会見目的:ご婚姻に関する皇室会議終了後の記者会見から1年を経ったことにあたり
会見年月日:平成6年2月9日
会見場所:東宮仮御所
婚約の発表がありましてから1年余りが過ぎ,結婚から約8か月が過ぎた訳ですけれども,以前と一番違うことと申しますと,やはり一人のところが二人になったということだと思います。つまり今までは公務をするにしても何をするにしても一人でやっていたわけですけれども,結婚してからは何をするのにしてもすぐそばに雅子が居てくれまして,そしてまた別の目でもって色々なことを見て,そして今まで私が気がつかなかったこと等を色々と教えてくれます。それと同時に今まで私が経験しないでいたことで,雅子が今まで経験をしていた色々な話しを聞くこともできて非常に楽しいです。
私の場合,結婚が決まる以前に皇室に対して特定のイメージというものは特に持っていなかったような気がいたします。結婚をお受けするに当たりまして私がこれから皇室の一員としてどのように国民と関わり,そして世の中のためにどのような役割を果たしていくのかということについて考えていかなければならないと思いましたが,その気持ちは今でも変わっておりませんし,今後も一生の課題であるというふうに考えております。公務との関係で特に印象に残ったことということでございましたが,結婚後公務のために色々と新しい経験をする機会に恵まれましたが,様々な行事に出席したり,また,施設を訪れたりいたしまして,その時その時に出会った方々がそれぞれ一生懸命にその行事に臨んだり,また,奉仕をしたり,また,生活をしていらっしゃる姿に爽(さわ)やかな感動を覚えたということだと思います。
この点に関しまして,皇室に関して色々な議論があることは聞いてはおりますけれども,私たちとしましては皇族である以上,両陛下をお助けしつつ国民と共にある皇室を実現していきたいというふうに思っております。それとともに国内はもとより外国の様々な地域を回りまして,そして多くの人々と出会い,そして多くの物を見,友好親善関係の増進に少しでも役立つことができたらと思っておりますし,また,このようなことは私にとりましても,非常に大きな糧になるのではないかと思います。また,それと同時に,今現在,国内そして国外で起こっている様々なことについても,更に理解を深めていきたいというふうに思っております。
この1年ほどの間,初めて両陛下のお姿をおそばで拝見してきまして私が大変心を動かされましたことは,両陛下がどのようなことであっても,苦しんでいる人々,悲しんでいる人々,又は恵まれない境遇に置かれている人々のために,いかにお心をお痛めになり,お心をお砕きになっていらっしゃるかということでございました。そのような両陛下のお姿に触れ,私もそのように心掛けていきたいというふうに感じております。今後,具体的にどのようなことをしていくかということにつきましては,皇太子殿下とご相談しながら考えていきたいというふうに考えております。
「コウノトリのご機嫌に任せて」とあの時申しました気持ちは今も変わっておりません。ただ,あまり周りで波風が立ちますと,コウノトリのご機嫌を損ねるのではないかというふうに思います。今回,風邪をひいたことが思わぬ方向に発展しまして大きな騒ぎになっておりますので,私としては正直言ってびっくりしております。
私も殿下のお考えと同じでございます。一言付け加えるといたしましたら,依然としてオーケストラは考えておりませんということでございましょうか。
週の間は公務もありますし,それに対する準備であるとか,それから色々な打合せに時間を割かれるときもありますけれども,自由な時間としましては,お互いの,私たちの関心のある例えば読書であるとか,それから研究分野に関する様々なことをしておりますし,また,それ以外に二人で運動したり或いは音楽を聞いたりとかそういうプライベートな時間も持っております。それ以外の事としましては,できるだけ時間を見つけてお互いに話し合う時間を見つけております。お互いの関心事についても,お互いの意見を交換させたり,色々なことを聞き合ったりすることによってお互いを高め合っていく,そういうふうな喜びを感じております。このような訳ですから,雅子は私にとっても何でも相談のできる話し相手として良き妻であると同時に良きパートナーでもありますし,それから一人の人間として非常に尊敬しております。
皇太子殿下には,新しい生活に入りました私に対して常に深い思いやりを持ってくださって色々とお教えくださり,考えてくださり,また,何事でも相談相手となってくださるなど,ここまで私を本当に大きく支えてきてくださいました。そのご人格から見習うべきところが大変たくさんおありでいらっしゃいますし,とても色々なことをご存じでいらっしゃいますので,お話をしていて学ぶところが多うございます。
皇室について様々な議論がなされることは,これは言論の自由の認めるところでありますけれども,報道というものは非常に社会的にも影響力の大きいものでありますので,事実に基づいた報道ということがやはり大切だと思っております。
私も殿下と同じ考えでございます。
これは,なかなかこれは難しいですが,以前は言ってみれば婚約の発表という段階であった訳ですけれども,もう結婚いたしましたので,「雅子」というふうに呼んでいる訳です。別に心境の変化うんぬんということでは特にありません。
呼び方でございますか。それはその時によって色々ございますけれども。
私もその時に応じて色々ございますので。
そうですね,結婚してから正直に言いまして,演奏会あるいは映画それから本を読むにしても余り回数行っているという訳ではありませんので,ただあえて申し上げると,その時見たもの,あるいは聞いたコンサート,それから読んだ本,それぞれにやはり非常に感銘を受けるものがあったと思います。特にどれというのはなかなか難しいと思います。
そうでございますね,演奏会とおっしゃると私はなかなか運がついていないのか,オペラに行く予定なんかいつも何か不都合が生じてしまって聞けなかったりしてますが,そうでございますね,いくつか思い出されるようなものはございまして,また,殿下も音楽について大変詳しくていらっしゃいますので,あとでいろいろお話をしたりとか,そういったことは大変楽しくさせていただいております。
そうですね,まだ,今年もまだ2月ですし,まだ始まって間もない訳なんですけども,そうですね,今,何かチャレンジすることというのは,特に今は考えていることはありませんけれども,またこれも,色々その時に応じて何かそういうものが今年中に出てくるかもしれません。それからお話のあったハーフマラソンですけれども,なかなかいわゆる本当のハーフマラソンを走るということは,これはなかなか大変なことだと思いますし,私としましても,あくまでもハーフマラソンの距離,21キロに一回走ってみたいという,そういう希望がありました訳なんで,本格的なレースに出たいとかそういうことは特に今のところはございません。
スポーツに関しましては,年が明けて暫くしましてから私は風邪をひいたり何かしておりましたので,今までは,ひたすら直すことに専念しておりましたこともありまして,まだ,何にチャレンジしたいと,そこまでは考えておりません。
難しゅうございますね。多分やはりこれまでの自分の人生の中でなかったような場面というのが色々ございまして,といいますのは,例えば,常に人に,大勢の人に見ていられるというような状況は今まで経験したことはございませんでしたので,そういったことで少し最初のうち驚きを感じたりいたしました。
そんなに自慢できるようなものはございません。
そうでございますね,やはり人々の喜びを分かち合ったり,それから人の苦しみですとか,心の痛みといったことを分かって,そして国民の幸福を常に祈っていくということではないかと思いまして,両陛下とも色々とお話をすることがございますけれども,そういうことを強く感じます。
特に,私からコメント差し控えさせていただきたいと思います。
どうでしょう。特にそういうこともございませんけれども,物事はなるようになるのではないかという感じです。
殿下はいかがでございますか。
いやこれは,これはあとはコウノトリに聞かなければわかりませんですね。
そうですね…。あまりそういうことは,特にありませんけれども。
妃殿下は。
ウフフ。そうですね…。
昨年のご病気以来,私も折に触れて皇后陛下に二人揃ってお会いする機会が何回かございましたけれども,私としましても,本当に一日も早く全快されることを心からお祈りしております。
そうでございますね。お具合がお悪くなられてからも,お目にかかってもいつもの通りお優しく接してくださいました。
そういった意味での,具体的なアドバイスということではなく,宮中の儀式ですとか,行事ですとか,私が初めて臨むものについて,お教えくださったり,あとは折に触れて,色々ご相談申し上げるようにしております。
これについては,私たちの旅行の場合,特に政府と相談しながら決めることでありますので,そちらの意向を受けて訪問することになる訳ですけれども,湾岸の地域も言ってみれば延び延びになっておりますので,近い将来行くことが実現したら,とは思っています。それ以外の地域にも,それはもちろん政府と相談しながら,行く場所を考えたいというふうに思っております。