主な式典におけるおことば(平成3年)

皇后陛下のおことば

「看護の日」及び「看護週間」制定記念式典
平成3年5月12日(日)(日比谷公会堂)

今年から5月12日が「看護の日」と定められ,あわせて「看護週間」が設けられることになりました。ここに記念式典が開催され,全国各地においても記念の行事が行われますことを,心よりうれしく思います。

5月12日は,近代看護の先駆者であるフローレンス・ナイチンゲール女史の生誕の日でもあり,このような機会に,国民一人一人がお互いを思いやり,看護することと,介護することについて理解を深めることは,誠に意義深いことであると思います。

人の一生には世話をしたりされたりということが常にあり,この人と人との支え合いが基盤となり,家庭や社会が築かれています。日本が,かつて世界のどの国も経験したことのない速度で高齢化社会の時代を迎えつつある今,病に苦しむ人々の看護と共に,高齢の人々の看護も,大切な皆の問題となってまいりました。支える者も支えられる者も,共に看護の問題を真剣に考えていくことが必要になってきたことを感じます。

昭和40年に国際看護婦協会により「看護婦の日」と定められていたこの日が,この度,更に看護を,専門職の人々のみでなく広く国民皆のものとされたことにより,人々の看護への関心が深められると共に,改めて,看護を職とされる人々への敬意と感謝の払われる日となることを望んでおります。

初めての「看護の日」に当たり,病院で,施設で,また,家庭で,看護や介護の必要な人々を看とり,支えておられる多くの方々に深い敬意を表し,「看護の日」と「看護週間」制定の趣旨が,大勢の人々の心に刻まれ,大切にはぐくまれていくことを願い,ごあいさつといたします。

平成3年全国赤十字大会
平成3年5月22日(水)(明治神宮会館)

本日,全国赤十字大会に出席し,日ごろ赤十字の事業に力を尽くされている皆さんとお会いいたしますことを,大変うれしく思います。

赤十字は,国際的な強い絆で結ばれ,人道的事業を通じ,広く世界の人々の福祉を増進し,平和な国際社会を築くために,大きな力となっておりますが,日本赤十字社が各国赤十字社と互いに手を携え,よくその使命を果たしていることは,皆さんの尽力によるものと誠に心強く思います。特に本年は,日本赤十字社による看護婦養成事業が100年を迎える記念すべき年に当たり,この機会に,これまで看護教育に尽くしてこられた方々のたゆみない努力に,心から敬意を表します。

今,この地球上には,飢えや貧困,戦火や紛争によって苦しんでいる多くの人々がおり,また,各種災害は,国の内外を問わず,現在もなお大きな脅威として存在しています。皆さんが,世界各国の赤十字社と相携え,これからも一層力強い活動を進められるよう希望してやみません。

第33回フローレンス・ナイチンゲール記章授与式
平成3年6月19日(水)(東京プリンスホテル)

第33回フローレンス・ナイチンゲール記章授与式に当たり,受章者を始め,看護に携わる大勢の方たちにお会いできますことは,うれしく思います。

この度,大森文子さん,伊佐マルさんが,赤十字国際委員会から,看護婦として最高の名誉であるフローレンス・ナイチンゲール記章を贈られました。ここに,お二人の,半世紀に及ぶ看護業務への献身と,今日まで,たゆみなく払われた尊い努力に対し,深く敬意を表し,受章をお祝いいたします。

受章されたお二人の,様々な環境の下で積まれた豊かな経験が,これからも,広く,我が国の看護の上に生かされてまいりますように,そして,病める人,傷ついた人々をお世話なさる大勢の方々が,皆,健康に留意され,今後とも看護の道に力を尽くされることを願い,本日の言葉といたします。