皇太子殿下 デンマーク・ポルトガル・スペインご訪問時のおことば

ポルトガル

平成16年5月17日 (月)
ポルトガル大統領主催晩餐会(アジューダ宮殿)における皇太子殿下のご答辞

サンパイオ大統領閣下,

令夫人,

並びにご列席の皆様,

本日は,私のためにこのような晩餐会を催してくださり,また,丁重かつ心温まる歓迎のお言葉を頂き,深く感謝しております。今般,サンパイオ大統領閣下のご招待により,貴国を初めて訪問する機会を得ましたことに大きな喜びを感じております。

天皇皇后両陛下は,1985年と1998年にポルトガルをご訪問になりました。私は両陛下から,これらの訪問の際,多くの方々に温かい歓迎と手厚いおもてなしを頂いたこと,また我が国とポルトガルとの縁の深さに大変感銘を受けられたことを伺っております。

ポルトガルと我が国の間の交流は,遠く1543年にポルトガル人が我が国の土を踏み,鉄砲が伝来した時にさかのぼります。ユーラシア大陸の東端と西端に位置している両国ですが,16世紀の半ばには既に,長年我が国に滞在して,戦国の世を詳しく観察したポルトガル人宣教師のルイス・フロイスや,このリスボンの地で欧州大陸への第一歩を記した我が国の天正少年遣欧使節団の往来が記録に残されています。その後,一時我が国の鎖国により両国の交流が途絶えた時代はありましたが,460年以上の長きにわたり,両国は一度も争ったことがなく,友好と交流の歴史がはぐくまれてきました。

両国の人々は,共に海洋国家として,古来から海と共生し,海を通じて外国の人々や異なる文化に触れてきました。ポルトガルの人々は,大航海時代に世界の海に乗り出して行かれました。本日私がジェロニモス修道院でお墓に献花をいたしました貴国の誇る詩人カモンイスは,この時代に幾多の苦難に立ち向かい,海に挑んだ勇気ある人々を称(たた)えています。

我が国は,四方を海に囲まれた海洋国家であり,古来,諸外国との交流は海を通じて行われてきました。ポルトガルを始めとする欧州諸国との交流を通じてもたらされた,鉄砲,医学,天文学等の文物は,我が国の歴史や文化に大きな影響を与えました。

私は歴史研究を行っており,日本や世界の水運に深い関心を持っていますが,昨日,ポルト市においてドーロ川を船で視察する機会を得て,この国にとっての,水上交通の重要さを実感することができました。

また,今回の訪問で,リスボンはもとより,ポルトやコインブラ,シントラにおいても,ポルトガルの豊かな歴史と文化や,我が国と貴国の長い交流の歴史を今日に伝える多くの貴重な文物に触れることができることを大変うれしく思います。

21世紀を迎え,貴国は,統合・拡大を続ける欧州の一員として,更なる発展を目指されています。我が国もグローバル化された新しい世界における自らの進む道を真剣に模索しております。「故(ふる)きを温めて新しきを知る」という東洋の格言がありますが,両国の長年にわたる友好の絆(きずな)を大切にしながら,様々な分野で発展してきている両国の協力関係が,未来に向けて更に強化されることを心から願っています。

終わりに当たり,大統領閣下並びに令夫人を始め,皆様の温かいおもてなしに改めて感謝いたします。

今回の私の貴国訪問が,我が国とポルトガルとの友好関係の更なる発展に繋(つな)がることを祈念するとともに,皆様のご健勝並びに貴国国民のご多幸をお祈りいたします。