日本で採集された1新種の記載を含むトサカハゼ属の再検討

天皇陛下の論文「Review of the gobiid genus Cristatogobius found in Japan with description of a new species(日本で採集された1新種の記載を含むトサカハゼ属の再検討)(共著)」が「Ichthyological Research」に平成12年(2000年)8月15日付で刊行されました。

日本には,ハゼ科トサカハゼ属の内,クロトサカハゼ,トサカハゼ,ヒメトサカハゼの3種が生息していることが知られていますが,その中で,トサカハゼとヒメトサカハゼについては和名のみで学名は不明のままになっていました。昭和59年(1984年)に出版された「日本産魚類大図鑑」の解説の一部を陛下がご執筆になったときにも,トサカハゼとヒメトサカハゼには学名がなく,クロトサカハゼのみ学名が付けられていました。陛下がこれら2種を研究の対象と考えられたのは,この図鑑の出版より以前のことですが,実際に論文に着手されたのは平成に入ってからのことになります。

この度の論文では,トサカハゼ属の3種について改めて調べられた結果を記載され,トサカハゼを1927年に Herre が新種として発表した Cristatogobius lophius に同定され,またヒメトサカハゼを新種 Cristatogobius aurimaculatus とされました。

天皇陛下が今までに魚類学会会員として投稿されていた「魚類学雑誌」は,英文と和文両方の論文が載せられていましたが,平成9年(1996年)から英文論文の雑誌「Ichthyological Research」と和文論文の雑誌「魚類学雑誌」とに分けて刊行されることになりました。陛下は昭和38年(1963年)から平成元年(1989年)までの26年間に26編の論文を「魚類学雑誌」に発表されており,その中で新種を報告された5編(6種類)の論文は国際動物命名規約に従い,英文で記述されています。この度の論文は新種の報告であり,「Ichthyological Research」へご発表になりました。皇太子時代に比べ,ご即位後はご公務が極めてお忙しく,この度の論文は11年振りのご発表となります。

天皇陛下のご論文
新種:ヒメトサカハゼ
トサカハゼ
クロトサカハゼ