主な式典におけるおことば(平成8年)

天皇陛下のおことば

第135回国会開会式
平成8年1月11日(木)(国会議事堂)

本日,第135回国会の開会式に臨み,全国民を代表する皆さんと一堂に会することは,私の大きな喜びであります。

ここに,国会が,国権の最高機関として,当面する課題に対処するに当たり,その使命を十分果たし,国民の信託にこたえることを切に希望します。

第136回国会開会式
平成8年1月22日(月)(国会議事堂)

本日,第136回国会の開会式に臨み,全国民を代表する皆さんと一堂に会することは,私の深く喜びとするところであります。

ここに,国会が,内外の諸情勢に対処するに当たり,国民生活の安定と向上,世界の平和と繁栄のため,国権の最高機関として,その使命を遺憾なく果たし,国民の信託にこたえることを切に希望します。

国賓 ブラジル大統領閣下及び同令夫人のための宮中晩餐
平成8年3月13日(水)(宮殿)

この度,ブラジル連邦共和国大統領カルーゾ閣下が令夫人と共に,国賓として我が国を御訪問になり,ここに今夕を共に過ごしますことを誠にうれしく思います。

貴国と我が国の関係は1895年に締結された日本ブラジル修好通商航海条約に始まり,昨年で100年を数えることになりました。昨年11月にはマシエル副大統領と清子内親王の相互訪問により,両国でそれぞれ修好100周年記念式典が催され,また,1年以上にわたって様々な記念行事が両国で行われました。この諸行事の(ちょう)尾を飾り,大統領御夫妻が御来日になりましたことは誠に喜ばしいことであり,ここに心から歓迎の意を表します。

大統領閣下には,御就任以来,ブラジルの発展と安定した社会の建設を目指して真()な御努力を重ねられ,日夜国と国民のために尽くしていらっしゃることと伺っております。そのような中,我が国との友好関係の発展に,常々心を配っておられることを,有り難く心強く思っております。また,令夫人はかつてブラジルにおける日系人社会についての博士論文をお書きになり,この度の修好100周年の記念事業として,その論文が日本語訳を伴って出版されました。日本からの移住者に関心をお持ちの令夫人を,この意義深い年にお迎えできたことを,うれしく思います。

貴国には,1908年,笠戸丸に乗船した最初の移住者が渡って以来,数多くの日本人が移り住み,今日,貴国は,海外における日系人の最も多い国となっております。私は1967年と,ブラジル移民70年祭の行われた1978年の2回,皇太子として,皇太子妃と共に貴国を訪問いたしました。この二度の訪問を通して,多彩な環境を持つ広大な国土の中で様々な文化の背景をもつ人々が寄り集い,貴国を築いていることへの理解を深めると共に,包容力豊かな貴国国民の中にあって,日系の人々が伸び伸びと生活し,貴国社会に寄与していることを非常にうれしく思います。貴国が永年にわたり,我が国からの移住者を快く受け入れ,活躍の場を与えられたことを,深く感謝しております。

近年に至り,両国の関係は,政治,経済,文化,スポーツなど様々な分野に広がるようになり,日系ブラジル人のみでなく,更に広範囲にわたる貴国国民との交流も盛んになってきました。日本ブラジル修好100周年と,この度の大統領閣下の御訪問を契機として,両国民の相互理解と信頼が更に深まり,未来に向け,友好と協力の(きずな)が一層強まるよう切に希望いたします。

短い御滞在ではありますが,政府や各界の人々とお会いになり,御夫妻の御訪日が快く実り多いものとなるよう願っております。

ここに杯を挙げて,大統領閣下並びに令夫人の御健勝とブラジル連邦共和国国民の幸せを祈ります。

国賓 アメリカ合衆国大統領閣下及び同令夫人のための宮中晩餐
平成8年4月17日(水)(宮殿)

この度,アメリカ合衆国大統領クリントン閣下が,内外にわたる国務御多忙の中,令夫人と共に,国賓として我が国を御訪問になりましたことに対し,心から歓迎の意を表します。ここに今夕を共に過ごしますことを誠に喜ばしく思います。

一昨年,私は,大統領御夫妻の御招待を頂き,皇后と共に貴国を訪れました。首都ワシントンにおいて御夫妻から心温まるおもてなしを受けたほか,米国大陸を横断し,ハワイに至る2週間の旅を通じて,いずこの地でも多くの米国国民の善意に満ちた歓迎を受けました。この訪問において,貴国と我が国との友好の(きずな)を更に強く感ずるとともに,貴国が多様な人々を包容し,民主主義の理想を常に新たにしつつ,進んでいく姿に深い感銘を覚えました。

また,昨年1月,阪神・淡路大震災に際しては,米国政府のみならず多くの米国国民から手厚いお見舞いと支援を頂きました。貴国政府と国民の善意と友情に対し,深く感謝いたします。

私は,大統領閣下が,国内における諸改革に積極的に取り組まれるとともに,現在の流動的な国際社会において指導的役割を果たしている国の大統領として,世界各地の平和の維持と発展のために日夜尽力していらっしゃることに敬意を表します。同時に,日米両国間の友好親善についても,大統領閣下が自らその増進のために意を用いていらっしゃることを心強く思います。

戦後50年を超える年月の間に,日米両国民は互いの英知と(たゆ)まざる努力によって,かつてない緊密な協力関係を築き上げてきました。世界の諸国民が,なお新たな国際秩序を模索する中,日米両国民が,来し方を振り返り,歴史や文化,社会に対する理解を更に深め,世界の平和と繁栄という共通の目標を掲げながら力を合わせて直面する諸問題の解決に努めていくことを願ってやみません。

両国の友好の(しるし)ともなっている桜の季節の御訪問が,両国民の友好と幸せに資する実り多いものとなるよう切に希望いたします。

ここに杯を挙げて,大統領閣下及び令夫人の御健勝とアメリカ合衆国国民の幸せを祈ります。

1996年(第12回)日本国際賞授賞式
平成8年4月26日(金)(国立劇場)

この度の日本国際賞の授賞式に当たり,カオ博士が情報,コンピュータ及び通信システム分野において,また,伊藤博士が神経科学分野において,それぞれ受賞されたことを心からお祝いいたします。

カオ博士の御研究は,光ファイバに関するもので,現在広く使われている光通信の開拓に大きく貢献されました。また,伊藤博士の御研究は,運動を調節する小脳の神経機構に関するもので,その成果は脳の学習と記憶機構に関する神経科学の研究に大きな影響を与えました。ここに,両博士の優れた業績に対し,深く敬意を表します。

近年の科学技術の進歩は誠に目覚ましいものであり,その進歩によって人類が享受している恩恵には計り知れないものがあります。私どもは,今日の科学技術が,多くの研究者の英知と忍耐強い努力によって産み出されたということに深く思いを致すとともに,新しい科学技術が,真に人類の幸せにつながるものとして発展するよう見守っていくことが大切であります。その意味において,科学技術の進歩に大きく寄与し,人類の平和と繁栄に著しく貢献した人々を受賞者の対象として設けられた日本国際賞は,極めて意義深いものと思われます。

両博士の御研究が更に発展し,人類の福祉に一層寄与することを願い,授賞式に寄せる言葉といたします。

第5回国際地域学会世界大会開会式
平成8年5月3日(金)(立正大学石橋湛山記念講堂)

世界の各地から地域学の専門家を迎え,第5回国際地域学会世界大会が,本日より4日間,我が国で開催されることを誠に喜ばしく思います。大会の開催に当たり,尽力された関係者に対し,深く敬意を表します。

今日,世界は,環境,都市,交通,情報通信問題等,人々の生活にとって極めて重要な課題に直面しております。これらの問題を解決するためには,異なる分野の人々が協力し合い,総合的に対応することが求められております。地域学は,経済・社会現象を地域的な広がりの中でとらえようとする学問であり,経済学のみならず,土木・交通工学・地理学など各種の学問領域に関係する総合的かつ学際的な学問領域であって,その発展は,世界の抱えるこれらの諸問題の解決に大きく寄与することと思います。

この大会に海外から参加された地域学の各分野の専門家と我が国の専門家が一堂に会し,広い視野に立って互いに意見を交換することは,地域学の進展と普及に大きく貢献することと期待しております。

本大会が実り多いものとなり,参加者の今後の研究や活動に生かされることを願い,開会式に寄せる言葉といたします。

第47回全国植樹祭
平成8年5月19日(日)(辰巳の森海浜公園(東京都))

第47回全国植樹祭が,東京都の三つの会場,街の森会場,海上の森会場,山の森会場に,全国からの参加者を迎えて行われることを誠に喜ばしく思います。

山と水に恵まれた我が国の人々は,古くから森林や木材と深くかかわってきました。今日,国土の七割近くを覆う森林は,多くの人々の手によって育まれ,支えられてきたものであります。木材資源の供給,災害の防止はもとより,水源を涵養し,川の清流を保ち,さらには,沿岸海域を豊かにすることにも森林は大きく影響を与えております。私達の生活が,森林のもたらす恵みに,いかに浴しているかを感じます。

昨年は戦争が終わって50年という節目の年でありました。50年前の我が国では,復興に向けた建設が急務であり,その木材需要をまかなうために森林の伐採が進み,山の荒廃による災害が頻発する状況にありました。全国植樹祭は,我が国のこのような状況を救うため始められました。東京都では,昭和23年に,全国植樹祭の前身,愛林日植樹行事が青梅市で行われております。

戦後という厳しい状況の中で,植樹に励んだ人々のたゆみない努力により,この50年間に全国各地の山々で森林が育ち,災害の防止にも大きく寄与するようになりました。しかし,山林地帯の過疎化と林業に携わる人々の高齢化が進んでいることは重要な問題であり,国民皆でこのことへの理解を深めていかなければならないと思います。

一方,かつて平地林が広がっていた都市近郊においては,人口の急激な増加に伴う開発や様々な施設の建設により,緑地が著しく減少しております。この度の街の森,海上の森の植樹行事は,都市緑化の重要性を広く国民が認識するための意義深い催しと思います。

山の森,街の森,海上の森の三つの会場で催されるこの植樹祭が,森林がもつ多様な働きや,木を植え,育てることの大切さについて人々の理解を深め,緑豊かで安らぎのある国土の建設に広く力を合わせていく契機となることを心から希望いたします。

国賓 チュニジア大統領閣下及び同令夫人のための宮中晩餐
平成8年7月10日(水)(宮殿)

この度,チュニジア共和国大統領ベン・アリ閣下が令夫人と共に国賓として我が国を御訪問になりましたことに対し,心から歓迎の意を表します。ここに今夕を共に過ごしますことを誠に喜ばしく思います。

古代,カルタゴの人々が地中海世界の交易の中心となって活躍して以来,テュニスを中心とする地域は地中海沿岸における一つの重要な拠点として様々な文明の交錯する場所となっていました。私は,まだ幼かった頃,児童向きに書かれた歴史の本の中で,カルタゴとハンニバルの物語にふれる機会を持ちましたが,後年,世界地図の上でこのカルタゴの近隣にある貴国の首都テュニスが,我が国の首都東京とほぼ同緯度にあることを見出し,改めてチュニジアへの思いを深めたことを記憶しています。

今年はチュニジア共和国の独立40周年に当たりますが,貴国は独立以来,豊かな歴史と伝統の上に立って,教育に力を注ぎ,近代化を進め,開放的な経済と安定した社会を築いてきました。このような貴国の発展は,「建国の父」ブルギバ前大統領の御努力と,それを受け継がれた貴大統領閣下の御指導のもと,貴国国民の英知と勤勉によってもたらされたものであり,ここに深く敬意を表します。また,貴国が,広く中東,アフリカ地域の平和と安定のために真()な努力を積み重ね,大きな貢献をされていいることも誠に意義深いことと思います。

貴国と我が国の関係は,1956年の貴国独立以来着実に発展してまりました。特に近年,両国間の関係は,政治・経済面にとどまらず,スポーツ・文化面を含む幅広い広がりをもつに至っておりますが,これにともなって,多くの分野での人的交流が活発化し,両国国民の間の相互理解が深まっていることを大変嬉しく思います。6月のはじめには,高円宮及び同妃が貴国を訪問いたしましたが,その際,大統領を始め,貴国の人々から受けた温かいおもてなしに対し,深く感謝いたします。

この度の大統領閣下の御来訪は,チュニジア共和国大統領として初めての御訪日であります。これを契機として両国間の友好と協力の(きずな)が一層深まることを願ってやみません。

御滞在は,短いものではありますが,この機会に大統領閣下が広く我が国各界の人々と親交をを深められ,今回の御訪日が実り多く,かつ快適なものとなりますよう希望いたします。

ここに杯を挙げて,大統領閣下並びに令夫人の御健勝とチュニジア共和国民の幸せを祈ります。

全国戦没者追悼式
平成8年8月15日(木)(日本武道館)

本日,「戦没者を追悼し平和を祈念する日」に当たり,全国戦没者追悼式に臨み,さきの大戦において,尊い命を失った数多くの人々とその遺族を思い,深い悲しみを新たにいたします。

顧みれば,終戦以来既に51年,国民のたゆみない努力によって今日の平和と繁栄が築き上げられましたが,苦難に満ちた往時をしのぶとき,改めて感慨を禁じ得ません。

ここに歴史を顧み,戦争の惨禍が再び繰り返されないことを切に願い,全国民と共に,戦陣に散り,戦禍にたおれた人々を心から追悼し,世界の平和と我が国の一層の発展を祈ります。

第16回全国豊かな海づくり大会
平成8年9月16日(月)(石川県珠洲市)

第16回全国豊かな海づくり大会がこの度能登半島の先端にあるここ珠洲市において開催されることを誠に喜ばしく思います。

我が国は,四方を海に囲まれ,古来より豊かな海の恵みを受けてきました。しかし,戦後の経済発展の中で,人々が親しんできた海とその沿岸は著しい変(ぼう)を遂げました。沿岸開発に伴う人工海岸の造成や海の汚染により,各地で稚魚の育成に重要な役割を担う藻場(もば)を始めとする海産生物の生息数が減少するとともに,生息環境が悪化し,水産資源は重大な影響を受けました。

こうした状況の中,近年,全国各地で,海の豊かさを取り戻すため,生態系に配慮した護岸の造成や植林など,海の環境改善のための様々な努力がなされ始めていることを大変心強く思っています。

幸い,石川県は,海の環境も良好に保たれ,寒流と暖流の交差する所として豊かな漁場に恵まれております。その上,マダイやヒラメなどの栽培漁業にも積極的に取り組み,着々とその成果を上げていると聞いております。持続可能な水産業の将来に大きな期待が寄せられます。

世界的規模で漁業資源の保護のため新たな秩序づくりが行われつつある今日,それぞれの地域の人々が,長い将来を見通した水産資源の管理を十分に行い,世界共通の資源である豊かな海を守っていきたいものと思います。

全国からの参加者,さらに外国からの参加者も迎えたこの大会が,人々の海に対する関心を(はぐく)み,豊かな海を目ざして広く協力し合う契機となることを願い,大会に寄せる言葉といたします。

第51回国民体育大会秋季大会開会式
平成8年10月12日(土)(広島広域公園陸上競技場(広島県))

第51回国民体育大会秋季大会が,広島県で開催されるに当たり,全国から参加された選手,役員並びに多くの県民と共に,開会式に臨むことを誠に喜ばしく思います。

戦争による荒廃の中で,人々に希望と活力を与えた第1回の国民体育大会が行われてから,50年の時が流れました。この間に国民体育大会が我が国各地のスポーツの振興と普及に果たした役割は,極めて大きいものでありました。長年にわたる大会関係者の努力に対し深く敬意を表します。

近年,国民体育大会に参加する選手のほとんどは戦後に生まれた人々で占められていることと思われます。戦争によりとりわけ多くの苦しみを経たここ広島県において,この度の国民体育大会が行われ,ここに集う人々が,共に過去を振り返る機会を得たことは,非常に意義深いことと思います。

緑と海の豊かな環境に恵まれたこの地に集われた選手の皆さんは,日ごろ鍛えた力と技を十分に発揮されるとともに,この出会いを通じて各地の選手と親しみ,また,県民との交流を深められるよう念願いたします。

多くの県民の協力に支えられた「ひろしま国体」が,実り多く,長く心に残る大会となることを期待し,開会式に寄せる言葉といたします。

国賓 ベルギー国王王妃両陛下のための宮中晩餐
平成8年10月22日(火)(宮殿)

この度,ベルギー王国国王アルベール二世陛下が,王妃パオラ陛下と共に国賓として我が国を御訪問になりましたことに対し,心から歓迎の意を表します。ここに今夕を共に過ごしますことを,誠に喜ばしく思います。

国王陛下に初めてお目にかかりましたのは,1953年,英国女王陛下の戴冠式に出席したときのことであり,陛下も私も,共にまだ10代の年齢でありました。この英国訪問後,貴国を訪れ,ラーケン宮に泊めていただき,兄宮故ボードワン国王陛下から心のこもったおもてなしを受けました。以来43年,振り返りますと,様々な交流の思い出が心に浮かびます。3年前には,前国王崩後のお悲しみも()えぬ中,御招待をいただき,皇后と共に貴国を訪問し,国王王妃両陛下から温かいおもてなしをいただきました。両陛下と共にモンス,アントワープの両市をを訪問し,両陛下と貴国国民との(きずな),また,貴国国民の我が国に寄せる親しみの気持ちに接し,深い感銘を受けたことが思い起こされます。

貴国と我が国とは,今から130年前,1866年に修好通商航海条約を締結し,以来友好関係を培ってまいりました。条約締結から5年後,厳しい国際社会に乗り出した我が国は,諸外国の実情を把握し,我が国の近代化に役立てるために,右大臣岩倉具視を長として,当時の指導者を多数参加させた使節団を米国並びに欧州諸国に派遣しました。使節団は貴国を訪問し,レオポルド二世国王に謁見しておりますが,晋仏戦争の終結から間もなく,平和とは程遠い状況にあった欧州を巡覧した使節団は,当時の欧州における貴国の立場に深い関心を払っております。使節団の記録には,貴国について,国民の自主において優れ,文明の最上等に位する国とたたえております。

欧州はその後二度にわたる世界大戦を経,今日,長年の相克を乗り越えて,欧州を統合しようとする歴史的事業に取り組んでおります。貴国は,その推進のために,これまでも積極的に貢献してきましたが,今後も,国王陛下が常々貴国国民に呼びかけていらっしゃる協調,開放,寛容の精神をもって,重要な役割を果たしていくものと信じております。

近年,両国民の間の交流が7年前のユーロパリア日本祭に象徴されるごとく,政治,経済,文化等幅広い分野で一層緊密となってきていることを誠に喜ばしく思います。

この度の国王王妃両陛下の我が国御訪問によって,我が国民の貴国に対する理解と友情が更に深まり,御訪問が実り多いものとなることを念願いたしております。

ここに,国王王妃両陛下の御健勝並びにベルギー王国の繁栄と国民の幸せを祈り,杯を挙げたいと思います。

日本社会事業大学創立50周年記念大会
平成8年11月9日(土)(日本社会事業大学講堂)

日本社会事業大学創立50周年に当たり,日ごろ,社会福祉教育の発展のために尽くしておられる皆さんと一堂に会し,記念式典を祝うことを誠に喜ばしく思います。

日本社会事業大学は,その前身,日本社会事業学校として50年前の本日,開校しました。戦後,ようやく1年を経過した厳しい状況の中での門出であり,当時の関係者の苦労は誠に大きなものであったと思われます。様々な困難を乗り越え,多くの社会福祉に携わる人々を世に送り出してきた大学関係者の50年間にわたる努力に対し,ここに深く敬意を表します。

我が国は,戦後著しい経済発展を遂げましたが,一方,福祉の面においても,関係者の尽力により様々な施策が推進され,大きな成果を上げてきました。

しかし,近年,国民の高齢化が進み,身の回りの介護を必要とする人々が増加するなど,我が国の社会には,多くの課題が生じてきております。

このような社会的な要請にこたえるためにも,社会福祉事業に携わる皆さんの役割はますます重要になるものと思われます。日本社会事業大学が,福祉系大学の先達として積み重ねてきた経験をいかし,今後とも社会福祉教育の発展に更に寄与することを切に希望いたします。

第138回国会開会式
平成8年11月11日(月)(国会議事堂)

本日,第138回国会の開会式に臨み,衆議院議員総選挙による新議員を迎え,国民を代表する皆さんと一堂に会することは,私の大きな喜びであります。

国会が,永年にわたり,国民生活の安定と向上,国際社会の平和と繁栄のため,たゆみない努力を続けていることを,うれしく思います。

ここに,国会が,国権の最高機関として,その使命を十分果たし,国民の信託にこたえることを切に希望します。

国賓 フランス大統領閣下及び同令夫人のための晩餐
平成8年11月18日(月)(宮殿)

この度,フランス共和国大統領ジャック・シラク閣下が令夫人と共に国賓として我が国を御訪問になりましたことに対し,心から歓迎の意を表します。ここに,今夕を共に過ごしますことを誠に喜ばしく思います。

一昨年の秋,私は,皇后と共に貴国を訪問いたしました。ミッテラン前大統領閣下には,御健康が優れない折にもかかわらず,飛行場に迎えてくださり,滞在中,本当に心のこもったおもてなしをいただきました。本年1月,御逝去の報に接し,深い悲しみを覚えました。

大統領閣下には,当時,パリ市長として,市庁舎において,我が国に対する親しみのこもったレセプションを催していただき,深く感謝しております。多くの貴国国民の温かい気持ちに接したこの訪問において,私どもはパリの外に,トゥールーズとアルビも訪れ,貴国の培ってきた文化に触れるとともに,今日の貴国に対するより一層の理解を深めることができました。トゥールーズでは,先端技術を駆使した欧州諸国による航空機の共同製作が行われている様を目の当たりにし,欧州統合の流れの進展に思いを致しました。大統領閣下には既に40回以上にわたって,我が国を御訪問になり,広く各地を訪ねられ,我が国の歴史,文化への深い理解を持っていらっしゃいます。両国間の友好関係についても,自らその増進のために意を用いていただいていることを,心強く思います。

貴国と我が国との交流は,我が国が諸外国との国交を開いた19世紀半ば以降に始まりましたが,我が国民は様々な分野で貴国から多くのものを学んできました。一方,我が国の文化で,古くから貴国国民に関心を持たれ,取り入れられたものもありました。このような両国民の間の交流は,近年ますます幅を広げ,かつ深さを増してきていることをうれしく思っています。両国民がそれぞれの国の在り方と文化を理解,尊重しつつ交流を深めていくことによって,両国間の友好関係が一層増進されていくことは非常に望ましいことであり,ひいてはこの友好の(きずな)が,統合の進んでいく欧州連合と我が国との太い(きずな)ともなることを期待しております。

今東京は紅葉の盛りを迎えております。我が国の秋色を楽しまれつつ,大統領閣下並びに令夫人が,実り多く,かつ,快い滞在をなさるよう願っております。

ここに大統領閣下及び令夫人の御健勝と御多幸,並びにフランス共和国国民の幸せを祈り,杯を挙げたいと思います。

第12回国際生物学賞授賞式
平成8年11月25日(月)(日本学士院会館)

柳町隆造博士が第12回国際生物学賞を受賞されたことを心からお祝いします。

今回の受賞分野は生殖生物学でありますが,博士は,哺(ほ)乳類の受精の基礎的分野において常に先駆的な研究を行い,精子受精能獲得の試験管内での成功など受精分野における多くの新しい事実を明らかにし,世界における生殖生物学の研究を導いてこられました。

このような博士の長年にわたる生殖生物学上の成果は,生物学のみならず,生殖に関連する臨床医学,畜産学などに対しても重要な貢献であり,深く敬意を表します。博士の御研究が今後ますます発展していくことを切に願ってやみません。

昭和天皇の御在位60年を記念した国際生物学賞も今回,12回目を迎えました。その第1回の受賞者エドレッド・コーナー博士が今年9月英国で亡くなられました。戦争の痛みを乗り越え,日本を愛された博士との交わりを思い起こしつつ,ここに深く哀悼の意を表します。

終わりに,改めて柳町博士の受賞に祝意を表するとともに,国際生物学賞が生物学の発展に寄与することを願い,授賞式に寄せる言葉といたします。

第139回国会開会式
平成8年11月29日(金)(国会議事堂)

本日,第139回国会の開会式に臨み,全国民を代表する皆さんと一堂に会することは,私の大きな喜びであります。

ここに,国会が,当面する諸問題を審議するに当たり,国権の最高機関として,その使命を十分果たし,国民の信託にこたえることを切に希望します。