主な式典におけるおことば(平成19年)

皇太子殿下のおことば

第62回国民体育大会冬季大会スケート競技会・アイスホッケー競技会開会式
平成19年1月27日 (土)(群馬県総合スポーツセンターぐんまアリーナ)

第62回国民体育大会冬季大会スケート競技会・アイスホッケー競技会の開会式に当たり,全国から参加された多くの選手,役員,そして開催地である群馬県の皆さんとお会いできることを,うれしく思います。

国民体育大会は,昭和21年に第1回大会が開催されて以来,多くの関係者の熱意と努力に支えられ,国民の健康増進やスポーツの普及,振興に大きく貢献してきました。

この伝統と意義ある大会に参加される選手の皆さんには,日ごろ鍛えた力と技を十分に発揮されるとともに,お互いの友情をはぐくみ,また,地元の皆さんとの交流を深められることを期待しています。

上毛三山(じょうもうさんざん)を始めとする雄大な自然の下で開催されるこの大会が,皆さんの心にいつまでも残るすばらしいものとなることを願い,私のあいさつといたします。

南極地域観測50周年記念式典
平成19年1月29日 (月)(明治記念館)

南極地域観測50周年の記念式典に,皆さんと共に出席できることをうれしく思います。

我が国の南極地域観測は,昭和32年の国際地球観測年を契機に開始されました。戦後の復興間もない時期に,国民の期待を背に,最初の観測隊が観測船「宗谷(そうや)」で出港し,今から50年前の本日,南極の地に昭和基地を開設しました。

以来,今日に至るまで,観測,研究を継続し,オゾンホールの発見など,地球環境の変動の解明に多大な貢献をしてきたことは,大変喜ばしいことと思います。ここに改めて,関係されてきた皆さんの努力に対して,敬意を表します。

私も,日本人初の南極探検を行った白瀬隊や,南極でたくましく生き抜いたカラフト犬タロ,ジロの物語を読むなど,小さいころから南極に興味をひかれてきました。また,観測隊長や越冬隊長を数次にわたり務められた村山雅美さんから,南極に関するお話を伺うなどして,南極に関心を抱き続けてきた者として,今日のこの式典に出席することに,ひとしおの感慨を覚えます。

今日,地球環境を考える上では,地球温暖化など解明していかなければならない多くの課題が存在します。南極は,人間活動に起因する影響が極めて少なく,地球環境の変動を監視する最適な場所であり,各国と共同で観測,研究を継続することは,我が国だけでなく,人類にとって非常に意義のあることと思います。

今後とも関係される皆さんが,力を合わせて南極地域観測を更に発展させ,人類の未来に貢献されることを願い,私のあいさつといたします。

第52回青少年読書感想文全国コンクール表彰式
平成19年2月9日 (金)(東京會舘)

第52回青少年読書感想文全国コンクールで表彰を受けられた皆さん,おめでとうございます。

この表彰式に私が出席するのは今回で10回目になりますが,毎回,受賞者の皆さんが読んだ本について話すときの笑顔ときらきらした目の輝きが強く印象に残っています。読書を通じて学んだことや感じたことを感想文にまとめるには大きな努力が必要だったと思いますが,そこで学んだ知識や感性をこれからも大切にしていただきたいと思います。

読書は,私たちにふだん体験できない様々なことや知らない世界についてたくさんのことを教えてくれます。私は小学生のころ,とても星に興味を持っていました。天体望遠鏡で夜空の星を眺めながら,星に関する様々な話や星座の伝説について書かれた本をあれこれ読み,星の世界に引き込まれていったことを懐かしく思い出します。

ところで,皆さんの中には,いろいろなことを調べるときにインターネットや電子辞書を使う人もいると思います。最近は,そのような面でいろいろなことがとても便利になりました。しかし,同時に,百科事典や辞書を手に取って調べることも大切なことなのではないかと思っています。例えば,私自身の経験では,調べようと思っている事柄や言葉以外にその近くに書いてあることが目に入り,思わぬ発見をする楽しみがあります。また,本屋さんや図書館で本を探していると,自分が探したいと思っている本の近くにもたくさんの本があり,その中から,ああこんな本があるのかと手に取ってみて,思わぬ発見をすることもあります。皆さんにも是非この思いがけない発見の喜びを味わっていただきたいと思います。

今回のコンクールでは,国内だけでなく海外の日本人学校を含めた各地の学校から,これまでで最高となる436万編を超える作品が寄せられたと伺いました。このことを喜ばしく思うとともに,家庭はもとより,学校での「朝の読書」の時間など,様々な場で子どもたちの読書環境を整え,また,感想文の指導や審査,表彰を通じて本を読む喜びや楽しみを児童,生徒に広げてこられた多くの方々の御努力に敬意を表したいと思います。

これからも,若い人々が,読書によってすばらしい感動を体験するとともに,新たな知識を吸収し,新しい時代に向かって大きく飛躍する力をつけていかれることを希望します。最後に,このコンクールの一層の発展をお祈りし,お祝いの言葉といたします。

第40回アジア開発銀行年次総会財務大臣主催昼食会
平成19年5月7日 (月)(国立京都国際会館)

Address by His Imperial Highness the Crown Prince
on the occasion of the luncheon hosted by the Minister of Finance
at the Fortieth Annual Meeting of the Asian Development Bank
Monday, May 7, 2007
Kyoto International Conference Center

Distinguished Host,
Mr. President,
Distinguished Governors,
Ladies and Gentlemen:

I am greatly pleased that the fortieth Annual Meeting of the Asian Development Bank has been held here in Kyoto with many participants from all over the world. Ten years ago, I had the opportunity to attend the annual meeting in Fukuoka. Today I am very happy to attend this luncheon to have a friendly and pleasant talk with the participants again.

Since its foundation, the ADB has supported the independent development of countries in the Asia-Pacific region. During this time, the member countries of the ADB have overcome many difficulties and achieved remarkable economic growth. I would like to express my admiration for the member countries' efforts and the ADB's considerable contributions.

However, there are still some 600 million people living in poverty in this region, and poverty reduction remains an important issue. Moreover, new problems are emerging to threaten future economic development, such as climate change and other environmental problems.

I understand that during this annual meeting you are discussing in various ways these issues we are facing and the future of this region.

Japan has long been making efforts to protect the environment while achieving industrialization, to safeguard tradition while achieving modernity, and to coexist harmoniously with nature. This is especially true in Kyoto, which has a long history, more than 1000 years, as the ancient capital of Japan.

In this spirit, I hope that you will find inspiration from Kyoto in your efforts to resolve these issues, and I wish also that this annual meeting will be fruitful for all the participants.

Thank you.

世界スカウト運動創始100周年記念レセプション
平成19年5月26日 (土)(帝国ホテル)

世界スカウト運動創始100周年を皆さんと共にお祝いすることを,喜ばしく思います。

世界のスカウト運動は,1907年に英国のブラウンシー島でベーデン・パウエル卿が20名の少年たちと小さな実験キャンプを行ったことにその源を発します。以来,100年にわたり,世界の青少年の健全育成に大きな功績をあげてきました。現在,世界の216の国や地域で,2,800万人以上のスカウトたちが,身近な地域社会,あるいは地球規模での環境保護や平和への取組などの様々な活動を行っていることは,とても意義あることと思います。

また,ボーイスカウト日本連盟も,今年で創立85周年を迎えるとのことですが,長年にわたり,我が国における幅広いスカウト活動を支えてこられた関係者の皆さんの熱意と努力に心から敬意を表したいと思います。

私も,第7回日本ジャンボリー以来,毎回のジャンボリーに出席し,また,富士章を受章されたスカウトの皆さんと毎年お会いするなど,スカウト運動とのかかわりを深めてまいりました。特に,昭和57年と61年に宮城県の南蔵王の山麓(さんろく)で開催された第8回,第9回日本ジャンボリーで,参加スカウトの皆さんと共に野外での炊事やテント生活などの野営体験をしたことは,今でも大切な思い出として深く心に刻まれています。

世界スカウト運動創始100周年のテーマは,「One World One Promise-ひとつの世界 ひとつのちかい」と伺いました。今年の夏には,100周年を記念して,第21回世界スカウトジャンボリーが英国エセックス州のチェルムスフォードで開催されます。我が国からも1,500名を超える派遣団が参加するとのことですが,参加される皆さんには,スカウト活動発祥の地,英国の豊かな自然や文化に触れるとともに,世界の国や地域から参加するスカウトを始め,多くの人々との交流を深められることを希望します。

青少年を取り巻く環境がますます複雑化している今日,野外を活動の中心に置き,健全な心身をつくり上げることを特徴とするボーイスカウトの活動が果たし得る役割には非常に大きなものがあると思います。

豊かな未来を担う青少年の育成に向けて,ボーイスカウト運動が更に充実,発展することを願い,私のあいさつといたします。

第18回全国「みどりの愛護」のつどい
平成19年6月2日 (土)(国営アルプスあづみの公園)

第18回全国「みどりの愛護」のつどいが,ここ国営アルプスあづみの公園において開催されるに当たり,日ごろから緑の愛護活動に携わっておられる皆さんと共に,出席できることをうれしく思います。

我が国は,古くから緑豊かな環境の中で,自然の恵みを受けながら数多くの文化を生み,はぐくんできました。安曇野においても,北アルプス連峰とそこから発する清冽(せいれつ)な水の流れ,(ふもと)に広がる緑豊かな里山と田園地帯が,「日本の原風景」とも称されるすばらしい景観を呈し,道祖神信仰など豊かな安曇野の文化を生み出してきました。

私も,15年前常念岳に登った折に眺めた安曇野の景色が,とても美しかったことを懐かしく思い出します。

豊かな緑は私たちの生活に潤いや安らぎをもたらすとともに,地球温暖化の抑制や都市の環境問題の改善に寄与し,健全な国土づくりに資するなど様々な役割を果たしています。

殊に,地球温暖化対策,ヒートアイランド対策,生物多様性の確保など地球規模での環境問題への対応が急務となっている今日,緑を守り育てていくことの重要性は,ますます大きくなっております。

その意味でも,ただ今表彰を受けられた方々の緑の愛護活動への取組は,大変意義深いものであり,皆さんのたゆみない努力に対し深く敬意を表します。

終わりに,安曇野のシンボル常念岳を望む緑豊かなこの公園において,全国から参加された皆さんが相互に交流を深め,緑を守り育てる心を新たにされるとともに,その皆さんの心と活動を通じて,緑豊かで快適な生活環境づくりが一層発展することを願い,私のあいさつといたします。

第43回献血運動推進全国大会
平成19年7月4日(水)(サンドーム福井)

第43回献血運動推進全国大会に,全国各地から参加された皆さんと共に出席できることを,うれしく思います。

私事ですが,先月短い期間ではありましたが入院し,改めて健康の大切さを実感いたしました。それとともに,病気や怪我(けが)で長期にわたり入院生活を送ったり,治療を受けておられる多くの方々の御苦労や日夜献身的に治療に当たっておられる医療関係者の努力に思いを巡らせました。

医療活動に欠かせない献血の最近の状況は,年間約500万人の献血者の協力によって,約120万人の患者さんに滞りなく血液製剤が届けられていると聞いています。

これは,本日ここに表彰を受けられた方々を始め,長年にわたり献血運動の推進に尽くしてこられた関係者の皆さんの努力と,多くの国民の皆さんの献血への理解と協力の成果であり,大変心強く,また喜ばしく思います。

しかし,近年,少子高齢化とともに若い人たちの献血がますます減少するなど,献血を取り巻く環境は,年々厳しくなってきていることも事実です。将来にわたって,安心して輸血医療を受けられるよう,特に若い人たちの献血への参加が今強く求められています。

昨年は,将来の献血者を育てるための取組として,国及び都道府県,日本赤十字社が一体となり,若年層を対象としたイベントが全国的に繰り広げられたと聞いています。このような取組が実り多いものにつながっていくことを期待します。

国民の健康と命を守る上で大きな役割を担う献血運動は,人と人との支え合い,助け合いという多くの人道的行為につながる心をはぐくむものであると思います。

このような意義のある献血運動の輪が,この福井大会を契機に,ますます広がり,多くの国民の皆さんの献血への理解と協力が一層深められていくことを希望して,大会に寄せる言葉といたします。

平成19年度全国高等学校総合体育大会総合開会式
平成19年7月28日 (土)(佐賀県総合運動場陸上競技場)

あいさつに先立ち,この度の台風第4号に伴う災害,また新潟県中越沖地震により,亡くなられた方々に心から哀悼の意を表しますとともに,御遺族と被害に遭われた方々にお見舞いを申し上げ,災害からの復旧が一日も早く進むことを願っております。

平成19年度全国高等学校総合体育大会「2007青春・佐賀総体」が,全国各地から多数の参加者を迎えて,壮大な歴史ロマンを感じさせる吉野ヶ里遺跡など,美しい自然と豊かな文化に恵まれたここ佐賀県で開催されることを,喜ばしく思います。

選手の皆さんには,日ごろ鍛えた力と技を十分に発揮し,お互いに友情をはぐくむとともに,地元の方々とも交流を深め,高校生活のすばらしい思い出をつくってください。

そして,この大会が,選手の皆さんの活躍と数多くの地元高校生の協力によって,実り多い大会となることを期待いたします。

皆さんの御健闘を,心からお祈りします。

第19回全国農業青年交換大会
平成19年8月28日 (火)(国立オリンピック記念青少年総合センター)

第19回全国農業青年交換大会に,全国各地から参加された農業青年の皆さんと共に出席できることを,うれしく思います。

我が国は,国土が南北に長く,気候や風土が多様であり,豊富な水や緑など豊かな自然環境に恵まれています。このような国土の特徴をいかし,我が国の農業は,消費者のニーズにこたえ,育種や栽培のための高度な技術を確立することにより,世界に誇れる優れた品質を持ち,かつ,安全で安心な農産物を数多く生産・提供していく力を持っているものと思います。

このような中で,農業の将来の担い手である皆さんが,農業への夢と希望を持ち,それぞれの地域において,農業青年クラブ活動などを通じて,生産技術や経営の改善に努め,農業・農村の若きリーダーとして,活躍されていることを大変心強く感じます。

この大会に,私が毎年出席して強く感じることは,農業青年の皆さんが創意と工夫を凝らし,今の時代の農業に積極的に取り組んでいこうとされている姿勢です。皆さんが,今年の大会のスローガンである「世界へ広がれ情熱の波」にふさわしく,大会を通じて交流を深め,お互いの持つ力を高め合い,大きな転換期を迎えている日本農業を,新時代の農業へと発展させていかれることを願い,私のあいさつといたします。

「DIOXIN2007」開会式
平成19年9月3日 (月)(ホテルオークラ)

Address by His Imperial Highness The Crown Prince
on the Occasion of the Opening ceremony of the DIOXIN2007
Monday, September 3 , 2007
Hotel Okura, Tokyo

Distinguished participants,
Ladies and gentlemen,

I am pleased that Dioxin 2007 has brought together so many participants from all over the world who have particular concern for the environment and human health.

Development of industry in the several recent centuries has indeed given us a rich and convenient life. But at the same time we are being faced with a new problem: the degeneration of the environment by such factors as global warming and environmental pollution. We were first warned of the adverse effects of environmental chemicals on human health and wildlife by Rachel Carson in her book “Silent Spring” published in 1962. Later research in various environmental sciences around the world has alerted us to the fact that the greatest problem stems from persistent and toxic chemicals which bio-accumulate in the ecosystem and persist in the environment on a global scale.

Since its first symposium in 1980, the Dioxin Symposium series has focused on these chemicals and has played an important role in the exchange of information and opinions to produce new scientific results. The necessity to reduce the risk posed by environmental chemicals is now well recognized on a global scale, and research on the subject is also being conducted within a UN-based framework.

Interdisciplinary research is important in any countermeasures to reduce the risks created by hazardous environmental chemicals. I am told that scientists and engineers with a variety of backgrounds have gathered for this conference in Tokyo.

I wish to express my sincere hope that this symposium will bear much fruit and widen still further the scope of international cooperation.

Thank you.

BBS運動発足60周年記念式典
平成19年9月24日 (月)(国立オリンピック記念青少年総合センター)

BBS運動発足60周年記念式典に出席し,全国各地のBBS会員の皆さんにお会いできることを,うれしく思います。

我が国のBBS運動が発足したのは,戦後間もない時期でした。その後今日に至るまで,少年を取り巻く状況も変化し,運動を進める上で新しい問題に当面することも多々あったと思いますが,皆さんは,常に「友愛とボランティア精神」をもって,非行を始め様々な問題を抱える少年の良き“ともだち”として,少年と同じ目の高さで共に考え学び合いながら,その自立を助け,あるいは地域における非行防止活動に取り組んでこられました。長年にわたる皆さんの熱意と努力に深く敬意を表します。

近年,少年をめぐっては,いじめの問題や,少年にまつわる重大な事件の発生など憂慮すべき状況が発生しています。次代を担う少年の健全な育成が従来にも増して重要になっている今日,BBS会員の皆さんの活動には,ますます大きな期待が寄せられているものと思います。

今回の式典に先立ち,全国各地で「こどもと学ぶ」をテーマに様々な活動が展開されたと伺っております。皆さんがこれらの経験も踏まえ,若い感性,たくましい行動力をもって社会の期待にこたえられ,BBS運動が更に充実,発展することを願っております。

終わりに,本日多年の功績により表彰を受けられた方々に心からお祝いを申し上げるとともに,ここに集われた皆さんが,今後とも少年の良き兄,良き姉として元気に活動されることを期待しております。

第17回アジア・太平洋会計士会議開会式
平成19年10月4日 (木)(大阪国際会議場)

第17回アジア・太平洋会計士会議の開会式に,我が国を始めアジア太平洋地域の国々から多数の参加者を迎え,皆さんと共に出席できることを大変うれしく思います。

この会議を主催するアジア・太平洋会計士連盟は,アジア太平洋地域の会計士の発展,向上及び協力を通じ,これら専門家が,公共の利益のために,継続して質の高い業務を提供できるよう努めてこられました。今年は,1957年にフィリピンのマニラで開催された第1回極東会計士会議から数えて50周年の節目の年に当たると伺っております。

今日,アジア太平洋地域の国々の,世界経済に果たす役割は増してきています。そのような中で,経済社会の重要な基盤である会計と監査の分野の専門家が,このように一堂に会し,「アジア経済発展に向けた公認会計士の役割」をメインテーマに,当面する課題について語り合い,互いの理解と連携を深めていくことは,誠に意義深いことであります。

この会議が実り多いものとなり,会計と監査の専門家がアジア太平洋地域の経済発展,ひいては世界経済の発展に貢献することを期待しています。

終わりに,この会議に参加された皆さんが,日本の美しい秋の季節を十分に楽しまれることを願い,開会式に寄せる言葉といたします。

2007年(第15回)花の万博記念「コスモス国際賞」授賞式
平成19年10月4日 (木)(大阪府・いずみホール)

2007年「コスモス国際賞」授賞式に,皆さんと共に出席できることをうれしく思います。

まず,「コスモス国際賞」が第15回目を迎えられたことをお祝いします。

「自然と人間との共生」という国際花と緑の博覧会の理念を発展させるため,全地球的な観点から,自然と人間とのかかわりに新しい光を当てようとする「コスモス国際賞」の意義が,第15回という節目を機に,今後一層国内外に広く理解されていくことを希望いたします。

また,この度受賞されたジョージナ・メイス博士に,心からお祝いを申し上げます。メイス博士は,保全生物学の研究で優れた業績をあげてこられました。特に,IUCN(国際自然保護連合)が作成する「レッドリスト」の根拠となる「絶滅危惧種を特定する基準」の立案などに中心的役割を果たされたことは,地球環境問題の中心的課題の一つである生物多様性の保全に向けた国際的な取組の代表例として大きな意義を有するものと伺っております。

メイス博士の研究は,地球上の貴重な自然や生命の保全にかかわる極めて重要なものであり,その成果が地球の未来と人類の幸せのために大きくいかされることを期待いたします。

終わりに,博士の今後ますますの御活躍と「コスモス国際賞」の発展を願い,私のあいさつといたします。

第7回全国障害者スポーツ大会開会式
平成19年10月13日 (土)(秋田県立中央公園 県営陸上競技場)

第7回全国障害者スポーツ大会「秋田わか杉大会」の開会式に,全国各地から参加された多くの選手,役員の皆さんと共に出席できることを,大変うれしく思います。

選手の皆さんには,一人一人が日ごろの練習で培った力と技を存分に発揮し,それぞれの「夢」へ挑戦されることを期待します。また,選手同士はもちろん,多くのボランティアを始め地元秋田県の皆さんとも交流を深め,たくさんの良い思い出を作ってください。

また,この大会により,今後の障害者スポーツが発展し,障害者への理解がますます広がり,すべての人が安心して生活できる社会づくりが更に進むよう希望します。

終わりに,この大会の開催を支えてこられた皆さんの努力に対して,心から敬意を表するとともに,多くの出会いと感動が秋田から発信され,明日への活力となることを願い,私のあいさつといたします。

GEA国際会議2007開会式
平成19年10月19日 (金)(東京プリンスホテル)

GEA(地球環境行動会議)国際会議2007が,国内外から多くの参加者を迎え,開催されることを大変うれしく思います。

今や,人類の生存基盤にかかわる最も重要な環境問題として,地球温暖化の進行に伴う深刻な影響が指摘されています。また,温暖化の原因は,人類の活動に起因する温室効果ガスの増加であると,ほぼ断定もされてきています。

このような地球温暖化の結果,海面上昇や異常気象の頻発はもとより,大規模な水不足,災害の激化など,私たちの経済・社会活動に様々な悪影響が複合的に生じる可能性が危惧(きぐ)されています。近年は,大雨が世界的に増加する一方,干ばつの影響を受ける地域も一部で拡大しているとのことであり,各地で発生する気象災害による大きな被害に私も心を痛めています。健全で恵み豊かな地球環境を保全し,将来の世代に受け継いでいくことの大切さについて思いを新たにしているところであります。

先ごろ発表された今年のノーベル平和賞は,本日御出席のラジェンドラ・パチャウリさんが議長を務めるIPCC(気候変動に関する政府間パネル)などに授与されることになりましたが,その授賞理由には,地球温暖化問題への長年にわたる真摯(しんし)な取組があるとされています。また,来年我が国で開催される北海道洞爺湖サミットにおいても,この問題が中心的議題となると伺っております。

このような中で,「持続可能な未来を実現する政策手法~新しい温暖化の枠組みに向けて~」をテーマに,世界のオピニオンリーダーが一堂に会するGEA国際会議2007が開催されることは,誠に意義深いものと思います。

人類と地球上に存在するあらゆる生命は,共生の鎖で結ばれています。私たちと,私たちの子孫,そしてすべての生物が,いつまでも地球環境の恵みを享受することができるよう,この会議において活発な議論が行われ,国際社会に求められる今後の政策について,世界に向けて発信されることを期待しています。そして,すべての関係者の参加と協力により,持続可能な社会の構築に向けた具体的な取組が更に進むことを願い,私のあいさつといたします。

中学校教育60年記念式典
平成19年10月25日 (木)(東京国際フォーラム)

中学校教育60年記念式典に,全国から参加された皆さんと共に臨むことを大変喜ばしく思います。

昭和22年の学制改革により義務教育が延長され新制中学が発足しましたが,このような教育の充実は戦後の復興と社会の発展に大きく寄与し,大変意義深いものであったと思います。しかしながら,物資も乏しく,生活も困難な時代に学校教育に心血を注がれた当時の先生方には様々な御苦労があったことと察します。

爾来(じらい)60年,科学技術の目覚ましい進歩や経済の発展により,国民の生活は豊かなものになりました。このために我が国の教育が果たした役割は極めて大きく,関係者の皆さんが学校教育に力を尽くされたことに深い敬意を表します。

今日さらに教育は,国民一人一人が,その持てる力を伸ばし,豊かな人生を実現し,また我が国及び国際社会の平和と発展に貢献する上で,誠に大きな役割を担っています。中学校教育に携わる皆さんが,義務教育のあるべき姿を念頭に,心触れ合う学校教育の実践を大切にしつつ,教育に対する国民の期待にこたえていかれることを願い,お祝いの言葉といたします。

第22回国民文化祭・とくしま2007開会式
平成19年10月27日 (土)(アスティとくしま)

「阿波の国 文化ふれあう ゆめ・ひと・みらい」をテーマとする第22回国民文化祭の開会式に,皆さんと共に出席できることを,大変うれしく思います。

徳島県は,北は瀬戸内海,南は太平洋に面する美しい海岸線を擁し,名峰剣山,そして四国三郎の愛称で親しまれる吉野川など,豊かな自然と風土に恵まれております。

阿波藍,阿波踊り,阿波人形浄瑠璃に代表される優れた伝統文化の外,ベートーヴェン第九交響曲の日本初演など,特色ある文化をいかした取組が行われています。

私も,この1月,阿波の人形芝居を鑑賞したことが,深く印象に残っています。

また,四国八十八箇所霊場巡りを支える,心温まる「もてなし」の文化が古くから根付き,今日に引き継がれています。

この徳島の地で,県内すべての市町村,全国各都道府県,さらには海外からも,様々な文化活動に取り組まれている方々を迎え,国民文化祭が開催されることは,誠に喜ばしいことであります。ここに,関係者の皆さんが払われた努力に対し,心から敬意を表します。

近年,心の豊かさやゆとりを求め,国民の文化に寄せる関心が大きな高まりを見せています。各地域には,歴史と伝統にはぐくまれた,その地域ならではの文化が息づいています。その魅力を再認識し,更に新しい文化として創造,発展させていくための契機として,国民文化祭の果たす役割には大きなものがあると思います。

この度,県内各地で開催される様々な催しを通じて,皆さんの間に,地域や世代を超えた文化と心の幅広い交流の輪が広がり,この「国民文化祭・とくしま2007」が大きな成功を収めることを願って,私のあいさつといたします。

第34回「日本賞」教育番組国際コンクール授賞式
平成19年10月29日(月)(NHK放送センター)

第34回「日本賞(にっぽんしょう)」授賞式に,世界各国から参加された皆さんと共に出席できることをうれしく思います。

国際社会が真の豊かさと平和を求め,貧困や紛争あるいは環境破壊といった課題と向き合う中で,教育の果たす役割はますます大切になってきています。人々は教育を通じて,先人の知恵を学び,新しい知識に出会い,異なる文化や考え方を理解するようになります。

私は,毎年の「日本賞(にっぽんしょう)」を通じて,世界が抱える今日的な教育の課題と,その克服に立ち向かう人々の姿を見てまいりました。「日本賞(にっぽんしょう)」の40年以上に及ぶ歴史をはぐくんでこられた世界の関係者の方々の御努力と,制作者の皆さんの熱意に,心から敬意を表します。

今年のコンクールには,3つの部門に262本もの作品と企画が参加し,新しい国からの応募もありました。「番組部門」には,新しい教育課題に斬新(ざんしん)な映像表現で取り組もうとする作品が多く見られ,「企画部門」には,教育の恩恵を放送によって広く行き渡らせたいと願う真摯(しんし)な制作者からの応募が多かったと聞いております。

今回で5年目を迎えた「企画部門」は,様々な環境の下で苦労を重ねている制作者を励まし,優れた番組を作る機会を提供するものとして,大いに期待されていることを示していると言えるでしょう。

豊かな未来を築くために,放送の担う役割は大変重要です。世界各国から「日本賞(にっぽんしょう)」に集まった皆さんが,お互いの知識や経験を分かち合い,教育放送の向上を目指して力を尽くされることは,誠に意義深いものであると思います。

日本賞(にっぽんしょう)」教育番組国際コンクールが,今後とも一層発展していくことを願い,私のあいさつといたします。

第31回全国育樹祭
平成19年11月4日 (日)(阿蘇みんなの森)

第31回全国育樹祭が全国各地から多くの参加者を迎え,ここ阿蘇みんなの森において開催されることをうれしく思います。

熊本県は,東に雄大な阿蘇山を始めとする山々,西には新鮮な海の幸をもたらす有明海や八代海,そして風光明媚(めいび)な天草諸島が控え,その山々と海の間には肥沃(ひよく)な平野が広がるなど,豊かな自然に恵まれています。

このすばらしい自然は,長年にわたり守り育ててこられた県民と林業関係者の皆さんのたゆみない努力の賜物(たまもの)であると思います。

森林は,美しく豊かな国づくりの基礎であり,国土の保全,水源の涵養(かんよう)を始め,私たちに限りない恩恵を与えてくれています。今日では,特に地球温暖化防止など,地球環境の保全に果たす役割が重視されておりますが,森林と触れ合うレクリエーション利用や,環境教育,癒(いや)しの効果などの期待も高まっております。

さらには,豊かな森を育てることが豊かな海を育てるとも言われるように森林は海の生き物たちにも大きな恵みを与えています。

こうした森林の大切さを思うとき,緑を守り育て,そしてそれをはぐくんできた技術や文化を次の世代に引き継いでいくことは,私たちに課せられた大きな役割であろうと考えます。

近年の環境問題への関心の高まりとともに,若い人たちや森林ボランティアなど幅広い国民の参加による森林の整備・保全活動も活発になってきていることは,大変喜ばしいことです。

このような中で,本日表彰を受けられる方々を始め,日ごろから各地域において国土の緑化に尽力されている全国の皆さんに敬意を表するとともに,そうした活動が,更に多くの人々により支えられ,発展していくことを期待します。

終わりに,この度の大会テーマ「この地球(ほし)の 未来を潤す みどりの力」にふさわしく,国民一人一人の参加により,将来にわたって豊かな森林・緑が守り育てられ,引き継がれていくことを願い,私のあいさつといたします。

2007年ユニバーサル技能五輪国際大会開会式
平成19年11月14日 (水)(静岡県コンベンションアーツセンター(グランシップ))

2007年ユニバーサル技能五輪国際大会が,世界の各国・地域からの多数の参加者を迎えて,ここ静岡の地で開催されることをうれしく思います。

この大会は,技能五輪国際大会と国際アビリンピックという伝統ある2つの大会が,史上初めて,同時に開催されるものであり,国際技能競技の歴史に輝かしい1ページを飾る大変意義深い大会であります。

大会を通じて,ものづくりの技能が若い人たちへ継承され,その水準の向上が図られていくとともに,障害の有無にかかわりなく,「ものをつくりだす人と技」のすばらしさが世界に発信され,だれもが互いに人格と個性を尊重し,支え合うユニバーサル社会が大きく広がるよう願っています。

また,大会に参加される選手の皆さんには,日ごろの研鑽(けんさん)の成果を十分に発揮されて,この大会が皆さん一人一人にとって意義深く,思い出深いものとなり,そして,共に語り合い,交流を深めることによって友情と親交の輪が大きく広がることを期待します。

最後に,この大会の実現に携わった多くの関係者の尽力と,大会を支えるボランティアの皆さんに深く敬意を表して,私のあいさつといたします。

第1回アジア・太平洋水サミット開会式
平成19年12月3日 (月)

Address by His Imperial Highness The Crown Prince
to the Opening Ceremony of the 1st Asia-Pacific Water Summit
Monday, 3 December 2007
B-Con Plaza Philharmonia Hall

Your Royal Highness,
Excellencies,
Distinguished guests,
Ladies and gentlemen,

It gives me great pleasure to be with you at this 1st Asia-Pacific Water Summit which is being held here in Beppu City, Oita Prefecture with so many participants from the Asia-Pacific region as well as from other places around the world.

Water is essential for all life on earth. However, this indispensable resource is unevenly distributed throughout the world from a geographical point of view as well as from a time point of view. Thus, water is at the root of all sorts of problems due to exploding populations, rapid economic growth and global warming.

It is for this reason, international efforts at every level, from the humblest village to the United Nations, are essential in addressing this issue. I myself became personally concerned with this question when I participated in the 3rd and 4th World Water Forums, where I listened to the earnest discussions of the participants, and have since witnessed some concrete actions that have evolved from these discussions.

I understand that this Summit came into being during the preparation process of the 4th World Water Forum. As one who has had a strong interest in water, I am especially delighted to be here with you today.

Water issues, however, are not being solved as urgently and effectively as they ought to be. Sanitation especially lags seriously behind other efforts.

The situation in the Asia-Pacific region does not allow us to be optimistic. The region, which is home to about sixty percent of the world's people, possesses only about forty percent of the world's water resources. As of 2004, there were seven hundred million people who had no access to safe drinking water and 1.9 billion who were without basic sanitation. In this respect, our region is in the most serious situation in the world, especially in providing sanitation. Another critical problem is the frequency and magnitude of natural disasters caused by water, and eighty percent of all fatalities in these disasters occur in the Asia-Pacific region.

About two weeks ago, the cyclone that struck Bangladesh took the lives of many people, and caused huge damage to homes, domestic animals and crops. I extend my sincere condolences to the victims, and I share the sense of immense loss and grief of those who survived, and pray that they will be able to rebuild their lives and homes as soon as possible.

Water also has influence on various other problems such as women's empowerment and the achievement of universal primary education, and therefore is a vital issue that affects the very survival of every nation.

It is therefore all the more significant that heads of state and representatives of governments, international organizations, civic groups, the business sector and academia get together to seriously address the common regional problems of water and sanitation, in the search for lasting comprehensive solutions.

I have accepted the request of the United Nations Secretary General Mr. Ban Ki-moon to serve on his Advisory Board on Water and Sanitation as its Honorary President. I am aware of the responsibility that comes with this honor. The Board, under the leadership of its late chairman Mr. Ryutaro Hashimoto, launched the Hashimoto Action Plan and is forging ahead towards achieving the Millennium Development Goals. I will do my best to learn more about the global issues of water and sanitation, and to work with His Royal Highness Prince Willem-Alexander of the Netherlands, the Board's chairman, and its other members to contribute to its activities in my capacity as Honorary President.

In closing, I want to voice my sincere wish that the Water Summit will mark a major step forward toward resolving the global issues of water here in the Asia-Pacific region and throughout the world.

Thank you.

「アジア太平洋障害者の十年(2003-2012年)」中間年記念「障害者週間の集い」記念式典
平成19年12月6日 (木)(有楽町朝日ホール)

平成15年に始まったアジア太平洋障害者の十年が,今年その中間年を迎え,本日,「障害者週間の集い」として,その記念式典が開催されますことを,誠に喜ばしく思います。

我が国の障害のある人への施策は,この5年間,関係者の尽力によって,多くの分野において着実に推進されてきております。障害のある人の地域における自立や社会参加も進展しています。その背景には,多くの人々の障害のある人に対する理解と関心の深まりや障害のある人の社会参加の意欲の高まりがあると思います。

私は,毎年開催される全国障害者スポーツ大会などの機会に,選手,役員はもとより,ボランティアの方々にもお会いしますが,それぞれの夢と可能性に挑戦される選手の姿や,多くの人々が障害のある人への理解を深め,協力の輪を広げてきている様子を見て,いつもうれしく思っております。また,本年静岡で開催されたユニバーサル技能五輪国際大会での日本選手の活躍もすばらしいものがありました。

今日に至るまでには,障害のある人,一人一人と,そして,それを支えてきた人々の努力と熱意があったことと思います。改めて関係者の皆さんに深く敬意を表します。

障害のある人の問題は,人間の尊厳や個人の尊重という,すべての人にかかわる根本的な問題です。このような認識の下に,障害の有無にかかわらずだれもが相互にその個性と人格を尊重し,支え合う共生社会を実現していくことが大切です。そのために,国民一人一人が努力していくことを切に願うとともに,アジア太平洋障害者の十年の中で,広くアジア太平洋地域において,障害のある人の福祉が更に向上していくことを希望し,式典に寄せる言葉といたします。