皇太子殿下 ベトナムご訪問時のおことば

ベトナム

平成21年2月10日(火)
国家副主席主催歓迎午餐会における皇太子殿下おことば(政府迎賓館)

グエン・ティ・ゾアン国家副主席閣下,
ご列席の皆様,

ベトナム社会主義共和国のご招待により,今回初めて貴国を訪問することができました。近年,我が国と貴国との関係は目覚ましく発展しております。両国関係が更に発展し新たな時代に入るのを表すかのように,貴国の新しい年明けに貴国を訪問することができ,また,このように盛大に歓迎されていることを大変うれしく思います。

顧みれば,我が国と貴国との間には,長く緊密な交流の歴史があります。8世紀には,当時,貴国中部にあった林邑(ゆう)国から舞楽が我が国にもたらされ,今も我が国の雅楽に林邑(ゆう)楽として伝えられています。その後も貿易などの交流が行われ,16世紀から17世紀にかけては貴国中部のホイアンに日本人町がつくられるほど活発でありました。

今日では,両国は,「アジアの平和と繁栄のための戦略的パートナーシップ」の構築に合意するほど緊密な関係となり,両国間の交流は大変活発です。一昨年には,国賓としてチエット国家主席をお迎えしました。両国間で経済連携協定も合意され,今後,更なる関係緊密化が見込まれています。毎年約40万人の日本国民が貴国を訪れ,3万人以上のベトナムの方が我が国を訪問しており,今や貴国は日本国民にとり大変身近な国となっています。

このような日本とベトナムの関係を一層強化し,両国の信頼と友好の絆(きずな)を確固たるものとしていくためには,若い世代の交流が大切です。今回の訪問では,ハノイではグエン・ディン・チェウ小中学校,フエではフエ音楽院,ホーチミン市では日本・ベトナム人材協力センターを訪問することを予定しておりますし,また,日本人学校の訪問や青年海外協力隊の隊員との懇談も予定しています。両国の若者たちの活動や交流を目にし,将来の両国関係を担う若者とお話しすることを楽しみにしております。

また今回は,私にとり初めてのメコン河流域国への公式訪問となります。アジアの大河であるメコン河流域地域は大変活気に満ちております。我が国はこの地域との関係を重視しており,本年を日本とメコン地域の国々との交流年と位置付け,貴国を含むメコン地域諸国との間で様々な行事が行われます。「ともに未来へ,日本とメコン」という「日メコン交流年」のキャッチ・フレーズのとおり,日本とメコン地域との関係が一層強化され,活気ある発展を共に遂げていくことを希望いたします。

日本を発(た)つに先立ち,天皇皇后両陛下にベトナム訪問のご挨拶に伺った際,陛下が新種として発表され寄贈されたベトナム産のハゼの標本の話に及び,陛下は,その標本が今日でもハノイ自然科学大学で大切に保管されていることを大変喜ばれ,また感謝されていました。ベトナム語で親しい関係のことを日本語と同様に,「水魚の交わり」と表現すると伺っていますが,日越関係がこの言葉のように親しい関係となることを希望いたします。

私の今回の訪問を一つの契機として,貴国と我が国の交流が,また,日本とメコン地域との交流が,新しい時代に入り,両国間の相互理解と友好関係の増進に資することを願い,ここに杯を挙げて,国家副主席閣下のご健勝とベトナム国民の幸せを祈ります。

チュックムン・ナムモイ(「祝新年」)。シン・ナン・コック(「乾杯」)。

平成21年2月13日(金)
ホーチミン市人民委員会主催歓迎晩餐会における皇太子殿下おことば(マジェスティックホテル)

レー・ホアン・クアン ホーチミン市人民委員会委員長,
ご列席の皆様,

本日は,ホーチミン市の皆様より温かな出迎えを受け,そして,今晩,クアン委員長にこのような心温まる晩餐会を催していただいたことに深く感謝いたします。

昨年,日本とベトナムは外交関係樹立35周年を迎え,両国関係が大きく発展する中,初めてベトナム,そして,ここホーチミン市を訪問できましたことを大変うれしく思います。

今回,私は,首都ハノイ,中部のダナン,ホイアンを訪問し,フエに滞在した後,当地にまいりましたが,行く先々で,人々が,貴国の更なる発展を目指して,明るく希望を持って働いている姿を目にして,深い感銘を覚えました。

特に,ホーチミン市は,東南アジアでも有数の大都市であり,ベトナム経済の中心都市であると伺っていましたが,正にそのとおりで,街中に人々が盛んに往来し,未来に向かって発展しつつある,とてもエネルギッシュな大都会であるとの印象を受けました。

ホーチミン市を中心とするベトナム南部には約3,000人の邦人が在住し,450社以上の日系企業が活発な投資活動を行っています。また,現在,地下鉄建設など日本政府による様々なプロジェクトが進められています。こうした我が国の活動が,ホーチミン市の発展に貢献し,両国の関係がますます深まることを心より祈念いたします。

また,本日午後,日越人材協力センターを訪問し,日本人技術者の情熱,責任感や,日本の文化を熱心に学んでいるベトナム人学生にお会いしました。今回の私の訪問が一つの契機となり,ベトナムの若い世代の日本への関心が高まり,両国間の青年交流が促進されることを希望いたします。

本年は日メコン交流年であり,貴国を含むメコン地域の諸国と我が国との間で様々な行事が行われると聞いています。そうした記念すべき年に,明日,メコンデルタの中心都市の一つであるミトーを訪問できることを大変うれしく思います。ミトーは,メコンデルタの水上交通の要衝であり,世界の穀倉といわれるメコンデルタで収穫されるコメの集散地であると承知しており,水上交通という私の研究分野の観点からも,大変楽しみにしています。

私にとりましては,ここホーチミン市がベトナムで最後の訪問地となります。今回の私の訪問が,発展する日本とベトナムとの関係をますます強化し拡大する契機となれば,私にとりこれ以上の喜びはありません。

最後に,日越関係が今後,ますます発展しますことを希望し,クアン委員長のご健勝,ベトナム国民の幸せを心よりお祈りしつつ,杯を挙げたいと思います。

シン・ナン・コック(「乾杯」)。