ご婚姻に関する皇室会議終了後の記者会見から1年を経ったことにあたり(平成6年)

皇太子同妃両殿下の記者会見

会見目的:ご婚姻に関する皇室会議終了後の記者会見から1年を経ったことにあたり

会見年月日:平成6年2月9日

会見場所:東宮仮御所

皇太子同妃両殿下のお写真
記者会見をなさる皇太子同妃両殿下
(写真:宮内庁)
問1 ご結婚から8か月が過ぎました。殿下にとって独身時代と比べまして一番変わったことは何だったでしょうか。また,妃殿下は皇室入りされて,当初,皇室について思い抱いておられたイメージが実際とは違ったということがありましたでしょうか。また,これまで経験された公務の中で特に印象深かったことや感激されたエピソードなどをお聞かせ願えませんでしょうか。
皇太子殿下

婚約の発表がありましてから1年余りが過ぎ,結婚から約8か月が過ぎた訳ですけれども,以前と一番違うことと申しますと,やはり一人のところが二人になったということだと思います。つまり今までは公務をするにしても何をするにしても一人でやっていたわけですけれども,結婚してからは何をするのにしてもすぐそばに雅子が居てくれまして,そしてまた別の目でもって色々なことを見て,そして今まで私が気がつかなかったこと等を色々と教えてくれます。それと同時に今まで私が経験しないでいたことで,雅子が今まで経験をしていた色々な話しを聞くこともできて非常に楽しいです。

皇太子妃殿下

私の場合,結婚が決まる以前に皇室に対して特定のイメージというものは特に持っていなかったような気がいたします。結婚をお受けするに当たりまして私がこれから皇室の一員としてどのように国民と関わり,そして世の中のためにどのような役割を果たしていくのかということについて考えていかなければならないと思いましたが,その気持ちは今でも変わっておりませんし,今後も一生の課題であるというふうに考えております。公務との関係で特に印象に残ったことということでございましたが,結婚後公務のために色々と新しい経験をする機会に恵まれましたが,様々な行事に出席したり,また,施設を訪れたりいたしまして,その時その時に出会った方々がそれぞれ一生懸命にその行事に臨んだり,また,奉仕をしたり,また,生活をしていらっしゃる姿に爽(さわ)やかな感動を覚えたということだと思います。

問2 皇室の在り方について様々な議論がありますが,今後ご夫妻で築いていきたい皇室の将来像をお聞かせ下さい。また,新たにしてみたいと思われるようなことはございますか。
皇太子殿下

この点に関しまして,皇室に関して色々な議論があることは聞いてはおりますけれども,私たちとしましては皇族である以上,両陛下をお助けしつつ国民と共にある皇室を実現していきたいというふうに思っております。それとともに国内はもとより外国の様々な地域を回りまして,そして多くの人々と出会い,そして多くの物を見,友好親善関係の増進に少しでも役立つことができたらと思っておりますし,また,このようなことは私にとりましても,非常に大きな糧になるのではないかと思います。また,それと同時に,今現在,国内そして国外で起こっている様々なことについても,更に理解を深めていきたいというふうに思っております。

皇太子妃殿下

この1年ほどの間,初めて両陛下のお姿をおそばで拝見してきまして私が大変心を動かされましたことは,両陛下がどのようなことであっても,苦しんでいる人々,悲しんでいる人々,又は恵まれない境遇に置かれている人々のために,いかにお心をお痛めになり,お心をお砕きになっていらっしゃるかということでございました。そのような両陛下のお姿に触れ,私もそのように心掛けていきたいというふうに感じております。今後,具体的にどのようなことをしていくかということにつきましては,皇太子殿下とご相談しながら考えていきたいというふうに考えております。

問3 妃殿下の風邪が長引いたこともありまして,おめでたを取りざたする向きもありますけれども,殿下はお子様について婚約の会見で「コウノトリのご機嫌に任せて」とおっしゃっておりました。現在のお気持ちはいかがでございましょうか。また,妃殿下のお考えも併せてお聞かせ下さい。
皇太子殿下

「コウノトリのご機嫌に任せて」とあの時申しました気持ちは今も変わっておりません。ただ,あまり周りで波風が立ちますと,コウノトリのご機嫌を損ねるのではないかというふうに思います。今回,風邪をひいたことが思わぬ方向に発展しまして大きな騒ぎになっておりますので,私としては正直言ってびっくりしております。

皇太子妃殿下

私も殿下のお考えと同じでございます。一言付け加えるといたしましたら,依然としてオーケストラは考えておりませんということでございましょうか。

問4 プライベートな面なんですけれども,公務がないとき,両殿下はどのように過ごされているのですか。夫として妻としてお互いをどのようにご覧になっていますか。
皇太子殿下

週の間は公務もありますし,それに対する準備であるとか,それから色々な打合せに時間を割かれるときもありますけれども,自由な時間としましては,お互いの,私たちの関心のある例えば読書であるとか,それから研究分野に関する様々なことをしておりますし,また,それ以外に二人で運動したり或いは音楽を聞いたりとかそういうプライベートな時間も持っております。それ以外の事としましては,できるだけ時間を見つけてお互いに話し合う時間を見つけております。お互いの関心事についても,お互いの意見を交換させたり,色々なことを聞き合ったりすることによってお互いを高め合っていく,そういうふうな喜びを感じております。このような訳ですから,雅子は私にとっても何でも相談のできる話し相手として良き妻であると同時に良きパートナーでもありますし,それから一人の人間として非常に尊敬しております。

皇太子妃殿下

皇太子殿下には,新しい生活に入りました私に対して常に深い思いやりを持ってくださって色々とお教えくださり,考えてくださり,また,何事でも相談相手となってくださるなど,ここまで私を本当に大きく支えてきてくださいました。そのご人格から見習うべきところが大変たくさんおありでいらっしゃいますし,とても色々なことをご存じでいらっしゃいますので,お話をしていて学ぶところが多うございます。

問5 最近の皇室報道についてどうお考えですか。
皇太子殿下

皇室について様々な議論がなされることは,これは言論の自由の認めるところでありますけれども,報道というものは非常に社会的にも影響力の大きいものでありますので,事実に基づいた報道ということがやはり大切だと思っております。

皇太子妃殿下

私も殿下と同じ考えでございます。

<関連質問>
問1 殿下は以前,会見で「雅子さん」と,確か,さん付けで呼んでいたと思いますが,今回「雅子」と呼び捨てになられたその心境の変化というものはいかがなものなんでしょうか。それとも,亭主関白ということで理解してよろしいんでしょうか。その辺をお伺いしたいのですが。
皇太子殿下

これは,なかなかこれは難しいですが,以前は言ってみれば婚約の発表という段階であった訳ですけれども,もう結婚いたしましたので,「雅子」というふうに呼んでいる訳です。別に心境の変化うんぬんということでは特にありません。

問2 雅子様の方は殿下のことはやはり,まだ「殿下」でいらっしゃいますか,呼び方は。
皇太子妃殿下

呼び方でございますか。それはその時によって色々ございますけれども。

皇太子殿下

私もその時に応じて色々ございますので。

問3 ご結婚されてから,感銘を受けた本とか,例えば映画とか,音楽会とか,ひとつだけ挙げるのはなかなか難しいかもしれないんですけれども,あえて一つ挙げるとすると,どういうようなものがありますか。
皇太子殿下

そうですね,結婚してから正直に言いまして,演奏会あるいは映画それから本を読むにしても余り回数行っているという訳ではありませんので,ただあえて申し上げると,その時見たもの,あるいは聞いたコンサート,それから読んだ本,それぞれにやはり非常に感銘を受けるものがあったと思います。特にどれというのはなかなか難しいと思います。

皇太子妃殿下

そうでございますね,演奏会とおっしゃると私はなかなか運がついていないのか,オペラに行く予定なんかいつも何か不都合が生じてしまって聞けなかったりしてますが,そうでございますね,いくつか思い出されるようなものはございまして,また,殿下も音楽について大変詳しくていらっしゃいますので,あとでいろいろお話をしたりとか,そういったことは大変楽しくさせていただいております。

問4 両殿下に伺いたいのですが,お二人がもし,何か新たにチャレンジしてみたいスポーツでもなんでも結構なんですが,いかがでしょうか。そして,殿下,この前ハーフマラソンにトライしたいとおっしゃってましたけれども,今年何かハーフマラソン,あるいはフルマラソン,一般公道,一般のですねそういうのに参加して実際に試してごらんになるという,ご意思はどうでしょうか。
皇太子殿下

そうですね,まだ,今年もまだ2月ですし,まだ始まって間もない訳なんですけども,そうですね,今,何かチャレンジすることというのは,特に今は考えていることはありませんけれども,またこれも,色々その時に応じて何かそういうものが今年中に出てくるかもしれません。それからお話のあったハーフマラソンですけれども,なかなかいわゆる本当のハーフマラソンを走るということは,これはなかなか大変なことだと思いますし,私としましても,あくまでもハーフマラソンの距離,21キロに一回走ってみたいという,そういう希望がありました訳なんで,本格的なレースに出たいとかそういうことは特に今のところはございません。

皇太子妃殿下

スポーツに関しましては,年が明けて暫くしましてから私は風邪をひいたり何かしておりましたので,今までは,ひたすら直すことに専念しておりましたこともありまして,まだ,何にチャレンジしたいと,そこまでは考えておりません。

問5 妃殿下にお伺いしたいのですが,皇室に入られてから一番苦労されたことはどんなことでしょうか。
皇太子妃殿下

難しゅうございますね。多分やはりこれまでの自分の人生の中でなかったような場面というのが色々ございまして,といいますのは,例えば,常に人に,大勢の人に見ていられるというような状況は今まで経験したことはございませんでしたので,そういったことで少し最初のうち驚きを感じたりいたしました。

問6 雅子様のご自慢の手料理というのは何でしょうか。
皇太子妃殿下

そんなに自慢できるようなものはございません。

問7 妃殿下にお尋ねします。両陛下,また,殿下も皇室は国民と共に歩むということをおっしゃいましたけれども,妃殿下,結婚されて8か月間で国民と共に歩むというのは,どのように理解されていますか。あるいは実感されていますか。
皇太子妃殿下

そうでございますね,やはり人々の喜びを分かち合ったり,それから人の苦しみですとか,心の痛みといったことを分かって,そして国民の幸福を常に祈っていくということではないかと思いまして,両陛下とも色々とお話をすることがございますけれども,そういうことを強く感じます。

問8 雅子様に,男女平等の世の中というか,憲法でもそうなってますけれども,皇室典範では天皇というのは男子でなければ継げないというふうになってますけれども,先ほどからいろいろ二世の話も出てるんで,将来の話として,そういうこの規定についてはどのようにお考えですか。
皇太子妃殿下

特に,私からコメント差し控えさせていただきたいと思います。

問9 妃殿下にお伺いいたしますが,ご懐妊の期待というのはかなり高まっていると思うのでございますが,逆にご本人としてそれに対してプレッシャーみたいなものはお感じになることはございますでしょうか。
皇太子妃殿下

どうでしょう。特にそういうこともございませんけれども,物事はなるようになるのではないかという感じです。

記者

殿下はいかがでございますか。

皇太子殿下

いやこれは,これはあとはコウノトリに聞かなければわかりませんですね。

問10 プライベートな取材ですけども,殿下が妃殿下にお諫め申し上げたりですね,あるいは妃殿下が殿下にご意見を申し上げたり,俗にいう夫婦喧嘩ですけれど,そういうものは。
皇太子殿下

そうですね…。あまりそういうことは,特にありませんけれども。

記者

妃殿下は。

皇太子妃殿下

ウフフ。そうですね…。

問11 昨年,皇后陛下が体調を崩されて,現在まだ完全には直ってらっしゃらないというふうに伺っているのですが,皇后陛下のご病気について,その後,どのように接していらっしゃったのか,その辺を両殿下からお伺いしたいのですが。
皇太子殿下

昨年のご病気以来,私も折に触れて皇后陛下に二人揃ってお会いする機会が何回かございましたけれども,私としましても,本当に一日も早く全快されることを心からお祈りしております。

皇太子妃殿下

そうでございますね。お具合がお悪くなられてからも,お目にかかってもいつもの通りお優しく接してくださいました。

問12 民間からのお妃ということでやはり皇后様も同じ道を歩まれたのですが,雅子様には何か直接アドバイスなどは具体的になさっていらっしゃるのでしょうか。
皇太子妃殿下

そういった意味での,具体的なアドバイスということではなく,宮中の儀式ですとか,行事ですとか,私が初めて臨むものについて,お教えくださったり,あとは折に触れて,色々ご相談申し上げるようにしております。

問13 先ほど殿下が外国の地域との友好親善をというお話だったんですが,お二人で例えばこんなところをご訪問してみたいというお話をされたりですとか,それから延び延びになっております湾岸について何かお話されたりということはあるのでしょうか。
皇太子殿下

これについては,私たちの旅行の場合,特に政府と相談しながら決めることでありますので,そちらの意向を受けて訪問することになる訳ですけれども,湾岸の地域も言ってみれば延び延びになっておりますので,近い将来行くことが実現したら,とは思っています。それ以外の地域にも,それはもちろん政府と相談しながら,行く場所を考えたいというふうに思っております。