皇后陛下お誕生日に際し(平成7年)

宮内記者会の質問に対する文書ご回答

問1 昨年のお誕生日以来,この1年は大きな出来事が相次ぎました。印象に残っている事柄をお聞かせ下さい。また,皇后さまは天皇家の「妻」,「母」,「祖母」の三つの立場を務められていますが,家庭や家族の面からも併せて,この1年の印象深い出来事をお聞かせ下さい。
皇后陛下

阪神・淡路大震災

サリン事件等による社会不安

雲仙の火山活動の沈静化と復興活動の開始

終戦50年

秩父宮妃殿下の薨去

問2 今年は戦後50年の節目の年ですが,特別に考えたことはございますか。夏に行われた「慰霊の旅」の感想と併せてお聞かせ下さい。
皇后陛下

慰霊の旅では,戦争の被害の最も大きかった4地域を訪れましたが,この訪問に重ね,戦争で亡くなった全ての人々の鎮魂を祈りました。

戦争により,非命に倒れた人々,遺族として長い悲しみをよぎなくされた人々,更に戦争という状況の中で,運命をたがえた多くの人々の上を思い,平和への思いを新たにいたしました。

問3 1月の阪神・淡路大震災では大きな犠牲が出ました。天皇,皇后両陛下をはじめ皇族方が現地にお見舞に出掛けられましたが,震災後約9か月を経た現在,被災者への思い,復興への思いをお聞かせ下さい。
皇后陛下

言語に絶する災害の場で,被災者により示された健気な対応と相互への思いやりに,深く心を打たれました。今でも一人一人が多くを耐えつつ,生活しておられることと察します。時をかけて,被災者の心の傷が少しずつ癒されていくことを願いつつ,被災地のこれからの状況に心を寄せ続けていきたいと思います。被災者一人一人がくれぐれも体を大切にされ,明るい復興の日を迎えられることを祈念いたします。

問4 阪神・淡路大震災,オウム真理教事件など国民を不安に陥れる災害や事件が続きましたが,こうした世の中で皇室が存在する意義や役割についてどのようにお考えですか。
皇后陛下

人の一生と同じく,国の歴史にも喜びの時,苦しみの時があり,そのいずれの時にも国民と共にあることが,陛下の御旨(みむね)であると思います。陛下が,こうした起伏のある国の過去と現在をお身に負われ,象徴としての日々を生きていらっしゃること,その日々の中で,絶えずご自身の在り方を顧みられつつ,国民の叡智がよき判断を下し,国民の意志がよきことを志向するよう祈り続けていらっしゃることが,皇室存在の意義,役割を示しているのではないかと考えます。

問5 皇后さま,皇太子妃雅子さまをはじめ,女性皇族の声が国民に届きにくいように感じられますが,女性皇族としての役割をどのように考えていますか。男女平等の観点から女性が皇位につけるように「皇室典範」を改定すべきとの論議がありますが,女性が皇位につくことについて,どのようにお考えですか。
皇后陛下

国の象徴でおありになる天皇陛下に連なる者として,常に身を謹み,行事,祭祀等,皇室の伝統を守りつつ,その時代の社会に内在する皇室の一員として,社会の要請に応え,課せられた務めを果たしていくこと。(一般論としてではなく,私の感じて来た範囲内でお答えいたしました。)

皇室典範の改定の問題は,国会の決定に俟つべきものと思います。

問6 紀宮さまのご結婚について,お相手にはどのような職業,性格の方がふさわしいと思われますか。皇后さまから手料理や生活の知恵など,助言されていることがありましたらお聞かせ下さい。
皇后陛下

全て紀宮の判断にまかせたいと思います。

日常生活については,折々に話し合い,教えたり教わったりいたします。