皇太子殿下 ベトナムご訪問を終えて

皇太子殿下のご感想

(平成21年2月15日)
ベトナムご訪問を終えて

この度,日本との外交関係樹立35周年を昨年迎えたことを機に,ベトナム国からご招待を頂き,ベトナムでの新年に初めて同国を訪問いたしました。

まずは,ご招待を頂き,夕食会を催してくださるなど終始心温かくおもてなしくださったチエット国家主席を始め,すばらしい歓迎午餐会を主催していただいたゾアン国家副主席等ベトナム国政府関係者の方々に深く感謝の意を表したいと思います。

特に,チエット国家主席よりは,一昨年訪日時の楽しい思い出や両陛下への感謝のお気持ちをお話しになられるなど日本への温かい思いをお伝えいただき,有り難く思いました。

ベトナム国では,首都ハノイのほかにも,ダナン,ホイアン,フエ,ホーチミン及びミトーの各都市を訪れましたが,いずれの地におきましても,各省・市の人民委員会委員長を始め,地方政府の方々や地元のベトナム国民の皆様,そして在留邦人や青年海外協力隊員等にも大変温かい歓迎を頂いたことを心よりうれしく思っております。

チエット国家主席やゾアン副主席等とのお話の中で,現在の日本とベトナムの両国関係が,アジアの平和と繁栄のためのパートナーとして緊密な関係となり,相互の信頼関係が築かれる中で,経済的連携や貿易・投資関係が一層強まり,さらには両国国民の交流も盛んになるなど,両国がますます身近な国となっていることを強く実感いたしました。また,日本による支援がベトナム国内各地の経済発展や文化財の保護などに寄与し,高く評価されていることも心強く思いました。

今回は,平均年齢が約30才と若いエネルギーに満ち,国造りに励む現在のベトナムの姿を知るため,特にハノイのグエン・ディン・チェウ小中学校やホーチミンでの日越人材協力センター,両地での日本人学校等を訪問して,子どもや若者と会いました。これらの若い世代の人たちがこれからの日本とベトナム両国の友好関係の一層の強化とベトナムの更なる発展のため,明るく希望を持って交流・活動している姿を見てうれしく思いました。

今回の訪問では,ホイアンやフエにおいて,我が国江戸初期の朱印船貿易時代の旧日本人町を訪れたり,日本の雅楽と縁(ゆかり)の深いニャーニャックの演奏を聴くなど,両国の永い交流の歴史を改めて認識することができました。また,沖縄の首里城をほうふつとさせるグエン朝の王宮等を視察し,強い印象を受けました。

そして,昨日は豊かなメコンデルタを持つアジアの大河メコン河を初めて訪れ,本年を日本とメコン河地域5か国との交流年と位置付け行われている様々な行事のお話や,流域5か国間の水利用や舟運に関する国際協力の枠組みが形成されていることなど説明を聞いて,現在取り組まれている日本とメコン地域全体との友好関係の強化の重要性を実感いたしました。

今回訪問した北部,中部そして南部の各地において,それぞれの地域特有の気候,風土や人柄の違いなども興味深いものがありました。また,日本人の食生活にとても馴染(なじ)むベトナムのおいしい伝統料理を味わうとともに,一弦琴等様々な楽器を駆使される民族音楽等を堪(たん)能できたことも楽しい経験でした。

今回の私のベトナム国訪問が,これまで先人の方々が様々な交流により培われてきた日本とベトナム両国の信頼と友好の歴史の絆(きずな)を一層強固なものにすることに少しでも貢献できたのであれば幸いに思います。

なお,今回の訪問に雅子が同行できなかったことは残念でしたが,本人もベトナム政府からのご招待をとても有り難く思っております。また,現地にてお目にかかった方々からお見舞いとお励ましの言葉を頂いたことにも厚く御礼を申し上げます。