会見年月日:平成2年12月20日
会見場所:赤坂御所
即位の礼と大嘗祭が多くの人々の協力のもとで,滞りなく執り行うことが出来ました。関係者の人力に対し,また国民の祝意に対し,深く感謝の意を表したいと思います。即位礼正殿の儀には,多くの国々から元首や祝賀の使節が来て下さいました。旧知の方や,この度お会いした方々と言葉を交わし,短期間ではありましたが楽しいひとときを過ごすことが出来ました。深く感謝しています。各国と日本との理解,友好関係がこの機会に一層深まれば幸いと思っています。身体の具合については,良いように思います。
全てのお儀式が終わり,ほっといたしました。心を寄せて下さった大勢の方々に感謝し,これからの日々を陛下のお気持ちに添い,人々の幸せを祈って過ごしてまいりたいと思います。
お疲れではないですか。
ありがとう。長い期間にわたりましたので,初めは少し心配いたしましたが,おかげで何のさわりもなく過ごすことが出来ました。
国民の幸せを念頭におき,たゆまずに天皇の道を進んでいらっしゃった昭和天皇をはじめとする,これまでの天皇に思いをいたし,日本国憲法に定められている日本国の象徴であり,日本国民統合の象徴として現代にふさわしく天皇の務めを果たしていきたいと思っています。
市民生活に影響があったということを,誠に心苦しく思っております。一方,長期にわたる警察官の労苦も大変なことであったと察しています。その尽力に深く感謝しています。誠に残念なことは,その間に尊い命が失われ,重傷者を含め負傷者が生じたことであります。遺族や負傷者の家族を思うと誠に心がいたみます。
この問題については,政府で十分検討が行われたと聞いております。
今のお話に関連して,今回の大嘗祭は公費の支出をもって執り行われましたが,そういうなかで皇室に伝わる伝統的な儀式の内容をもう少し見たかった,公開して欲しかったなと,そういう声が大嘗祭が終わったあとに国民の間からでているが,陛下ご自身はどんなお考えをお持ちですか。
この問題については,宮内庁で儀式の性格を考え,十分検討したというふうに聞いております。それに従い私の意見は差し控えたいと思います。
大嘗祭では陛下は何を祈られたのでしょうか。
この儀式は五穀の豊穣と安寧を祈るという儀式です。
今後の世界はあらゆる国々が国際社会の一員として,国と国との交渉とともに,人と人との交流を通じて人類の幸福のために,住み良い世界を作っていかなければならない時だと思います。したがって,私の立場から外国の人々との理解と友好関係の増進に努めていきたいと思っています。今後の訪問に当たっては,政府の方で話が進められていくと思いますが,訪問に当たっては,そのような心掛けでやっていきたいと思っています。
陛下に伺いますが,日本国民も大和民族や沖縄の人達,アイヌの人達のほかに韓国,朝鮮そういったアジアの国々,あるいは欧米からの帰化される方も増えてきている。うちなる国際化の中で,天皇,皇室の在り方はどのように変わっていくと考えられるか,またどのような天皇であろうと考えていらっしゃいますか。
日本国憲法にある日本国の象徴であり,日本国民統合の象徴という立場にあるわけでですから,これはあらゆる日本国の国民である人々に対しては,すべて同じに考えていくという気持ちでおります。
成年に達して10年になり,その間皇族の務めを立派に果たしてきたことを大変うれしく思っています。皇太子としては,まだ日も浅いんですけれども,これまでに培ったものをさらに高めていくよう願っています。そして国のためや,人々のために務めを果たしていくことを願っています。結婚の問題については,東宮職で色々検討されていることと思いますが,この問題によって,人に迷惑がかからないように,そっとしておいて欲しいと思います。特に事実無根のことで困っている人もいると聞いております。
私も,いま陛下のおっしゃったのと同じでございます。
寺崎御用掛の書き記したものは,読みました。昭和天皇の即位の礼の年には,張作霖爆死事件が起こっています。その後の日本は平和の方向には進まず,ご心痛やご苦労が深かったこととお察ししています。
今年で日米開戦から49年,ほぼ半世紀を経たわけですが,当時の陛下は小2でしたか。
1年いや,2年生です。
その時のことというのは,ご記憶にありますか,もしご記憶にありましたら,どういう形で開戦をお知りになって,どういうふうに受けとめられましたか。
戦争が始まったのを知ったのは,朝だったことは記憶しています。それ以外ははっきりした記憶はありません。当日の朝ですね,ニュースを聞きました。
ラジオですか。
ラジオのニュースです。
まだ基本設計も出来ていない段階ですので,その使い方についてはお話しする段階ではないと思います。しかし国際的な交流も盛んになり,非公式に来日される元首や王族の方々をおもてなししたり,また皇族の休所などに使われる部分が新御所には必要と思われます。こういう問題については今後,宮内庁で検討を進めていくことと思います。
皇后様,女性の立場から,何か新しい御所にご希望ございますか。
今陛下がおっしゃったように,あのう,まだ何というか基本設計というものが出来ておりませんから,どのように申し上げてよいかまだ分かりませんし,私は余り良く分からないので,やはり宮内庁の方で考えてもらい,また大勢の人が働きますから,皆が仕事がしやすいような御所になるといいと思っております。
外国への留学という考えはありません。しかし,短期間の外国旅行などという機会を通じて,世界を知るという機会はあれば良いと思っています。結婚については本人の意思を尊重するとともに,その結婚が人々の祝福を受けるものでありたいものと思っています。
私も留学の希望は聞いておりません。紀宮が末っ子ということもあって,結婚はまだ先のことであって欲しいと思ったり,それは親の我がままかしらと思ったり,気持ちがまとまりません。陛下がおおせになったように本人の気持ちを大切にしていきたいと思います。
そうですね,今のところは,ちょっと中止しているわけですけれども,来年からは始めていきたいと思っております。
その質問は,今日出ると思わなかったので,余り何もしていないので,もう少しかまった方がいいと言われることがありますけれども。
天皇陛下はどう思われますか。
いつも自然にしているというところが,とてもいいと思います。
この信教の自由はやはり憲法に定められたものでありますから,非常に大切にされなければならないと思います。
高御座というものは,歴史的に古くから伝わっているものですけれども,そういうような儀式のひとつのものとして,そこへ昇りましたけれども,今のお話のような感情を持って昇ったわけではありません。
これはやはり,あの,政府で十分に色々検討して,こういう形が良いということになり,それに従ったわけであります。そういうことはありません。私の世代はそれよりも後の時代に,そういうこととかかわりのない時代に長く生きてきているということが言えると思います。
やはり,あの,今,宮家を作っていくという努力を一生懸命しているというふうに感じています。私もこういうふうに育ちましたから,宮家というものについては十分に認識がありませんから,2人で,また色々の人々と相談しながら,しっかりやっていっているんではないかと思い,また期待しています。
まあやはり,今まで長い間一緒に過ごしてきたわけですから,そのままの気持ちでやることが私にとっても,一番幸せだと思っています。
やはり,本当に重いお仕事をお持ちでいらっしゃるのですから,ずっとご健康で,今まで私が見上げてきた陛下と同じに,これからまた,そのお務めに,即位の礼の時におっしゃった通り,人々の幸福を願い,世界の平和を願って,これからの務めを果たすとおっしゃった陛下のお仕事が,ご健康で果たされていくようにお祈りしております。
いまの,そのままというのは非常によく努めてくれているという,そういう気持ちを持っていること。
ありがとうございます。
仮定というのは,やはりちょっと,やはりお答え出来ないと思います。
今の気持ちだけで結構なのですが。
ですから,憲法を守るということ,これにつきるわけでその憲法のいろいろな条項がありますけれど,それに沿っていくということになると思います。
今までと違って,これから多様な価値観に伴って,政府のやっていること,あるいは宮内庁のやることに対して疑問もあるようですが,そんなことは先ずなかったのか。
やはりみんな,随分,一生懸命検討していると思います。
憲法上問題ないということもあるだろうし,陛下のやっていることは,そう違いないだろうし。
その憲法の判断は,やはり最終的には,最高裁判所で決められるということになると思います。