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会見年月日:平成21年2月20日
会見場所:東宮仮御所
この1年もいろいろなことがあった1年でした。明るい話題としては,北京オリンピックでの日本人選手の活躍,そして日本人のノーベル賞受賞などの出来事がありました。これは,私たち人間一人一人が様々な可能性を持っていることを示唆しているものと思い感銘を受けました。
しかし,その一方で,気掛かりなこともあります。特に,米国の金融危機に端を発する世界的な規模の経済危機は,我が国の経済社会,ひいては国民の日々の生活に深刻な影響を与えています。こうした事態にも,是非国民の皆様が互いに手を携え,英知を結集し,速やかな回復が図られることを心から願っております。
このほかにも,食を含めて,生活の安全を脅かす事件や,中東のガザ地区,イラク,アフガニスタンなどの地域の情勢など,世界的にも心配なことがいろいろと起きております。
岩手・宮城内陸地震など自然災害で多くの被害が出たことも心の痛む出来事でした。中国の四川大地震,ミャンマーのサイクロンの大きな被害などもあり,またオーストラリアでは今なお森林火災が収まっておりません。これらの災害で犠牲になられた方々のご冥(めい)福を改めてお祈りいたします。
私の活動としては,国内での地方への訪問や諸行事へ出席するとともに,ブラジル,スペイン,トンガ,ベトナムと外国訪問を行い,それぞれの国との相互理解の促進と友好親善の増進に努めてきました。また,国連「水と衛生に関する諮問委員会」の名誉総裁として,諮問委員会への出席やスペインのサラゴサで開かれた水の問題をテーマにした国際博覧会への出席などを行ってきました。世界の水をめぐる様々な問題が良い方向に向かい,人々の生活が豊かなものになることを心から願っております。
昨年の陛下のご不例につきましては,心からご案じ申し上げておりました。引き続きご自愛の上でご健勝であられますことを心からお祈りしております。
また,陛下のご心労が削減されますよう心から願っておりますし,そのために私どもとしてできることは行ってまいりたいと思います。
特に本年は,ご即位20年,ご成婚50周年の極めて記念すべき年に当たり,天皇陛下をお助けするという皇太子としての重要な務めを改めて深く心に留めております。これまで,両陛下のご活動の一つ一つから多くを学んでまいりました。両陛下には,例えば皇太子時代から身体障害者スポーツ大会に第1回からかかわってこられ,それが現在では知的障害者も加わって障害者スポーツ大会として大きく花開いていることは強く私の心に刻まれております。また,植樹祭の木が育つ過程で行われる育樹祭への出席や青年海外協力隊の派遣隊員にお会いになることなども,正に両陛下が皇太子・皇太子妃時代に新しい公務として育ててこられたものだと思っています。
私がかつて言及しました「新しい公務」については,今まで行われてきている公務を否定する考えでは全くなく,時代の流れに沿って公務のニーズについてもおのずと新しい考えが生まれてくるので,それらの新しい公務のことを指摘したものであります。私が現在行っていることで一例を挙げれば,先に触れましたように,今や国際社会の大きな課題となってきております,水にかかわる様々な問題への取組があります。その中で私は,国連機関の名誉総裁への就任は皇族としては初めてですが,国連「水と衛生に関する諮問委員会」の名誉総裁に就任し,この問題の重要性について皆さんに理解を深めていただくために国の内外で講演などの活動を行ってきております。この3月にもトルコのイスタンブールで開かれる第5回世界水フォーラムに出席し講演をさせていただく予定です。水問題の解決は,貧困を改善し,水をめぐる地域での紛争を解消するという,世界の平和へとつながるものと思っています。私としては,これまでのところ,私の専門分野の歴史をいかして,主として,歴史的な観点から,国,あるいは地域の人々が今まで培ってきた水にかかわる様々な知恵や工夫を広く紹介することによって,今後の水とのかかわりを,それぞれの国や地域の皆さんに考えていただければと思ってお話しをしてきました。
ご質問で触れていただいたように,雅子は,体調に波がある中,病気治療を続けながら,新年一般参賀にすべて出たり,皇后陛下のご名代で祭祀に臨んだりするなど,これまでできなかった公務もできるようになってきていて,私も雅子もうれしく思っております。これは,本人が,公務,祭祀のいずれについても,その重要性を認識し,体調が許す限り頑張りたいと考えて努力している結果であると思います。しかしながら,体調が良いとどうしても頑張り過ぎる傾向があるため,お医者様からは,無理をして回復が逆行することのないよう慎重を期す必要があること,また,育児や東宮職内部の仕事とともに,ライフワークにつながるような活動を大切にしていくことが望ましく,これと公務とのバランスをよく考えていく必要があるとの意見を伺っております。
したがいまして,公務復帰の見通しについては,現状では,焦ることなく,その時々の体調を勘案し,お医者様に相談しながら,これまでどおり個別に検討していくことになると思いますし,私自身,これからも雅子の回復の過程を支えていきたいと思っております。
この1年は,幼稚園の卒業と初等科への入学,東宮仮御所への引っ越しなど,愛子が過ごす環境にも大きな変化がありましたが,今や初等科にもすっかり慣れて学校生活を楽しんでおり,心身ともに大きく成長していることが感じられます。学校の体育の授業で教わった縄跳びは,仮御所に帰ってからも愛子の楽しみの一つとなっており,ほとんど毎日練習しているようです。時々私も一緒に練習しますが,最近では二重跳びもできるようになったとうれしそうに報告に来ました。
私たちの今後の教育の方針と言っていいか分かりませんが,誠実で人に対する思いやりの心をはぐくむことがとても大切と考えています。また,自分でいろいろと調べてみて,答えが分かったときの喜びや答えが出なかったにしても,そこにたどりつくまでの物事を調べる過程の楽しみを是非体験してほしいと思っています。また,同じ世代のお友だちも随分できてきたように見受けられます。また,学習院初等科では上の学年と下の学年との交流を大切にしていることもあり,上級生の方々にもいろいろ遊んでいただいたり,お世話になったりしているようです。
また,私たちは,愛子に,人間としての視野を広げるためにいろいろな体験をしてほしいと考えています。そのために,これからも赤坂御用地や学校以外でのいわゆる社会体験を続けていきたいと考えておりますので,静かに見守っていただきたくお願いいたします。
秋篠宮家とは幸い,住まいが近くになりましたので,3人で歩いて遊びに行ったりします。また,愛子が赤坂御用地で遊んでいるときに,眞子内親王様や佳子内親王様に声をかけていただいて一緒にお遊びしたりしたこともあります。また,初等科への通学の朝,御用地内で,私たちよりも先に私の弟の姿を見付け,「おひげのおじちゃま」とうれしそうに報告してくれたりすることもありましたし,秋篠宮家のお子さん方とまたお遊びできる機会をとても楽しみにしているようです。
先ごろ愛子もとてもかわいがっていた犬の「まり」が息を引き取りました。愛子も生まれたときからずっと一緒で,家族同様に接していたので,最初はとても悲しみましたが,幸い,割合と早くに気持ちの切り替えができたようで,私たちもほっとしました。今は「まり」と過ごした楽しい思い出を大切にしながら,もう一匹のピッピと遊んだり,ピッピの世話をしたりしています。身近な動物との別れはとても寂しいものですが,それを乗り越えることも成長の過程における大切な経験の一つと思っています。
先ほどもお話ししましたように,ご指摘の両陛下のこれまでの歩みについては,常に深くご尊敬申し上げており,両陛下のご活動の一つ一つから多くを学んでまいりました。その中には,青年海外協力隊や沖縄豆記者の接見など両陛下が皇太子時代に始められて私が引き継がせていただいているものもあります。
両陛下の先の大戦の戦没者慰霊と平和への強いお気持ちとの関連におきましては,一昨年モンゴルを訪問した折,シベリア抑留者の辛苦に思いをはせて,モンゴルで抑留中に亡くなられた方々の慰霊碑にお参りしましたことが強く印象に残っております。
両陛下のご公務のあり方については,先日,見直しを図るべく具体的措置が発表になったばかりですので,それに沿ってご負担の軽減が進むことを願っております。今後のご公務についても,両陛下のご健康とご年齢とを考えて両陛下に過度のご負担がかからないようにとの考慮が重要であると思いますが,同時に,天皇陛下としてなさるべきことを心から大切にお考えになっていらっしゃる陛下のお気持ちに沿って,私を含めて周囲がよく考えて差し上げる必要もあると思います。その上で,私としてお助けできることは何であれ,お手伝いさせていただきたいと思っております。
この皇統の問題については,これは私は発言を控えるべきであると思っております。
羽毛田長官も控えた方がいいというようなおっしゃり方だったんですけれども,殿下が当事者というか,直接にかかわってくるということで,その辺率直なお気持ちをお聞かせ願いたいと思いますけれども。
率直な私の気持ちが,やはりこういう問題には,私は口を差し挟むべきではないということであります。
今,雅子は病気療養中ですので,少しずつという感じではありますけれども,国連大学で行われているセミナーへの参加なども将来のライフワークとするものを考える上でも,非常に有益なのではないかと思っています。
また,今お話のありました,福祉の問題ですね,これについてもいろいろと本人も考えているようです。
例えば,ご公務復帰に関してはそういったことを足がかりとされたい,というふうなそういうお考えもありますか。
そうですね,やはりライフワークとなるようなものが一つ見付かるということは,これはやはり,私自身についてみても,私の場合は水の問題などをライフワークとしていこうと思っているのですけれども,ライフワークが一つあるということは,これはほかの公務などをやる場合でも大変励みになるものだと思うのです。ですから,雅子の場合についても,もちろん今病気療養中という状況でありますけれども,何かそういうものを見付けられることが,雅子の病気の回復にとっても良い方向につながるのではないかとそういうふうな感じを持っています。
雅子にとって,一つの公務をする場合には周囲の期待もありますので,それに全力を傾けることになります。お医者様からはほかの活動もいろいろとしたらよいと言われていますが,その場合には,それらの活動を,言ってみれば,犠牲にすることにもなります。また,日数をかけて準備をすることになります。公務の後で疲れが残ることにもなります。したがって,新しく一つの公務ができたからということで,またすぐに次の公務を期待するというのは,本人を精神的に追い詰めることにもなるので避けてほしいとお医者様から伺っております。やはり,その時々の体調を勘案し,お医者様に相談しながら,これまでどおり個別に検討していくことになると思います。
先ほどの質問については,皇統の問題が重要な問題であるということ,これは私は非常によく認識しております。