皇太子殿下 スペインご訪問時のおことば

スペイン

平成20年7月18日 (水)
サパテロ首相主催昼食会における皇太子殿下おことば(モンクロア宮殿(首相府))

サパテロ首相閣下,モラティノス外務大臣閣下,ご列席の皆様

ブエナス タルデス(こんにちは)。

まず,首相閣下始めスペイン政府のご招待とこのような心温まるおもてなしに対し,厚く御礼を申し上げます。また,昨夜は,フアン・カルロス国王王妃両陛下のお招きにより,フェリペ皇太子同妃両殿下と共に夕食をご一緒できましたことを大変うれしく思います。

日本とスペインの間には,16世紀にキリスト教布教のため日本に来航したフランシスコ・ザビエルや,マドリードの王宮でフェリペ2世に謁見した天正遣欧使節の往来に遡(さかのぼ)る長い歴史があります。その後,日本の鎖国により両国の交流が途絶えた時代はありましたが,450年以上にわたって,両国の友好と交流の歴史がはぐくまれてきました。

両国の良好な関係を反映し,両国の皇室と王室の間もこれまで多くの往来を重ねてきました。ここ数年を見ましても,2004年に私がフェリペ皇太子殿下のご結婚式に参列させていただき,その翌年にはフェリペ皇太子同妃両殿下で日本国際博覧会「愛・地球博」にご出席いただきましたことは,私たちの記憶に新しいところです。そして今年の秋には,日本政府からの招待をお受けいただき,フアン・カルロス国王王妃両陛下の日本ご訪問が準備されていることを大変喜ばしく思っております。両陛下の日本御訪問が,両国の関係を更に深めるものとなることを心より希望いたしております。

私は,初めて貴国を訪問しました1976年以来,今回で5回,この魅力ある国を訪問する機会に恵まれました。これまでの訪問の際には,それぞれに特色を持つ各地域の都市を巡り,その豊かな歴史や文化に触れて感銘を受けてきました。この度の訪問では,来週,サラゴサ国際博覧会に出席し,セゴビアやグラナダなどこれまでに訪れた都市の思い出にも触れながら,今回の万博のテーマであり,また,私が長年にわたり関心を寄せてきた人と水とのかかわりについて講演できることを楽しみにしております。

私の最初の訪問から今日に至る約30年の間に,スペインは目覚ましい発展を遂げました。貴国は今や世界第8位の経済大国であり,国際社会においても重要な地位を占めるに至っています。この発展の原動力となったスペイン国民の皆さんのたゆみないご努力に敬意を表したいと思います。

また,スペインの発展とともに日本との関係も大きく成長しました。二国間の貿易や投資の関係はもとより,人と人の交流も大きく拡大しています。30年前に7万人であったスペインへの日本人観光客は2007年には37万人へと飛躍的に増大し,こうした国民相互の交流を通じて,それぞれの文化が互いに深く浸透することとなりました。スペインにおいて和食やアニメーション等の日本文化が今やなじみ深いものとなる一方,日本ではスペイン料理やワイン,そしてサッカーが注目を集めています。先般のサッカー欧州選手権でのスペイン・チームの優勝も,多くの日本のファンを魅了しました。心よりお祝い申し上げたいと思います。

さらに,国際社会における両国の役割の増大に伴い,気候変動問題を始めとする世界の様々な問題について,両国が協力して取り組んでいくべき分野はますます拡(ひろ)がっています。

このような両国関係の緊密化を,スペインの「アミーゴ」の一人として大変うれしく感じています。

今回の私の訪問が,長い交流の歴史の上に,より積極的なパートナーシップを築こうとしている両国の友好と協力関係の一層の発展に少しでもお役に立つことを願っております。

それでは,スペイン王室並びにサパテロ首相を始めスペイン国民の皆様のご多幸とご繁栄を心よりお祈りして杯を挙げたいと思います。乾杯。

ムーチャス グラシアス(ありがとうございます)。

平成20年7月21日 (月)
2008年サラゴサ国際博覧会ジャパンデー公式式典における皇太子殿下おことば(2008年サラゴサ国際博覧会パラシオ・デ・コングレソス)

ソルベス第二副首相閣下,ご列席の皆様

ブエノス ディアス(おはようございます)。

本日,2008年サラゴサ国際博覧会「ジャパンデー」の公式式典に,多くの関係者の皆さんと共に出席できることを,大変うれしく思います。

日本とスペインの交流には,遡(さかのぼ)れば16世紀のフランシスコ・ザビエルの日本来航や,天正遣欧使節のスペイン訪問に始まる長い歴史があります。私自身も1992年のセビリア国際博覧会に続いて,ここサラゴサで開催されている今回の博覧会に出席でき,スペインとの深いつながりを改めて感じています。

「水と持続可能な開発」をテーマとする本博覧会は,すべての生命の源である「水」と,人及び人間社会との新しい関係を持続可能な形で構築するための地球規模での取組の重要性を世界に訴えることを目的としていると伺っております。

水資源の危機が日増しに大きくなり,その適切な管理が求められている中で,本博覧会の開催は誠に時宜を得たものであり,スペイン政府を始めとする関係者の方々の尽力に対し,心から敬意を表します。私も,水問題の重要性にかんがみ,国連「水と衛生に関する諮問委員会」の名誉総裁として参画していますが,今般のサラゴサ国際博覧会の開催趣旨に強く共感しております。

日本は,アジアモンスーン地域の東端に位置し,モンスーンによってもたらされる湿潤な気候の中で文化や伝統がはぐくまれてきました。本博覧会において,日本は,「自然の叡智(えいち)」をテーマとした2005年日本国際博覧会「愛・地球博」の理念を継承し,古くから水に親しみ,水と共存してきた日本文化の知恵と技術を紹介するため,「水と共生する日本人~知恵と技~」をテーマとする日本館を設けて参加しています。

世界の人々の日本館訪問が,日本人の水に対する思いを感じとっていただく機会となるとともに,持続可能な未来に向けて,人々が水に関する取組を考える新たな契機となることを心から祈念しております。

終わりに,サラゴサ国際博覧会の成功と本博覧会に集う世界の人々のますますの相互理解と友好親善の増進を心から願い,私のあいさつといたします。

ムーチャス グラシアス(ありがとうございます)。