皇太子殿下お誕生日に際し(平成5年)

皇太子殿下の記者会見

会見年月日:平成5年2月19日

会見場所:東宮仮御所

皇太子殿下のお写真
記者会見をなさる皇太子殿下
(写真:宮内庁)
問1 昨年の誕生日会見では,チャールズ皇太子殿下と晩婚の金メダルを争うかもしれないと言われましたけれども,今年はご結婚が決まるという大きな節目の誕生日となりました。独身生活もあとわずかですが,今どのような感慨をお持ちですか。
また,独身の間にしておきたいことや今年新たにチャレンジしたいことはありませんか。
皇太子殿下

この度の皇室会議を経て,婚約が内定したということで,今,私としてはうれしい気持で一杯であります。確かに,今おっしゃったように独身時代の長さという点に関していえば,チャールズ皇太子殿下を上回って,言って見れば金メダルに輝くということになったわけですけれども,今,思い返してみても私自身として非常に充実して,そして楽しく,そして有意義な独身生活を送ることができたというふうに思っております。その独身生活もそろそろ終わりに近づくと思うと,ある趣の感慨を覚えますけれども,この婚約内定の喜びははるかにそれを凌駕するものであります。

独身時代にやっておきたいことは,恐らくほぼやったというふうに思います。今年新たにチャレンジしたいことといえば,新たなるこの結婚生活のスタートを,どう充実したものにするかということではないかと思います。

問2 皇室会議の後,雅子さんと頻繁に会われて長時間になることもあるようですけど,どんな話をなさっているのでしょうか。お話を重ねる中で雅子さんの新しい魅力に気が付かれたというようなことはありますか。また,お話の中で,殿下が雅子さんにアドバイスされたりとか,お二人で議論になったりすることもあるんでしょうか。
皇太子殿下

皇室会議以降,できるだけ機会をみつけては会うようにしております。会話という点に関して言えば,これは電話を通してでもできるものですけれども,近況を語り合ったりとか,それから相談事がある場合には,これはお互いに会うに越したことはないというふうに思います。今,会っているときにどういう話をするかということは,細かいことは差し控えたいと思いますけれども,ともかく会っていて,そして時間を忘れるほど楽しい人であります。そしてまた会うごとに,私が思っていたとおりの人であるという意を強くいたします。そしてまた,私が今まで知らなかったような非常に興味深い様々な話をしてくれます。この間の記者会見の折にも申し上げましたけれども,お互いに学びあっていく非常に良きパートナーであるという思いを新たにいたします。それとともに,非常に固い決心をしてくれた雅子さんに対する感謝の気持ちを新たにしております。

問3 雅子さんと二人で,どのような皇室を築いていきたいとお考えですか。雅子さんが元外交官ということで,皇室の一員としての国際親善などで活躍を期待する声もあるんですけれども,どのように応えていくのがよいと殿下は考えられますか。
皇太子殿下

今後のやり方等については,以前もお話したことだと思いますけれども,私たち皇族がするべきことは,これは陛下もおっしゃっておられるように,国民と共にあるということだと思います。これから先,ますます国民とそれから皇室との心の通い合いということが大切になってくるのではないかと思います。その点に関して,またこれから先,二人でいろいろ考えていくことでありますけれども,私たちなりにやっていきたいというふうに思っております。

それから一方,外国との交際について申しますと,今まで既に両陛下が王国を始め,それからそれ以外の国々との心温まる交流をされておられます。そのことは,私が今までそういった国々を訪れた際にも強く感じることであります。私たちは,両陛下が今までなさってきたことを受け継いで,更に,次の世代の方々との交流も深めていきたいと思います。今,皇族に皇室に求められていることは,各国との友好親善関係の増進であるように思います。そういった友好親善を深めていくうえで,今まで雅子さんが培ってきた経験というものは確実に活かされるものだと思います。

問4 ご結婚後ですね,どのような生活の変化があると考えられますか。例えば大学での研究は続けられるのでしょうか。
皇太子殿下

これは,こういうふうな,結婚後になってみないと分からないことだと思います。大学での研究は引き続き,続けていきたいというふうに思っております。

問5 4月には天皇皇后両陛下が沖縄を訪問されます。天皇として初めての沖縄ご訪問をですね,どのように見られていますか。また,殿下自身は,沖縄についてどのような考えをお持ちでしょうか。
皇太子殿下

この度,天皇陛下が沖縄を訪問されるということは,非常に私も意義深いことであると思います。ことに両陛下は,先の大戦でもって住民を巻き込む地上戦が行われた沖縄に対して,深く思いを致しておられます。その例としまして,例えば,6月23日の沖縄戦終結の日には家族全員でもって黙祷を捧げている,こういったことも両陛下のお考えによるものであります。それからまた,本土から沖縄へ,そして沖縄から本土を訪れる豆記者と毎年のように会っておられたのも,そのような沖縄に対する思いの表れであると思います。

また,私自身振り返ってみましても,両陛下が沖縄の歴史そして文化を広く,日本人全員に知ってもらいたいというお気持ちから,私自身も本当に幼少の頃から沖縄の文化そして歴史について様々なことを両陛下から教えていただいたように思います。

私自身,昭和62年に沖縄を初めて訪問いたしましたけれども,「戦没者墓苑」であるとか,それから「ひめゆりの塔」といった場所を訪れまして,沖縄が戦争の痛ましさ,そして戦前,戦後と沖縄の辿(たど)ってきた苦難の道に思いを致しましたし,それと共に平和の尊さ,そして大切さというものを強くかみしめました。

<関連質問>
問1 この前の皇室会議以降,国民が一つとなって,子供からお年寄りまで自分のことのように,今,殿下のご婚約を祝って,新聞,雑誌やテレビもですね,いろんなお祝いの言葉に添えられておりますけれども,そういうのを耳にされたり,目にされたりして,殿下は,今,どう思われますか。それから僭越な言い方であるんですけども,国民に対する気持ちを頂けますか。それから雅子さんの気持ちも。もし,聞いていらっしゃれば。
皇太子殿下

そのように多くの方々が,この度の婚約の内定を喜んでいただいたということを私自身として大変うれしく思っております。私共二人,これから本当に,一生懸命,公務に共に務めて参りたいというような所存でおります。今,本当に皆さんに対する感謝の気持ちで一杯であります。恐らく,これは雅子さんについても同じような気持ちでいると思います。ただ詳しいことは,ちょっとポケットベルが今日ありませんので。

記者

一日何回ぐらい鳴るんですか,ポケットベルは。

皇太子殿下

あの,実はポケットベルは使ってはおりません。例えば公務とか何とかで,行き先でもって,仮に式典の席ですとか,そういった所でポケットベルが鳴っても電話をどうやってとったらいいかという問題もありますし,余り実用的ではありません。

問2 1月19日の長官の会見でですね,新聞協会等の報道協定がなければ,今回のご結婚について結果が違っていたかもしれないというようなお話がありましたけれども,このことを皇太子殿下はどういうふうにお考えでいらっしゃるのか,それともう一点お尋ねしたいのはですね,8月16日の柳谷さんのお宅あるいは10月3日の鴨場ですけれども,警備を連れずにお出かけになったというふうに承知しておりますが,警備に伝えずにお出かけになったことを殿下はどういうふうにお考えなのか,過去にもそういうことがおありだったのかも踏まえてお尋ねしたいんですが。
皇太子殿下

そうですね,まず最初の申し合わせの件に関して言いますと,今まで私自身,いろいろ感じてきたことではありますけども,本当に報道の申し合わせがないような状態であった場合に,これが相手の人にとってみても,ゆっくりと自分自身の考えを築き上げていく余裕というものはとてもできなかったと思いますし,また,私自身としても静かな環境でもって,自分なりに自分の考えをまとめていくということは,とてもあのような状況では,私はできなかったと思います。ですから長官の会見にもありましたように,本当に今回のことは皆様方のご理解がいただけた,そして,その申し合わせが行われたという結果に依存することが,非常に大きなものであったというふうに思っております。ですから私としても,非常にこの度のことに関して心から感謝をしたいと思っております。

それから,2番目の警備についてでありますけれども,以前全く警備なしで出掛けたという事は,これはございません。今回が全く初めてのことであります。ただ,私としましても,ことに雅子さんの場合,以前に非常にマスコミにも取り上げられて,それでいろいろと取材されて大変な思いをされたということもございますので,今回も会う場合には本当に極秘で,そして本当に知られないで会う方法というものをいろいろ考えたわけです。その結果としまして,最終的には警備を付けずに会うという,言ってみれば前代未聞のことだったかも知れませんけれども,そのようなことになったと思うわけなんですけれども,私自身本当にこの度の雅子さんのことに関しては,本当に全力投球でと申しますか,一生かけて,本当に力を入れていたことでもありますし,警備なしという極めて無防備な状態ではあったわけですけれども,それをする価値は十分にあったという,このことに関してはそういうふうに思っています。

問3 19日の皇室会議後の会見の中で,雅子さんが心を動かされた言葉として「僕が一生全力で守ります」というような言葉があったというふうにお聞きしたんですけれども,その場合,守るというのは何から守るということを具体的に想定されて,殿下は雅子さんにお伝えになったんでしょうか。
皇太子殿下

それに関しては,私はいろんなものがあると思います。まず具体的にあれこれというふうにあげることは難しいと思いますけれども,やはり会見の場でも申し上げたように,やはり皇太子妃という非常に重要な立場にあるという,そういったプレッシャーというものが当然ございますし,それからまた,本当に様々な新しい環境に入るわけですから,それに伴う様々な不安であるとか,それから恐らくストレスみたいなものもあるかもしれないわけです。ですからそういった時に本当に側にいてあげて,そして相談にのって,そして全力で守ってあげるということが,私としては絶対に必要ではないかというふうに思います。そういうふうに言ったわけです。

問4 会見の一番最初の方に殿下は,相談事がある場合は直接会ったほうがいいというふうに言われましたけれども,実際,皇室会議が終わって,雅子さんが徐々にプレッシャーを感じ始めているということはありますか。
皇太子殿下

幸い今のところ,本人と頻繁に,電話も含めて連絡を取りあっておりますけれども,本人はそういったことは余りもうしませんけれども恐らく,何といっても新しい環境になっているわけですから,自分なりにそういったものを感じるのではないかというふうに思います。ただ,本人から直接あれこれ話はございません。

問5 先程ですね,皇室の外国との親善という話で,雅子さんが培ってきた経験というのを確実に活かされると思います,とおっしゃいましたけども,具体的に外務省で培ってこられたですね,そういう経験というのはどういうふうに活かされるのか,もうちょっと具体的に教えて頂きたいのと,それと殿下ご自身,結婚の儀がいつ頃なのか,いつかわからなければ,だいたいいつ頃なさりたいという殿下のお考えを伺いたいのですが。
皇太子殿下

まず一番あとの方からお答えいたしますと,結婚の儀の日取りについては,これは私があれこれ希望することではなくて,これは周りで,周囲で決めていただけることですので,私はそれに関してあれこれ申し上げる筋合いはないと思います。

それから,今までの外務省の,ある意味では一人の職員として,様々な外交の場に雅子さんの場合,出てきたと思いますけれども,今度は皇室に入ると,今まで扱っていたものとは,また違うものに必然的に,さっきも申し上げましたようにあくまでも政治的,経済的な意味合いというのから離れて,そして友好親善を深めるというのが皇室の諸外国との交流の基本になるという違いはあると思いますけれども,ただ,今まで何分にもいろんなそういった外国と様々な場でもって交流をしてきた人でありますから,そういった新しい環境というものにも十分に対応できる,あるいは順応できる素質を持っている人だというふうに思います。

問6 最近,殿下の服装ですけれども,レジメンタルのネクタイがすっかり影を潜めましたけれども,何かやっぱり変わってきているんでしょうか。
皇太子殿下

これは特にアドバイスを受けているとか,そういうことでは実はないんですけれども,なんとなく心境の変化なんですかね。

問7 これまで会見のたびに,我々,お妃探しが何合目だという質問を浴びせてきたんですが,そういう面も含めてですね,お妃探しのプレッシャーから逃れられた今の心境というのはどういうものですか。
皇太子殿下

そうですね,確かにある意味では一段落したというか,ホッとしたという気分は非常にあるわけです。たださっきも,今,話のあった何合目という点に関して言えば,ある意味では人生でもって一つのピークを登ったっていうような,そういうふうな感じがいしたします。ただやはり,これから先,まだ次のピークというものが新たに待っているというふうに思いますけれども,それについては雅子さんという良いパートナーを持って,そして二人で登っていくというそういうふうな気持ちであります。

問8 今の話と少し関係があるんですけれども,二人でですね,最初に登りたい山はありますか。何か思ってらっしゃるでしようか。
皇太子殿下

そうですね,これについては,今,考えている最中です。

問9 なるべく富士山は,結局,あの時八合目で終わっちゃいましたけども,いわく因縁ある山ですから,是非,富士山を狙えば。候補の一つですか。
皇太子殿下

まあ,その辺もいろいろ考えている最中ですけれども。

問10 クリスマス,バレンタインデーとあったんですが,具体的に何かプレゼントの交換みたいのはされたんですか。
皇太子殿下

そういう質問は今日来るかなとは思っていましたけれども,そうですね,昨年,私が録音したCDをプレゼント致しました。それからバレンタインデーについては非常に心のこもった物をもらいました。けれども内容については,二人の秘密にさせていただきたいです。

問11 先日テニスを一緒にされたと聞いたんですけども,殿下からご覧になって,雅子さんのテニスというのはどういうテニスですか。
皇太子殿下

まだ1度しか一緒にやったことはないわけですけれども,見てて非常に何と言いましょうか,無理のない,筋のいいテニスというような感じは強く持ちますね。非常にこれから一緒にやっていく上で楽しみだなという気がいたします。

問12 まだ先のことになるかもしれませんが,お二人でですね,一緒にデートということになると思うんですが,一緒に行かれたい場所とかは,もう考えていらっしゃいますか。
皇太子殿下

思い出の地以外でですか。これも二人で相談していこうと思います。

問13 この前の皇室会議の時の会見の関係なんですが,よろしかったらお答えいただきたいんですが,長官もおっしゃられましたけれども,殿下からいろいろ打ち明けられて,意を決しましたと。もし構わなければ,長官とですね,そういう殿下のお気持ちを吐露されたのはいつ頃なんでしょうか。
皇太子殿下

正確に何月というふうには,私自身記憶も定かではないですけれども,もちろん今年,失礼,昨年の何月,春ぐらいだったでしようか,はっきり覚えてはおりませんけれども,もちろん昨年に入ってからのことでありますけれども,長官にその旨を申したことは事実です。

記者

その際,陛下にもそういう気持ちはお話したんですか。

皇太子殿下

陛下にはことあるごとに,私の気持ちというものは申し上げておりました。

問14 先程の関連で,例えば雅子さんに,これから外国との付き合いの中でどのような付き合いをして欲しいか,期待されるものとかあるかもしれないんですが,その辺をもう一度。
皇太子殿下

私としましては,今こういうことして欲しい,ああやって欲しいということをあれこれいうことは,むしろ控えたいと思いまして,僕は雅子さんの今までどおりの雰囲気をそのまま素直に出してもらうことが一番いいことなのではないかというふうに思っております。