平成22年歌会始お題「光」

御製(天皇陛下のお歌) <英文へ>
木漏れ日の光を受けて落ち葉敷く小道の真中(まなか)草青みたり
皇后陛下御歌 <英文へ>
君とゆく道の果たての遠白(とほしろ)く夕暮れてなほ光あるらし
皇太子殿下お歌 <英文へ>
雲の()に太陽の光はいできたり富士の山はだ赤く照らせり
皇太子妃殿下お歌 <英文へ>
池の面に立つさざ波は冬の日の光をうけて明かくきらめく
文仁親王殿下お歌
イグアスの蛍は数多(あまた)光りつつ散り()ふ影は星の如くに
文仁親王妃紀子殿下お歌
早春の光さやけく木々の間に咲きそめにけるかたかごの花
正仁親王殿下お歌
父君に夜露の中をみ供してみ園生を行けば蛍光りぬ
正仁親王妃華子殿下お歌
大記録なししイチローのその知らせ希望の光を子らにあたへむ
崇仁親王妃百合子殿下お歌
(ゆき)はれし富良野の宿の朝の窓ダイヤモンドダストのきらめき光る
憲仁親王妃久子殿下お歌
北極の空に色づくオーロラの光の舞ふを背の宮と見し
承子女王殿下お歌
黄金(わうごん)に光り輝く並木道笑顔の友の吐く息白く
典子女王殿下お歌
葉の上にぽつりと残る雨粒に雲間より差す光ひとすぢ
召人 武川忠一
夕空に赤き光をたもちつつ雲ゆつくりと廣がりてゆく
選者 岡井 隆
光あればかならず影の寄りそふを(うべな)ひながら老いゆくわれは
選者 篠 弘
金箔の光る背文字に声掛けて朝の書斎へはひりきたりつ
選者 三枝昂之
あたらしき一歩をわれに促して山河は春へ光をふくむ
選者 河野裕子
白梅(しらうめ)に光さし添ひすぎゆきし歳月の中にも咲ける白梅
選者 永田和宏
ゆつくりと風に光をまぜながら岬の(はな)に風車はまはる

選歌(詠進者生年月日順)

東京都 古川信行
燈台の光見ゆとの報告に一際高し了解の聲
静岡県 小川健二
選果機のベルトに乗りし我がみかん光センサーが糖度を示す
群馬県 笛木力三郎
冬晴れの谷川岳の耳二つ虚空に白き光をはなつ
北海道 西出欣司
前照灯の光のなかに雪の降り始発列車は我が合図待つ
兵庫県 玉川朱美
梅雨晴れの光くまなくそそぐ田に五指深く入れ地温はかれり
長野県 久保田幸枝
焼きつくす光の記憶の消ゆる日のあれよとおもひあるなと思ふ
大阪府 森脇洲子
我が面は光に向きてゐるらしき近づきて息子()はシャッターを押す
東京都 野上 卓
あをあをとしたたる光三輪山に満ちて世界は夏とよばれる
福岡県 松枝哲哉
藍甕に浸して絞るわたの糸光にかざすとき匂ひ立つ
京都府 後藤正樹
雲間より光射しくる中空へ百畳大凧揚がり鎮まる

佳作(詠進者生年月日順)

兵庫県 山田富之助
ひそやかに兵糧運ぶ舟艇の夜光の波は美しかりき
長野県 関 義豊
頑として圃場整備を断わりし(ふる)田の堰に蛍の光る
埼玉県 石田満里子
光覚はかすかにあるといふ人の頬をささへて月を見しむる
アメリカ合衆国カリフォルニア州 小池美代子
六月の薄れ日光るコロンビア河大洋に入る前のしづけさ
岐阜県 中西昌子
花ゆれて朝つゆ光る大賀はすとほきいのちを美濃にはぐくむ
富山県 山田久二
オリオンに光軸合ひてこの世でもかの世でもない世を覗きをり
東京都 森田 厚
山里の日暮れは早し移りゆく光を追ひて銀杏を干す
神奈川県 戸村健兒
放射線管理区域に徹夜して光明るき廊下帰り()
奈良県 森下弘子
(いにしへ)の書をいたはると光落し展示されをり定家直筆
福島県 篠原昭市
懐かしき昔のカメラ手に取りて露光決めむと空を見上ぐる
長野県 小林正人
霜光る枕木踏みて明日よりは無人化となる駅を見廻る
岩手県 八重嶋 勲
喫水の深き漁船が羽光る鴎の群れをまとひ帰り来
徳島県 下町義克
天測に星の光を手繰りては遠洋漁業の針路とりにき
青森県 滝野澤 弘
車椅子を手首で漕ぎて子はつひに朝の光の窓に向きけり
大阪府 高須賀 航
試験前必死になつて読み返す蛍光ペンを引いた教科書
大阪府 松本哲武
あんなにも降り注ぎたる光さへ山を越えれば木洩れ日となる