主な式典におけるおことば(平成20年)

スペイン国王陛下のご答辞

天皇皇后両陛下主催宮中晩餐会におけるスペイン国王陛下のご答辞
平成20年11月10日(月)(宮殿)

天皇皇后両陛下,

本日のお招きと温かいお言葉に感謝致します。陛下のお言葉はそのまま,スペインと日本の長く豊かな友情の道のりと,両陛下の我が国および我が国民への長年の愛情の表れとして感銘を受けました。

日本を再び王妃と共に訪問でき,大きな喜びを感じております。両陛下のスペイン公式訪問からは23年,そして私どもが初めてこの偉大なる国を公式訪問してから28年の年月が経過しております。

今回の両陛下からのお招きはまことにありがたく,嬉しく思っております。これは私どもが個人的な友情で結ばれている証であり,1962年に初めて訪れて以来のこの美しい国とのコンタクトを再び始めることでもあり,常に大らかに接していただいたこと,感慨ひとしおなるものがございます。

2日後には日本とスペインの友好通商航海条約調印後140周年を迎えます。古い歴史を持つ両国の絆が年月の流れと共に一層固まってきていることを感じます。

私どもの個人的な友情も何十年もの歴史がございます。陛下は少なくとも4回スペインを訪問されており,私も王妃とともに同じ回数,日本を訪れる幸運に恵まれました。

この基礎の上にたって,素晴らしい関係を一層発展させたいという強い意思に励まされ,私どもは再び貴国を訪れております。私はあえて,両国は価値を共有し,深い相互理解に基づいた歴史的な時を迎えていると申し上げたいと思います。

両国は貧困の削減,テロとの戦い,エネルギー,気候変動,核拡散防止,民族間や異なる文化と宗教間の理解,国際システムの強化など,様々な国際的な重要テーマにおきましても政治的にハーモニーある関係を保っております。

これら様々な課題は,今日の世界が抱える不均衡や不足の問題を浮き彫りにするものであり,グローバルな視野に基づいた取組を必要としています。

世界の金融市場は,私どもがいまだ経験したことのないレベルへの挑戦を提起しています。この問題では緊急な地域レベル,そして国際的なレベルでの協力が必要となっています。

両国は,世界平和,安全,人権,国際法規を守る立場から公明正大な国際秩序を強化する必要性に関しても共通な視野にたっております。両国は,共通の利益に基づいた地域的,世界的なテーマに関して常に効率的な協力関係を維持しております。

さらに様々な国々の可能性と必要性に対応した一貫性ある外交政策のもとで,対話と多方向外交を通じて,持続可能な,均衡のとれた発展の追求を促進しております。

こうして,私は,両国は協力して適宜を得たコンセンサスと公約をすすめながら国際社会の利益のために働くであろうことを確信しております。

天皇皇后両陛下,

2009年には,イベリア半島出身者を乗せた船が日本の海岸に着いて,スペインと日本が“グローバリゼーション”の初めての兆しを,共に経験した年から400年目を迎えます。

16世紀の中ごろ,日本では“ザビエル”と言う名で親しまれているサン・フランシスコ・ハビエルは,日本を敬愛し,日本人について,“このように働き者で素朴な,礼儀正しい人たちに今まであったことがない”と述べています。

そのときからスペインは,かつてのスペイン王国の領土であったアメリカを通じて東アジアと結ばれていました。現在ではこれらの国々は独立国であり,わが国とは深い愛情の絆と協力関係で結ばれております。

実際,現在のメキシコにあたるヌエバ・エスパニャから最初の太平洋航路が開かれ,多くの思い出を残してきたのです。

その中でも,太平洋航路を行き来していたガレオン船「サン・フランシスコ号」が1609年,難破して岩和田の浜に漂着したことが思い出されます。

日本の皆さんのおかげでスペイン人乗組員のほぼ全員が救われ,わが国とは全く違う日本の当時の文化や知識,技術や生活様式などに直接触れることができたのでした。

この古いスペイン人の日本人に対する敬愛の念は,今日,文学やデザイン,映画,アニメ,和食など様々な形の日本文化への憧憬となって受け継がれ広がっています。

日本とスペインは,政治的,経済的,社会的,文化的関係と,お互いの現状に対する相互理解を一層深める必要があります。

経済面では,わが国は日本との貿易インバランスの修正に努力しております。さらに両国の協力を拡大する最も効果的手段としての双方向投資も促進してゆく必要があります。

一方,今日のような時代に,人材の育成と研究開発がいかに両国などの先進国の経済成長を保証するキーファクターになり得るか,という点でも日本は模範となる国です。

相互理解の向上には,最近の観光の拡大,特に日本からスペインへの観光客の増加が大いに貢献しています。

一方,人文学と芸術も両国関係を豊かにする上で常に重要な役割を果たしてきました。その意味で,今回の公式訪問期間中に,セルバンテス文化センター(インスティトゥト・セルバンテス)東京の新センター開所式を行うことは大きな喜びです。

セルバンテス文化センター東京は,スペインが全世界に保有するセルバンテス文化センターのうちでも最大規模のものであり,日本におけるスペイン語への需要の大きさに対応するものです。スペイン語は世界で約5億人もの人々によって話され,しかも様々な文化が表現される言語でもあります。

さらに日本政府がスペインに国際交流基金のオフィス開設を検討されているというニュースも大変喜ばしく思います。

私は,セルバンテス文化センターにも国際交流基金オフィスにもその円滑な機能のために両国政府が最大限の支援を行っていくだろうことを確信しております。

さらに日西フォーラムが,今年で11回目を数え,先月ガリシアで成功裏に開催され,両国社会の相互理解促進に多大な効果があったことにも深い満足を覚えます。

日西フォーラムは,協力のための新しい道を開きました。多くの専門家,研究者や経営者,アーティスト,学生などが参加して様々なテーマについて話し合い,二国間の絆は一段と深まり,さらに多様な面で進化しているのです。

スペインは近々,第3次アジア・太平洋プランをスタートさせます。これは幅広いコンセンサスを得た重要なイニシアチブであり,8年前にスタートし,アジアにおけるスペインのプレゼンス,そしてアジアのスペインにおけるプレゼンスを強化することを目的としています。

今回の新プランでは,日本はスペインの対アジア・太平洋外交政策の中で,今後4年間で最も重要な優先国の一つとなっています。

天皇皇后両陛下,

3年前,スペインの皇太子夫妻が愛知万博を訪問しました。愛知万博のスペインパビリオンは,高い評価を受けました。

天皇皇后両陛下からは,皇太子夫妻へ温かいもてなしをいただき,非常に感謝しております。

また去る7月には皇太子殿下がサラゴサ国際博覧会をご訪問いただいたことにもこの場をお借りして御礼申し上げます。殿下のご出席によりサラゴサ博覧会で最も象徴的で人気のあった日本館の成功が一層際立ったのでした。

私は,両陛下と私どもを結ぶ愛情の絆が,両国の皇太子にも受け継がれ,両国関係の今後の発展の大きな支えになっていくだろうことに深い満足を覚えます。

日本とスペインの将来の友好と協力の一層の発展を祈願し,天皇皇后両陛下および皇室ご一家のお幸せと私の愛する日本の平和,繁栄,健康をお祈りして杯をあげたいと思います。

ムーチャス・グラシアス(ありがとうございます)