できましたことを大変嬉しく思います。

 ご存知のように、「平成30年7月豪雨」では、広域にわたり甚大な被害が生じました。この災害により、今回参加を予定していながらも、それが叶わなかった方々もおられます。また、皆様の中には大きく被災している地域から来られている方もおられましょう。ここに、心からのお見舞いを申し上げます。

 さて、全国高等学校総合文化祭は、芸術文化活動に取り組む高校生の祭典として、これまでも開催地の高校生が主体となり、地域の特性と高校生ならではの感性を活かした大会づくりがなされてきました。

 このような芸術文化の祭典が、次世代を担う人々によって毎年開催されていることは、芸術文化に対する国民の理解と参加意欲をさらに高めるとともに、多様な才能を開花させ、未来に向けた豊かな文化創造の土壌を培う上で、誠に意義深いものと考えます。

 今回のテーマは、「みすずかる信濃に若木は競い森を深める山脈渡る風に種子を拡げて」であります。参加される皆様が、日頃の活動の中で培われた創造性を発揮し、それを全国へと発信していくとともに、参加者相互の交流を通じて国の内外に文化・芸術、そして友好の輪を広げていかれることを期待いたしております。

 終わりに、本大会の開催へ尽力された多くの関係者の熱意と努力に深く敬意を表しますとともに、「2018信州総文祭」が皆様の心に末永く残るすばらしい大会となることを祈念し、私の挨拶といたします。

第18回アジア競技大会(2018/ジャカルタ・パレンバン)日本代表選手団結団式
平成30年8月13日(月)(グランドプリンスホテル新高輪)

 本日、インドネシア共和国の首都ジャカルタおよび南スマトラ州の州都パレンバンにおいて開催される「第18回アジア競技大会」の「日本代表選手団結団式」にあたり、参加される日本代表選手団の皆様とお会いできましたことを大変嬉しく思います。

 選手の皆様には、このたび、日本代表に選ばれ、この結団式に臨まれたことを心からお祝いいたします。

 インドネシア共和国で開催されるアジア競技大会は、1962年のジャカルタ大会以来56年ぶり2回目の開催となり、今大会は、40競技465種目が実施されると伺っております。

 皆様は、国内の厳しい選考を経てこの大会に参加される訳ですが、アジアの各地域から参加する人々との交流を深め、スポーツを通じての国際親善に努められることを期待しております。

 なお、このたびのアジア競技大会が開催されるインドネシアのロンボク島において、先月末から大規模な地震が続き、甚大な被害が生じております。競技大会の会場とは異なる島でありますが、皆様には、是非、そのことを心にとめておいていただきたく思います。

 終わりになりますが、皆様には体調管理に十分留意され、日頃の練習の成果を存分に発揮されるよう祈念し、結団式に寄せる言葉といたします。

「2018年(第29回)福岡アジア文化賞」授賞式
平成30年9月20日(木)(アクロス福岡)

 本日、第29回福岡アジア文化賞の授賞式が開催されるにあたり、大賞を受賞される賈樟柯(Jiǎ zhāng kē)氏、学術研究賞を受賞される末廣昭氏、そして芸術・文化賞を受賞されるティージャン・バーイー氏に心からお祝いを申し上げます。 

 世界的にグローバル化が進展する近年、私たちはその利便性をさまざまな面で享受しております。しかし、その一方では、画一化、均一化された思考方法や生活様式が広まっていることも指摘されるようになり、それぞれの国や地域が有する固有の文化やその多様性の大切さに対する認識が高まってきております。そして、その下で新たな文化の創造も盛んに行われるようになりました。

 私自身、東南アジアを中心にアジア諸国を訪れる機会がたびたびあり、多様な風土や自然環境が作り出し、長い期間にわたって育まれてきた各地固有の歴史や言語、民俗、芸術など、文化の深さや豊かさに関心をもつとともに、それらを保存し、継承していくことの大切さを強く感じております。

 29回目を迎える「福岡アジア文化賞」は、古くからアジア各地で受け継がれている多様な文化を尊重し、その保存と継承に貢献するとともに、新たな文化の創造、そしてアジアに関わる学術研究に寄与することを目的として、それらに功績のあった方々を顕彰するものであり、大変意義深い賞であるといえましょう。

 その意味において、本日受賞される3名の方々の優れた業績は、アジアのみならず広く世界に向けてその意義を示し、また社会全体でこれらを共有することによって、次の世代へと引き継ぐ人類の貴重な財産になることと考えます。

 終わりに、受賞される皆様に改めて祝意を表しますとともに、この福岡アジア文化賞を通じて、アジア諸地域に対する理解、そして国際社会の平和と友好がいっそう促進されていくことを祈念し、私のあいさつといたします。

平成30年度全国都市緑化祭
平成30年10月3日(水)(山口きらら博記念公園)

 はじめに、この数ヶ月にわたり、「西日本豪雨」、「台風第21号」、「北海道胆振東部地震」などによって、各地で甚大な被害が生じました。ここに皆様と共に亡くなった方々に対し心から哀悼の意を表したく思います。そして、今も不自由な生活を余儀なくされながら暮らす被災者、また本日、ここ山口県をはじめ、被災地から参加された方々にお見舞いを申し上げます。各被災地の復旧と復興が速やかに進むことを心から願っております。

 平成30年度「全国都市緑化祭」が、ここ山口県で開催され、日頃から、全国各地で都市の緑化を推進しておられる皆様と共に出席できましたことを誠に嬉しく思います。

 都市を彩る緑豊かな木々や草花は、私たちの暮らしに潤いと安らぎをもたらしてくれます。また、これらの植物は、美しい景観の形成や生物多様性の保全、そして防災性の向上など、多くの機能を有します。それとともに、温暖化に代表される地球環境問題への対応を考えるとき、二酸化炭素の吸収源として、あるいはヒートアイランド対策としての大切な役割も果たしております。

 このような中、都市緑化の推進を図り、緑あふれるまちづくりを目指して開催される全国都市緑化祭には、誠に意義深いものがあると考えます。

 このたびの「第35回 全国都市緑化やまぐちフェア」は、「山口から開花する、未来への種まき」のテーマのもと、ここ山口きらら博記念公園を会場に、県内19の市や町が連携し、全県一体となって開催されております。会場内では、山口県で育てられた1000万の花が咲き誇る大花壇や、山や海の外遊びゾーンをはじめとする多くの夢あふれる演出がなされていると伺っております。

 これらの会場においては、来場する多くの人々が、植物とともにある暮らしの素晴らしさに触れることができることでしょう。
そして、古より日本に受け継がれてきた草花や樹木など、緑を愛でる文化が継承されていくことが期待できるのではないかと思います。
 
 このたびのフェアを通じて、改めて花や緑が持つ効果が認識され、人と自然が共存し、自然と調和したまちづくりの実践に繋がっていくことを願っております。

 終わりに、このたびの全国都市緑化祭をひとつの契機として、ここ山口から緑化推進の運動の輪が更に大きく、世代や地域を超えて広がっていくことを祈念し、私の挨拶といたします。

「平成30年度(第27回)ブループラネット賞」表彰式典
平成30年10月10日(水)(パレスホテル東京)

 本日、第27回ブループラネット賞表彰式において、栄えある賞を受けられましたレジリエンス科学の先駆者であるオーストラリアのブライアン・ウォーカー教授、ならびに水問題が全世界的な課題であることを提唱し続けておられるスウェーデンのマリン・ファルケンマーク教授に心からお祝いを申し上げます。

 近年、私たち人類は暮らしの豊かさと利便性を求め、科学・技術の進歩とそれに伴う経済の発展とを目指してまいりました。しかし、そのいっぽうでは、食糧問題や水問題の解決、経済活動と地球環境や生態系の保全との両立など、新たな地球規模の諸課題が、世界中で幅広く認識されるようになってまいりました。人類が現在の地球環境や生態系の変化を正しく理解し、今後の人々の営みについて議論した上で、具体的な行動を起こしていくことが今求められております。

 このような状況のもと、本日の受賞者が、ご自身の理論を築きあげるとともに、長年にわたり卓越した行動力と強い信念によって国際社会に警鐘をならし、今後の人々の活動のあり方に道筋を示してこられたことは、大変意義深いことであります。

 このたびの受賞者、ならびに歴代受賞者をはじめ環境問題を深く多角的視野から考察している方々が主導的な役割を担い、人類の英知を結集して持続可能な地球環境とより良い人々の生活が実現されることを願っております。

 おわりに、すばらしい業績を上げられました本年度の受賞者に心から敬意を表しますとともに、このブループラネット賞が、世界の人々の環境に対する意識を高め、行動をうながす契機となることを祈念して、私の挨拶といたします。

第17回世界湖沼会議(いばらき霞ヶ浦2018)
平成30年10月15日(月)(つくば国際会議場)

 はじめに、先月、インドネシア、スラウェシ島において発生した地震とそれに伴う津波で甚大な被害が生じました。本日はインドネシアからも多くの方が参加されており、心からお見舞いを申し上げますとともに、この災害で亡くなった多くの人々に対し哀悼の意を表します。

 「第17回世界湖沼会議」が、霞ヶ浦を擁するここ茨城県において、「人と湖沼の共生~持続可能な生態系サービスを目指して~」を共通テーマとして本日より開催されます。生物多様性の喪失や地球規模の気候変動などが世界共通の課題となっている今日、湖沼とそれに関連する様々な立場の人々が意見を交換する機会は誠に意義深く、国の内外から参加された多くの方々とともに出席できましたことを大変うれしく思います。

 霞ヶ浦は、我が国で2番目に大きい湖になります。
 歴史的に見ると、1万数千年前の最終氷期以降の縄文海進の時代に海の入り江であったものが、汽水湖を経て、現在は淡水湖へと変遷してきた湖です。湖の周辺には、湖岸植生や水田、蓮田、畑地が広がり、オオセッカやガンカモ類などの鳥類の生息地になっています。また湖内には、希少種であるゼニタナゴをはじめ、ワカサギ、シラウオなどの魚類、テナガエビ、イサザアミなどの甲殻類も生息し、豊かな生態系を有しています。それとともに、湖岸周辺には多くの縄文遺跡が存在し、往時の人々がこの湖から生態系サービスを享受しつつ暮らしてきたこと、また、筑波山を背景にした帆曳舟など近年まであった霞ヶ浦の風景にも思いを馳せることができます。

 人類にとって貴重な財産である湖沼は、人が最も容易に淡水を得ることができる重要な水源としてのみならず、水産資源や観光資源として、あるいは地域の風景、文化を形成する中心的な拠点として、訪れる多くの人々に憩いと安らぎを提供してきました。また、学術研究を進展させる場としての機能も果たしてまいりました。これらの湖沼がもたらす自然の恵み、いわゆる生態系サービスは、生物多様性によって支えられておりますが、開発行為や気候変動などにより、その多様性は急速に失われつつあります。

 このようななか、生態系サービスを将来にわたって持続的に確保していくためには、湖沼における問題は世界の水問題に繋がるという認識に立脚し、湖沼に関係する一人ひとりがこの問題に積極的な関心を寄せ、行動に移していくことが大切であります。
 それとともに、湖沼環境への配慮が、地下水域、さらには湿地帯など幅広い水環境を視野に入れ、多くの人が世界共通の問題として認識することが重要と言えましょう。

 自然環境をどのように守り、生態系サービスをいかに持続的に維持し活用し、人と湖沼がどのように共存していくべきかについて、世界各国において湖沼と様々な形でかかわりを持つ皆様が議論される今回の会議は、湖沼を望ましい姿で後世に引き継ぐために大きな役割を果たすことでしょう。

 また、茨城県が、湖沼環境保全に関する研究や技術開発の進展等を図るために、「いばらき霞ヶ浦賞」を創設し、国際貢献を行っていることは、大変意義深いことと考えます。今回受賞される10名の方をはじめ、湖沼環境保全に関する論文に応募された皆様の日頃の努力に対しまして深く敬意を表します。

 終わりに、国際湖沼環境委員会が中心的役割を果たしてきた世界湖沼会議が、世界の人々に湖沼の重要性を訴える場になるとともに、人と湖沼の共存について有益な意見交換がなされることを期待いたします。そして、本日から始まるこの会議を契機として、様々な立場の人々の連携が一層強化され、湖沼問題解決の新たな進展につながることを祈念し、開会式に寄せる言葉といたします。

大日本水産会「平成30年度水産功績者表彰式」
平成30年11月29日(木)(三会堂ビル 石垣記念ホール)

 本日、大日本水産会「平成30年度水産功績者表彰式」が、全国各地から多くの受章者を迎えて開催されますことを誠に喜ばしく思います。受章される皆様に心からお祝いを申しあげます。また、かねてより魚をはじめとする水族に親しんできた私にとりまして、水産業に深く携わっておられる皆様とお会いするこの機会は大変貴重なものとなっております。

 大日本水産会は、水産業の振興を図り、その経済的・文化的発展を推進することを目的として、明治15年に創立され、爾来、水産業振興のため様々な事業を展開してこられました。中でも明治23年から行われている「水産功績者表彰」は特に重要な事業として位置付けられており、本年で102回を数え、総受章者数は3151名にのぼります。そして、かつての受章者を見ますと、歴史書に登場する人名も見受けられ、改めて本会の歴史を感じます。

 四方を海に囲まれ、また湖沼や河川にも恵まれている我が国では、古くから漁業や養殖業、そしてそれに関連する加工業や流通業が発展してまいりました。皆様は、それら各分野の振興に力を尽くしてこられましたが、水産業は、鮮度と安定的な供給が求められる産業であり、長年にわたる取り組みにおいては、さまざまなご苦労があったことと推察し、ここに深く敬意を表します。

 日本では、縄文時代の遺跡からの出土でもわかるとおり、古来より魚介類が身近で貴重なタンパク源として親しまれてまいりました。昨今、海外においては、健康志向も相まって、我が国の食文化である「和食」が以前にも増して好まれ、とりわけその中心的な存在である魚介類が注目されるようになりました。このように、水産業は大変重要な産業でありますが、昨今の水産業を取り巻く状況に目を向けますと、水産資源の減少や漁業の担い手不足など様々な課題があり、水産政策の改革が求められております。

 このような状況のもと、皆様には、本日の受章を一つの契機とされ、今後とも健康に留意されつつ、後進の育成も含め日本の水産業の発展のためにさらに活躍されますことを期待いたしております。

 終わりに、大日本水産会が今後ますます発展し、我が国の水産業の振興に一層貢献されることを祈念し、私の挨拶といたします。

国立研究開発法人国立国際医療研究センター創立150周年記念式典
平成30年12月3日(月)(帝国ホテル)

 「国立国際医療研究センター」が創立から150年の節目の年を迎え、本日、記念式典が開催され、皆様とともにお祝いできますことを誠に喜ばしく思います。

 国立国際医療研究センターは、明治元年に兵隊假病院として、現在は帝国ホテルが建つこの地に設立されました。第二次世界大戦前までは、陸軍の病院として運営されるとともに、関東大震災などの災害時には、救護班を編成して応急救護にあたるなど、国民に対する医療活動も行ってこられました。

 文豪森鴎外は、軍医総監まで務めた医師であり、医学校卒業後、陸軍に軍医として入り、明治14年12月からの半年間、この陸軍病院に勤務しておりました。その縁により、鴎外は本記念式典のシンボルになっていると伺っております。

 国立国際医療研究センターは国立病院として、診療のみならず、我が国の医療水準の向上に大きく貢献してこられました。特定の疾患を対象とはせず、様々な疾病の罹患者の治療をされてきたほか、我が国における初の人間ドックも当センターで開始されました。

 また近年においては、医療分野における我が国の国際貢献の中心的な組織としての活動にも特に力を入れ、世界各地で発生した大規模災害への緊急援助隊を数多く派遣してこられました。そして、さまざまな感染症が大きな問題となるなか、国際感染症センターを開設するなど、社会のニーズに応えるべく幅広い医療活動を推進してこられたことに深く敬意を表したく思います。

 おわりに、我が国の高齢化が進み、医療に対する期待と役割がますます高まっている今日、創立150周年を迎えた国立国際医療研究センターが、人々が健康で豊かな暮らしを送るため、より一層貢献していかれることを祈念し、記念式典に寄せる言葉といたします。