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やまとうたは,人の心を種(たね)として,よろづの言(こと)の葉とぞなれりける。世の中にある人,ことわざ繁(しげ)きものなれば,心に思ふことを,見るもの聞くものにつけて,言ひ出(いだ)せるなり。 四季が巡る豊かな風土に恵まれたわが国では,人々の鋭敏で繊細な豊かな感受性が培われ,それをわずか三十一文字(みそひともじ)の和歌に表す文化が発展してきました。紀貫之(きのつらゆき)による『古今和歌集』序文冒頭のこの文章は,今日まで最も良く和歌を定義づけた言葉として知られています。 今年は,この『古今和歌集』が成立して1100年,『新古今和歌集』が成立して800年という節目の年に当たります。和歌は,日本文化のあらゆるものに多大な影響を与えてその様相を豊かにしてきましたが,とりわけ『古今和歌集』と『新古今和歌集』は,『万葉集』と共に和歌の世界の中心として広く親しまれてきました。 『古今和歌集』は,醍醐天皇の勅命のもと,紀貫之らによって編集された最初の勅撰和歌集です。およそ1100首の歌が,春夏秋冬や賀・恋などの分類に整理され,この項目は以後の和歌集編纂の規範ともなりました。また,後鳥羽院の下命による『新古今和歌集』は,藤原定家(ふじわらのさだいえ)らによって撰されたもので,約2000首の和歌が収められました。『万葉集』等の古典作品に基づく象徴的な表現には,余情妖艶(ようえん)の美を創り出す本歌取りの技法が多く用いられ,この歌風は連歌や能楽に影響を与え,和歌研究を活発にしました。 今回の展覧会では,『古今和歌集』『新古今和歌集』を通して,和歌を詠(よ)む心,それを学ぶ心,鑑賞する心,意匠化する心など,和歌に接する様々な想いから生み出された言葉(ことのは)の美,装飾美を紹介します。“やまとうた”の心に触れ,わが国が育んできた独自の文化の美しさを再認識していただければ幸いです。 展覧会図録(PDF形式:72.6MB) |