皇太子殿下お誕生日に際し(平成10年)

皇太子殿下の記者会見

会見年月日:平成10年2月16日

会見場所:東宮仮御所

皇太子殿下のお写真
記者会見をなさる皇太子殿下
(写真:宮内庁)
問1 殿下は先ごろ,冬季オリンピックの観戦のため,長野県をご訪問になりました。また,3月に開かれるパラリンピック大会では,名誉総裁に就任されています。こうしたスポーツを通じての国際交流の場に身を置かれて,どのような思いをお持ちになられましたでしょうか。
皇太子殿下

以前にもお話ししたことがあると思いますけれども,私の記憶に残っている最初の大きな出来事は,私が4歳の時の東京オリンピックでした。幸い,幾つかの競技を観戦する機会に恵まれました。ただ,当時は知っている国の名前の選手というよりはむしろ知らない国の選手が多かったと思いますけれども,幼心にオリンピックというのは非常に多くのスポーツの選手が世界各国から集まって繰り広げられる大きな大会だなということを,幼心に記憶しております。

その後,確か小学校の6年の時だったと思いますけれども,札幌で冬季オリンピック大会が行われまして,この折も観戦することができました。本当にオリンピックというのは世界各国から様々なスポーツ選手が一堂に会して繰り広げられるスポーツの祭典だなという認識を強く持つようになりました。

スポーツの場では,たとえ話す言葉は同じではなくても,一つのことに向かって力を出すという共通の目標があるわけでありまして,そこが選手相互の,そして選手と役員,そしてボランティアを含む関係者との間の交流を促し,そして一体感を醸し出すものだと思います。そして,このようなオリンピックの場で得られた友情というものは,人々の相互のこの友情というものは,国境を越えた人と人との相互理解を深める上で,大きな役割を果たすものだと思います。

また,今回の長野オリンピックでは,次の世代を担う子供たちが開会式でも大変に活躍をし,また,それぞれの担当している国を応援したり,交流を深めたりしているというふうに聞いておりますが,これも本当にすばらしいことだと思います。

また,この度の日本選手団の活躍も大変うれしく思っております。私たちも幸い,長野で,清水選手のスピードスケート500メートルにおける金メダル,そして船木選手のノーマルヒル・ジャンプにおける銀メダルの瞬間を目の当たりにすることができました。長野オリンピックが参加した選手,それから役員,関係者はもとより,それを観戦した多くの方々にとっても,良い思い出となることを心から希望しております。

また来月には,日本では初めて冬季のパラリンピックが開催されますが,このパラリンピックも私たち,行くことを今から楽しみにしておりますし,また,関係者の長年の努力が実って開催の運びとなったことを大変うれしく思っております。選手の皆さんの健闘を今から楽しみにしています。

問2 今年5月には,天皇皇后両陛下が英国をご訪問になります。英国留学のご経験があり,英王室とも親しく交際されました殿下は,皇室と英王室との交流について,どのようなお考えをお持ちでしょうか。ダイアナ元皇太子妃の思い出も交えてお聞かせください。
皇太子殿下

私は幸い,小さい折から両親である天皇皇后両陛下のお心遣いにより,世界各国の王族の方々と小さいころからお会いすることができまして,本当に心から感謝しております。

イギリス留学中は,英国の王室の方々はもとより,ヨーロッパ各国の王室の方々と親しくお会いすることができ,大変貴重な経験をすることができました。また,それぞれの国において,王室の皆様から大変温かく迎えていただいたことを大変有り難く,本当にうれしく思っております。

王室の皆様の置かれている環境というのは,それぞれの国において異なると思いますが,王室の皆様が,本当に国民の幸福を願い,そして諸外国との親善関係の増進に心を砕いておられることは変わりはないと思います。私も,留学中も含めて,いろいろな王族の皆様方とお会いした上で,本当に様々なことを皆様から教えていただいたように思います。王族の皆様がどのように考え,そしてどのような行動をしておられるかといったことは,私の今後の行動にも本当にいろいろな面で参考になると思います。

また,先ほどの質問とも関係がありますけれども,先日の長野では,いわゆるIOCのメンバーとして来日された王族の方々,それから観戦のために日本に来られた王室の方々と,親しくお会いし,旧交を温める機会ができましたことを大変うれしく思っております。

問3 両殿下のご結婚から今年で5年になります。皇太子妃として,また,妻としての雅子様,そしてお子さまのことなど,この間の生活を通じてお考えになったことをお聞かせください。また,妃殿下の手料理を楽しまれる機会もあると思うんですが,いかがでしょうか。殿下のお好きなメニュー等ありましたらお聞かせください。
皇太子殿下

結婚しましてから,本当にあっという間に月日がたったというのが率直な印象です。雅子には皇太子妃として,そして妻として本当に良くやってくれていると心から感謝しております。また,雅子が結婚前に経験した様々なことは,今の生活においても本当に有益なものと思っております。それから忙しい中ではありますけれども,本当にくつろいで,そして憩いのある場を持つことができるということを,本当にうれしく思っております。

それから,料理の話ですけれども,本当に忙しい公務の合間をぬって料理を作ってくれることがありますが,大変おいしいです。

今後のこととしましては,二人でそろって力を合わせて国民の幸福を願い,そして日本の国にとって,そして社会にとって重要と思われる事柄にも心を寄せつつ,二人で精一杯公務に励んでいきたいと思っています。

問4 38歳のお誕生日を迎えてのご感想と今年の抱負をお聞かせください。
皇太子殿下

だんだん40に近づいてきたなというのが率直な印象ですけれども,まだまだ若いつもりでおります。来年のこの誕生日を迎えた時に「この前の一年は本当に充実してて良い一年だったな」と思えるような一年を送っていきたいと思っておりまして,今から非常に一日一日を大切にしながら日々を過ごしていきたいと思います。公務にも,私生活にも,それから研究生活にもそれぞれ充実した日々を過ごしていきたいというふうに思っております。

<関連質問>
オリンピック,昨日メダルラッシュだったんですけれども,金メダルをとった船木選手,銀メダルの原田選手,後はモーグルというスキーの女の子で里谷選手といった金メダルやメダルを取った選手の方々をテレビでご覧になっていらっしゃったかと思いますけれども,もし,ご覧になっていらっしゃったら,ご覧になった感想をと思いまして。あとは,アトランタでは大分パラリンピックの選手も日本のパラリンピックの選手も活躍したと思うんですけれども,改めて今度の長野でのパラリンピックの日本選手の活躍について具体的にお話を伺いたいと思いまして。
皇太子殿下

先ほどもお話ししましたけれども,長野でも本当にうれしいメダルの瞬間を目にすることができましたし,それから,里谷選手の金メダルはテレビでその模様は見まして,大変うれしく思いました。それから昨日はラージヒルのジャンプ,これもテレビで見まして,船木選手の金メダル,原田選手は銅メダルですね,原田選手の銅メダルの瞬間,本当に見て,大変うれしく思いました。また,昨日のことで言えば,清水選手が500メートルに続いて1,000メートルでも銅メダルを手にしたということ,またその前では岡崎選手の銅メダルもありましたし,本当に毎日テレビでオリンピックの模様を大変うれしく,感動をもって見ております。

オリンピックの競技を見ながら,一人一人の選手が,本当に長い年月をかけて,本当にいろいろつらい思い,大変な思いをしたと思うんですけれども,本当に力の限りを尽くして,そして今回の大会に臨んでいるということを知りまして大変うれしく思っております。本当に連日テレビにくぎ付けになっています。私たち二人とも,本当にウインタースポーツも好きなものですから,テレビでの観戦,楽しみにしております。

また,2番目の質問でパラリンピックに関して言えば,アトランタでも大変日本選手,活躍しましたし,今度は,先ほども申し上げましたけれども初めての日本での冬季のパラリンピックということで,また感慨もひとしおですし,また,日本選手団の活躍を心から祈っております。また,日本選手団には,世界の選手団との交流もいろいろしていただけたらと思いますし,本当に選手の皆さんの健闘を今から楽しみにしております。