ご訪問国:イタリア・ベルギー・ドイツ(バチカンお立ち寄り)
ご訪問期間:平成5年9月3日~9月19日
会見年月日:平成5年8月23日
会見場所:宮殿 石橋の間
国際社会に重要な地位を占めるヨーロッパは,今日,ドイツの統合を始めとして多くの変化が起こり,ヨーロッパの国々のお互いの協力関係も密になってきています。
このヨーロッパと日本とは,地理的に遠く離れていますが,近年,お互いの理解が深まりつつあります。今後更に交流を盛んにし,友好関係を増進することが願われます。
この度政府の決定を受けてヨーロッパを訪問する訳ですが,このことを念頭に置き,友好関係の増進に努めたいと思っております。
この度訪問する3か国は日本と深い関係にありました。最近ではペルティーニ大統領閣下がイタリアから国賓として訪問なさいました。また,先日亡くなられましたベルギーのボードワン国王陛下,また,ドイツのヴァイツゼッカー大統領閣下も共に昭和天皇の大喪の礼と私の即位の礼に来ていただきました。このようなことにかんがみ,礼を尽くして訪問したいと思っております。
それぞれの国にまいりましたならば,いただいたお招きに感謝し,陛下の仰せのように礼を尽くして,訪問先の一つ一つの務めを果たしてまいりたいと思います。
この度訪問するイタリアとドイツは,先の大戦で同盟関係にあり,戦中戦後苦難の道を経てきましたが,日本はそれらの国々と共に過去を顧み,今後に活かし,両国を含む世界の国々と相携えて協力し,より良い国際社会を築いていきたいものと思っております。
この度の訪問は公式訪問でありますので,何よりも意義のある訪問でありたいと願っております。そして,この訪問が私共の心に生き続け,後々までも印象深く思い起こされるものでありたいと思っております。
15年程前のこと,チトー大統領の時代にユーゴスラビアを訪れたとき,今のスロベニアの農家を訪れましたが,即位後,その農家の人からお祝いの手紙を受け取りました。このようなことも印象深く思い起こされることの一つです。
この度訪問する3か国はいずれも英国女王陛下の戴冠式に40年前参列したときに訪れた国々であります。したがって,二度目の訪問になるところもかなりあります。しかし,同じものを見るにしても,40年の年月を経て見るのでは全く違ったものになります。この度の訪問に当たっては初めて訪れるところも,また二度目に訪れるところも新鮮な気持ちで訪問したいと思っております。
この度の旅行では思い出のある土地を再訪し,懐かしい人々と再会する楽しみと,初めての土地を訪れ,初めての人々と出会う楽しみとの両方があります。今から8年程前,私は岐阜県の過疎の町を訪れ,小さな国際音楽祭に出席いたしました。今回,時差調整を含めて週末に滞在するフィレンツェの近くで,この時,共に時を過ごしたイタリアの学生さん達と再会することが出来ます。3か国の元首の方々を始めとし,各地で再会の喜びを重ね,更に多くの未知の人々に会えますことを楽しみにしております。
これまでの外国訪問で,準備を十分にしてきたか否かによって訪問の印象が大きく違ったことを経験しています。したがって,この度も訪問地を出来るかぎり知ってから訪問したいと思っておりましたが,今年は事多い日々で,夏も十分に準備に時間を充てることが出来ず,その点は大変心残りです。
私も残念なことに十分な準備が出来ませんでした。子供たちが学校で使った世界史の教科書をもらってありますので,出発までの間に,せめて訪問する国々の歴史の復習だけでも出来ればと思います。
国と国との友好関係の増進には,それぞれの国民がお互いに理解を深め,広く信頼関係を確立していくことが大切と思います。私の外国訪問につきましても,このようなことを念頭に置き,人々に接し,友好関係の増進に努めていきたいと思っております。
また,それぞれの国の誇りとしている文化などに理解を深めることも心掛けています。
訪問を通じ,少しでも日本に対する関心と理解が深まり,また,日本の善意が伝達されるよう心掛けねばと思っています。どの国もが,それぞれの歴史を背負い,現在に至っていることを思いますと,それぞれの国が複雑な過去の重荷に耐え,その中でなお,自分の国を愛し,より望ましい姿で未来に向かって努力することが,どれ程大切であるかを感じさせられます。それぞれの国にあって,自国を思い,他国との間の平和を求めて努力をしている人々と出会い,共に生きる感覚を失うことがないよう心掛けていきたいと思っております。
ドイツの統一は,誠に大きな出来事でありました。それを良い方向に発展させ,世界の環境を良く保ち,人々の暮らしが幸せに営めるようにするためには,人々の交流を盛んにし,お互いの信頼関係が増していくことが大変重要と思われます。
政府の決定を受けて行われる外国訪問の機会には,このようなことを念頭に置き,訪問国の人々と接し,友好関係を増進していきたいと思っております。
ローマ法王台下は,かつて日本にもいらっしゃいました。その時,広島で世界の平和を希求するスピーチをなさり,日本の人々に深い感銘を与えました。ローマ法王台下の平和を求めるお心というものは,また,日本の人々が平和を求める心に通じるものと思います。世界は様々な考え方を持っている人々によって国際社会が成り立っていますが,すべての世界の人々が幸せに生きるためには,それぞれの立場を配慮し,そして,より良い世界を築いていくよう努めていかなければならないと思っております。このようなことを念頭に置いて私はローマ法王台下にお会いしたいと思っております。
陛下が急な質問にお答えになりましたのに,私が今日の質問をお答えしないことは失礼になるかとも思いますが,記者会見と申しますのは,私共にとって非常にわずかな国民との間の気持ちの通わせ合いの一つの機会でもございます。私共は,やはり,その折に十分に日頃の考えをまとめ,過不足なく自分の答えをさせていただきたいと思っております。
もし,宮内記者会の質問と重なるようでございましたらば,前もって宮内記者会と特派員会とがその調整をなさっていただけると今後うれしいことだと,そのようにお答えをして失礼でしょうか。
皇太子時代に外国を訪問した時は昭和天皇のご名代という立場が多く,また,それ以外の場合も皇太子という立場での訪問でありました。したがって,家族で外国を訪問するということはありませんでした。
ただ,アフリカを公式訪問する途時,時差調整の意味でベルギーのラーケン宮に泊めていただいた時,ボードワン国王陛下,ファビオラ王妃陛下のご配慮で,当時,英国に修学していました現皇太子をラーケン宮に呼んでくださったことがあります。また,デンマークからノルウェーを公式訪問している時,週末を現ノルウェー国王王妃両陛下とフィヨルドで,過ごすことになっていましたが,その時にも同じく,英国修学中の現皇太子を,オラフ国王陛下のご配慮でフィヨルドで過ごすように招いてくださったことがあります。これらのことはなつかしく思い起こされ,両王室のご配慮に心から感謝しております。
ちょっと,聞こえなかったんですが。
雅子妃殿下に対する,陛下と皇后様の感想といったら失礼ですけれども,一言ずつお聞かせ頂ければ。
やはりそういうことは,直接皇太子妃に言うことが良いかと思います。
ごめんあそばせ,私,先程ドイツの方の質問に答えることが出来ませんでしたので,2番目の求められた質問をお答えさせていただきます。今の質問に対しては,陛下と同じお答えをいたします。
先程質問されたのにお答えをしそびれてしまいましたが,2番目の質問にお答えいたします。私が初めて外国の旅行にお供を致しましたのは,皇太子が生まれた年の9月で,それから2ヶ月おいて,再びアジア,アフリカ,中近東4か国のひと月近い旅行がございました。皇太子が生後8ヶ月と11ヶ月の時でございましたので,とても一緒に連れていくことは考えられませんでした。それからも同伴を考えたことは一度もございません。何故かと問われますと本当に何故かしらと思うのですけれども,陛下がおっしゃいましたように,私共は私的に海外の旅行をしたことがなく,公的な旅に家族を伴うということに考えが及ばなかっただけの事ではないかと思います。
公式には,アルベール国王陛下からご親書をいただきまして,同じように招きたいという意味のお手紙がありました。また,ファビオラ王妃陛下やアルベール,当時は殿下もそのような意味のことをご葬儀の時に,訪問した時にお話がありました。