主な式典におけるおことば(平成4年)

天皇陛下のおことば

国賓 アメリカ合衆国大統領閣下及び同令夫人のための宮中晩餐
平成4年1月9日(木)(宮殿)

このたび,アメリカ合衆国ブッシュ大統領閣下が,内外にわたる国務の御多忙にもかかわらず,令夫人とともに,国賓として,我が国を御訪問になりましたことに対し,心から歓迎の意を表したいと思います。今宵,大統領御夫妻をお招きし,宴席をともに出来ることは喜びに堪えません。

大統領閣下が,最近の世界の劇的な変化の中,平和で繁栄した国際社会を築くため,惜しみない努力を払っておられることに心から敬意を表しますとともに,我が国との友好関係の強化にも夙に心を配っておられることに深い感銘をおぼえます。

旧来の国際秩序が崩れつつある中で,明るく希望溢れる未来を求める世界の人々の願いは一層強まっております。このような世界の人々の願いを実現すべく,米国と手を携えて協力しつつ,さらに努力していくことこそ,戦後,平和国家として生きることを決意した日本にとっての課題であると考えます。

我が国が200年以上にわたる鎖国から開国して諸外国と交流する契機をつくったのは,ほぼ140年前,貴国との間に結ばれた日米和親条約であり,以来我が国は,貴国との交流を通して,貴国から様々なことを学び,また,恩恵を受けてきました。特に,戦後の混乱期に貴国より得た温かい支援は,我が国民が決して忘れることの出来ないものであると思います。このような貴国の善意と寛容が,両国関係のその後の発展を大いに促すことになりました。

貴国には,皇太子時代に何度か訪れ,貴国民の温かいおもてなしを受け,なつかしい思い出を持っております。貴国への訪問を通じて,私の心に残っておりますのは,貴国民の善意と友情であり,建国の理想を今も心に刻み,常に過去に学びつつ,より良い自国の歴史を築こうとする貴国民の良心と勇気でありました。

今回の大統領閣下の御訪問により,日米両国民がお互いに理解と親しみを更に深めるとともに,日米両国が国際社会の期待に応え,人類が直面する困難な課題の解決のため共に力を合わせていくことを願ってやみません。

ここに杯を挙げて,大統領閣下並びに令夫人の御健康とアメリカ合衆国国民の幸せを祈ります。

第123回国会開会式
平成4年1月24日(金)(国会議事堂)

本日,第123回国会の開会式に臨み,全国民を代表する皆さんと一堂に会することは,私の大きな喜びであります。

国会が,永年にわたり,国民生活の安定向上,世界の平和と繁栄のため,たゆみない努力を続けていることを,うれしく思います。

ここに,国会が,国権の最高機関として,その使命を十分果たし,国民の信託にこたえることを切に希望します。

国賓 ペル-大統領閣下のための宮中晩餐
平成4年3月16日(月)(宮殿)

このたび,ペル-共和国フジモリ大統領閣下が我が国を公式に御訪問になったことは,両国の親善のため誠に意義深く,心からの歓迎の意を表します。今宵,大統領閣下をお迎えし,宴席を共にできることは,喜びに堪えません。

閣下が大統領に御就任以来,ペル-国の発展と安定した社会の建設を目指して,国民と共に誠実な努力を着実に重ねておられることに対し,深く敬意を表します。また,大統領閣下が常々,我が国との友好関係の発展のために心を配っておられることを大変心強く思います。

大統領閣下の今回の御訪問により,両国民の相互理解と信頼が更に深まり,太平洋をはさんだ両国の関係が一層発展するよう,心から願ってやみません。

私が皇太子の時,昭和天皇の御名代として皇太子妃と共に貴国を訪れましたのはもう25年も前のことになりますが,当時ベラウンデ大統領閣下始め貴国政府並びに国民からの温かいおもてなしを受けたことは深く私の心に残っております。

貴国での滞在は短く,リマに限られておりましたが,そこからアンデスの山地やパチャカマの遺跡を訪れるなどして,貴国の風土,文化,歴史に親しく触れたことは,誠に印象深く,懐かしく思い起こされます。

滞在中,日秘文化会館の落成式に大統領閣下と共に出席しましたが,この文化会館が今日に至るまで日秘友好の象徴として両国の交流の場となっていることを嬉しく思います。またこの落成式やラ・ウニオン運動場等で,多くの困難を乗り越えてきた日系の人々の元気な姿に接したことは喜ばしいことでありました。

今日,我が国から移住した人々及びその子孫が,世界の各地において,それぞれの地域社会の重要な一員となり,その発展や福祉のために貢献しておられることは,誠に心強いものがありますが,フジモリ大統領閣下が,このような新しい世代を代表するお一人として,ペル-の国造りに大いに力を発揮しておられることを大変喜ばしく思います。

閣下には,短い御滞在ではありますが,御両親の故郷を始め,我が国の地方都市をお訪ねになると伺っております。広く各界の人々とお会いになり,御訪日が実り多く,また,快適なものとなりますよう希望します。

ここに杯を挙げて,大統領閣下の御健康とペル-共和国国民の幸せを祈りたいと思います。

社団法人日米協会創立75周年記念晩餐会
平成4年4月13日(月)(ホテルオークラ)

日米協会創立75周年を迎え,本日,その記念晩餐会が行われることを心からお祝いします。

今日,我が国とアメリカ合衆国は,極めて緊密な関係にありますが,このことは,日米協会が永年にわたり両国の友好親善のため多大の努力を積み重ねてきたことに負うところが少なくなく,関係者の尽力に深く敬意を表します。

国際社会において真の友好をはぐくむためには,それぞれの国民が,互いに相手の立場を理解し,尊重して行動することが大切であります。

日米協会の一層の発展によって,両国民の交流,相互理解が更に深まり,これまでにも増して実り豊かな友好と親善が日米両国の間に築かれるとともに,それが,世界人類の平和と繁栄につながるものとなることを願ってやみません。

国賓 チェコスロバキア大統領閣下及び同令夫人のための宮中晩餐
平成4年4月23日(木)(宮殿)

このたび,チェコスロバキア連邦共和国大統領閣下が,令夫人とともに我が国を国賓として御訪問になりましたことに対し,心から歓迎の意を表したいと思います。今宵,大統領閣下並びに令夫人をお迎えして,宴席を共にできますことは,誠に喜ばしいことであります。

貴国と我が国とは,地理的に遠く離れており,また体制を異にしていたこともあり,両国間の交流は,これまで必ずしも活発とは言えませんでしたが,スメタナやドヴォルザ-クを始めとする音楽,カットグラスなどによって,その高い文化は我が国民に親しまれておりました。貴国の民主化革命後,両国間の交流が盛んになりつつある現在,大統領閣下の御来日は,両国国民の間の理解と友好を増進する上で,極めて大きな意味をもつことと思います。

大統領閣下は,早くから劇作家として御活躍になるとともに,厳しい状況の中で,貴国における人権擁護運動の先頭に立って,不屈の努力をお続けになったと伺っております。今日,その成果により,国民の信頼を得,大統領御就任以来,国内統合の要としての役割をお果たしになるばかりでなく,国際政治の面でも種々の努力を払っていらっしゃることに対し,深く敬意を表します。

今日の国際社会は,ソ連,東欧諸国における歴史的な変革を経て大きく変わろうとしており,新しい国際秩序の構築が求められております。その中で大統領閣下を我が国にお迎えすることは,誠に意義深いことと考えます。

大統領閣下の御日程には,政府や各界の人々とお会いになる他,京都,奈良への御訪問など我が国の伝統文化に接していただく機会もあると聞いております。閣下御夫妻には,短い御滞在ではありますが,親しく我が国の実情を御見聞になって,御来日が実り多く快適でありますよう希望いたします。

ここに杯を挙げて,大統領閣下並びに令夫人の御健康とチェコスロバキア連邦共和国国民の幸せをお祈りします。

1992年(第8回)日本国際賞授賞式
平成4年4月27日(月)(国立劇場)

第8回日本国際賞の授賞式に当たり,エルトゥル教授,ポルジ教授の受賞を心からお祝いいたします。

エルトゥル教授の御研究は,触媒について,固体表面の原子・分子レベルの解析を行い,その応用に道を開き,また,ポルジ教授の御研究は,動物細胞の凍結保存に端緒を開き,その方法を確立して畜産振興に大きな影響を与えました。このように両教授の御研究は,材料界面の科学と技術の分野並びに生物生産の科学と技術の分野において,それぞれ人類の福祉につながる様々な応用面の発達をもたらすものと考えられます。ここに,両教授の優れた御業績に対し,深く敬意を表します。

世界は,今,人口の増加,環境の保全など世界的課題に当面していますが,このような課題を克服し,人類の平和と繁栄を守るため,科学技術が果たすべき役割には,非常に重大なものがあると思います。

この日本国際賞が,人々に幸福をもたらす科学技術の発展に一層寄与することを願い,式典に寄せる言葉といたします。

第43回全国植樹祭
平成4年5月10日(日)(夜須高原(福岡県))

本日,この「夜須高原」において第43回全国植樹祭が行われ,ここに皆さんと共に植樹をすることを誠に喜ばしく思います。

森林は,人類との長いかかわりを通して,資源を提供し,環境を守り,文化をはぐくんできました。しかし,近年,森林の荒廃が世界の関心を集め,森林資源保全の見地からだけでなく,地球環境保護の一環として国際的な取組が始まろうとしています。ここ福岡県においては,森林や自然環境を守るため様々な努力がなされていると承知していますが,昨年の台風によって生じた山林の大きな被害に対しても,関係者が力を合わせ,その復旧のために努力を進めておられることは大変心強いことであります。

このように,先人から受け継いだ掛け替えのない緑を守り,育てていくためには,国民一人一人が植樹の大切さを知り,緑化活動をたゆみなく推進していくことが大切です。

「好きです このまち この緑」をテーマとして行われるこの植樹祭が,人々の自然に親しむ心を培い,緑豊かな国土の建設に向けて広く力を合わせていく契機となることを心から希望いたします。

沖縄復帰20周年記念式典
平成4年5月15日(金)(憲政記念館)

沖縄復帰20周年に当たり,日米両国の関係者が共に会して,本日,記念式典が行われることを誠に喜ばしく思います。

先の戦いで多くの命が失われ,苦難の道を歩んできた沖縄県の人々のことを思いつつ,この式典に臨むことに深い感慨を覚えます。

復帰より20年を経た今日,県民を始めとする多くの人々の努力により,沖縄県が発展し,県民の福祉が向上していることは,心強いことであります。

沖縄の復帰は,日米両国の友好と信頼に基づいて実現しましたが,両国間のきずなは,いよいよ重要なものとなっています。復帰実現に携わった両国関係者の尽力に対し,この機会に深く敬意を表するとともに,日米間の友好と信頼の関係が一層進展し,世界の平和と繁栄に寄与するものとなることを願ってやみません。

ここに,沖縄県民の経てきた過去に思いを致すとともに,豊かな未来が沖縄県に築かれることを切に望みます。

第124回国会開会式
平成4年8月10日(月)(国会議事堂)

本日,第124回国会の開会式に臨み,参議院議員通常選挙による新議員を迎え,全国民を代表する皆さんと一堂に会することは,私の大きな喜びであります。

ここに,国会が,内外の諸情勢に対処するに当たり,国権の最高機関として,その使命を十分果たし,国民の信託にこたえることを切に希望します。

全国戦没者追悼式
平成4年8月15日(土)(日本武道館)

本日,「戦没者を追悼し平和を祈念する日」に当たり,ここに,全国戦没者追悼式に臨み,さきの大戦において,尊い命を失った数多くの人々やその遺族を思い,つきることのない悲しみを覚えます。

終戦以来すでに47年,国民のたゆみない努力により,我が国の平和と繁栄が築き上げられましたが,苦難にみちた往時をしのぶとき,深い感慨を禁ずることができません。

ここに,全国民とともに,戦陣に散り,戦禍にたおれた人々を心から追悼し,世界の平和と我が国の一層の発展を祈ります。

日本遺族会創立45周年記念式典
平成4年9月24日(木)(九段会館)

日本遺族会創立45周年に当たり,全国の戦没者遺族代表が集う記念式典が本日催されることは喜ばしいことであります。

日本遺族会が日本遺族厚生連盟として結成された当時,一家の重要な立場にある人を失った遺族にとって,極めて厳しい状況にありました。今日当時のことに思いを致し,誠に心の痛むのを覚えます。その時以来,遺族会が遺族のために力を尽くし,福祉の向上に努めてきたことに対し,ここに,深く敬意を表したいと思います。

45年を経た今日,遺族の皆さんが,お互いに助け合って様々な困難を乗り越え,自身の心の悲しみから人々の心を思いやり,社会において重要な役割を担っていることに感銘を覚えます。

今後とも,日本遺族会が遺族の支えとなって,遺族の福祉の一層の充実が図られるよう願っております。

終わりに,遺族の皆さんの御健勝と御多幸を祈ります。

全国老人クラブ連合会創立30周年記念全国老人クラブ大会
平成4年9月26日(土)(日比谷公会堂)

全国老人クラブ連合会の創立30周年記念全国大会を,本日,ここにお集りのみなさんと共に祝うことをうれしく思います。

30年にわたる関係者のたゆみない努力により,老人クラブが全国に広く普及し,高齢者の社会参加や明るい地域社会づくりが進められていることは,誠に喜ばしいことであります。ここに,この度表彰を受けられた方々を始めとする関係者の尽力に対し,深く敬意を表したいと思います。

今日,我が国が長寿社会を迎え,高齢者が元気に社会に参加していることは,高齢化が進む今後の日本にとり,大変に心強いことであります。高齢者自らが友愛の輪を広げ,明るく健やかな社会づくりに参加することが重要であり,そのよりどころとしての老人クラブの活動に大きな期待が寄せられます。

皆さん方には,健康に十分気を付けられ,豊かな日々を過ごされるよう願うとともに,連合会及び傘下の老人クラブの活動が更に一層発展することを祈って,お祝いの言葉といたします。

第47回国民体育大会秋季大会開会式
平成4年10月4日(日)(総合運動公園陸上競技場(山形県))

第47回国民体育大会秋季大会が,ここ山形県で開催されるに当たり,全国各地から参加された大勢の選手,役員と共に,この開会式に臨むことを誠に喜ばしく思います。

国民の参加の下に行われる国民体育大会は,我が国におけるスポーツの普及と発展に大きな役割を果してきました。ここに,長年にわたる大会関係者のたゆみない努力を深く多とするところであります。

出場する選手の皆さんには,大会のスローガン「思いっきり躍動 21世紀の主役たち」にふさわしく,その力と技を発揮して活躍されることを期待しています。

山形県の豊かな風土と県民の温かい協力に支えられたこの「べにばな国体」が,選手相互の,そしてまた選手と県民との友情を深め,実り多い大会となることを心から願い,開会式に寄せる言葉といたします。

調停制度施行70周年及び日本調停協会連合会創立40周年記念式典
平成4年10月13日(火)(国立劇場)

調停制度施行70周年及び日本調停協会連合会創立40周年に当たり,皆さんと共にこの記念式典に臨むことを誠に喜ばしく思います。

調停制度は,発足以来,数多くの紛争を解決に導き,社会の秩序維持に大きな貢献をしてきました。これは,調停に携わる人々が,条理にかない,実情に即した解決を図るため,力を尽くしてきたことによるものであり,ここに,多年にわたる関係者の努力を深く多とするものであります。

近年,社会の変化を反映して,紛争も多岐にわたり,広い分野の知識経験を活用できる調停制度は,これから,ますます重要な役割を果たしていくものと思います。

今後とも,調停委員を始め関係者の一層の努力により,和の精神を重んじる調停制度が適切に運営され,明るく秩序ある社会を築く上で大きな力となることを切に希望いたします。

学制120年記念式典
平成4年10月16日(金)(国立劇場)

学制120年記念式典に臨み,ここに,皆さんと共に我が国の教育の発展を祝うことは誠に喜ばしいことであります。

明治5年の学制発布は,全国に不学の人を無くそうという大きな理想を掲げたものでありますが,この理想に沿って関係者がたゆまず力を尽くしてきたことは,我が国の今日を築く上に極めて大きく寄与したと思います。ここに先人の努力に思いを致し,深く敬意を表するものであります。

教育が社会にもたらす意義は計り知れないものがあります。時代の要請にこたえ,教育に携わる人々が,一人一人の個性を伸ばし,創造性のある教育に励むことにより,我が国に,さらには世界に,個人個人が尊重される豊かな社会が築かれるよう期待しております。

学制発布から120年を迎えた我が国の教育界が,先人の跡をしのびつつ,未来に向かって更なる努力を重ねられることを願い,お祝いの言葉といたします。

第125回国会開会式
平成4年10月30日(金)(国会議事堂)

本日,第125回国会の開会式に臨み,全国民を代表する皆さんと一堂に会することは,私の大きな喜びであります。

ここに,国会が,当面する内外の課題に対処するに当たり,国権の最高機関として,その使命を十分果たし,国民の信託にこたえることを切に希望します。

第12回全国豊かな海づくり大会
平成4年11月8日(日)(千葉県勝浦市)

第12回全国豊かな海づくり大会が,ここ千葉県勝浦市において,関係者多数の参加を得て開催されることを誠に喜ばしく思います。

我が国は,四方を海に囲まれ,海から限りない恵みを受けてきました。しかし,この大切な海が海域によっては汚染され,また,水産資源の減少を見るようになってきました。海洋環境を良好に保ち,水産資源を豊かにすることは,海と深い関係にある我が国にとって重要な課題であります。近年,各地で海の環境の改善に関心が深まり,栽培漁業の振興などにより資源の維持が図られていることは大変に心強いことであります。

千葉県は暖流と寒流の交わる外海や東京湾などの豊かな漁場に恵まれています。この環境を良く守りつつ,栽培漁業を積極的に推進し,一層の成果があげられることを期待しております。

「育てよう 生命のふるさと 青い海」をテーマとして行われるこの大会が,美しい豊かな海をつくるよう多くの人々が協力し合う契機となることを願い,今大会に寄せる言葉といたします。

第8回国際生物学賞授賞式
平成4年11月30日(月)(日本学士院会館)

クヌト・シュミットニールセン博士が第8回国際生物学賞を受賞されたことを心からお祝いいたします。

博士は,永年にわたって,動物生理学の面から,生物にとって厳しい環境である砂漠や海洋に生息する各種の動物,例えば,ラクダや海鳥などの生理機構を解明され,これらの動物が環境に適応するために,種を越えて共通の生理的機能を持つことを明らかにすることにより,動物の進化を理解する上で大きな成果をもたらしたとのことであります。

博士の御研究が,比較生理学,さらには生物学全般の発展に多大な貢献をしたことに対し,深く敬意を表したいと思います。

博士の御健勝と御研究の一層の発展を願い,お祝いの言葉といたします。

「国連・障害者の10年」最終年記念式典
平成4年12月9日(水)(有楽町朝日ホール)

障害者の「完全参加と平等」を目標テーマに「国連・障害者の10年」が国連により宣言されてから10年がたちました。ここに,この「国連・障害者の10年」の最終年を記念して,記念式典が行われますことを,誠に喜ばしく思います。

この10年間を振り返りますと,我が国の障害者福祉に向上が見られ,障害者に対する国民の理解が大きく進んだことが感じられます。この陰には,障害者自身によるたゆみない自立への努力と,これを励まし支えてきた関係者の努力があったことと,ここに,深く敬意を表したいと思います。

障害者の問題は,人間の尊厳,個人の人格の尊重という,あらゆる国民にかかわりある根本的問題であります。「障害者の10年」は本年をもって終わりますが,障害者の問題は今後も国民の心に生き続けていかなければなりません。このことに深く思いを致し,障害者を含むすべての人々が安らかに生きていける社会を築くよう,国民一人一人が努力していくことを切に念願し,式典に寄せる言葉といたします。