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近代日本画の代表的な画家として知られる横山大観と,大観率いる再興日本美術院は,およそ大正11年頃から昭和前期にかけて,作品献上等を通じて帝室(皇室)や宮家との結びつきをしだいに強めていきます。そこには,帝室への畏敬の念というだけではなく,在野美術団体とみなされていた再興院展ゆえに,かえって権威に憧憬するという複雑な想いも込められていたといえます。そのため,この時期の大観の献上画や御下命による作品には,富士山や滝,日輪などをモチーフとする日本の風土を讃えた特定の主題への志向がうかがえるとともに,構図などには,大観芸術を特色づける独自の格式を重んじた定形的な作画法が明確にあらわれてきていることが指摘されます。その点からすれば,大観が主導した大正後期から昭和前期にかけての再興院展とは,ある意味では,官展以上にアカデミズム美術団体的な方向性を意識し続けた団体であったということができましょう。 本展は,こうしたいわば“公式芸術”としての日本画のあり方を主に風景描写を通じて摸索した,大正後期から昭和前期にかけての横山大観の絵画世界を当館所蔵作品10余件により紹介するほか,あわせて再興院展同人らの献上画帖作品や同時期の官展系日本画家による風景画の代表的な話題作等を並陳対比することで,大観芸術のひとつの特質を浮き彫りにするとともに,近代日本絵画史における横山大観の画業が特つ意義を改めて検証しようとするものです。 展覧会図録(PDF形式:38.8MB) |