皇太子殿下 スペインご訪問時のおことば

スペイン

平成25年6月11日(火)
日西経済合同委員会開会式における皇太子殿下おことば(造幣局博物館大ホール)

フェリペ皇太子殿下
ご列席の皆様

Buenos días.

本日,日本スペイン交流400周年の開幕を飾る行事として,日西経済合同委員会が10年ぶりに盛大に開催されましたことを心よりお祝い申し上げます。交流年の名誉総裁を共に務めるフェリペ皇太子殿下と共に,記念すべき開会式に出席できましたことを大変うれしく思います。

日本とスペインは,長きにわたる人と人との交流に支えられ,極めて良好な友好関係にあります。そして,最近では,お互いの文化に対する関心の高まりとともに,国民相互間の理解が深まっています。これからの1年,日本とスペインの各地で,経済分野はもとより,文化,科学技術,観光,食文化,スポーツなどの幅広い分野において交流事業が行われることを大変喜ばしく思います。

日本とスペインの交流により,両国民を結ぶ(きずな)は強固なものとなっています。特に,2011年3月,日本が未曾有の震災に襲われた際には,フアン・カルロス国王王妃両陛下,フェリペ皇太子同妃両殿下,そして多くのスペイン国民の方々から心温まる支援や励ましを頂きました。この場を借りて,スペインの皆様に対し,日本国民の感謝の気持ちをお伝えしたいと思います。

私にとり,今回のスペイン訪問は6回目の訪問となります。この地を訪問する度に,その豊かな歴史と多様な文化,そして人々の温かさや明るさに対し深い感銘を受けてきました。そして,スペインが,風力発電などの再生可能エネルギーの活用や臓器移植などの先端医療の分野において世界をリードする存在になっていることに敬意を表します。日スペイン両国は,これまでも地球規模の諸課題を含め広く協力してきていますが,今後とも,両国の共通の課題である少子高齢化社会,経済成長と雇用の維持,環境に配慮した持続可能な発展,地方の活性化,さらには国際的な視野を持つ青少年の育成などについて,互いの経験を共有しながら,より良い世界を次世代に引き継げるよう,交流が強化されることを期待しています。

今年は,日本からスペインに対する最初の公式使節団が派遣されてから400年目に当たります。この使節団は,2年前の東日本大震災からちょうど400年前に,同じく東北地方を襲った地震と津波からの復興努力の一環として派遣されたものです。太平洋と大西洋を渡り,当時のメキシコ,ヌエバ・エスパーニャの交易開始などを要請するためにスペインを来訪しました。正に,スペインの(ことわざ)にあるとおり,「困難に直面した時こそ思い切った策をとれ(A grandes males, grandes remedios)」との精神です。現在,スペインや日本が直面する様々な課題を克服し,新たな地平を(ひら)くためには,創造的で進取の精神に富む企業家の皆様の活躍が極めて重要であると思います。このような観点から,本日の日西経済合同委員会の開催は極めて時宜を得たものと考えます。本日の会合においては,日本とスペインとの二国間の経済関係にとどまらず,より広い視野から,経済成長著しいアジアや中南米での企業協力についても議論が行われると伺っております。本日の会合が実り多いものとなり,両国の経済を担う企業関係者相互間の対話と交流が促されることを期待しています。

最後に,この度開幕した「日本スペイン交流400周年」が多くの人々の参加を通じて成功()に実施され,日本とスペインとの友好が一層深まることを祈念して,私の挨拶といたします。

Muchas gracias por su atención.

平成25年6月12日(水)
フェリペ皇太子同妃両殿下主催晩餐会における皇太子殿下おことば(王宮(円柱の間))

フェリペ皇太子同妃両殿下,
ご列席の皆様

ただ今,フェリペ皇太子殿下から温かい歓迎のお言葉を頂き,また,このような盛大な晩餐会を開催していただきましたことに心より感謝いたします。

私にとって今回のスペイン訪問は,5年ぶり6回目となります。今回,日本スペイン交流400周年という意義深い年に貴国を訪問し,こうしてフェリペ皇太子同妃両殿下,そしてご列席の皆様と共に,交流年の開幕を祝うことができることを大変うれしく思います。これまでのいずれの訪問においても,スペイン国民の皆様に大変温かく迎えていただくとともに,私自身,スペインが有する豊かな歴史と多様な文化,人々の温かさや明るさ,そして欧州の先進国として力強く発展する姿に深い印象を受けました。

今次訪問においては,フアン・カルロス国王王妃両陛下に心温まる午餐会を催していただいたほか,フェリペ皇太子殿下には,到着直後に歓迎式典を催していただき,また,フェリペ皇太子同妃両殿下に主要な交流年開幕行事に私と一緒にご列席いただきました。スペイン王室によるこのような温かいご配慮に対し,心より感謝申し上げます。私としては,長年にわたり培われてきた日本の皇室とスペイン王室との交流の歴史を大切にしつつ,これからも世代を超えてスペイン王室との友情を深めていくことができればと願っております。

日本とスペインには,4世紀以上にわたる歴史があります。史実によると,1611年,スペインの探検家セバスティアン・ビスカイノは,東北地方を襲った津波を船上から目撃し,上陸後,その惨状を記録しています。この地域を治めていた伊達政宗は,この地震と津波からの復興のため,ヌエバ・エスパーニャとの交易ルート開設と宣教師の派遣を求めて,スペイン国王フェリペ3世に対する使節団の派遣を決意し,ガレオン船の建造を命じました。暴風雨により船を失っていたビスカイノらスペイン人の造船技術指導の下,日本人の船大工の力によりサンフアン・バウティスタ号は建造され,1613年10月,支倉常長を始めとする慶長遣欧使節団やビスカイノらを乗せて東北の港からスペインに向けて出帆しました。このような歴史の中に,既に両国国民の協力の(ほう)芽がありました。その後も両国は,長きにわたる交流を通じ,お互いから学び合ってきたのです。そして,将来においても多くの分野での協力が期待されます。

また,近年では,新鮮な食材の持ち味を引き出す和食の魅力がスペインの皆様に広く親しまれ,漫画やアニメーションなどの日本文化もスペインの若者になじみ深いものになっています。日本でもスペインへの関心が高まっており,フラメンコ,スペイン料理やワイン,ファッション,そしてサッカーなども注目を集めています。このように,国民レベルで双方への関心が高まっている中で,交流年を通じ,両国国民の相互理解と友好関係がますます深まることを期待しております。私自身,今回のスペイン滞在中,各地で多くの方々と交流し,日本人を魅了してやまないスペインの魅力を改めて体験することを楽しみにしております。

日スペイン間の温かい友情は,両国の皇室と王室との関係にとどまるものではありません。2011年3月,日本が未曾有の震災に襲われた際,スペイン王室はもとより,スペイン国民の方々から心温まる支援や励ましを頂きました。また,福島原発事故の初動対応に従事した「フクシマの英雄たち」に対し,スペインで最も権威のある「アストゥリアス皇太子賞」が授与されたことについては,日本でも大きく報じられました。こうした温かい友情と連帯の表明を通じ,両国の(きずな)は更に強いものになりました。「逆境の時の友が真の友(El amigo en la adversidad, es amigo de verdad)」という(ことわざ)の意味を,我々日本人は改めて深く()みしめました。改めて,日本国民の感謝の気持ちをお伝えしたいと思います。

今後は,400年にわたる日スペイン間の交流が,将来に向けて発展し,若い世代に更に引き継がれることが重要です。日本スペイン交流400周年という歴史の節目において両国関係が一層発展することを願うとともに,フアン・カルロス国王王妃両陛下,フェリペ皇太子同妃両殿下を始め,スペイン国民の皆様のご多幸とご繁栄を心よりお祈りし,杯を挙げたいと思います。