主な式典におけるおことば(平成2年)

皇后陛下のおことば

東京都千代田区立番町幼稚園創立100周年記念式典
平成2年3月3日(土)(千代田区立番町幼稚園)

番町幼稚園の開園100周年,おめでとうございます。幼稚園が,100歳のお誕生日を迎えたこの年,在園の園児,教職員,父母の皆様のお喜びはもとより,かつてこの園と御縁をもたれた大勢の方々が,それぞれの思い出の中の番町幼稚園を,懐かしく(しの)んでおいでのことと思います。

100年は,長い長い年月であり,その間,さまざまな時代を背景に,どんなに沢山の園児が,ここで遊び,学んだことでしょう。100年前の子供たちは,どんな歌をうたい,どのような遊びをしたのでしょう。100年前も,初めての子供の手をひき,園を訪れた若いお母様方は,やはり私共の多くもそうであったように,子供以上に,緊張しておられたのでしょうか。お庭には,どんな木や花があり,先生方は,どのような言葉で,子供たちに話しかけておられたのでしょう。

幼稚園の歴史には,きっとさまざまな変遷があったことと思われますが,同時にまた,その歴史のどの(ページ)を開いても,そこには,光や風の中を走り,大声で友達の名を呼ぶ子供たちの姿と,その子供たちを,深い育ての心をもって導かれた先生方の姿が,くり返し見られるのではないかと想像いたします。

先生方が,子供の中におのずから育つものを優しく見守られ,また,子供の心の小さな驚きを(とら)えては,細やかに導いてくださった毎日が,幼稚園の100年の歴史を作って来た事を思う時,この園のために尽くされた方々に,深い敬意を覚えます。

100年という大きな節を祝い,今日からまた始められる幼稚園の新しい日々が,いつも明るい希望と共にありますように,そして,今日ここにおられる園児の皆さんが,やがて巣立っていく世界が,平和で健やかであることを祈り,本日のお祝いの言葉といたします。

平成2年全国赤十字大会
平成2年5月30日(水)(明治神宮会館)

本日,全国赤十字大会に出席し,日ごろ赤十字の事業にたゆみない努力を続けられている皆さんに親しくお会いできたことを,大変うれしく思います。

赤十字は,国際的な強い絆で結ばれ,人道的事業を通じ,広く世界の人々の福祉を増進し,平和な国際社会を築くために,大きな力となっておりますが,日本赤十字社が,各国赤十字社と互いに手を携えて,立派にその使命を果たしていることは,皆さんの尽力によるものと心から満足に思います。

日本赤十字社が果たさなければならない役割は,内外それぞれの分野で今後ますます重要になってくるものと思われますので,皆さんが互いに力を合わせて一層力強い活動を進められるよう希望してやみません。