主な式典におけるおことば(平成24年)

天皇陛下のおことば

第180回国会開会式
平成24年1月24日(火)(国会議事堂)

本日,第180回国会の開会式に臨み,全国民を代表する皆さんと一堂に会することは,私の深く喜びとするところであります。

国会が,国民生活の安定と向上,世界の平和と繁栄のため,永年にわたり,たゆみない努力を続けていることを,うれしく思います。

ここに,国会が,国権の最高機関として,当面する内外の諸問題に対処するに当たり,その使命を十分に果たし,国民の信託に応えることを切に希望します。

国立がん研究センター創立50周年記念式典
平成24年1月24日(火)(有楽町朝日ホール)

国立がん研究センター創立50周年に当たり,関係者一同と共に,記念式典に臨むことを誠に喜ばしく思います。

国立がん研究センターは,昭和37年,がんに関する研究部門と臨床部門を併せ有する国立の初の施設として,がんの原因解明,予防,治療法の開発を進めることを目的に設立されました。以来,先端的な研究や新たな治療法の開発に取り組むとともに,全国のがん医療の水準を向上させるための中核的な機関として大きな役割を果たしてきました。ここに長年にわたり,その活動を支えてこられた多くの関係者の尽力に対し,深く敬意を表します。

近年,我が国の社会は高齢化が進み,がんを患う人々の数も増加しています。国民全体にとって,がんは大変身近な存在となり,がんの有効な治療を願う気持ちは誠に切実なものとなっています。このような状況の中,がんの研究者や医療関係者は,科学技術の様々な分野の発展に支えられつつ,たゆみなく研究や治療にいそしみ,がんの早期診断や治療の向上に著しい貢献をしてきました。がんの治癒率も一昔前と比べれば,大きく変わりました。がんの治療の進歩は,がんを患う人やその家庭ばかりでなく,社会全体に大きな光明をもたらすものと思います。がんを患う者の一人として,私自身も,今日のがんの医療の恩恵を深く感じています。しかし,いまだ治療の困難ながんに悩んでいる人々も数多く,がんの研究が今後一層進み,治癒率が更に高まり,また,人々の生活習慣上の注意などともあいまって,がんを患う人が少なくなっていくことを期待しています。

創立50周年を迎えた国立がん研究センターが,今後その機能を一層充実させることを願い,また一人でも多くの国民がこれまでに先人が築いてきた優れた医療の恩恵にあずかり,がんの苦しみから救われることを期待し,式典に寄せる言葉といたします。

東日本大震災1周年追悼式
平成24年3月11日(日)(国立劇場)

東日本大震災から1周年,ここに一同と共に,震災により失われた多くの人々に深く哀悼の意を表します。

1年前の今日,思いも掛けない巨大地震と津波に襲われ,ほぼ2万に及ぶ死者,行方不明者が生じました。その中には消防団員を始め,危険を顧みず,人々の救助や防災活動に従事して命を落とした多くの人々が含まれていることを忘れることができません。

さらにこの震災のため原子力発電所の事故が発生したことにより,危険な区域に住む人々は住み慣れた,そして生活の場としていた地域から離れざるを得なくなりました。再びそこに安全に住むためには放射能の問題を克服しなければならないという困難な問題が起こっています。

この度の大震災に当たっては,国や地方公共団体の関係者や,多くのボランティアが被災地へ足を踏み入れ,被災者のために様々な支援活動を行ってきました。このような活動は厳しい避難生活の中で,避難者の心を和ませ,未来へ向かう気持ちを引き立ててきたことと思います。この機会に,被災者や被災地のために働いてきた人々,また,原発事故に対応するべく働いてきた人々の尽力を,深くねぎらいたく思います。

また,諸外国の救助隊を始め,多くの人々が被災者のため様々に心を尽くしてくれました。外国元首からのお見舞いの中にも,日本の被災者が厳しい状況の中で互いに(きずな)を大切にして復興に向かって歩んでいく姿に印象付けられたと記されているものがあります。世界各地の人々から大震災に当たって示された厚情に深く感謝しています。

被災地の今後の復興の道のりには多くの困難があることと予想されます。国民皆が被災者に心を寄せ,被災地の状況が改善されていくようたゆみなく努力を続けていくよう期待しています。そしてこの大震災の記憶を忘れることなく,子孫に伝え,防災に対する心掛けを育み,安全な国土を目指して進んでいくことが大切と思います。

今後,人々が安心して生活できる国土が築かれていくことを一同と共に願い,御霊(みたま)への追悼の言葉といたします。

全国戦没者追悼式
平成24年8月15日(水)(日本武道館)

本日,「戦没者を追悼し平和を祈念する日」に当たり,全国戦没者追悼式に臨み,さきの大戦において,かけがえのない命を失った数多くの人々とその遺族を思い,深い悲しみを新たにいたします。

終戦以来既に67年,国民のたゆみない努力により,今日の我が国の平和と繁栄が築き上げられましたが,苦難に満ちた往時をしのぶとき,感慨は今なお尽きることがありません。

ここに歴史を顧み,戦争の惨禍が再び繰り返されないことを切に願い,全国民と共に,戦陣に散り戦禍に倒れた人々に対し,心から追悼の意を表し,世界の平和と我が国の一層の発展を祈ります。

国賓 マレーシア国王陛下及び王妃陛下のための宮中晩餐
平成24年10月3日(水)(宮殿)

この度,マレーシア国王アブドゥル・ハリム・ムアザム・シャー陛下が,ハミナ王妃陛下と共に,国賓として我が国を御訪問になりましたことに対し,心から歓迎の意を表します。ここに今夕を共に過ごしますことを,誠に喜ばしく思います。

国王陛下に私が初めてお会いいたしましたのは,今から42年前,皇太子の私が,皇太子妃と共に貴国を訪問した時のことであります。この訪問は1964年にペルリス州御出身のサイド・プートラ国王,王妃を国賓として我が国にお迎えしたことに対する答訪であり,私は昭和天皇の名代という立場でありました。当時貴国の国王は御病気であり,副国王でいらした陛下がクアラルンプールで私どもを丁重に迎えてくださいました。ペナン,ペルリス,セランゴール,ジョホール各州に及んだこの時の訪問は,私どもにとって未知であった貴国への理解を深める意義あるものとなりました。それとともに各地において私どもを迎えられた人々の温かい心に触れたことも心に残っています。

2度目の私どもの貴国訪問は,即位後間もない1991年,国賓としての訪問であり,陛下にも再びお目にかかりました。この時は,当時のアズラン・シャー国王の御出身地であるペラ州を訪問する予定でしたが,隣国の山火事のため,訪問することができなくなるという誠に残念なことが起こりました。しかし,それから15年後,タイ国王陛下の即位60周年記念行事に出席する機会に,ペラ州を訪れることができました。元国王を始め御家族にお会いし,訪問の予定が立てられていたマレー・カレッジでは,私どものために当時,準備されたものも見ることができました。当地の人々が私どもを迎えようとしていかに心を尽くしてくださっていたかを知り深い感謝を覚えました。

昨年3月11日に発生した東日本大震災に際しては,当時のミザン・ザイナル・アビディン国王から私に対し,哀悼とお見舞いの気持ちをお伝えいただき,また政府からは被災者に対する支援物資が送られました。ここに,貴国から示された心温まる厚情に,改めて深い感謝の意を表したいと思います。

貴国と我が国の間の交流は,1957年の国交樹立後大きく発展し,様々な分野で協力が進み,友好親善関係はますます緊密になってきております。とりわけ,1981年に提唱された東方政策の下,多くの優秀な貴国の若者が我が国で学び,貴国の発展に大きく貢献するとともに,両国をつなぐかけがえのない友好の懸け橋として活躍されてきたことを喜ばしく思います。この度の国王王妃両陛下の御訪問により,長きにわたり培われてきた両国の友好関係がますます強化されることを願ってやみません。

貴国には9人の州王がいらっしゃり,国王はこれらの州王の互選により,輪番5年の任期をお務めになります。国王陛下にはマレーシアの歴史で初めてのことになる2度目の王位におつきになりました。常に国民の上を思われ,マレー文化のよき象徴として国民の敬愛を集めてこられた国王陛下が王妃陛下と共に,これからもお元気にその重いお務めをお果たしになることを心より祈念いたします。

国王王妃両陛下のこの度の御滞在が,快く実り多きものとなりますよう,ここに杯を挙げて,マレーシア国王王妃両陛下の御健勝と,マレーシア国民の幸せを祈ります。

マレーシア国王陛下のご答辞

全国老人クラブ連合会創立50周年記念全国老人クラブ大会
平成24年10月4日(木)(日比谷公会堂)

全国老人クラブ連合会の創立50周年に当たり,皆さんと共にこの記念大会に臨むことをうれしく思います。

50年にわたる関係者のたゆみない努力によって,老人クラブが全国に普及し,各地において高齢者の社会参加や健康の保持に貢献してきたことは,誠に喜ばしく,この度表彰を受けられる皆さんを始め,多くの関係者の尽力に対し,深く敬意を表します。

多くの高齢者が,老人クラブの様々な活動を通じて,子どもたちや,若い世代とも交流しながら,積極的に社会参加を進めていることは非常に心強いことであります。老人クラブが,豊かで活力のある社会を築くために,引き続き大きな役割を果たすことを期待しております。

今日の高齢者は―私もその一人でありますが―多くの人命が失われた悲惨な戦争によって荒廃した国土から立ち上がっていく我が国と,歩みを共にしてこられました。私どもは若いときに平和の大切さを身にしみて育った世代です。皆さんが老人クラブなどの活動を通して,それぞれ幼いときに,あるいは青年として経験したことを,(じか)に子どもたちや若い世代の人々に伝えていくことは,我が国のために極めて大切なことと思われます。

会員の皆さんには,くれぐれも健康に気を付け,将来にわたって元気に過ごされるよう願うとともに,全国の老人クラブの活動がより一層発展することを期待し,大会に寄せる言葉といたします。

第181回国会開会式
平成24年10月29日(月)(国会議事堂)

本日,第181回国会の開会式に臨み,全国民を代表する皆さんと一堂に会することは,私の深く喜びとするところであります。

ここに,国会が,当面する内外の諸問題に対処するに当たり,国権の最高機関として,その使命を十分に果たし,国民の信託に応えることを切に希望します。

第182回国会開会式
平成24年12月28日(金)(国会議事堂)

本日,第182回国会の開会式に臨み,衆議院議員総選挙による新議員を迎え,全国民を代表する皆さんと一堂に会することは,私の深く喜びとするところであります。

ここに,国会が,国権の最高機関として,当面する内外の諸問題に対処するに当たり,その使命を十分に果たし,国民の信託に応えることを切に希望します。