カナダ・アメリカ合衆国ご訪問に際し(平成21年)

平成21年6月30日(火)
カナダ国及びアメリカ合衆国ご訪問に当たり天皇陛下のご感想

<英文>

この度,カナダ総督閣下からの御招待により皇后と共にカナダを訪問することになりました。日加両国は,戦後の外交関係再開以来,緊密な友好協力関係を順調に築き上げてきました。今般,私どもに長らく招待を寄せられたカナダ政府の好意にこたえ,訪問を実現することができるようになったことをうれしく思います。

私のカナダ訪問は二度目になります。前回の訪問は平和条約が発効した翌年の昭和28年(1953年),私が19歳の時のことでありました。この年の6月,エリザベス女王陛下の戴冠式が行われ,私は昭和天皇の名代として式に参列するため英国に向かう途次,カナダを訪問いたしました。今回も訪れる予定であるビクトリアのブリティッシュ・コロンビア州副総督官邸は,私が外国の地において初めての夜を過ごした所です。当時のマッシイ総督,サンローラン首相,ウォーレスブリティッシュ・コロンビア州副総督始め,日系カナダ人を含むカナダの人々から寄せられた厚情は忘れ得ぬものであります。また4晩3日を車中で過ごしたバンクーバーからトロントに至る鉄道の各駅で,厳しい寒さの中,迎えに来てくれた日系の人々の温かい気持ちは深く心に残るものでありました。それから56年,今回,カナダを訪問したことのない皇后と共に,再びこの国を訪れることを心よりうれしく思います。

日本とカナダの間では,近年,様々な分野で友好協力関係が,進展しており,さらに昨年来,修好80周年を祝して,両国それぞれにおいて様々な記念行事が開催されております。この度の私どもの訪問が,両国間の相互理解と友好関係を一層深めることに資するよう願っております。

また,この機会に,私どもの結婚を祝してハワイと日本の間で設立された奨学金財団が本年50周年を迎えるに当たり,その記念行事に出席するため,帰路ハワイを訪問いたします。私どもは,毎年,この奨学金によって勉学する日米両国の奨学生に会ってきましたが,この度,これら奨学生たちと再会し,併せてこの奨学金を設立し,守り育ててきた両国の関係者のこれまでの努力に深く敬意を表したく思っています。

カナダ,ハワイとも日系人の多い地域です。今回の訪問中に各地で,日系の人々に会い,日系人の歩んできた道への理解を更に深めていきたいと思っています。

終わりに,内閣総理大臣を始め,この訪問の実現のために尽力してくれた多くの人々に対し,感謝の意を表します。