2000年(平成12年)における皇居内の生物について正確な記録を残し、その後の経年変化などを把握することが望ましいと願われた上皇陛下のお気持ちが発端となり、国立科学博物館により1996年(平成8年)から5カ年かけて詳細な生物調査(第Ⅰ期)が実施され、2000年(平成12年)12月に調査結果がとりまとめられた。
その後、動物に関して5カ年かけて追跡調査が行われ、2006年(平成18年)3月に追跡調査結果がとりまとめられた。
さらに、前回の調査から10年が経過したことで、皇居の生物相がどのように変化したかを調査し、併せて皇居に生息するタヌキや鳥類など、特定の動物(群)の生物学的あるいは生態学的特性を解析するため、2013年(平成25年)まで5カ年の調査(第Ⅱ期)が実施され、2014年(平成26年)3月に調査結果がとりまとめられた。
現在、2021年(令和3年)から5カ年の調査(第Ⅲ期)が実施されている。
調査は動植物を対象に行われた。
対象地区は、吹上御苑、生物学御研究所周辺、道灌濠などで(宮殿・宮内庁庁舎周辺や皇居東御苑は対象外)、第Ⅰ期は約58ha、第Ⅱ期は約60haを調査した。
調査は国立科学博物館の研究員に加え、館外の多くの研究者の協力の下に実施された。
鳥類は山階鳥類研究所との共同研究で、第Ⅰ期調査当時は、紀宮殿下も調査・執筆に参加された。
上皇陛下は、調査の節目に調査員を御所にお招きになって上皇后陛下や紀宮殿下とご一緒に報告をお聞きになり、また、時には調査状況をご覧になるなど、調査の経緯を見守ってこられた。
第Ⅰ期の結果は、国立科学博物館の専報「皇居の生物相Ⅰ~Ⅲ」(2000年12月発刊)において公表された。植物1366種、動物3638種が記録され、多くの新種(ワラジムシ、ミミズ等)や絶滅危惧種(ヒキノカサ等)、都区内では絶滅したと思われていた種(ベニイトトンボ、オオミズスマシ等)などが見つかった。
第Ⅱ期の結果では、数種の新種も含めて、植物250種、動物649種が新たに確認されたことが、国立科学博物館の専報「皇居の生物相Ⅰ(第49号)、Ⅱ(第50号)」(2014年3月発刊)において報告された。
一般向けに「皇居・吹上御苑の生き物」(世界文化社、2001年(平成13年)が出版されている。
時期 | 経緯 |
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1994年(平成6年) 5月 | 上皇陛下より、西暦2000年における皇居内の生物について正確な記録を残し、その後の経年変化などを把握することが望ましいとのお気持ちが示された。 |
1996年(平成8年) 4月 | 「皇居の生物相調査(第Ⅰ期)」を開始〈2000年(平成12年)まで調査を実施〉 |
2000年(平成12年) 12月 | 「国立科学博物館専報」第34号(皇居の生物相Ⅰ)、「同」第35号(皇居の生物相Ⅱ)、「同」第36号(皇居の生物相Ⅲ)発刊 |
2001年(平成13年) 5月 | 「皇居・吹上御苑の生き物」(世界文化社)の発売 |
2006年(平成18年) 3月 | 「国立科学博物館専報」第43号(皇居の動物相モニタリング調査)発刊 |
2009年(平成21年) 5月 | 「皇居の生物相調査(第Ⅱ期)」を開始〈2013年(平成25年)まで調査を実施〉 |
2014年(平成26年) 3月 | 「国立科学博物館専報」第49号(皇居の生物相Ⅰ、植物相)、「同」第50号(皇居の生物相Ⅱ、動物相)発刊 |
2021年(令和3年) 9月 | 「皇居の生物相調査(第Ⅲ期)」を開始〈2025年(令和7年度)まで調査を実施〉 |