主な式典におけるおことば(平成23年)

皇太子殿下のおことば(仮訳)

第44回万国外科学会開会式
平成23年8月28日(日)(パシフィコ横浜会議センター)

初めに,本年3月に我が国で発生した東日本大震災により亡くなられた方々に心から哀悼の意を表しますとともに,ご遺族と被害に遭われた方々にお見舞いを申し上げ,災害からの復旧が一日も早く進むことを願っております。そして,国内,さらには海外から救援活動に参加された外科医を始めとする医療関係者の方々に,心から感謝いたします。

第44回万国外科学会開会式に,世界中から参加されている皆さんと共に出席できることを,とてもうれしく思います。

万国外科学会は,幅広い外科領域にわたり横断的に問題を取り上げる学術会議と聞いております。1905年に第1回が開催された歴史と伝統のあるこの学会において,国や社会的背景を異にし,様々な外科領域を専門とする外科医が一堂に会し,広い視野で外科学のあらゆる問題について議論することは,医学の進歩のための重要な機会となることと思います。

外科学は,外傷を治療する技術に起源を持ち,その後,麻酔法の開発が進むにつれて,外傷のみならず,がんや内分泌疾患,さらには炎症や先天性疾患など様々な治療の要と位置付けられるようになったと聞いています。また,最近は,機械工学,材料工学,光学,生物学など様々な関連科学との共同研究を通して,より安全で確実な外科治療が先進的に行われるようになりました。

このような発展を遂げる中で,外科学は,急速な高齢化社会への移行とこれに伴う疾病構造の変化を始め,世界共通の課題の克服に貢献してきました。万国外科学会は,こうした外科学の発展をリードする形で回を重ねてきたと聞いております。

今回の学会においても,世界の英知を結集され,様々な関連科学の進歩と調和した新しい外科学が創出されることを期待しております。またその成果が若手外科医の教育に活用され,一般社会に広く還元されることを望みます。

最後に,本学会が,外科学の研究に従事する方々にとって実りあるものとなり,世界の医療の発展に貢献され,全人類に,より健康で幸福な生活をもたらすことを願い,私の挨拶とします。

科学技術と人類の未来に関する国際フォーラム(STSフォーラム)第8回年次総会閉会式
平成23年10月4日(火)(国立京都国際会館)

挨拶に先立ち,3月に発生した東日本大震災で亡くなられた方々に,心から哀悼の意を表します。また,ご遺族と被災された方々に心からお見舞いを申し上げます。さらに,本日はこの場を借りて,大災害に直面した我が国に対して,諸外国の皆様よりお悔やみ,ご支援等を頂戴したことに対して深く感謝の意を表明いたします。

この度は,科学技術と人類の未来に関する国際フォーラム第8回年次総会の閉会式を訪れることができ,喜ばしく思います。このフォーラムが2004年に開設されてから3度目の参加となりますが,この会議の主要な目的は,「科学技術の光と影」につき議論することと理解しております。このテーマの下,東日本大震災から半年がたつこの時期に,世界各国から集まった有識者やリーダーによる活発な討議が行われたことは大変意義深いものと思います。

また,この3日間で,様々な論点が取り上げられ,議論されましたが,その中でも,今年は特にエネルギー問題が重点的に取り上げられたと伺っております。

安全で安定し,地球環境を尊重する未来のエネルギー供給は,今後の科学技術が直面する最重要課題の一つです。自然と調和した形での持続的なエネルギーを供給することは,人類の全ての活動を決定付けるものといっても過言ではありません。今回の議論を踏まえて,世界の指導者たちの英知が集約され,人類の明るい将来に向けて,この問題への解決の鍵が見付けられることを望みます。

また,今朝は「人類の未来のための持続可能性」というセッションにも出席いたしましたが,この「持続可能性」という言葉が,環境保護・環境保全はもとより,食料,人口問題などを含む幅広い意味を持つことを認識しました。科学が,人類の未来の利益のために,様々な分野での「持続可能性」につき研究し,解決法を模索することを歓迎します。

最後に,この貴重な会議が,今後とも科学技術の健全な発展を促すしるべとなり,科学技術が人類の未来にとって有益なものとなることを心より願い,私の挨拶といたします。

ご静聴ありがとうございました。