主な式典におけるおことば(平成17年)

皇太子殿下のおことば

第60回国民体育大会冬季大会スケート競技会開会式
平成17年1月30日 (日)(富士急ハイランドホールシアター)

第60回国民体育大会冬季大会スケート競技会の開会式に,全国各地から参加された選手,役員,そして地元山梨県の皆さんと共に出席できることを,大変うれしく思います。

長い歴史と伝統のある国民体育大会は,これまで多くの関係者の努力と熱意に支えられ,国民の健康増進やスポーツの普及,振興に大きく貢献してきました。

この大会に参加される皆さんが,日ごろ鍛えた力と技を十分に発揮されるとともに,お互いの友情をはぐくみ,また地元県民の皆さんとの交流を深められることを期待しています。

雄大な富士山に抱かれ,美しく豊かな自然に恵まれたこの地で開催される「やまなし・ゆめふじ国体」が,いつまでも皆さんの思い出に残る,実り多いものとなることを願い,私のあいさつといたします。

第50回青少年読書感想文全国コンクール表彰式
平成17年2月4日 (金)(東京會舘)

第50回青少年読書感想文全国コンクールで本日表彰を受けられた皆さん,おめでとうございます。

この表彰式に私が出席するのは9回目になりますが,毎回,受賞者の皆さんが読んだ本について話すときの生き生きとした目の輝きが強く私の印象に残ります。本を通じて学んだこと,感じたことを感想文にまとめることには大きな努力が必要だと思いますが,読書から得られた知識や感動は,皆さんの心の財産として長く残るものとなることと思います。

また,今回,このコンクールが記念すべき第50回を迎えられたことをお祝いします。第1回から今回までに応募された感想文の数を合わせると,我が国の総人口より多い1億3千万に上ると伺いました。これまでの半世紀もの期間において,子どもたちの読書の環境を整えたり,感想文の指導をされたり,あるいは,審査や表彰に力を注いでこられた数多くの方々のご努力に対して,心から敬意を表したいと思います。

これからも,若い人々が読書を通じて豊かな感性をはぐくみ,深く考える心を大切にしながら,大きく成長されることを希望します。それとともに,このコンクールが一層発展していくことを願い,お祝いの言葉といたします。

中部国際空港セントレア開港記念式典
平成17年2月13日 (日)(中部国際空港)

中部国際空港が完成し,開港式典がここに行われますことを,大変喜ばしく思います。

中部国際空港は,我が国を代表する新たな航空路線網の拠点を建設したいという中部地方の皆さんの夢が実現したものであります。国内線・国際線の乗り継ぎが便利であるだけでなく,環境に優しく,高齢者や車いすに配慮するなど,21世紀の国民の期待にこたえる最新型の国際空港と聞いています。

また,この空港は,今世紀最初の万博となる2005年日本国際博覧会「愛・地球博」の空の玄関ともなります。私は,この博覧会の名誉総裁として,来る3月25日の博覧会開幕を前にこの空港が開港し,国内はもとより,世界の各国から多くの人々をお迎えできることを,大変うれしく感じております。

昨年,伊勢湾上空を通過する飛行機の中から建設途上の新しい空港の姿を見て,これを作り上げる技術の力と人々の熱意に感動を覚えました。立派に完成した空港に今日降り立って,ここに至るまでに多くの困難を克服し,様々な分野で尽力してこられた関係者の労苦に対して,深く敬意を表するとともに,建設途上不幸にも亡くなられた方々に心から哀悼の意を表します。

この中部国際空港が,今後,我が国各地と世界を結ぶ新しい窓口となり,安全で使いやすく魅力あふれる空港として親しまれるとともに,活気ある物流拠点として我が国の経済発展に寄与していくことを期待します。併せて,立派な空の玄関を備えた「愛・地球博」に,国内外から一人でも多くの人々が訪れることを願い,私のお祝いの言葉といたします。

2005年スペシャルオリンピックス冬季世界大会
平成17年2月26日 (土)(エムウェーブ)

2005年スペシャルオリンピックス冬季世界大会が,世界の各国や地域から多数の皆さんの参加を得て,ここ長野で開催され,その開会式に出席できることを,大変うれしく思います。

1977年にアメリカで最初に開催されたこの冬季大会が,第8回目の今回,初めてアジアで開催されるに至ったことは,この大会の新たな一歩として,大変意義深いことと考えます。

「皆で集い,共に楽しもう」をテーマとするこの大会に参加される選手の皆さんが,日ごろの練習の成果を十分発揮されるとともに,各競技への参加を通じて,多くの方々と交流し,共に楽しんでいただくことを心から希望いたします。

また,心のバリアフリーを目指す,スペシャルオリンピックスの理念に共鳴し,かねてからこの大会の実現のために尽力してこられた多くの関係者の方々と,この大会を支えるボランティアの皆さんに,深く敬意を表します。

市民の積極的参加により開催されるこの世界大会を機に,我が国におけるスペシャルオリンピックスへの理解が深まり,活動の輪が広がるとともに,知的発達障害のある人々の社会参加が進んで,誰にも開かれた,温かみのある社会の創造が進むことを希望し,私のあいさつといたします。

「日本におけるドイツ2005/2006」及び「世界遺産 博物館島 ベルリンの至宝展」開会式
平成17年4月4日 (月)(東京国立博物館平成館)

ドイツ側名誉総裁のケーラー大統領閣下と令夫人をお迎えし,本日「日本におけるドイツ2005/2006」の開会式に出席し,ドイツ年の開幕をお祝いできることを日本側名誉総裁として誠にうれしく思います。

5年前,日本を総合的に紹介する「ドイツにおける日本年」の行事がドイツ各地で開催され,大きな成功を収めました。今回,ドイツ側の発案により,日本においてドイツ年が行われる運びとなったことは,両国国民間の相互理解を更に促進するものとして,極めて意義深いものと思います。また,日本EU市民交流年でもある本年,EUの主要国であるドイツがこのような行事を企画されたことは,誠に時宜にかなったものと思えます。

日本は,明治以来の近代化の過程で,法律,医学を始め,科学技術,芸術,哲学,文学など幅広い分野において,ドイツから多大な影響を受けました。戦後においても両国は,同じような復興と発展の軌跡をたどる中で更に結び付きを強め,今日,国際社会の様々な課題に,お互いに協力して取り組む信頼できるパートナーとなっています。

そのような信頼関係の基礎となっているのは,お互いに対する尊敬の念と強い関心です。今回のドイツ年においては,統一後の現代ドイツの最新の魅力を紹介することにも大きな重点が置かれていると聞いており,このことは,特に日本の若い世代のドイツに対する関心を高めるという意味で,誠に意義深いものがあります。伝統を重んじ,未来を見つめるドイツとその国の人々の在り方に目を向けるとき,私たちはそこから多くのことを学ぶことができると思います。

ドイツ年を通して,日本とドイツ両国の友好・親善関係が更に深められ,両国国民間の交流が一層活発になることを心から祈念して,私のあいさつといたします。

第46回米州開発銀行年次総会・第20回米州投資公社年次総会開会式
平成17年4月10日 (日)(沖縄コンベンションセンター劇場棟)

Address by His Imperial Highness The Crown Prince
on the occasion of the Inaugural Session of the Annual Meeting
of the Boards of Governors
of the Inter-American Development Bank
and the Inter-American Investment Corporation
Sunday, April 10, 2005
Okinawa Convention Center, Okinawa

President Iglesias,
Excellencies,
Distinguished participants,
Ladies and gentlemen,

It is a great pleasure for me to attend, here in Okinawa, the 46th Annual Meeting of the Board of Governors of the Inter-American Development Bank and the 20th Annual Meeting of the Board of Governors of the Inter-American Investment Corporation.

The Inter-American Development Bank has achieved a large number of successes in advancing social and economic development as well as trade and regional integration in Latin American and Caribbean countries. The Inter-American Investment Corporation has likewise contributed significantly to the growth of regional economies, primarily by providing finance to small and medium-sized enterprises.

A considerable number of Japanese nationals, including many from Okinawa, have emigrated to Latin American and Caribbean region over the years. The efforts and achievements of these Japanese immigrants have provided the basis for strong ties that have lasted for more than a century between Japan and this region. Recently, an increasing number of descendants of these Japanese immigrants have come back to Japan, contributing to strengthening further human and economic ties between the two.

I am pleased that Japan has been deeply engaged in the activities of the IDB group, in its role as the largest non-regional shareholder. In 1991, I fortunately had the opportunity to give the welcoming address at the Annual Meeting of the group held in Nagoya. Fourteen years later, with the backdrop of progressing globalization, and increasing economic ties between Latin American and Caribbean countries and Asian countries, it is of great significance that the IDB group has once again selected Japan as the site of its Annual Meeting of this year.

I understand that Latin American and Caribbean countries have gone through a number of economic challenges since the Nagoya meeting. Nevertheless, they have achieved steady economic growth by various means including the expansion of both intra-regional and inter-regional trade. I expect that the IDB Group will play an increasingly important role in assisting the countries of the region to help themselves in these spheres.

In closing, I hope that this Annual Meeting will prove to be a forum that will contribute substantially to deepening mutual understanding between Latin American and Caribbean countries and Asian countries and will ensure an even brighter future for both regions.

第16回全国「みどりの愛護」のつどい
平成17年4月23日 (土)(淀川河川公園)

第16回全国「みどりの愛護」のつどいが,ここ淀川河川公園において開催されるに当たり,日ごろから緑の愛護活動に携わっておられる皆さんと共に出席できることを,うれしく思います。

我が国は,古くから緑豊かな環境の中で,自然の恵みを受けながら様々な文化を生み,はぐくんできました。水の都・大阪も,淀川がもたらす豊かな自然を基盤に,上方文化を形成し,経済的,文化的発展を遂げてまいりました。

私の研究対象としています中世の水上交通史との関係でも,当時の淀川の交通量は極めて多く,この淀川河川公園に程近い三矢(みつや)や禁野(きんや)といった場所は,中世には淀川を航行する船からの通行料を徴収する関所が置かれていたことが知られています。

豊かな緑は,私たちの生活に潤いと安らぎをもたらすとともに,地球温暖化の抑制や,大気の浄化,災害の防止などの面でも大切な役割を果たしています。

地球温暖化防止に取り組むための「京都議定書」が既に発効した今日,地球規模での緑の保全と育成は,人類共通の課題としての重みを一層増しています。本日,この淀川の地で生まれた「みどりの愛護」の波が大きく広がって,国内はもとより全世界の緑化に貢献することを期待します。

その意味でも,ただ今表彰を受けられた方々の,緑の愛護活動への取組は大変意義深いものであり,皆さんのたゆみない努力に対し深く敬意を表します。

終わりに,水と緑に彩られた当公園において,全国から参加された皆さんが相互に交流を深め,緑を守り育てる心を新たにされるとともに,その皆さんの心と活動を通じて,緑豊かで快適な環境づくりが一層発展することを願い,私のあいさつといたします。

財団法人日本ユニセフ協会創立50周年記念行事「ユニセフ子どもの祭典」記念式典
平成17年5月1日 (日)(国技館)

挨拶に先立ち,兵庫県で起きた列車事故で,亡くなられた方々とご遺族に対し,心から哀悼の意を表します。また,負傷された方々が一日も早く回復されることを願っています。

財団法人日本ユニセフ協会創立50周年を記念する式典に,皆さんと共に出席できることをうれしく思います。

ユニセフは,創設以来,半世紀以上にわたり,世界の子どもたちへの支援を続けてきました。我が国も,東京オリンピックが開催された1964年までは,ユニセフからの支援を受けておりました。日本が戦後しばらくユニセフから支給されていた脱脂粉乳の話などは,私にとっても身近なものでした。日本ユニセフ協会の活動は,そうした支援に対する感謝の気持ちから,ボランティアの方々が始めたものと聞いています。こうした方々の活動は,我が国の国際貢献の先駆けとしても大いに意義のあることだったと思います。

こうした先人たちの活動から生まれた日本ユニセフ協会は,ユニセフを通じた世界の子どもたちへの様々な支援や子どもを取り巻く現代的な問題などの面で,非常に積極的な活動を展開してきたと聞いています。ここに半世紀を振り返り,我が国のユニセフ支援活動を推進してこられた数多くの方々の努力に敬意を表したいと思います。

世界には,今なお,援助や人権の擁護を必要としている多くの子どもたちがいます。3歳の子を持つ親としても,この問題は他人事とは思えません。今日は「危機に晒(さら)される子どもたち」をテーマとしたシンポジウムも開催されると聞いておりますが,このような機会を通して,ユニセフの活動とそれを支える輪が更に広がり,世界のすべての子どもがよりよい環境で健やかに育ち,そして世界の平和と安定がもたらされることを願い,式典に寄せる言葉といたします。

2005年日本国際博覧会「日本の日」式典
平成17年6月6日 (月)(2005年日本国際博覧会長久手会場EXPOドーム)

2005年日本国際博覧会「愛・地球博」が,3月24日に天皇皇后両陛下をお迎えして開会して以来,早くも70日余りが過ぎました。120を超える国や国際機関,それに多数の自治体,企業,市民の方々が,「自然の叡智(えいち)」というテーマの下で,緑あふれる会場において,それぞれ創意工夫を凝らしたすばらしい展示やイベントを繰り広げ,国内外で大きな関心を呼んでいることを大変喜ばしく思います。

21世紀に生きる私たちは,地球環境問題が人類全体の課題となっていることを常に心に置いて,人と自然とのつながりを改めて見つめ,人類と自然が共生していける社会を実現するよう努めなくてはなりません。そのために,今こそ国境を越えて手を携え合うことが必要です。世界の人々の心が一つになって,同じ地球上で暮らす仲間としての共通の課題に目を向けることができれば,様々な地球規模の困難な問題に立ち向かう大きな動きが生まれるでしょう。

この「愛・地球博」では,様々な国のナショナルデーが開催され,私たちは,各参加国がそれぞれの歴史・伝統・文化に基づいて現代の課題にどのように取り組んでいるかを知ることができます。今日,私たちは,日本のナショナルデーである「日本の日」ジャパンデーを迎えました。わが国は,人と自然のかかわりについて,はるかな昔から今日に至るまで,強い関心を寄せてきました。「愛・地球博」の主催国として,私たちが未来の世代によりよい地球を残すために行っている努力を,世界の人々に知ってもらう又とない機会だと思います。

この「日本の日」を契機に,世界の人々が日本のこうした努力についての理解を深め,一致して地球環境問題に取り組む気運が一層高まることを希望して,「日本の日」に寄せる言葉といたします。

量子エレクトロニクス国際会議2005及びレーザー・エレクトロオプティクスに関する環太平洋会議2005開会式
平成17年7月11日 (月)(都市センターホテル)

Address by His Imperial Highness The Crown Prince
on the Occasion of the Opening Ceremony of
the International Quantum Electronics Conference 2005 and
the Pacific Rim Conference on Lasers and Electro-Optics 2005
Monday, July 11, 2005
Toshi Center Hotel, Tokyo

Distinguished participants, ladies and gentlemen,

Before giving my address, I wish to express my deep condolences on those who lost their lives in the tragic incident in London last Thursday.

It is indeed a great pleasure that today the International Quantum Electronics Conference 2005 and the Pacific Rim Conference on Lasers and Electro-Optics 2005 are being held here with such a large number of participants from Japan and overseas.

The year 2005 is the World Year of Physics, which marks the centenary of the publication of Dr. Albert Einstein's innovative treatises, including the one on the special theory of relativity. Based upon modern physics, optical science and technologies have made remarkable progress over the past 100 years, enriching human lives as a result. Particularly, the invention of the laser has made possible advanced information communication technologies of our time, not the least of which is the Internet. Lasers have become an indispensable tool for modern medicine as well.

In these Conferences, much information will be exchanged through keynote speeches by a Nobel laureate in physics, through symposia on various issues, and through presentations on research projects. I am convinced that the Conferences will prove truly meaningful by providing every participants with the opportunity to review ongoing research activities and practical applications from various points of view.

I conclude with the hope that this gathering of experts in various fields and the sharing of their wisdom will promote significant development of optical science and technologies, resulting in the upgrading of living standards for people around the world.

Thank you.

第41回献血運動推進全国大会
平成17年7月13日 (水)(那智勝浦町体育文化会館)

第41回献血運動推進全国大会に,全国各地から参加された皆さんと共に出席できることを,うれしく思います。

国民医療において重要な役割を持つ血液は,安全性が確認された上で,いつでも国内のどこにでも,不足することなく安定的に供給されなければなりません。

我が国では,平成16年に約547万人が献血を行い,輸血用血液についてはすべて献血による国内自給が達成されていると聞いています。また,昨年は台風・豪雨による災害に加え,新潟県中越地震など,大きな自然災害が多発しましたが,献血者,献血団体などの協力により,輸血用血液は不足することなく医療機関に届けられたとのことです。

これも,本日ここに表彰を受けられた方々を始め,献血運動の推進に尽くしてこられた関係者の皆さんのたゆみない努力と,国民の一人一人の献血への理解と協力の成果であり,大変心強くまた喜ばしく思います。

しかし,我が国では,今後献血可能人口が減少していくと見込まれること,また,本年6月から,感染症対策のために,献血受入の制限措置が強化されたことなどにより,献血者の確保は大変厳しくなることから,献血推進への期待は一層高まっていくものと思います。

献血は人と人とを結ぶものであり,このような献血への理解と協力を広めていく献血運動は,支え合いや助け合いの心をはぐくみ,さらに多くの人道的行為につながっていくものでもあります。

ここ和歌山での大会を契機に,国民の皆さん,とりわけ若い人たちの献血への理解と協力がより一層深まり,献血運動の輪がますます広がっていくことを希望して,大会に寄せる言葉といたします。

平成17年度全国高等学校総合体育大会総合開会式
平成17年8月1日 (月)(幕張メッセイベントホール)

平成17年度全国高等学校総合体育大会「2005千葉きらめき総体」が,全国各地から多数の参加者を迎えて,美しい海・花に代表される豊かな自然に恵まれた,ここ千葉県で開催されることを喜ばしく思います。

選手の皆さんには,それぞれの競技において,日ごろ鍛えた力と技を十分に発揮し,お互いに友情をはぐくむとともに,地元の方々とも交流を深め,高校生活のすばらしい思い出をつくられるよう願っています。

あわせて,この大会が,選手の皆さんの活躍と地元高校生の協力により,実り多い大会となることを期待します。

皆さんのご健闘を,心からお祈りします。

第17回全国農業青年交換大会開会式
平成17年8月24日 (水)(名古屋国際会議場センチュリーホール)

第17回全国農業青年交換大会に,全国各地から参加された農業青年の皆さんと共に出席できることを,うれしく思います。

農業は,食料の生産はもとより,緑豊かな自然環境や国土の保全にも大きな役割を果たしており,国民の暮らしを様々な面で支えています。私たちは,これらの恩恵をひとしく受けて生活しており,生産者だけでなく消費者も一緒になって,これからの農業を共に考えていかなければなりません。また,近年では,食の安全・安心や,環境保全を重視した農業への国民の関心が高まっております。このような中で,農業青年の皆さんが全国各地でクラブ活動などを通して,新たな農業経営や地域づくりなどに積極的に取り組まれていることを,大変心強く思います。

今回の大会が,「自然の叡智(えいち)」をテーマとした「愛・地球博」の開催されているここ愛知県で開かれ,皆さんが日ごろ培われた知識や技術を交換し合い,自らの課題を発見するとともに,友情を深められることは,誠に意義深いことと思います。

この度の愛知大会の大会スローガンに掲げておりますように,農業青年の皆さんが,愛という絆(きずな)で結ばれ,自信と誇りを一層高めて,我が国の新しい時代の農業を築いていかれることを願い,私のあいさつといたします。

第2回科学技術と人類の未来に関する国際フォーラム開会式
平成17年9月11日 (日)(国立京都国際会館メインホール)

Address by His Imperial Highness The Crown Prince
On the Occasion of the Opening Plenary Session of the Second Annual Meeting
of the Science and Technology in Society Forum
Sunday, September 11,
2005 Kyoto International Conference Hall, Kyoto, Japan

Excellencies,
Distinguished participants,
Ladies and gentlemen,

I am pleased that the Second Annual Meeting of the Science and Technology in Society Forum is convening here in Kyoto today with a large number of esteemed participants from around the world.

The progress of science and technology during the last century has been extremely remarkable. Most notably, in the last two decades, the advancement of science and technology has exceeded all expectations, particularly in the fields of life sciences and information and communication technology. Humanity has benefited greatly from this development; in fact, the application of this development has truly changed our lives.

On the other hand, this rapid progress has raised some basic questions, such as whether the fruits of innovation have been shared fairly amongst all groups of people, whether the development of science and technology can be harmonized with nature, or whether science and technology should be allowed to develop simply because they seem to have infinite potential.

We all know that there can be no simple, uncomplicated answers to any of these questions. In fact, these questions have been growing ever more complex as a result of globalization. However, the cost of failing to seek answers to these questions is too great to countenance, as the very survival of the human race could be endangered. We can say at least, I believe, that science and technology should be used appropriately for the future of our planet earth, including all the living species and the environment, in addition to human beings.

This is why I welcome the endeavors of the Science and Technology in Society Forum to encourage worldwide debate among such a diversity of forum participants. I am confident that this Annual Meeting will contribute substantially to formulating a new outlook on science and technology.

In conclusion, I sincerely hope that this worthy initiative will provide a beacon to guide us toward sound advancement of science and technology that will benefit us all.

Thank you.

2005年日本国際博覧会閉会式
平成17年9月25日 (日)(2005年日本国際博覧会長久手会場EXPOドーム)

「自然の叡智(えいち)」をテーマとして開催された2005年日本国際博覧会「愛・地球博」は,半年に及ぶ会期を終え,本日ここに幕を閉じることになりました。国内外の多くの関係者の皆さんの熱意と協力の下,盛況のうちに滞りなくこの日を迎えたことを大変うれしく思いますとともに,その尽力を深く多といたします。

この博覧会で,私たちは,自然にはすばらしい仕組みと命の力があり,こうした自然の叡智(えいち)を尊重し,人類と自然とが共生していける社会を実現する努力の大切さを学びました。博覧会を訪れた多くの人々の一つ一つの感動が,やがて全世界に広がって,様々な地球規模の問題に立ち向かう大きな動きとなることを心から希望して,閉会の言葉といたします。

平成17年度(第60回記念)文化庁芸術祭オープニング
平成17年10月1日 (土)(新国立劇場オペラ劇場)

我が国の文化芸術の発展に,大きな貢献をしてきた文化庁芸術祭が,第60回という節目の年を迎え,ここに記念式典が執り行われることを,誠に喜ばしく思います。

第1回芸術祭は,戦後の荒廃した国土に,いち早く芸術の祭典の花を咲かせることにより,国民に再建の希望と勇気を送り込むという願いを込め,昭和21年に開催されたと伺っております。

以来,芸術祭は年月を重ねると共に発展し,伝統芸能や現代舞台芸術を始め,映画・放送やレコードなどを含む幅広い分野において,第一線で活躍する優れた芸術家たちにより,創造性に富んだ意欲的な作品が,次々と世に送り出されてきました。

ここに,これまで芸術祭のために払われてきた多くの関係者のご尽力に対し,深く敬意を表します。

人々が心豊かな生活を楽しみ,活力ある社会を築く上で,文化芸術の果たす役割は大変重要なものと考えます。今後とも芸術祭が,我が国の伝統文化の継承発展と,新しい文化芸術の創造に資するものとなることを希望し,お祝いの言葉といたします。

GEA国際会議開会式
平成17年10月15日 (土)(キャピトル東急ホテル)

国内外から多くの参加者を迎え,GEA国際会議が開催されることを大変うれしく思います。

私たちを取り巻く地球環境は,人類のみならずすべての生き物の掛け替えのない生存基盤でありますが,近年,様々な人間活動の影響により,大きく変化してきています。特に世界各国でみられる異常気象の頻発は,地球温暖化が影響していることも懸念されており,各地の気象災害による大きな被害に,私も心を痛めています。

世界のオピニオンリーダーが集うこの会議において,「気候変動と持続可能な開発への影響」に関し,科学的知見と政策の連携の視点から議論されることは,誠に意義深いものと思います。

私たちが引き続き地球環境の恵みを享受し,地球上のすべての生き物とともに生きていくことができるよう,この会議を通し活発な議論が行われ,国際社会に求められる今後の政策について,世界に向けて情報を発信されることを期待しています。そして,地球環境保全のための具体的な取組が更に進むことを願い,私のあいさつといたします。

第20回国民文化祭・ふくい2005開会式
平成17年10月22日 (土)(サンドーム福井)

「福のくにから ふくらむ文化 羽ばたく未来」をテーマとする第20回国民文化祭の開会式に,皆さんと共に出席できることを大変うれしく思います。

福井県は,本州日本海側のほぼ中央にあって大陸文化の玄関口として重要な役割を果たしてきた歴史とともに,越前の秀麗な山並みと若狭の変化に富んだ海岸線などの豊かな自然にも恵まれ,伝統ある多彩な文化をはぐくんできました。中世の海上交通においても,既に小浜や敦賀といった場所は,物資の重要な集散地であり,また,15世紀初めには,遠く現在のインドネシアからと思われる船が小浜に着くなど,海外との交流の古い歴史もみられます。

この福井の地において,県内すべての市町村,全国各都道府県,さらには海外からも,様々な文化活動に取り組まれている皆さんが集い,記念すべき第20回の節目となる国民文化祭が開かれることは,誠に喜ばしいことであります。ここに,昭和61年の初回から今回の福井県における開催まで,一つ一つの大会のために関係者の方々が払われた大きな努力に対して,心から敬意を表します。

21世紀に入って,国民一人一人が心の豊かさを強く求めるようになり,文化に対する関心が一層高まってきています。このような中で,国民文化祭は,地域の特色をいかしながら,優れた伝統文化を継承し,新しい文化を創造・発展させる祭典として,大きな役割を担っていると思います。県内各地での催しを通じて,皆さんの間の交流の輪が広がるとともに地域の文化が再認識され,この「国民文化祭・ふくい2005」が,大きな成功を収めることをお祈りして,私のあいさつといたします。

第29回全国育樹祭
平成17年10月30日 (日)(兵庫県立有馬富士公園)

第29回全国育樹祭が全国各地から多くの参加者を迎え,震災から10年を経て,このように復興を遂げた兵庫県のここ県立有馬富士公園において開催されることを喜ばしく思います。

兵庫県は,日本の縮図とも言われるように,北は日本海から南は瀬戸内海を経て,太平洋に至る広大な県土を擁しており,世界との活発な交流が展開される大都市と緑豊かな自然が共存しています。

このすばらしい緑豊かな自然は,長年にわたり守り育ててこられた県民と林業関係者の皆さんのたゆみない努力の賜物(たまもの)であると思います。

昨年は台風や地震により各地で森林被害等が多く発生しました。人々が安全で安心できる豊かな暮らしを実現できるよう,災害に強い森林づくりが一層求められています。

また,森林には,二酸化炭素吸収による地球温暖化防止のほか,身近に森林と触れ合うレクリエーションや,環境に関する教育の場としての期待も寄せられています。さらには,豊かな森を育てることが豊かな海を育てるとも言われるように森林は海の生き物たちにも大きな恵みを与えています。

こうした森林の大切さを思うとき,緑を守り育て,そしてそれをはぐくんできた技術や文化を,次の世代に引き継いでいくことは,私たちに課せられた大きな役割であろうと考えます。近年の環境問題への関心の高まりとともに,森林ボランティアなどによる森林の整備・保全活動も活発になっていると伺い,大変うれしく思います。

このような中で,本日表彰を受けられる方々を始め,日ごろから各地域において国土の緑化に尽力されている全国の皆さんに敬意を表するとともに,そうした活動が,更に多くの人々により支えられ,発展していくことを期待します。

終わりに,この度の大会テーマ「萌(も)える緑にひろがる未来」にふさわしく,森林を大切に守り育てるという気持ちが国民一人一人に芽生え,森林を守り育てる活動の輪が緑豊かな未来へと大きく広がることを切に願い,私のあいさつといたします。

第32回「日本賞」教育番組国際コンクール授賞式
平成17年10月31日 (月)(NHK放送センター)

「日本賞(にっぽんしょう)」が,1965年の創設から40周年という記念すべき年を迎え,世界各国から参加された皆さんと共に,授賞式に出席できることをうれしく思います。

教育により知識を得ることによって,人は自分の身を護(まも)り,また,豊かな人生を送ることができるようになります。このような意味で,国際社会が真の豊かさを模索する中で,教育は世界共通の課題として,ますます大切になってきています。私は,毎年の「日本賞(にっぽんしょう)」を通じて,世界がどのような教育の課題を抱え,どのように解決しようとしているのかを見てまいりました。「日本賞(にっぽんしょう)」の歴史をはぐくんでこられた世界の関係者の方々のご努力と,制作者の皆さんの熱意に,心から敬意を表します。

今年のコンクールへの参加は,これまでの記録を大きく上回る最大の規模になったと伺いました。とりわけ設立3年目を迎えた「番組企画部門」への参加数が順調に伸びているとのことですが,これは,番組製作条件に恵まれない国や地域の制作者を励まし,番組を作る機会を提供することが,「日本賞(にっぽんしょう)」の新しい働きとして大いに期待されていることを示していると言えるでしょう。

豊かな未来を築くために,放送の果たす役割には重要なものがあります。世界各国から集った皆さんが,「日本賞(にっぽんしょう)」教育番組国際コンクールを通じ,お互いの知識や経験を分かち合い,教育放送の向上を目指して力を尽くされることを願い,私のあいさつといたします。

第5回全国障害者スポーツ大会開会式
平成17年11月5日 (土)(桃太郎スタジアム)

第5回全国障害者スポーツ大会「輝いて!おかやま大会」が,全国各地から多数の参加者を迎えて,穏やかな気候と豊かな自然に恵まれた,ここ岡山県で開催されることを大変喜ばしく思います。

この大会は,国内最大の障害者スポーツの祭典として,回を重ね,今年は第5回の節目の大会を迎えました。これもひとえに,大会関係者並びに選手の皆さんの努力によるものです。

参加される選手の皆さんには,それぞれの競技において,日ごろ鍛えた力と技を存分に発揮されることを期待します。また,選手同士の友情をはぐくまれるとともに,多くのボランティアや地元岡山県の皆さんとも交流を深め,すばらしい思い出を作ってください。

終わりに,この大会の開催を支えてこられたすべての皆さんの努力に対して,心から敬意を表するとともに,大会のスローガンにふさわしく,参加された一人一人がキラリと輝く大会となることを願い,あいさつといたします。

第12回ユネスコ国際生命倫理委員会開会式
平成17年12月15日 (木)(上智大学2号館)

世界各国から多数の有識者や代表者の方々を迎えて,第12回ユネスコ国際生命倫理委員会が,ここ東京において開催されることをうれしく思います。

科学技術の目覚ましい進歩は,産業の高度化や生活水準の向上など人類に大きな恩恵をもたらしました。また,その一方で地球環境を始め人類や生物の生存に重大な影響を及ぼす力も与えました。

中でも生命科学は,近年私たちの予想をはるかに超える発展がみられた分野の一つですが,同時にその発展は自然の摂理と調和していけるのかという疑問を多くの人に与えていることも否定できません。

その意味でも,科学技術を人類の福祉と未来に真に有益なものとするために,科学技術の研究開発が適切な方法でなされ,成果が正しく利用されるよう,倫理的な側面から検討することが極めて重要です。科学技術が世界規模で展開する今日,このような倫理の問題の検討は,個々の研究者,技術者や各国レベルだけでなく,国際的な協調と連携による取組が必要となっています。

今回のユネスコ国際生命倫理委員会の会議は,本年10月のユネスコ総会における「生命倫理と人権に関する世界宣言」の採択を受けて開催され,この宣言を具体的な取組に移す第一歩として重要な意義を持つものと聞いています。今回の会議での活発な議論を契機として,生命の尊厳や人類の福祉と調和した科学技術の発展に向けて前進が図られることを期待しています。

世界の英知を結集したユネスコ国際生命倫理委員会の活動が,生命科学の健全な発展を促し,科学技術が人類の未来に寄与するものとなることを願い,私のあいさつといたします。