賜りなど(天皇皇后両陛下からブラジル日本移民史料館(サンパウロ市)に対する賜金について(平成20年6月9日))

平成20年6月9日

天皇皇后両陛下からブラジル日本移民史料館(サンパウロ市)に対する賜金について

日本人ブラジル移住70周年にあたる昭和53年には,当時の皇太子同妃両殿下がブラジルを御訪問になり,また,同80周年にあたる昭和63年には,秋篠宮殿下がブラジルを御訪問になりましたが,皇太子殿下は,まだ日本人のブラジル移住に関する節目の年にブラジルを御訪問になったことはないので,100周年にあたる本年には,皇太子殿下がブラジルを御訪問になることとなりました。

天皇皇后両陛下には,この度は,ブラジルを御訪問にならないこともあり,本年4月には,ブラジルから来ている多くの日系人が生活している群馬県の太田市及び大泉町を御訪問になり,工場や小学校でこれらの日系人に会われるなど,さまざまなかたちで日系人のために心を寄せる日々を送ってこられました。そして,ブラジルでの100周年記念式典の開催をひかえて,ブラジルの日系人社会のために何か具体的に出来ることはないだろうかという御下問がございました。

そこで宮内庁としては,ブラジル日系人の関係者や外務省およびJICA等との間で,いろいろと検討を進めましたが,ブラジル・サンパウロ市のブラジル日本移民史料館が現在進めている「アーカイブ・プロジェクト」に対する御支援が最も時宜に適しているという結論に達しました。

両陛下は,上記の通り,皇太子同妃両殿下であられた昭和53年6月に,日本人ブラジル移住70周年記念式典御参列のためブラジルを御訪問になりましたが,その際,サンパウロ市において,同史料館の落成式に御臨席になり,また,平成9年6月に,同国を御訪問になった際にも,同史料館を訪れておられます。(ちなみに,両陛下は,皇太子同妃両殿下の当時,同史料館が開設される以前の,昭和42年にも,ブラジルを御訪問になっておられます。)

同史料館は,移住100周年及び同史料館の開設30周年の記念事業として,同館がこれまでに収集したブラジルにおける日本人移民の歴史に関する史料9万点の劣化や破損を防ぎ,これらを恒常的に保存・活用出来るようにするため,史料をデータベース化するとともに,デジタル化を進め,インターネットを通じて一般に公開することを目指した「アーカイブ・プロジェクト」を計画しています。同史料館は,現在,同プロジェクト実施のための募金活動を進めていますので,両陛下には,これを御支援されるために,同史料館に対して金一封を御下賜になることになりました。

両陛下には,今般,日本人ブラジル移住100周年の機会にブラジルを御訪問になる皇太子殿下に金一封をお託しになり,皇太子殿下が,サンパウロ市で同史料館を御訪問になる際に,これを同史料館側にお渡し頂く予定です。

参考

○ブラジル日本移民史料館

「東洋人街(リペルダージ地区)」にあるブラジル日本文化福祉協会ビルの7~9階を占める博物館で,管理・運営は同協会によって行われている。日本人移住者の渡伯時の携行品,ブラジル到着後の生活用品,農機具,移住者の日記,書簡,写真,当時の日本人社会の会報,新聞,雑誌など約90,000点を所蔵しており,約1,800点が展示されている。

1978年6月18日の移民70周年を機に,皇太子同妃両殿下(当時),ガイゼルブラジル大統領(当時)のご臨席のもとに落成式が行われた。その後,移住90周年記念事業として1998年に増改築がなされ,9階部分が新設された。ここでは主に戦後移住関係資料の充実が図られた。