ニュージーランド・オーストラリアご訪問に際し(平成14年)

皇太子同妃両殿下の記者会見

ご訪問国:ニュージーランド・オーストラリア

ご訪問期間:平成14年12月11日~12月19日

会見年月日:平成14年12月5日

会見場所:東宮御所

記者会見をなさる皇太子同妃両殿下
(写真:宮内庁)
問1 両殿下にお尋ねします。約8年ぶりの両殿下そろっての外国親善訪問になりますが,どのような感慨をお持ちでしょうか。また,両殿下ご自身の外国親善訪問の意味や在り方についてどのようにお考えでしょうか。今後の外国訪問の中で,どのように「自分らしさ」を出していこうと考えていらっしゃいますか。
皇太子殿下

まず始めに高円宮殿下の突然のご逝去に大変驚いております。今でも信じられないような気がいたします。高円宮妃殿下そして3人の女王さま方のお悲しみもいかばかりかと拝察いたします。高円宮殿下には,私が幼少のころから亡くなられるまで終始温かく見守ってくださり,また,ときには相談に乗っていただくなど,私にとって兄のような存在でした。本当に残念です。皇族として幅広い分野で活躍され,国民と皇室との大切な橋渡しをされたと思います。心からご冥福をお祈りいたします。

まず1問目の質問に対してですけれども,昨年は私1人でイギリスを公式訪問いたしましたけれども,今回8年ぶりに2人でそろってオーストラリア,ニュージーランド両国を訪問する運びとなり大変うれしく思っておりますとともに,この訪問を大変楽しみにしております。

オーストラリア,ニュージーランド共に様々な分野で近年日本との関係が緊密化しており,そのような中で私たちの訪問が日本とオーストラリア,ニュージーランド両国との友好親善関係の増進に少しでもお役に立つのであれば,大変うれしく思います。

親善訪問の意味としては,相互の理解を深めることにあると思います。今回の訪問を通じて両国の様々な方々とお会いして両国への理解を深めたいと思います。

また,私たちの訪問が日本への両国からの理解への一助となれば幸いであります。外国訪問を通じて,私は今まで多くの事を学んできましたし,また,訪問により私自身の視野も広がったと思います。いずれにしても,大変良い経験となっております。

また,2人での訪問は私1人では気が付かないようなことをいろいろと気が付かせてくれる,そういう意味においても大変実り多いものであると思います。そのようなことは,前回湾岸の諸国を旅行した折などにも強く感じました。そのような意味でも,今後は2人そろって外国訪問をより頻繁に行うことができたらと思っております。

それから,ご質問の自分らしさということなのですけれども,私は自分らしさというのは自然体ということなのではないかと思います。そしてこの機会に先の,インドネシアのバリ島で起きました爆弾テロ事件では日本の方も亡くなられましたが,殊にオーストラリアの方が大勢犠牲になられ,また,ニュージーランドの方も何名か亡くなられたことに対して,私たち2人の心からの哀悼の意を表します。私からは以上です。

皇太子妃殿下

ご質問にありましたように,今回公式の訪問としては8年ぶりということになりまして,ニュージーランドとオーストラリアを訪問させていただくことができることになり,大変うれしくまた楽しみにしております。中東の諸国を訪問いたしました折のことは今でもとても懐かしく本当にいい経験をさせていただいて,その時の思い出は今でも皇太子さまとよく話題にしたりしておりますけれども,その後8年間ということで,そのうち最近の2年間は私の妊娠そして出産,子育てということで最近の2年は過ぎておりますけれども,それ以前の6年間,正直を申しまして私にとりまして,結婚以前の生活では私の育ってくる過程,そしてまた結婚前の生活の上でも,外国に参りますことが,頻繁にございまして,そういったことが私の生活の一部となっておりましたことから,6年間の間,外国訪問をすることがなかなか難しいという状況は,正直申しまして私自身その状況に適応することになかなか大きな努力が要ったということがございます。今回,昨年子供の愛子が誕生いたしまして,今年,関係者の尽力によりまして,ニュージーランドとオーストラリアという2か国を訪問させていただくことができることになりましたことを本当に有り難いことと思っております。

両陛下が,1970年代に両国をご訪問になっていらして,その折のお話を両陛下からいろいろ伺わせていただきましたり,御所に上がらせていただきました折に,両陛下お忙しい中,ご訪問の折のお写真のアルバムなどをご用意くださっていろいろお教えいただいたり,温かいお心遣いを頂いておりますことを心から感謝申し上げております。

両国ともとても人柄の温かい,おおらかで温かい国民性の国と伺っておりますので,たくさんの方と触れ合って,そして,両国の方々に対しての理解を深めて,実り多い滞在をすることができましたらと思っております。

問2 両殿下にお尋ねします。日本とニュージーランド,オーストラリアは貿易や観光などで交流がとても盛んです。両国に対する印象,訪問に当たっての抱負,特に関心のある訪問先などを具体的にお聞かせください。皇后さまは生後半年余りの皇太子さまを残して訪米する際に,育児についてのメモを残されたと伺っています。両殿下は敬宮愛子さまへの訪問前や訪問中のお世話についてどのような工夫や準備を進めていらっしゃいますか。
皇太子殿下

まず最初にオーストラリアについて申しますと,オーストラリアは私が中学の3年生の時,1974年になりますけれども,その夏に訪問しまして,今から30年近く前になりますけれども,これが初めての私の海外の旅行ということもありまして,今でもその当時のことを鮮明に記憶しております。その折,私がまず感じましたのは,オーストラリアという国の大きさと,それからオーストラリアの人々の温かさということでありました。そしてまた,豊かな自然に恵まれているということも挙げられます。オーストラリア滞在中は,オーストラリアの方の家庭にホームステイをしまして,これもオーストラリア滞在のとても良い思い出となっておりますし,また良い経験ができたと思っています。今回もオーストラリアを訪問する際には,旧知の方々と親交を温めることができたらとも思っております。それから30年近くが経ちまして,私自身も変わったと思いますけれども,おそらくオーストラリアもまた大きく変わっているのではないかと思います。そういう意味において,今のオーストラリアがどうなっているのかということを向こうでよく見てこられたらと思っています。

今回は,訪問先としましては,シドニーとキャンベラの二つの都市を訪れることになりますけれども,シドニーについては,一昨年オリンピックが行われたということもありまして,オリンピックを経験したシドニーの街がどうなっているか,そしてまた,30年経って随分変わったと言われているキャンベラも今どうなっているか,そういうところをまず見てきたいと思っています。

次に先ほどもちょっと触れましたけれども,オーストラリアは日本との関係において最近特に緊密化しておりますので,オーストラリアと日本との関係についてもいろいろと見てくることができたらと思っています。その一つとしては,日本との技術協力がどういうふうになっているのかということで,確かそのような実際に技術協力が行われている現場にも今回足を運ぶことになると思います。それともう一つは,向こうにおける日本語の習得ということなんですけれども,私が30年近く前に行きました時もキャンベラのオーストラリアの総督の公邸に泊めていただきましたけれども,その折,昼食会にオーストラリアの中学生で日本語を勉強している人たちを当時の総督が招いてくださって,昼食会の席でいろいろお話する機会がありましたけれども,その折にも非常に日本語の習得,日本語に対する熱というのが高まっているんだということを実感いたしました。それから30年経って今のオーストラリアにおいて日本語に対する,あるいは日本に対する関心がどうなっているのかという点についても見てくることができたらと思っております。

ついでに挙げますと,オーストラリアそれからニュージーランド両国について,ジェットプログラムという英語の先生を日本に派遣する,そういうものがありますけれども,そういったジェットプログラムで日本にかつて行ったことのあるような方々ともお会いする機会があればと思っております。

それからまた,今回は行くことができませんけれども,オーストラリアにはグレートバリアリーフなどを始めとして非常に貴重な自然が多いわけですけれども,環境の世紀というものを迎えるに当たって,そういった貴重な自然環境に対して,オーストラリアの人たちがどのように保護しようとしているのか,オーストラリアの人たちの環境に対する意識がどうなんだろうかと,その辺りについても私としては個人的に関心があります。

それと共にオーストラリアの固有の文化,そしてまたアボリジニーの文化ですね,そのようなものについても理解を深めることができたらと思っております。

それからニュージーランドについてですけれども,ニュージーランドについては,私,今回初めての訪問となるわけですけれども,まずニュージーランドという国が一体どういう国なのかという点をまず見てきたいと思っております。

そしてまた,今回はニュージーランドでも一番高いマウントクックを始めとするニュージーランドの雄大な自然に触れたいと思いますし,また,オーストラリア同様ニュー・ジーランドの貴重な自然に対して,ニュージーランドの人たちがどのように考えているのか,保護をどのように考えているのか,その辺りについても見てきたいと思います。それからまた,あの日本との関係についても見ていきたいですし,ニュージーランドのマオリの文化,これについても理解を深めたいと思っております。

また,今回の訪問に当たって,1973年に天皇皇后両陛下がオーストラリアと並んでニュージーランドも訪問しておられますけれども,その折のアルバムなどを両陛下から見せていただいたり,あるいはお話を伺ったりすることができました。また,1980年には弟の秋篠宮がニュージーランドを訪問しておりますけれども,その折の話もいろいろ聞くことができまして,共に今回の訪問に当たって非常に参考になりました。

子供との関係ですけれども,私は今回9日間近く日本を離れることになるわけですけれども,出発前についても,出発した後についても普段どおりということを考えておりまして,と言いますのは国内で地方旅行に今までも何回か出掛けておりますけれども,その時と同じような形でいたいと思っております。またしばらく留守にいたしますけれども,留守の間は,職員が国内で旅行する折も非常によくやってくれておりますので,特にその点は心配はしておりません。以上です。

皇太子妃殿下

私の方は,ニュージーランドもオーストラリアも初めての訪問となりますので,本当に向こうに伺うのを楽しみにさせていただいております。近年,両国と日本との間,アジア太平洋地域ということで協力関係も大変緊密化しておりますし,いろいろな分野だと思いますが,人的な交流も大変盛んになっていて,殿下もお触れになりましたけれども,ジェットプログラムで日本に英語を教えに来られる若い方たちもたくさんおられますし,また,日本からは観光ですとか,また,最近はワーキングホリデーのような形で向こうを訪れる若い人たちも多いと伺っております。そのような中で先ほどもちょっと触れましたけれども両国とも人柄がとても優しくおおらかで温かい方たちの国と伺っておりますので,向こうでたくさんの方にお会いしてそういった方々との相互理解というものを深めることができたらと思っておりますし,また,訪問先といたしましてニュー・ジーランドでは,南の方のフィヨルドでできた地形の地域にも行かせていただくということで,その大自然の一端に触れさせていただくことをとても楽しみにしております。

また,日程の中で博物館などを訪れて先住民族であるマオリのことなども見せていただけると思いますし,そういったいろいろなプログラムを心から楽しみにしております。そして,また,小児病院なども訪れることになっておりますけれども,私たちの子供がまだ小さいということで,というか,ちょうど子供が誕生してということで子供の施設というようなことで,そういうプログラムを考えていただいたんだと思いますけれども,そういう病院で入院している子供さんたちに,何らか励ましてあげることができたり,ということで少しのお仕事ができればうれしく思います。

私たちが残していく子供の愛子につきましては,殿下もおっしゃいましたけれども,なるべく普段どおりということを心掛けて行ってまいりたいと思います。両陛下が,皇太子さまがお生まれになって初めて外国ご訪問になった時は,皇太子さまはまだ生後半年か7か月ぐらいのことで,皇后さまもどんなにかご心配でいらっしゃいましたことと存じ上げます。そして,その中でいろいろと本当に細やかにお心を配られて皇太子さまがお元気に,特に両陛下のご訪問は長くていらしたと伺っておりますので,その間,皇太子さまがお元気にお過ごしになられるように大変お心をお砕きになられたというふうに存じ上げております。今回,幸い子供はもう1歳の誕生日も迎えまして,1日の生活のリズムも大体できておりますし,先ほど皇太子さまもおっしゃいましたように,これまで国内の旅行を何回か,そういう形でのお留守番というのは何回か経験しておりまして,いつも変わりなく元気に過ごしているようでございますので,いつも職員の方で本当によく面倒を見てくれていますので,その点本当に安心して預けて参りますことができますことは大変有り難く思っております。

問3 両殿下にご質問いたします。ご訪問なされる2か国は,共にエリザベス女王2世が女性君主である英連邦に所属しております。将来,愛子さまが皇位を継承なされる憲法上の可能性についてどのようにお考えでしょうか。
皇太子殿下

この点は,法律上の問題でもあり,また,政治的な意味合いもありますので,この場での発言は控えさせていただきたいと思います。

皇太子妃殿下

私からは今の質問への直接の答えになりませんけれども,やはり母親として愛子には幸せな人生を歩んで欲しいなというのが,心からの願いであるということを申し上げたいと思います。

<関連質問>
問 妃殿下にお尋ねしますけれども,先ほど1問目のお答えの中で,ご結婚以前の生活は外国に頻繁に行かれていて生活の一部になっていたと申し上げられましたが,ご結婚してから,なかなかそういう機会に恵まれず,大きな努力があったというふうにおっしゃいましたけれども,その時のお気持ちですね。努力があったこととか,自分なりに気持ちの整理などされた部分もあると思いますけれども,その辺をもう少しお聞かせ願いたいと思います。
皇太子妃殿下

そうでございますね。また子供が生まれましてからいろいろ状況も変わっておりますので,その前のことをはっきりと思い出すのもなかなか難しい面もあるのですけれども,やはり国民の皆さんの期待というものが,いろいろな形での期待があって,その中には子供という期待もございましたし,他方,仕事の面で外国訪問なども国際親善ということでの期待というものもございまして,そういう中で,今自分は何に重点を置いてというか,何が一番大事なんだろうかということは,随分考えることが必要だったように思います。

結婚後,いろいろな機会に恵まれて,国内各地を訪問することができまして,それは,私のそれまでの生活の中では,なかなか国内の各県をまわったりということは,それまでは余り経験―もちろん私的な旅行で観光地のような所をいろいろ訪れるという機会はもちろん何度もございましたけれども―いろいろな地方へ行って,その地方の特有の文化ですとか,食事ですとか,施設,いろいろなものを見せていただいたり,そういう中で,国内のことについていろいろな事の理解を深めることができたということはとても大きく,私にとっても財産になったと思っております。

そして,もちろんこちらにおりましても外国からのお客様をお迎えしたりとか,また,両陛下がお迎えになる外国のお客様とお会いしたりという形では,もちろん,外国の方とのつながりというものは続けてきたわけではございますけれども,今回久しぶりに公式に訪問させていただくということで,それから,申し忘れましたけれども,公式の訪問以外には,ジョルダンのフセイン国王が亡くなられた折のご葬儀と,それからベルギーの皇太子殿下がご成婚なられた時には,そちらに伺わせていただくことができましたことも大変有り難かったと思っております。