皇太子殿下 ガーナ及びケニアご訪問を終えて

皇太子殿下のご感想

(平成22年3月14日)
ガーナ及びケニアご訪問を終えて

この度,私は,ガーナ国及びケニア国両国政府のご招待により,初めて両国を訪れました。また,両国に向かう途次及び帰国の途次,英国及びイタリア国に立ち寄りました。

ご招待を頂いたガーナ,ケニア両国政府に深く感謝の意を表したいと思います。特に,ガーナ国においては,心温まる午餐会を催してくださったミルズ大統領,到着時から出発までの間ほとんどの日程に自ら出席いただいたマハマ副大統領,ケニア国においては,ご懇談いただいたキバキ大統領,盛大な晩餐会を催してくださったオディンガ首相の心配りを忘れることができません。

また,今回の滞在を通じ,先ほど申し上げた両国政府関係者は言うに及ばす,視察しました一つ一つの施設,学校,沿道や宿泊先で両国国民の方々から温かく迎えていただいたことを大変うれしく思っております。さらに,今回お会いした在留邦人の方々の歓迎にも感謝したいと思います。

今回の両国訪問は私にとって初めてのサハラ砂漠以南のいわゆる「サブサハラ」のアフリカ訪問であり,出発に当たっては,天皇皇后両陛下からご訪問の際のお話を伺ったのを始めとして,様々な方々からアフリカの歴史,文化,アフリカ大陸が抱える課題などについてお話を伺いました。訪問直前には,今回ケニア国でおもてなしいただいたオディンガ首相ご夫妻とお会いし,また,ケニア出身のワンガリ・マータイさんからもお話を伺いました。訪問を終え,出発前に申し上げた「百聞は一見にかず」という思いを改めて抱きました。言ってみれば,アフリカのイメージを,これまでのモノクロームの静止画から,今回の訪問を通じ,色鮮やかに躍動する動画として,私の脳裏に鮮明に焼き付けることができました。今回自分自身の目で見,耳で聞いた一つ一つの事柄を今後,アフリカの方々をお迎えする際や,アフリカを始めとする各国で活躍される方々とお話しする際などで役立てていければと思います。

ガーナ国,ケニア国における一つ一つの出会いを振り返ると,それぞれが思い出深く,かつ意義深いものですが,あえて幾つかの点にまとめれば,次のような点が印象に残りました。

まず,両国国民並びに在留邦人の方々の両国関係強化への熱い思いです。出発前にも,またガーナ,ケニア両国でのあいさつにおいても私は,両国で活躍する日本人や,日本のことに関心を持ち,かかわりを持つ両国の方々のきずなこそが両国の関係強化にとり大切であり,私の訪問により,そういった方々が今後活動を行っていく上での励みとなればと申し上げました。実際,現地の日本人で言えば,小学生から青年海外協力隊員,あるいはそれぞれの国に長く滞在し,実業やNGO活動など各方面で活躍しておられるご年配の方々から,それぞれの体験や両国への思いを伺うことができました。また,ガーナ,ケニア両国の方々からは,日本の両国の国づくりへの協力に対する感謝の気持ちと,関係強化への思いを伺いました。こうした両国国民の皆様の協力関係強化に向けた熱い思いを,しっかりと胸に刻みたいと思います。

次に,両国訪問の中で,両国ひいてはアフリカが直面している様々な課題につき学ぶことができたことは大変有意義でした。ガーナでは,2年前に両陛下のご臨席の下,第1回授賞式が行われた,野口英世アフリカ記念賞シンポジウムに出席し,アフリカが抱える最大の課題の一つである感染症問題に携わる第一線の方々からお話を伺う貴重な機会が得られました。また,ガーナではアコソンボダム,ケニアではムエアかんがい施設と,それぞれ水にかかわる場所を視察し,各施設の関係者から,水供給のみならず,水上交通や食料供給などの関連したお話を伺うことができました。私自身でできることには限りがありますが,国連「水と衛生に関する諮問委員会」の名誉総裁の立場から,今後とも,アフリカの抱える様々な問題解決に向けた取組に,思いを寄せていきたいと思います。

また,両国において,郊外も視察することができ,それぞれ同国の多様な自然,風景をかい見られたことも印象に残りました。特にケニアにおいて夜明けに見たケニア山のすばらしさ,スウィートウォーター自然保護区での野生動物や,両国で咲く美しい花や街の人々の様子を見られたことも得難い経験でした。中でも,自然保護区が希少動物の保護や地域振興など,幾つもの課題に取り組む形で営まれている説明を興味深く伺いました。

最後に,帰国の途次立ち寄ったイタリア国では,日曜日であるにもかかわらずナポリターノ大統領より大統領府であるクイリナーレ宮殿にお招きいただき,宮殿の中も見させていただきました。ここに深く感謝の意を表したいと思います。またイタリアでは,私がかねてより関心のあった,アッピア街道やローマ時代の水道橋を視察しました。留学時代に訪れて以来,四半世紀以上の後にイタリアを再訪し,短い時間ではありましたが,大変懐かしく,意義深い一時を過ごすことができました。

今回の私の訪問が,ガーナ国,ケニア国と日本,ひいてはアフリカ全体と日本との相互理解の進展と友好親善の増進のために少しでもお役に立つのであれば幸いです。

なお,今回の訪問に雅子が同行できなかったことは残念でしたが,本人もガーナ,ケニア両国政府からのご招待をとても有り難く思っております。また,現地にてお目に掛かった方々からお見舞いとお励ましの言葉を頂いたことにも厚く御礼を申し上げます。