主な式典におけるおことば(平成25年)

天皇陛下のおことば

第183回国会開会式
平成25年1月28日(月)(国会議事堂)

本日,第183回国会の開会式に臨み,全国民を代表する皆さんと一堂に会することは,私の深く喜びとするところであります。

国会が,国民生活の安定と向上,世界の平和と繁栄のため,永年にわたり,たゆみない努力を続けていることを,うれしく思います。

ここに,国会が,当面する内外の諸問題に対処するに当たり,国権の最高機関として,その使命を十分に果たし,国民の信託に応えることを切に希望します。

東日本大震災2周年追悼式
平成25年3月11日(月)(国立劇場)

本日,東日本大震災から2周年を迎えるに当たり,ここに一同と共に,震災によりかけがえのない命を失われた多くの人々とその遺族に対し,改めて深く哀悼の意を表します。

2年前の今日,東日本を襲った巨大地震とそれに伴う大津波により,2万人を超す死者,行方不明者が生じました。震災後に訪れた被災地では,永年にわたって人々が築いてきたふるさとが痛々しく破壊されており,被災者の悲しみはいかばかりかと察せられました。一方,この厳しい状況の中,被災地で,また,それぞれの避難の地で,気丈に困難に耐え,日々生活している被災者の姿には,常に深く心を打たれ,この人々のことを,私どもはこれからも常に見守り,この苦しみを,少しでも分かち合っていくことが大切だとの思いを新たにしています。

この度の大震災に際して,厳しい環境の下,専心救援活動に当たった自衛隊,警察,消防,海上保安庁を始めとする国や地方自治体関係者,多くのボランティア,そして原発事故の対応に当たった関係者の献身的な努力に対し,改めて深くねぎらいたく思います。

諸外国からも実に多くの善意が寄せられました。物資や義援金が送られ,また,救援の人々も多数来日し,日本の救援活動を助けてくれました。また駐日外国大使など日本に住んでいる外国人を始め,災害発生後の日本を訪れる多くの外国人が,被災地に赴き,被災者を励ましてくださっていることに感謝しています。

この度の津波災害において,私どもは災害に関し,日頃の避難訓練と津波防災教育がいかに大切であるかを学びました。この教訓を決して忘れることなく,これから育つ世代に伝えていくことが大切と思います。今後とも施設面の充実と共に,地域における過去の災害の記憶の継承,日頃からの訓練と教育などにより,今後災害の危険から少しでも多くの人々が守られることを期待しています。危険な業務に携わる人々も,この度の経験をいかし,身の安全が確保されることに工夫と訓練を重ねていくよう願っています。

今なお多くの苦難を背負う被災地に思いを寄せるとともに,被災者一人びとりの上に1日も早く安らかな日々の戻ることを一同と共に願い,御霊(みたま)への追悼の言葉といたします。

国賓 フランス大統領閣下及びトリエルヴェレール女史のための宮中晩餐
平成25年6月7日(金)(宮殿)

この度,フランス共和国大統領フランソワ・オランド閣下が,ヴァレリー・トリエルヴェレール女史と共に,国賓として我が国を御訪問になりましたことを,心から歓迎いたします。

歓迎の言葉を述べますに先立ち,まず大統領閣下に,おととしの3月11日に発生した死者,行方不明者が2万人を超える東日本大震災に対して,貴国から緊急援助隊を始めとする,様々な支援を頂いたことに,深くお礼を申し上げます。

私が貴国を初めて訪れましたのは,1953年,私の父昭和天皇の名代として,エリザベス女王陛下の戴冠式に参列した機会に,貴国を始めとする欧米諸国を回った時のことでありました。平和条約が発効した翌年,戦争により荒廃した国土から訪れた19歳の私にとって,欧米諸国の実状に触れたこの旅は,その後長く心に残るものでありました。貴国では,最初の3日間を国賓として迎えられ,エリゼー宮にオリオール大統領を訪問し,その後御夫妻が,午餐会を催してくださいました。

それから40年余,私は皇后と共に国賓として貴国を訪問いたしました。当時ミッテラン大統領は,御健康が優れないにもかかわらず,寒い空港に私どもを迎えられ,晩餐会を催してくださり,また昼食にお招きくださるなど,心のこもったおもてなしを頂きました。大統領は,それから時を経ず亡くなられましたが,真面目な温かいお人柄が懐かしくしのばれます。

歴史を振り返りますと,貴国と我が国は,1858年,貴国と徳川幕府との間に締結された修好通商条約により,交流が始まりました。この時期に,我が国は外国からの強い要請により,200年以上続けてきた鎖国政策を改め,開国を決断いたしました。当然のこととして,国内には大きな変化が起こりました。開国に反対の孝明天皇が亡くなり,10代の若さで私の曽祖父明治天皇が即位いたしました。200年以上続いた徳川幕府は廃止され,天皇は千年以上にわたって住み続けた京都から,当時江戸と呼ばれていた東京に移り住むこととなり,今日に至っています。

その後,我が国は欧米諸国に()して国を発展させるため,欧米諸国から多くのことを学びました。「日本近代法の父」として記憶されているギュスターヴ・ボワソナード教授は,1873年から20余年を我が国で過ごし,ナポレオン法典を基礎とした民法典の起草など,日本の近代法典の整備や,我が国における法学教育に尽力されました。

貴国と我が国は,国交が開かれた当初から,お互いに重要な貿易上の相手国でありました。中でも,我が国古来の伝統文化に深く根ざす生糸は,かつて,貴国への最も重要な輸出品でした。1855年に,欧州を襲った蚕の微粒子病により,当時世界一と評された貴国の養蚕業と絹織物産業が大打撃を(こうむ)った際には,横浜港から貴国に向けて輸出された我が国の蚕種と生糸が,貴国のそれらの産業の立ち直りに貢献しました。一方,我が国は,近代繊維産業を発達させる上で,貴国から多くのことを学んでいます。1872年,我が国において,リヨン出身のポール・ブリューナ氏と,同氏が貴国から伴ってきた技師や職人の指導の下,西欧の近代技術と工場システムを導入した富岡製糸場が建設されました。我が国の各地で,繊維産業に携わる人々の多くも,この製糸場で育てられていきました。おととし,私は皇后と共にこの製糸場を訪れ,今も史跡として大切に保存されている建物の内部を見学し,往時をしのびました。

貴国と我が国との交流は,文化面においても誠に実り多いものでありました。19世紀後半のパリ万国博覧会に出展された我が国の浮世絵,漆器,陶器等は,貴国の人々に深い関心を持たれたと聞いております。一方,我が国からは,それまでの日本画とは異なる油絵や彫刻を学ぶために,多くの人々が渡仏しました。貴国の文学や音楽も,広く我が国の人々に親しまれてきています。

両国の交流は,現在,更に広範な分野に広がり,深さを増しています。このような両国の交流の拡大と深化をうれしく思うとともに,両国関係の一層の発展を心から祈念しています。

日本は今,梅雨の時期に入り,御滞在中の天候が心配されますが,大統領閣下並びにトリエルヴェレール女史のこの度の御滞在が,真に実り多きものとなりますよう願っております。

ここに杯を挙げて,大統領閣下並びにトリエルヴェレール女史の御健勝と,フランス国民の幸せを祈ります。

フランス大統領閣下のご答辞

第184回国会開会式
平成25年8月2日(金)(国会議事堂)

本日,第184回国会の開会式に臨み,参議院議員通常選挙による新議員を迎え,全国民を代表する皆さんと一堂に会することは,私の深く喜びとするところであります。

ここに,国会が,国権の最高機関として,当面する内外の諸問題に対処するに当たり,その使命を十分に果たし,国民の信託に応えることを切に希望します。

全国戦没者追悼式
平成25年8月15日(木)(日本武道館)

本日,「戦没者を追悼し平和を祈念する日」に当たり,全国戦没者追悼式に臨み,さきの大戦において,かけがえのない命を失った数多くの人々とその遺族を思い,深い悲しみを新たにいたします。

終戦以来既に68年,国民のたゆみない努力により,今日の我が国の平和と繁栄が築き上げられましたが,苦難に満ちた往時をしのぶとき,感慨は今なお尽きることがありません。

ここに歴史を顧み,戦争の惨禍が再び繰り返されないことを切に願い,全国民と共に,戦陣に散り戦禍に倒れた人々に対し,心から追悼の意を表し,世界の平和と我が国の一層の発展を祈ります。

戦傷病者特別援護法制定50周年並びに財団法人日本傷痍軍人会創立60周年記念式典
平成25年10月3日(木)(明治神宮会館)

戦傷病者特別援護法制定50周年並びに財団法人日本傷痍軍人会創立60周年の記念式典が行われるに当たり,全国から集まられた皆さんと一堂に会することを誠に感慨深く思います。

昭和20年の終戦以来68年の歳月がたちました。国のために尽くし,戦火に傷つき,あるいは病に冒された戦傷病者の皆さんが歩んできた道のりには,計り知れない苦労があったことと察しています。そのような中,皆さんが互いに,また家族と,手を携えつつ,幾多の困難を乗り越え,今日の我が国の安寧と繁栄を築く上に貢献してこられたことを深くねぎらいたく思います。戦傷病者とその家族が歩んできた歴史が,決して忘れられることなく,皆さんの平和を願う思いと共に,将来に語り継がれていくよう切に希望してやみません。

この機会に戦傷病者と苦楽を共にし,援護のため,たゆみなく努力を続けてきた家族を始めとする関係者に対し,深く感謝の意を表します。

終わりに当たり,高齢の皆さんがくれぐれも体を大切にし,共に励まし助け合って,今後とも元気に過ごされることを願い,式典に寄せる言葉といたします。

第185回国会開会式
平成25年10月15日(火)(国会議事堂)

本日,第185回国会の開会式に臨み,全国民を代表する皆さんと一堂に会することは,私の深く喜びとするところであります。

ここに,国会が,当面する内外の諸問題に対処するに当たり,国権の最高機関として,その使命を十分に果たし,国民の信託に応えることを切に希望します。