主な式典におけるおことば(平成22年)

皇太子殿下のおことば

1.17のつどい-阪神・淡路大震災15周年追悼式典-
平成22年1月17日(日)(兵庫県公館)

本日,阪神・淡路大震災から15周年を迎えるに当たり,亡くなられた6,400余名の方々に,改めて深い哀悼の意を表します。

折しも,数日前にハイチで発生した大規模な地震により,多数の死傷者が出ていると伺っています。多くの建物や電気,水道などのライフラインに大きな被害が生じ,衛生状態が悪化するなど,被災地は極めて深刻な状況にあるとも伝えられています。今回の地震によって亡くなられた方々に対しましても,心から哀悼の意を表しますとともに,御遺族と被害に遭われた方々にお見舞いを申し上げ,災害からの復旧や復興が早く進むことを願っております。

今から15年前の今日,この地では,暗闇を切り裂く大地の鳴動が,多くの尊い命を奪い,人々の住み慣れた街と暮らしを一瞬にして破壊しました。震災から1か月後,私どもも2度にわたり被災地を訪ねましたが,過酷な現実を前に深い悲しみに沈みつつも,互いに声を掛け合い,励まし合って,困難を乗り越えようとする人々の姿が,今でも深く脳裏に刻み込まれています。

その後も,震災から1周年と5周年の追悼式を始め,毎年のようにこの地を訪れました。その度に,被災者を始めとする兵庫の皆さんが心を一つにし,全国から集まった大勢のボランティアと共に,懸命の努力で美しい街並みをよみがえらせていく姿を目の当たりにして,深い感銘を覚えました。中でも,平成18年に,国民体育大会や全国障害者スポーツ大会が,全国から差し伸べられた温かい支援への感謝の気持ちを込めて開催され,災害から立ち直り,新しく生まれ変わった兵庫の姿を国民の皆さんに印象付けたことは記憶に新しいところです。

震災から15年,この間も各地で大きな災害が発生しました。兵庫の経験と教訓が,これらの被災地での被害の軽減や復旧・復興にいかされてきたことは,大変意義深いことと思います。さらに,次世代を担う若者たちが,防災活動や災害被害をできるだけ小さくする減災活動に積極的に取り組んでいると聞き,心強く思います。これからも,震災の経験をいかして,皆が助け合い,安全で安心して暮らせる地域づくりが進められるとともに,その過程で培われた知恵が,国の内外を越えて,次の世代に継承されていくことを期待いたします。

最後に,亡くなられた方々の御めい福を心からお祈りするとともに,御遺族並びに被災地の皆さんの御健康と御多幸をお祈りし,私の追悼の言葉といたします。

国際衛生年フォローアップ会議
平成22年1月26日(火)(国際連合大学)

国際衛生年フォローアップ会議が,世界各国から多くの参加者を迎え,ここ東京で開催されることをうれしく思います。

「2008年国際衛生年」は,国際社会が2015年までに達成すべき8つの目標を定めた「ミレニアム開発目標」全体を達成する上で大変重要な衛生問題の解決に向けて,世界各地で様々な取組が進められる重要な契機となりました。中でも,最も深刻な問題を抱えるアジアやアフリカで政府首脳や閣僚による会合が開催されるなど,国際社会が一体となってこの問題に取り組もうとする気運が高まるとともに,各地で草の根レベルの取組が活発化したことは大きな成果と言えると思います。ここに,「国際衛生年」を提唱した国連「水と衛生に関する諮問委員会」の名誉総裁として,「国際衛生年」に参加したすべての関係者の熱意と努力に対し,心から敬意を表します。

安全な水と基本的な衛生施設は,私たちの健康で文化的な生活にはなくてはならないものです。そして,その確保は,各地域の文化と歴史を背景としながら,それぞれの地域に合った技術と人々のたゆみない努力の上に成り立っています。しかし,それを適切に確保し続けることは容易ではありません。

先日,大規模な地震が発生したハイチでも,安全な水の不足とともに衛生状態の悪化が大きな問題になっていると聞いています。亡くなられた方々に心から哀悼の意を表しますとともに,災害からの復旧と復興が,安全な水と衛生の確保の観点からも適切に進められることを願っております。

また,国連の報告では,基本的な衛生施設を利用できない人がおよそ25億人にも上っています。約20秒に一人の子どもが,コレラや腸チフスなど,水にかかわる病気で亡くなっているという現実も報告されており,胸が痛みます。こうした衛生問題の深刻さを考えると,国家や国際機関が取組を進めるだけでなく,衛生施設の供給を担う地方自治体や現地で実際に活動している市民団体など,あらゆる団体や人々が協力し,共に行動することが何よりも重要です。

このような中で,「国際衛生年を超えて~世界の隅々まで持続可能な衛生サービスを供給するために~」をテーマに,世界の関係者が一堂に会し,衛生と社会とのかかわり,地域に適した技術の在り方,資金調達の方法など,様々な課題についての議論が行われることは誠に意義深いことと思います。

今回の会議での活発な議論を契機に,国際社会における衛生への理解と協力がより一層深まり,衛生の問題の解決に向けた具体的な取組が更に進むことを希望して,私のあいさつといたします。

日本メキシコ交流400周年記念特別展開催記念式典
平成22年2月1日(月)(たばこと塩の博物館)

日本メキシコ交流400周年のメキシコ側名誉総裁でいらっしゃるカルデロン大統領を日本にお迎えし,400周年を記念した特別展「ガレオン船が運んだ友好の夢」を,日本側名誉総裁として,大統領御夫妻と御一緒に視察できることを大変うれしく思います。

今回の特別展のテーマはガレオン船を通じた日本とメキシコの交流ですが,こうした海を通した人と人との交流は,私自身以前から高い関心を持っており,この特別展では,日本メキシコ間の交流の始まりや当時のガレオン貿易について紹介されていると伺い,楽しみにしています。

昨年9月,400年前にフィリピンからメキシコへ戻る途中に遭難したガレオン船が救助された千葉県御宿町において,日本メキシコ交流400周年記念式典が開催され,私も出席いたしました。目の前に太平洋が広がる式典会場で,大海原に乗り出していった人々の志に思いをはせ,太平洋を挟んだ交流に改めて強い関心を抱きました。

日本メキシコ交流400周年の関連では,昨年,日本において種々の行事が開催され,メキシコでも桜の記念植樹など意義深い事業が行われたと伺っております。この特別展を始め,様々な事業を契機として,日本とメキシコの相互交流と友好がますます深まることを心から願っております。

Muchas gracias por su atencion y asistencia.

(和訳:式典に参加して私のあいさつをお聞きいただき,大変ありがとうございました。)

第55回青少年読書感想文全国コンクール表彰式
平成22年2月5日(金)(東京會舘)

第55回青少年読書感想文全国コンクールで本日表彰を受けられた皆さん,おめでとうございます。

この表彰式に私が出席するのは11回目になります。この後,受賞者の皆さんとお話しする機会がありますが,これまで毎回,受賞者の皆さんが生き生きとした目とすてきな笑顔で読んだ本について話してくれたことが,私の中で強く印象に残っています。

今回の表彰式に当たり,皆さんの書かれた感想文の幾つかに目を通しました。一人一人が読まれた本も様々ですし,それによって感じたこと,考えたこともそれぞれ違いますが,一人一人がすばらしい本と出会い,読んで感じたことを感想文にまとめて伝えたいという気持ちは共通しています。

自分が感じ,考えたことを言葉にまとめ,文章にすることは簡単なことではありません。受賞された方々以外にも,応募された何百万もの方が机に向かい一生懸命感想文を書いている姿が目に浮かびます。しかし,こうして一冊の本を読むことで,自分の知らなかった世界を知ったり,考えてもみなかったことを想像したりしたこと,そしてそれを苦心して文章にして人に伝えようとしたことは,きっと一人一人の中に心の財産としていつまでも残っていくことと思います。それとともに皆さんには,是非今後とも本を読む習慣を続け,たくさんの良い本と巡り合っていただきたいと思います。

今回の第55回コンクールでは,442万編以上の作品が寄せられたと伺いました。国内だけでなく海外の日本人学校を含めた各地の教室で,また,家庭や他の様々な場において,子どもたちの読書のための環境を整えたり,感想文の指導をされたり,あるいは審査や表彰に力を注いでこられた数多くの方々の御努力に対して,心から敬意を表したいと思います。

これからも,若い人々が読書によって豊かな知識を吸収しつつ,驚きや喜びなど様々な感動を経験し大きく成長されることを期待いたします。それとともに,このコンクールが一層発展していくことを願い,お祝いの言葉といたします。

第一次大極殿完成記念式典
平成22年4月23日(金)(第一次大極殿)

第一次大極殿完成記念式典が,平城遷都から1,300年目に当たる本日,ここ平城宮跡で行われることを,大変喜ばしく思います。

平城宮は,奈良時代において,我が国の政治・文化の中心としての役割を担っており,中でも,大極殿は,天皇の即位式や元日の朝賀のような国家的儀式に使用された極めて重要な建物でした。そのような重要な意義を有する大極殿を,当時の姿に復原するに当たっては,これまでの様々な研究成果や多くの歴史資料を参考として,規模や構造,意匠をできる限り忠実に再現し,可能な限り当時と同様の技術・工法を用いるとともに,建物の安全性を確保するために現代の建築技術も取り入れていると聞いております。

この第一次大極殿を見て,このような壮大な建物を作り上げた人々に思いをはせるとともに,建築当時の優れた技術が今日まで受け継がれていることに感銘を覚えます。復原を行うに当たり,多くの困難を克服し,それぞれの分野で尽力してこられた多くの関係者の努力に対し,深く敬意を表します。

この平城宮跡を始めとする文化財は,我が国の長い歴史の営みの中で,自然や風土,社会や人々の生活を反映して築かれ,人々に親しまれ守り伝えられてきたものであると思います。

この第一次大極殿が,平城宮における古代の都の文化を体験的に理解する場となるとともに,平城宮跡のシンボルとして親しまれ,我が国の文化の振興に寄与していくことを期待して,私のあいさつといたします。

第21回全国「みどりの愛護」のつどい
平成22年5月23日(日)(兵庫県立三木総合防災公園)

第21回全国「みどりの愛護」のつどいが,ここ兵庫県立三木総合防災公園において開催されるに当たり,日ごろから緑の愛護活動に携わっておられる皆さんと共に,出席できることをうれしく思います。

我が国は,緑豊かな環境の中で,四季折々に姿を変える美しい自然の恵みを受け,様々な文化を生み,はぐくんできました。兵庫県も,日本海から太平洋に至る広大な県土を擁し,美しい自然と多様な風土に恵まれるとともに,古くから海陸交通の要所であったことから,国内外との交流拠点として発展してきました。

豊かな緑は,私たちの暮らしにゆとりと潤いをもたらすとともに,多様な生態系を支え,地球温暖化を始めとする様々な環境問題の改善や,さらには災害防止にも大切な役割を果たしています。この会場である三木総合防災公園も県民の皆さんの憩いの場となるだけでなく,災害時には県全体の広域防災拠点としての重要な役割を担っていると伺っています。

本年の10月には「生物多様性条約第10回締約国会議」が名古屋市で開催され,地球上の多様な生物とその生息・生育環境の保全などについて話し合われるとのことです。緑は水と共に生態系の基盤を形成し,生物多様性を確保する上で重要な役割を果たしており,その意味でも,ただ今表彰を受けられた方々の緑の愛護活動への取組は,大変意義深いものであり,皆さんの努力に対し深く敬意を表します。

終わりに,今回のつどいにおいて,全国から参加された皆さんが相互に交流を深め,緑を守り育てる心を新たにされるとともに,これを通じて,緑豊かな環境づくりが一層発展することを願い,私のあいさつといたします。

第43回太平洋小児外科学会議開会式
平成22年5月24日(月)(ポートピアホテル)

Address by His Imperial Highness the Crown Prince
For 43rd Annual Meeting of the Pacific Association of Pediatric Surgeons
May 24, 2010
Portopia Hotel, Hyogo

Mr.President,
Ladies and gentlemen,

I am most pleased to have the honor of attending the opening ceremony of this, the 43rd Annual Meeting of the Pacific Association of Pediatric Surgeons. There are gathered here today many pediatric surgeons from Japan and 30 countries around the world.

Ever since its first meeting in Seattle, in the United States of America in 1968, the Pacific Association of Pediatric Surgeons has acted as a center for the exchange of advanced information on medical treatment in the field of pediatric surgery. This has been in the countries around the Pacific Ocean, and also for the education of young pediatric surgeons in developing countries and has contributed significantly to the development of Pediatric medical treatment. Thanks to the impressive advances of treatment in the field of pediatric surgery, the mortality rate, for example in Japan, of the neonatal surgery decreased from 32% in 1968 to 7.5% in 2008. It gives me great pleasure to note that a lot of children who previously had no hope of cure, have now been given the chance of growing up normally. To all those concerned, I offer my heartfelt congratulations on these achievements.

Great expectations rest on you the specialists attending this congress, to safeguard the health of our children by exploring all possibilities for the treatment of their diseases. May the many research reports that will be presented at this congress serve to give new hope to the children struggling with disease and to their parents in every country and contribute to the advance of pediatric surgery throughout the world.

Finally, I would like to express my sincere hope that this congress will produce fruitful results and lead to further clinical and research developments in pediatric surgery.

2010年アフリカ・デー・シンポジウムオープニングセレモニー
平成22年5月26日(水)(国際連合大学)

オスターヴァルダー国連大学学長,
サール在京アフリカ外交団長代行,
御列席の皆様,

アフリカ・デー・シンポジウムが,アフリカ各国や我が国からの参加者を迎え,本年も国連大学で開催されることをうれしく思います。アフリカ・デーは,今からほぼ半世紀前の1963年5月25日に,アフリカ連合(AU)の前身たるアフリカ統一機構(OAU)誕生にちなみ定められました。また,2010年は,アフリカの年といわれる1960年からちょうど50年となり,今年はその意味から,数多くのアフリカの国々にとり特別の意味のある年であると伺っております。ちなみに,私自身1960年に生まれ,アフリカの多くの国々の国造りの歩みと共に年齢を重ねてきました。その意味で,私は以前からアフリカの諸国に親しみを持っており,アフリカ諸国の発展を高い関心を持って見つめてまいりました。

2000年以来,これまで10回開催されてきたアフリカ・デー・シンポジウムは,日本とアフリカ諸国の様々な分野の専門家が一堂に集い,様々な課題の下でのアフリカの発展と諸外国との協力の在り方等について議論を深める貴重な機会を提供してきました。その観点から,このシンポジウムの開催は,日本におけるアフリカ理解の促進に大いに貢献してきたと伺っております。ここに,在京アフリカ外交団や国連大学を始めとする関係の皆様が,アフリカの発展及び日本とアフリカとの関係強化のため,日々御尽力されていることに対し,敬意を表します。

第11回目となる本日のシンポジウムでは,環境問題,とりわけ気候変動に焦点を当てて議論が行われると伺っております。私は,国連「水と衛生に関する諮問委員会」の名誉総裁の立場から,環境問題を始めアフリカが直面する様々な問題に関心を払ってまいりました。

本年3月,私は,サブサハラ・アフリカへの初めての訪問としてガーナとケニアを訪れました。ケニアでは,自然保護区とともに,日本の協力で造られた灌漑(かんがい)施設と水田を視察しました。そこでは,自然環境をいかしながら食糧増産を図っていくという持続的開発の成功例に接することができました。また,私は,今回の両国訪問を通じ,アフリカの広い空と大地に接することもできました。そして,気候変動の脅威からアフリカの雄大な自然環境とそこに住む人々の生活環境を守ることは,アフリカの人々だけの問題ではなく,世界の人々に共通に課せられた重要な課題であるとの思いを新たにいたしました。

本日のシンポジウムでの活発な議論を契機に,国際社会において気候変動を始めとするアフリカの環境問題への理解と協力がより一層深まり,この問題への対処に向けた具体的な取組が更に進むことを希望して,私のあいさつといたします。

第46回献血運動推進全国大会
平成22年7月15日(木)(島根県民会館)

全国各地から参加された皆さんと共に,第46回献血運動推進全国大会に出席できることを,うれしく思います。

医療の重要な一翼を担う献血の昨年度の状況は,一昨年度より約20万人多い延べ約530万人の献血者の協力によって,約120万人の患者さんに滞りなく血液製剤が届けられたと聞いております。

昨年度は,新型インフルエンザが流行する状況の下でしたが,このように献血者の数が増えたことは,本日ここに表彰を受けられた方々を始め,献血運動の推進に尽くしてこられた関係者の皆さんの努力と,国民の一人一人の献血への理解と協力の成果であり,心強く,また喜ばしく思います。

近年,少子高齢化が急速に進み,輸血を受ける患者さんの大半を占める高齢者がますます増えることが予想されることから,未来を支える若い世代の方々に,人と人との支え合い,助け合いである献血の大切さを理解していただき,献血に参加していただくことが強く求められています。

このため,日本赤十字社では,昨年度から,各種のメディアを活用した若者向けの献血の啓発事業を実施し,若者を中心とする方々の関心を集めていると伺っています。さらに,本年1月に英国滞在歴に関する規制が緩和され,これまで献血を御遠慮いただいていた方々に再び献血に協力いただけることになっています。こうした取組が実り多いものとなることを期待します。

ここ島根での大会を契機に,国民の健康と命を守る上で大きな役割を担う献血運動の輪が,若者を始めとするすべての世代にますます広がり,国民の皆さんの献血への協力が一層強まっていくことを希望して,大会に寄せる言葉といたします。

平成22年度全国高等学校総合体育大会総合開会式
平成22年7月28日(水)(沖縄県総合運動公園陸上競技場)

平成22年度全国高等学校総合体育大会「ちゆしま沖縄総体2010」が,全国各地から多数の参加者を迎え,大小様々の美しい島々や,それを取り囲む青い海に代表される豊かな自然と,独特の文化・歴史を持つ,ここ沖縄の地で開催されることを喜ばしく思います。

選手の皆さんには,日ごろ鍛えた力と技を十分に発揮し,お互いに友情をはぐくむとともに,地元の方々とも交流を深めることを通じて沖縄を知り,高校生活のすばらしい思い出をつくってください。

そして,昭和38年の第1回大会から回を重ね,この度,全国一巡を締めくくることとなるこの大会が,選手の皆さんの活躍と数多くの地元高校生の協力により,実り多い大会となるよう期待します。

皆さんの御健闘を心からお祈りします。

第15回日本ジャンボリー開会式
平成22年8月2日(月)(第15回日本ジャンボリー会場朝霧アリーナ)

第15回日本ジャンボリーの開会式に,国内外から参加されたスカウトの皆さんと共に参加できることを大変うれしく思います。

私は,第7回の大会以来,ジャンボリー会場を訪れていますが,毎回,若い人たちが,様々な活動に真剣に取り組んでいる姿に感銘を覚えます。

今回の大会では,40を超える国と地域から多くのスカウトの参加を得て,数多くの活動が計画されていると聞いています。

皆さんが,富士山を仰ぎ見るここ朝霧高原の豊かな自然の中で様々な活動に参加し,多くの人との交流を通じて相互理解と協調性を養い,さらに,国際的な視野を深めることは,大変意義深いことであります。

私自身,かつてこの地で開かれた第2回日本ベンチャー大会では,スカウトの皆さんと共に富士登山に参加したことを,貴重な体験として懐かしく思い出します。

世界のスカウト運動は,既に1世紀に及び,多くの歴史を刻んできておりますが,ここでもう一度スカウト運動の創設者べーデン・パウエル卿の“Looking wider”の言葉が示す広い視野と高い志を持つことの大切さに思いを致し,スカウト運動の更なる伸展を通して,世界の青少年の健全な育成が図られることを願い,開会式に寄せる言葉といたします。

国際航路協会アジア地区125周年記念式典
平成22年9月12日(日)(ウェスティンナゴヤキャッスル)

国際航路協会アジア地区125周年記念事業が,ここ名古屋において開催されるに当たり,会員各国の代表を始め,国内外の会員の皆さんと共に,出席できることをうれしく思います。

国際航路協会は,1885年の創設以来,長年にわたり,航路,港湾,漁港及び沿岸域の開発と運営に関する技術の向上を通じて,船舶の航行と水上輸送の発達を図り,世界の発展のために大きな役割を果たしてきました。ここに関係者の皆さんの熱意と努力に対し,深く敬意を表します。

私自身,1990年に大阪で開催された国際航路会議に出席し,オックスフォード大学留学時代に研究した18世紀当時のテムズ川の河川改修,船の運航に携わった人々,当時テムズ川を行き交った石炭と農産物等の物資など,水運と人とのかかわりについてお話ししました。

また,2009年にイスタンブールで開催された第5回世界水フォーラムでは,国際航路協会特別セッションに参加しましたが,舟運が省エネルギーで持続可能な輸送システムの構築と気候変動の緩和にどのように貢献できるのかについて,熱心な議論がなされていたことを思い出します。

近年,海上輸送量の増大に伴って,コンテナ船を始めとする船舶は大型化し,それに伴うパナマ運河の拡張等,港湾・航路を取り巻く環境は大きく変化しています。

このような中で,国際航路協会は125周年という新たな節目を迎えます。海と水路で結ばれた世界各国の皆さんが,輸送の革新や環境問題への取組を通じて国際的に連携することにより,国際航路協会がその目的に向かって更に着実な歩みを続けていくことを期待しております。

終わりに,この記念事業を通じて,アジア各国の港湾関係者の相互理解と友好が更に深まるとともに,国際的な水運の取組が世界の発展に貢献することを願い,私のあいさつといたします。

第34回全国育樹祭
平成22年10月3日(日)(群馬県立森林公園「21世紀の森」)

第34回全国育樹祭が,全国各地から多くの参加者を迎え,ここ群馬県立森林公園「21世紀の森」で開催されることを喜ばしく思います。

群馬県は利根川の上流部に位置し,尾瀬に代表されるように豊かな自然に恵まれ,赤城,榛名,妙義の上毛三山じょうもうさんざんや谷川岳などの山々がそびえ,県土の3分の2を森林が占めています。その森林は清らかな水をはぐくみ,県民のみならず,流域に暮らす人々にとって豊かな水を供給するとともに,災害防止に大きく貢献してきております。このすばらしい森林は,長年にわたり守り育ててこられた県民と林業関係者の皆さんのたゆみない努力の賜物たまものであると思います。

私も,谷川岳を始め群馬の山に登った折に,緑の豊かさに感銘を受けるとともに,その維持の大変さに思いをはせたことを懐かしく思い出します。

ところで近年,世界各地で頻発する干ばつや大雨による洪水などの異常気象,さらには私たちの生活に大きな影響を及ぼしている集中豪雨なども,地球温暖化が一因とも言われています。

森林は,美しく豊かな国づくりのもとであり,国土の保全や水源の涵養かんようを始め,限りない恵みを与えてくれます。また温暖化の防止など地球環境の保全に果たす役割はますます大きくなっております。

このような中で,近年,林業関係者ばかりでなく,森林ボランティア団体や企業などの社会貢献の一環として,森林整備活動の輪が広がっていると聞き,大変うれしく思います。

本日表彰を受けられる方々の,日ごろから各地域における国土の緑化活動に対し,敬意を表するとともに,そうした活動が今後も多くの人々に支えられ,更に発展していくことを期待します。

終わりに,この大会のテーマである「の息吹 育ててつなぐ 地球ほしの未来」にふさわしく,森林を守り育てる活動の輪が,ここ群馬から全国へ,世界へ広がり,そして未来へと継承されていくことを切に願い,私のあいさつといたします。

第7回国際整形外科基礎学術集会記念式典
平成22年10月18日(月)(国立京都国際会館)

Address by His Imperial Highness The Crown Prince
at the 7th Combined Meeting of the Orthopaedic Research Societies
October 18th, 2010
Kyoto International Conference Center, Kyoto

Distinguished participants and guests,
Ladies and gentlemen,

I am very pleased today to have the honour of attending the 7th Combined Meeting of the Orthopaedic Research Societies with the participation of so many scientists from all over the world.

Musculo-skeletal disorders are increasing yearly, reflecting the aging of the population, and they affect hundreds of millions of people across the world. In addition, the importance of the prevention and the early detection of these disorders have an impact on the healthy growing up of children.

The World Health Organization proclaimed the years 2000-2010 as “The Bone and Joint Decade”. I feel very happy that Japan has in 2010 been given the privilege of hosting one of the most important international meetings in the orthopaedic research field. This is the final year of “The Bone and Joint Decade” in the historical city of Kyoto.

I am aware that the quality of life is expected to be promoted through progress in knowledge and the diagnosis and treatment of musculo-skeletal disorders, which will be brought about by basic orthopaedic research, and regenerative medicine such as the tissue engineering of bones and cartilage.

It is my hope that all the researchers attending this internationally important meeting will engage in animated discussions on the theme of “Current Picture and Breakthrough of Orthopaedic Research”.

In closing, I offer my heartfelt wish that this conference will bear fruitful results that will help to advance healthcare around the globe and contribute to the wellbeing of humankind.

第10回全国障害者スポーツ大会開会式
平成22年10月23日(土)(幕張メッセ国際展示場)

あいさつに先立ち,この度の奄美大島における豪雨災害により亡くなられた方々に心から哀悼の意を表しますとともに,御遺族と被災者の方にお見舞いを申し上げます。救援と復旧の作業が速やかに進むことを願っております。

第10回全国障害者スポーツ大会「ゆめ半島千葉大会」の開会式に,全国各地から参加された多くの選手,役員,そして開催地である千葉県の皆さんと共に出席できることを大変うれしく思います。

この大会は,国内最大の障害者スポーツの祭典として,第1回の宮城県大会から回を重ね,今年は第10回の節目の大会を迎えました。この間に,身体に障害のある方,知的な障害のある方のみならず,精神に障害のある方なども参加されることになるなど,そのすそ野が広がり,一つ一つの競技を通じ,毎年全国に向け,たくさんの夢と感動を発信してきました。

これも,ひとえに,大会関係者,選手の皆さん,そして大会を支える多くの皆さんの努力によるものです。

大会に参加される選手の皆さんには,一人一人が日ごろの練習で培った力と技とを存分に発揮し,それぞれの目標に向かって活躍されることを期待します。

また,選手同士はもちろん,多くのボランティアの方々や地元千葉県の皆さんとも交流を深め,たくさんのすばらしい思い出を作ってください。

この大会により,障害者スポーツが発展し,障害者への理解が広まり,すべての人が安心して生活できる社会づくりが更に進むよう希望します。

終わりに,この大会を支えてこられたすべての皆さんの努力に対して,心から敬意を表するとともに,この大会のスローガンにふさわしく,すべての人の笑顔あふれる大会となることを願い,私のあいさつといたします。

第37回「日本賞」教育コンテンツ国際コンクール授賞式
平成22年10月27日(水)(NHK放送センター)

第37回「 日本賞にっぽんしょう」授賞式に,世界各国から参加された皆さんと共に出席できることをうれしく思います。

日本賞にっぽんしょう」は46年目を迎えると聞いておりますが,その歴史の中で,優れた教育コンテンツの表彰を通じて,個人の生活の質の向上と社会の発展に貢献するという,時代を超えた役割を果たし続けてきたと思います。

私は1989年以来この授賞式に出席してきましたが,年ごとに,世界中の異なった環境の下で,教育の営みを実り多いものにしようという,様々な取組があることを知りました。

特に,一昨年から「 日本賞にっぽんしょう」は「教育番組」だけでなく,「音と映像を用いた教育コンテンツ」の国際コンクールへと変化しました。その結果,本年は,史上最多の409作品の応募があり,また,内容面でも,人々を学びの世界に誘うものが増え,番組とウェブ・サイトの両方に応募するという新たな現象が現れていると伺いました。

このように,技術革新とともにメディアが多様に変化する現代において,教育コンテンツの制作や研究に真に取り組む皆さんの熱意と努力に対し,敬意を表します。

優れた教育コンテンツは,子どもたちにはその夢と希望をかなえ,大人たちには生涯の学びの支えとなるものです。本年も,ここに集まった皆さんが,更に豊かな教育コンテンツを実現されることを期待しております。

日本賞にっぽんしょう」教育コンテンツ国際コンクールが,今後とも一層発展し,その目的を推進されることを願い,私のあいさつといたします。

第25回国民文化祭・おかやま2010開会式
平成22年10月30日(土)(桃太郎アリーナ)

第25回国民文化祭の開会式に,皆さんと共に出席できることをうれしく思います。

岡山県は,南は風光明な瀬戸内海に面し,北は中国山地の山々を望む,豊かな自然と穏やかな気候に恵まれた土地柄で,古代吉備国の繁栄の遺産を受け継ぎながら独自の文化をはぐくんだ地域です。備前焼,備前刀,備中神楽などの伝統文化を守り育てる一方,日本洋学の先覚者の輩出,我が国初の西洋近代美術館である大原美術館の開設など,時代をリードするような文化創造に大きな役割を果たしてきました。

この岡山の地において,県内各地,全国各都道府県,さらには海外からも,様々な文化活動に取り組まれている方々を迎え,国民文化祭が開催されることは,誠に喜ばしいことであります。関係者の皆さんが開催のために払われた努力に対し,心から敬意を表します。

近年,人々の価値観が多様化する中で,生活の質を重視し,心の豊かさが強く求められるようになり,文化に対する国民の関心がこれまで以上に高まっています。このような中で,国民文化祭は,地域の特色をいかしながら,優れた伝統文化を継承するとともに,新しい文化を創造していく契機として,大きな役割を果たしていると思います。

また,今回の国民文化祭では,多くの方々の参加を得て,新たな取組が進められていると伺っています。こうした取組を通じて,皆さんの間に,地域や世代を超えた幅広い交流の輪が広がるとともに,地域の文化が再認識され,「晴れの国おかやま 文化回廊」をテーマとする「国民文化祭・おかやま2010」が,大きな成功を収めることをお祈りして,私のあいさつといたします。

第13回全国農業担い手サミットinしまね
平成22年11月10日(水)(島根県立浜山体育館)

第13回全国農業担い手サミットinしまねに,全国各地から参加された皆さんと共に出席できることを,うれしく思います。

農業は,食料の供給を通して人々の生命を支えるという,大切な使命を担っております。また,農村は,水をはぐくみ,国土を保全する重要な役割を果たすほか,美しい景観や豊かな自然をつくり出すなど,国民に多大な恩恵をもたらしてきました。

皆さんが,この重要な役割を持つ農業を担い,農業,農村の振興に積極的に取り組んでいることを,大変心強く感じます。

ここ島根県は,古代の神話に彩られ,古い歴史を有する地域であり,古来より,農業が人々の暮らしの中心にあって,数多くの伝統文化が継承されております。この島根県において,農業を担う皆さんが,将来のあるべき姿を探求することは,誠に意義深いことと思います。

この度の大会では,「農で創る人のきずなと地域の力」のテーマの下,農業を担う皆さんが,個の力と個を結ぶ強いきずなが農業や農村,さらには地域を支える大きな力となっていることを確認し,更なる発展に結び付けるため,研さんと交流を深められると伺っております。

現在,我が国には,食料自給率の向上や環境保全を重視した農業の確立,殊に国民の関心が高まっている食の安全,安心の確保など,大きな課題があります。

こうした農業を取り巻く環境の下,この大会を契機に,皆さんのきずながより強く結ばれ,様々な困難や課題を克服して,将来に向けて日本の農業を力強く築いていかれることを願い,私のあいさつといたします。

第30回記念大分国際車いすマラソン大会閉会式
平成22年11月14日(日)(大分市営陸上競技場)

大分国際車いすマラソン大会が,記念すべき第30回を迎え,その閉会式に,世界各国や国内各地から集まった多くの選手,ボランティア,そして大分県の皆さんと共に出席できることを大変うれしく思います。

私は22年前に行われた第8回大会に出席しましたが,本日再びこの大分の地で,選手の皆さんが自己の限界に挑みながら力走される姿を目にし,四半世紀近く前に感じた感激や興奮が鮮やかによみがえりました。車いすの走る速さとはこんなにも速いものかと驚くとともに,レース中の勝負の駆け引きの難しさや面白みを感じたことをよく記憶しています。

今回参加された方の中には,これまで何回もこの大会に参加された方もおられると伺っております。30年間のそれぞれのレースで活躍した選手の姿は,毎年,障害のある多くの方々への心の励みとなり,困難に立ち向かうエネルギーを与えてきたと確信しています。

また同時に,トップアスリートの驚異的なスピードや,重い障害のある選手が精一杯の力を振り絞って歩みを進める姿は,沿道や競技場,ひいては世界各国の多くの人々にも,これまで勇気と感動を与え続けてきたと思います。

ここに,30年の長きにわたり,大会を支えてこられた大会関係者の方々や,数多くのボランティアの皆さんの努力に対して,心から敬意を表します。

この大会が今後更に発展を続け,選手の皆さんが更なる高みを目指してここ大分に集うことを,また,この大会が,選手を始め関係者の方々と,地元の方々とが友情をはぐくむ場としても,更に大きく羽ばたくことを,心から希望し,私のあいさつといたします。