三の丸尚蔵館 第60回展覧会について(終了しました。)

本展覧会は12月22日(土)をもちまして終了いたしました。

会期中には26,054人の方々にご観覧をいただきました。

ここに,厚く御礼を申し上げます。

宮内庁書陵部

1. 展覧会名

「鎌倉期の宸筆と名筆-皇室の文庫(ふみくら)から」

2. 会期

平成24年11月23日(金・祝)~12月22日(土)

  • 休館日:

    毎週月・金曜日。但し,祝日は開館。

  • 開館時間:

    午前9時~午後3時45分(入館は午後3時30分まで)

3. 概要

宮内庁には,皇室にゆかりのある図書や公文書,考古品を今日まで守り伝えてきた書陵部という部署があります。平成22年秋に開催した特別展「皇室の文庫(ふみくら) 書陵部の名品」は,それまであまり一般の方々の目に触れることのなかった様々な名品を,初めて,多くの方々にまとまった形で紹介したもので,幸いにも御好評をいただきました。

今回の展覧会は,書陵部所蔵の貴重図書を中心に,その時代随一の教養を備えられていたことで知られる天皇の御直筆の書(宸筆(しんぴつ))など,鎌倉時代を中心とする時期の名筆を紹介します。

花園天皇の〈誡太子書〉や,その御父君である伏見天皇の〈伏見院宸記〉に代表される歴代天皇の宸筆や,能書としても高名な九条良経などの公家の手になる和歌懐紙,日記,書状等の名筆の数々は,単に歴史的資料としての価値が高いだけではなく,美術的視点からも,多くの方々に興味をもって鑑賞いただけることと思います。

また,〈平重盛書状〉や〈西行書状〉も,鎌倉時代という武士が切り開いた新しい時代に先立って,平安時代末期に,すでに宮廷文化の素養を十分に身につけた武士が現れていたことを物語る貴重な書です。

今回の展覧会には,これらの名筆に加えて,京都の御陵に安置されている後白河天皇御木像の内部に納められている天皇御画像(御影(みえい))の影写等について紹介し,平安末から鎌倉末までの天皇や,藤原忠通などの摂政・関白,さらには平清盛を含む大臣らの似絵(にせえ)の名品〈天子摂関御影〉を併せて展示します。

こうした筆跡と肖像とを重ね合わせて御覧いただくことにより,幾世紀もの時の隔たりを超えて,歴史的人物と直接向き合い,対話する時間を持っていただけるならば,これにまさる喜びはありません。

伏見院宸記
1.伏見院宸記(ふしみいんしんき)〔作品番号1〕
伏見天皇 1巻(8巻の内)
鎌倉時代(13世紀)
(書陵部図書寮文庫 所管)
伏見天皇御直筆の日記。もとは70巻におよぶ膨大なものであったが,火災による焼失を経て現在は弘安10(1287)~応長元年(1311)の部分が書陵部に伝わる。展示箇所は正応6年(1293)8月27日条,『玉葉和歌集』撰集に関する記事が見られる。天皇の能書ぶりは『増鏡』等に記されており,古筆切でも「広沢切」「筑後切」として珍重されている。

誡太子書
2.誡太子書(かいたいしのしょ)〔作品番号6〕
花園天皇 1巻
鎌倉時代,元徳2年(1330)
(書陵部図書寮文庫 所管)
元徳2年(1330),花園天皇が甥の量仁親王(後の光厳天皇)にあてた訓戒書。当代随一の学識を誇った花園天皇は,兄である後伏見天皇より量仁親王の教育を託され,親王に治世の君としての学問の必要性を説いた。父である伏見天皇の書風とは異なり,当時広まっていた禅宗や宋学による,中国書法の影響が表れている。伏見宮旧蔵。

群猿之図(作品リストNo.14)
3.三五要録(さんごようろく)(正平10年裏書)〔作品番号7〕
後村上天皇 1巻
南北朝時代,正平10年(1355)
(書陵部図書寮文庫 所管)
平安時代後期の公卿,藤原師長が撰んだ琵琶の総譜集で,琵琶伝習者必携の書。展示箇所は後村上天皇の宸筆になるもので,正平10年(1355),良空より秘説・秘譜を伝授されたことが記されている。この時後村上天皇は南北朝の動乱により河内の金剛寺に移られていたが,帝王学の一つとして熱心に琵琶を学ばれた。南朝に関する現存史料が少ない中で貴重なものである。伏見宮旧蔵。

新古今和歌集竟宴和歌懐紙幅
4.新古今和歌集竟宴和歌懐紙幅(しんこきんわかしゅうきょうえんわかかいしふく)〔展示番号14〕
伝九条良経 1幅
鎌倉時代,元久2年(1205)
(書陵部図書寮文庫 所管)
後鳥羽上皇の下命にかかる新古今和歌集は,建仁元年(1201)に撰集が開始され,元久2年(1205)に披露の竟宴が催された。九条家に伝わる当幅はその際に宮中に提出された和歌懐紙の草稿かと考えられ,九条良経の筆と伝わる。九条良経は諸芸に秀でていたことが『愚管抄』等に記されており,書家としても「後京極流」の始祖として尊重された。九条家旧蔵。

晴天鶴(作品リストNo.22)晴天鶴(作品リストNo.22)
5.天子摂関御影(てんしせっかんみえい)〔展示番号29〕
藤原為信・豪信 4巻
鎌倉~南北朝時代(14世紀)
(三の丸尚蔵館 所管)
平安時代末から鎌倉時代の天皇,摂政関白,大臣の似絵(肖像画)を集成した名品。天皇御影は鳥羽天皇から後醍醐天皇までの中から20名の天皇に,後光厳天皇を加えた21名が描かれる。摂関影では,鳥羽天皇の関白となった藤原忠通をはじめとする30名,大臣影では藤原家忠以下80名が描かれ,その中に平清盛が描かれていることでも知られる。これらを描いたのは,似絵の名手として知られる藤原隆信,信実の家系につながる為信,豪信と記されている。