会見年月日:平成5年2月19日
会見場所:東宮仮御所
この度の皇室会議を経て,婚約が内定したということで,今,私としてはうれしい気持で一杯であります。確かに,今おっしゃったように独身時代の長さという点に関していえば,チャールズ皇太子殿下を上回って,言って見れば金メダルに輝くということになったわけですけれども,今,思い返してみても私自身として非常に充実して,そして楽しく,そして有意義な独身生活を送ることができたというふうに思っております。その独身生活もそろそろ終わりに近づくと思うと,ある趣の感慨を覚えますけれども,この婚約内定の喜びははるかにそれを凌駕するものであります。
独身時代にやっておきたいことは,恐らくほぼやったというふうに思います。今年新たにチャレンジしたいことといえば,新たなるこの結婚生活のスタートを,どう充実したものにするかということではないかと思います。
皇室会議以降,できるだけ機会をみつけては会うようにしております。会話という点に関して言えば,これは電話を通してでもできるものですけれども,近況を語り合ったりとか,それから相談事がある場合には,これはお互いに会うに越したことはないというふうに思います。今,会っているときにどういう話をするかということは,細かいことは差し控えたいと思いますけれども,ともかく会っていて,そして時間を忘れるほど楽しい人であります。そしてまた会うごとに,私が思っていたとおりの人であるという意を強くいたします。そしてまた,私が今まで知らなかったような非常に興味深い様々な話をしてくれます。この間の記者会見の折にも申し上げましたけれども,お互いに学びあっていく非常に良きパートナーであるという思いを新たにいたします。それとともに,非常に固い決心をしてくれた雅子さんに対する感謝の気持ちを新たにしております。
今後のやり方等については,以前もお話したことだと思いますけれども,私たち皇族がするべきことは,これは陛下もおっしゃっておられるように,国民と共にあるということだと思います。これから先,ますます国民とそれから皇室との心の通い合いということが大切になってくるのではないかと思います。その点に関して,またこれから先,二人でいろいろ考えていくことでありますけれども,私たちなりにやっていきたいというふうに思っております。
それから一方,外国との交際について申しますと,今まで既に両陛下が王国を始め,それからそれ以外の国々との心温まる交流をされておられます。そのことは,私が今までそういった国々を訪れた際にも強く感じることであります。私たちは,両陛下が今までなさってきたことを受け継いで,更に,次の世代の方々との交流も深めていきたいと思います。今,皇族に皇室に求められていることは,各国との友好親善関係の増進であるように思います。そういった友好親善を深めていくうえで,今まで雅子さんが培ってきた経験というものは確実に活かされるものだと思います。
これは,こういうふうな,結婚後になってみないと分からないことだと思います。大学での研究は引き続き,続けていきたいというふうに思っております。
この度,天皇陛下が沖縄を訪問されるということは,非常に私も意義深いことであると思います。ことに両陛下は,先の大戦でもって住民を巻き込む地上戦が行われた沖縄に対して,深く思いを致しておられます。その例としまして,例えば,6月23日の沖縄戦終結の日には家族全員でもって黙祷を捧げている,こういったことも両陛下のお考えによるものであります。それからまた,本土から沖縄へ,そして沖縄から本土を訪れる豆記者と毎年のように会っておられたのも,そのような沖縄に対する思いの表れであると思います。
また,私自身振り返ってみましても,両陛下が沖縄の歴史そして文化を広く,日本人全員に知ってもらいたいというお気持ちから,私自身も本当に幼少の頃から沖縄の文化そして歴史について様々なことを両陛下から教えていただいたように思います。
私自身,昭和62年に沖縄を初めて訪問いたしましたけれども,「戦没者墓苑」であるとか,それから「ひめゆりの塔」といった場所を訪れまして,沖縄が戦争の痛ましさ,そして戦前,戦後と沖縄の辿(たど)ってきた苦難の道に思いを致しましたし,それと共に平和の尊さ,そして大切さというものを強くかみしめました。
そのように多くの方々が,この度の婚約の内定を喜んでいただいたということを私自身として大変うれしく思っております。私共二人,これから本当に,一生懸命,公務に共に務めて参りたいというような所存でおります。今,本当に皆さんに対する感謝の気持ちで一杯であります。恐らく,これは雅子さんについても同じような気持ちでいると思います。ただ詳しいことは,ちょっとポケットベルが今日ありませんので。
一日何回ぐらい鳴るんですか,ポケットベルは。
あの,実はポケットベルは使ってはおりません。例えば公務とか何とかで,行き先でもって,仮に式典の席ですとか,そういった所でポケットベルが鳴っても電話をどうやってとったらいいかという問題もありますし,余り実用的ではありません。
そうですね,まず最初の申し合わせの件に関して言いますと,今まで私自身,いろいろ感じてきたことではありますけども,本当に報道の申し合わせがないような状態であった場合に,これが相手の人にとってみても,ゆっくりと自分自身の考えを築き上げていく余裕というものはとてもできなかったと思いますし,また,私自身としても静かな環境でもって,自分なりに自分の考えをまとめていくということは,とてもあのような状況では,私はできなかったと思います。ですから長官の会見にもありましたように,本当に今回のことは皆様方のご理解がいただけた,そして,その申し合わせが行われたという結果に依存することが,非常に大きなものであったというふうに思っております。ですから私としても,非常にこの度のことに関して心から感謝をしたいと思っております。
それから,2番目の警備についてでありますけれども,以前全く警備なしで出掛けたという事は,これはございません。今回が全く初めてのことであります。ただ,私としましても,ことに雅子さんの場合,以前に非常にマスコミにも取り上げられて,それでいろいろと取材されて大変な思いをされたということもございますので,今回も会う場合には本当に極秘で,そして本当に知られないで会う方法というものをいろいろ考えたわけです。その結果としまして,最終的には警備を付けずに会うという,言ってみれば前代未聞のことだったかも知れませんけれども,そのようなことになったと思うわけなんですけれども,私自身本当にこの度の雅子さんのことに関しては,本当に全力投球でと申しますか,一生かけて,本当に力を入れていたことでもありますし,警備なしという極めて無防備な状態ではあったわけですけれども,それをする価値は十分にあったという,このことに関してはそういうふうに思っています。
それに関しては,私はいろんなものがあると思います。まず具体的にあれこれというふうにあげることは難しいと思いますけれども,やはり会見の場でも申し上げたように,やはり皇太子妃という非常に重要な立場にあるという,そういったプレッシャーというものが当然ございますし,それからまた,本当に様々な新しい環境に入るわけですから,それに伴う様々な不安であるとか,それから恐らくストレスみたいなものもあるかもしれないわけです。ですからそういった時に本当に側にいてあげて,そして相談にのって,そして全力で守ってあげるということが,私としては絶対に必要ではないかというふうに思います。そういうふうに言ったわけです。
幸い今のところ,本人と頻繁に,電話も含めて連絡を取りあっておりますけれども,本人はそういったことは余りもうしませんけれども恐らく,何といっても新しい環境になっているわけですから,自分なりにそういったものを感じるのではないかというふうに思います。ただ,本人から直接あれこれ話はございません。
まず一番あとの方からお答えいたしますと,結婚の儀の日取りについては,これは私があれこれ希望することではなくて,これは周りで,周囲で決めていただけることですので,私はそれに関してあれこれ申し上げる筋合いはないと思います。
それから,今までの外務省の,ある意味では一人の職員として,様々な外交の場に雅子さんの場合,出てきたと思いますけれども,今度は皇室に入ると,今まで扱っていたものとは,また違うものに必然的に,さっきも申し上げましたようにあくまでも政治的,経済的な意味合いというのから離れて,そして友好親善を深めるというのが皇室の諸外国との交流の基本になるという違いはあると思いますけれども,ただ,今まで何分にもいろんなそういった外国と様々な場でもって交流をしてきた人でありますから,そういった新しい環境というものにも十分に対応できる,あるいは順応できる素質を持っている人だというふうに思います。
これは特にアドバイスを受けているとか,そういうことでは実はないんですけれども,なんとなく心境の変化なんですかね。
そうですね,確かにある意味では一段落したというか,ホッとしたという気分は非常にあるわけです。たださっきも,今,話のあった何合目という点に関して言えば,ある意味では人生でもって一つのピークを登ったっていうような,そういうふうな感じがいしたします。ただやはり,これから先,まだ次のピークというものが新たに待っているというふうに思いますけれども,それについては雅子さんという良いパートナーを持って,そして二人で登っていくというそういうふうな気持ちであります。
そうですね,これについては,今,考えている最中です。
まあ,その辺もいろいろ考えている最中ですけれども。
そういう質問は今日来るかなとは思っていましたけれども,そうですね,昨年,私が録音したCDをプレゼント致しました。それからバレンタインデーについては非常に心のこもった物をもらいました。けれども内容については,二人の秘密にさせていただきたいです。
まだ1度しか一緒にやったことはないわけですけれども,見てて非常に何と言いましょうか,無理のない,筋のいいテニスというような感じは強く持ちますね。非常にこれから一緒にやっていく上で楽しみだなという気がいたします。
思い出の地以外でですか。これも二人で相談していこうと思います。
正確に何月というふうには,私自身記憶も定かではないですけれども,もちろん今年,失礼,昨年の何月,春ぐらいだったでしようか,はっきり覚えてはおりませんけれども,もちろん昨年に入ってからのことでありますけれども,長官にその旨を申したことは事実です。
その際,陛下にもそういう気持ちはお話したんですか。
陛下にはことあるごとに,私の気持ちというものは申し上げておりました。
私としましては,今こういうことして欲しい,ああやって欲しいということをあれこれいうことは,むしろ控えたいと思いまして,僕は雅子さんの今までどおりの雰囲気をそのまま素直に出してもらうことが一番いいことなのではないかというふうに思っております。